食品ロスとプラスチック削減は、どちらも「まだ食べられるのに捨てる」「使い捨てて燃やす」という資源の無駄を減らす課題です。この1年で、食品ロスの最新統計が公表され、日本のプラスチック関連制度が改正され、EUの包装規則の適用開始日も近づきました。10月は食品ロス削減月間でもあります。2026年秋のいま、何が変わり、暮らしや仕事にどう関わるのかを順に見ていきます。
令和6年度の食品ロスは461万トン|事業系は前年度より増えた
環境省・農林水産省・消費者庁は2026年6月、令和6年度(2024年度)の食品ロス量の推計値を公表しました。以前の記事で紹介されることが多かった令和5年度の数字は、すでに新しい年度に更新されています。
総量と内訳
令和6年度の食品ロス量は約461万トンで、前年度の464万トンから3万トン減りました。内訳は、食品関連事業者から出る事業系が約237万トン、一般家庭から出る家庭系が約224万トンです。
前年度は事業系が231万トン、家庭系が233万トンでした。家庭系は9万トン減った一方、事業系は6万トン増えています。総量が減ったのは家庭系の減少が大きかったためで、内訳を見ると動きは一様ではありません。
事業系が増えた年の読み方
事業系の237万トンは、2000年度比では57%の削減にあたります。8年前倒しで当初目標の半減を達成した水準は保っていますが、前年度から増えた事実は変わりません。増加の背景については、外食需要の回復などが一因ではないかと報じられていますが、公表資料の範囲では原因は明記されていません。
数字を読むときは「減った・増えた」の一言で済ませず、総量、家庭系、事業系を分けて見ることが大切です。外食や小売の現場で出る食品ロスは、景気や人の動きで増減しやすい面があります。一方、家庭系は日々の買い物や調理の習慣が反映されます。同じ「食品ロス」でも、手を打つ場所は異なります。
削減目標は引き上げられた|基本方針と商慣習の見直し
統計と並んで確認したいのが、政策側の目標です。食品ロスの数字が改善しても、目標のほうが先に引き上げられています。
2025年3月の基本方針
食品ロス削減推進法などに基づく基本方針が2025年3月に改定され、事業系食品ロスについては、2000年度比で2030年度までに60%削減する目標が設定されました。この水準は約219万トンにあたります。令和6年度の237万トンから目標まで、あと約18万トンの差です。
家庭系食品ロスは、2000年度比で2030年度までに半減する目標が従来から示されています。国・自治体・事業者・消費者が連携し、サプライチェーン全体で発生を抑える方向が打ち出されています。
商慣習の見直しと食品寄附
農林水産省は、食品ロスを生む商慣習の見直しとして、納品期限の「3分の1ルール」の緩和や、賞味期限の年月表示への切り替えを進めています。ここで注意したいのは、これらが事業者に一律の義務として課されているわけではなく、業界の取り組みとして広げられている点です。「年月表示にしなければ罰則がある」といった理解は正確ではありません。
もう一つの柱が、まだ食べられる未利用食品を、フードバンクなどへ寄附する動きです。農林水産省は「食品寄附ガイドライン」を示し、企業が安心して寄附できる環境づくりを後押ししています。
フードバンクの仕組みや現状は、次の記事でまとめて確認できます。
外食と買い物で広がる行動|mottECO・てまえどり・食べきり
制度が変わっても、食品ロスの現場は私たちの食卓と店頭です。環境省や農林水産省は、消費者が参加しやすい行動を整理して発信しています。
食べ残しを持ち帰るmottECO
「mottECO(モッテコ)」は、外食で食べ残した料理を、自己責任の範囲で持ち帰る行動を指す、環境省の呼びかけです。「もっとエコに」「持って帰る」という意味が込められています。環境省は「食品廃棄ゼロエリア創出モデル事業」などを通じて、地方自治体や飲食店での導入を支援しています。
持ち帰りでは、食品衛生上の注意も欠かせません。店が用意した容器を使い、自分で責任を持って早めに食べることが前提です。生ものや傷みやすい料理は、無理に持ち帰らない判断も必要です。
てまえどりとおいしい食べきり運動
小売店では、賞味期限や消費期限の近い商品から買う「てまえどり」が呼びかけられています。外食では「まずは食べきり、残った料理は持ち帰りを検討する」という、おいしい食べきり運動が進められています。
