世界では、未だ貧困で苦しむ人たちが後を絶ちません。
「貧困」と一括りにしてもその定義は様々です。
一つの定義として「相対的貧困」と「絶対的貧困」があげられます。
特に問題となっているのが「相対的貧困」で、絶対的貧困に比べて可視化しにくいのが特徴です。
今回は、相対的貧困について、絶対的貧困との違いを踏まえながら解説します。
貧困とは
国連開発計画(UNDP)が定義したところによると、貧困は「教育、仕事、食料、保険医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」とされています。
例えば、日本のような先進国では、社会保障や公的な教育制度が充実しており、極限まで貧困の状態に陥った人は、世界的に見ても多くありません。
しかし、2019年に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」では、13.5%もの子供たちが貧困となっています。
さらに、2015年に改定されたOECDの所得定義による新たな基準においては、14.0%の子供たちが貧困層です。
1985年の段階では10.9%だったことから、近年増加傾向にあることがわかります。
参照元:
・貧困とは|UNDP
・2019年国民生活基礎調査|厚生労働省
相対的貧困と絶対的貧困の違い
豊かな国と思われている日本でも、これだけ貧困層が広がっていることを知る上で欠かせないのが「相対的貧困」と「絶対的貧困」という考え方です。
それぞれの違いについて解説します。
相対的貧困とは
国やエリアにおける生活水準や経済環境を相対的に比べて、その他の大多数よりも貧しい状態を指して相対的貧困といいます。
一つの基準としてあげられるのが所得です。
世帯の年間手取り収入(可処分所得)を世帯の人数の平方根で割った数字を等可処分所と言います。
相対的貧困とは、いわゆる「貧困線」と呼ばれる等可処分所得の中央値の半分に達していない状態です。
つまり、相対的貧困率が上がれば上がるほど、収入格差があります。
絶対的貧困とは
絶対的貧困には、国やエリアの生活水準は関係しません。
それ以前に、生きていく上で欠かせない生活水準が維持できない状態を指して絶対的貧困といいます。
今日の食事に困ったり、住む場所すらない状態は絶対的貧困です。
多くの人が一般的にイメージする「貧困」は、絶対的貧困の状態といえるでしょう。
可視化しにくい相対的貧困
絶対的貧困と比べて、表立って現れてこないのが相対的貧困です。
日本のように恵まれた国において、貧困層があると知らない人も少なくありません。
しかし、前章でも記載したように、2019年の日本では14.0%の子供たちが貧困に苦しんでいます。
ところが、相対的貧困は可視化しにくいといった点が大きな課題です。
これだけ多くの子供たちが日本でも貧困の状態にあるにも関わらず、気が付きにくいのには理由があります。
相対的貧困は、衣食住は得られているケースがほとんどで、絶対的貧困のように誰が見ても貧困の状態にあるという訳ではありません。
相対的貧困が可視化されにくい原因として次の3つがあげられます。
自己責任という考えが根付いている
先進国では、貧困を自己責任と捉える人も少なくありません。
自分自身が貧困状態になったとしても、自己責任であり、人に頼ることなく自分で解決しなくてはならないと考える人も多いでしょう。
こういう考え方が根付いていると、本当に困っていることを相談しにくいといった状態に陥ります。
一見すると貧困とは思えない
両親がどちらも正社員として勤めていたり、スマホや車を持っているなど、一見するとある程度の収入を得ているように見える人でも、実は相対的貧困に陥っているケースも少なくありません。
例えば、家族に重い病気を抱えている人がいて、医療費が必要以上に嵩んでいたり、多額な借金を抱えている人もあるでしょう。
経済的DVというケースもあり、生活費にお金を回してもらっていない可能性も考えられます。
こうしたケースだと、傍目には貧困