どちらも、特別な道具や費用は要りません。店頭の一手間と、注文の量を考える数秒で始められます。ただし、すぐ使う予定のない商品を安いからと買い込むと、家庭で新たなロスを生みます。てまえどりは「その日・その週に使う分」を選ぶ行動として考えるのが現実的です。
飲食店側の事情や、現場で食品ロスが減りにくい理由は次の記事が詳しくまとめています。
プラスチックの国内制度|2026年4月から再生材の利用促進が動き出した
食品ロスの次は、プラスチックの話題です。日本では、プラスチックを「減らす」だけでなく、「再生材を使う」方向の制度整備が進んでいます。
改正資源有効利用促進法の施行
2026年4月から、改正された資源有効利用促進法が施行されたと整理されています。再生材の利用を促す対象製品の製造事業者に、再生材の利用に関する計画の提出と定期報告を求める枠組みで、再生プラスチックについては容器包装、自動車、家電が対象分野として挙げられています。対象製品の指定や具体的な義務の内容は、今後の運用で詳細が決まる部分もあるため、事業者は所管省庁の最新資料を確認する必要があります。
あわせて、解体・分別しやすい設計や長寿命化につながる優れた環境配慮設計を認定する制度も創設されたとされています。「作る側が、使い終わった後の回収・再資源化まで見すえて設計する」という考え方が、制度に組み込まれつつあります。
消費者にとっての意味
この制度は事業者向けの仕組みで、消費者に直接の義務はありません。ただ、メーカーが再生材を使うには、質の良い使用済みプラスチックが安定して集まる必要があります。分別ルールを守って出すことが、結果として再生材の「原料」の質を左右します。
また、制度が目指すのは「使い捨てをやめる」ことだけではありません。長く使える製品を選ぶ、詰め替えやリユース容器を選ぶ、といった消費者の選択が、メーカー側の設計の変化を後押しします。
企業の実践|オフィスのプラスチックを社員証ホルダーへ
制度の動きに合わせて、民間では実際の資源循環を試す取り組みも出ています。
4社が連携した「閉じたループ」の実証
三菱UFJ銀行、三菱ケミカル、リファインバースグループは2026年2月26日、オフィスから出る使用済みプラスチックの再資源循環に向けた覚書を締結したと発表しました。三菱UFJ銀行日本橋別館で出るクリアファイル、包装材、緩衝材などの一部を回収し、再資源化したうえで、行員向けの社員証カードホルダーとして再活用するスキームです。
役割は分担されています。リファインバースが回収と一次加工を担い、三菱ケミカルが茨城事業所のケミカルリサイクル設備で油化し、日本ポリプロがポリプロピレン樹脂に再生します。同設備は、超臨界水と呼ばれる高温・高圧の水で使用済みプラスチックを分解する方式で、2025年7月に竣工したとされています。CO₂排出量の削減は30%以上となることが期待されている、と発表されています。この数値はあくまで見込みである点に注意が必要です。
この事例から読み取れること
オフィスから出るプラスチックは、ペットボトルを除く大部分が、これまでサーマルリサイクル(焼却して熱を回収)されてきたと説明されています。今回は、分別・回収の段階から原料の品質基準を満たすよう加工する点が特徴です。
ここから分かるのは、再資源化の成否が、回収の入り口の「分別の精度」に大きく左右されることです。オフィスでも家庭でも、素材ごとに分けて出す一手間が、リサイクルの質を決めます。一方で、これは実証段階の取り組みであり、同じ仕組みが広く普及しているわけではありません。
世界の動き|EU包装規則と国際プラスチック条約の現在地
日本の制度や企業の動きは、世界のルールづくりとも連動しています。
EUのPPWR(包装・包装廃棄物規則)
EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)は2025年2月11日に施行され、2026年8月12日以降、要件ごとに順次適用が始まっています。規則の形式をとるため、加盟国の立法を待たずにEU域内で直接効力を持ち、域外から輸入される包装にも及びます。
EUへ製品を輸出する日本企業は、包装材の仕様の見直しを迫られる場合があります。包装を作る側だけでなく、自社ブランドで包装済み製品をEU市場に出す企業なども対象になり得るため、早めに対象範囲を確認することが重要です。
国際プラスチック条約の交渉
国連の枠組みでは、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約の交渉が続いています。元の見通しでは2025年のジュネーブ会合での合意が目指されていましたが、2025年8月5日から15日に開かれたINC-5.2では、条約は採択されませんでした。生産、プラスチック製品、資金などをめぐって、各国の隔たりが残ったとされています。
その後、2026年2月7日にジュネーブで再開会合(INC-5.3)が開かれ、チリのフリオ・コルダノ氏が新しい議長に選出されました。3月1日から3日には、日本主催の非公式少数国会合が東京で開かれています。次の再開会合の日程は、環境省の案内では調整中とされていました。条約はまだ成立しておらず、「条約ができたから規制が始まる」という段階ではない点を押さえておく必要があります。
私たちにできること|食品ロスとプラスチックを同時に考える
最後に、読者が今日から使える選び方を整理します。二つの課題は別々に見えますが、買い物の場面ではつながっています。
包装は敵か味方か
食品の包装は、プラスチック問題の原因になる一方、食品の傷みを防ぎ、食品ロスを減らす役割も持っています。そのため「包装を減らせば環境に良い」と単純に決めるのは、誤解のもとです。たとえば、使い切れない大容量のバラ売りを買って食品を傷ませてしまえば、包装は減っても食品ロスは増えます。
判断の基準としては、次の三つが考えられます。
- 家で使い切れる量かどうかを先に考える
- 詰め替え製品やリユース容器が使える商品を選ぶ
- 分別ルールに沿って、素材ごとに出す
家庭で優先したい3つの行動
最初に取り組みやすいのは、冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行くことです。買いすぎを防げれば、食品ロスも、食品を包んでいたプラスチックごみも減ります。外食では、食べきれる量を注文し、残ったときはmottECOの考え方を思い出してください。店頭ではてまえどりを試し、使う予定のある商品だけを選びます。
家庭でできる削減の具体的な方法や、寄附という選択肢まで知りたい方は、次の記事も参考になります。
まとめ
令和6年度の食品ロスは約461万トンで、前年度より3万トン減りました。ただし事業系は237万トンへ6万トン増えており、政府は事業系の目標を2030年度までに60%削減へ引き上げています。数字が良くなったから終わり、ではなく、目標のほうが先に進んでいるのが2026年秋の姿です。
プラスチックでは、2026年4月の改正資源有効利用促進法の施行や、オフィス由来プラスチックを社員証ホルダーへ再生する実証など、再生材を使う方向の動きが具体化しています。海外では、EUの包装規則の適用が始まった一方、国際条約の交渉はまだ合意に至っていません。
制度や技術が動いても、最後に結果を左右するのは、買う量、食べきる工夫、分別の精度といった日々の選択です。食品ロス削減月間のいま、まず一つだけ、次の買い物の前に冷蔵庫の中身を確認することから試してみてください。
- 令和6年度の食品ロスは約461万トン、家庭系224万トン、事業系237万トン
- 事業系は2030年度までに2000年度比60%削減(約219万トン)が目標
- 2026年4月から再生材利用の計画提出・定期報告を求める枠組みが動き出した
- EUの包装規則は2026年8月12日以降、順次適用が始まり、国際条約は未採択
- 買う量を決める、食べきる、分別するという日常の選択が結果を左右する
参考文献
- 環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」(2026年)
- 消費者庁「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」(2026年)
- 農林水産省「食品ロス・食品リサイクル」(2026年)
- 三菱UFJ銀行ニュースリリース「オフィス由来使用済みプラスチックの再資源循環に向けた覚書の締結」(2026年)
- JETRO「EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)」(2026年)
- 環境省「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた政府間交渉委員会(INC)」(2026年)
- LexisNexis Japan「GXと資源循環に関する法改正の解説」(2026年)




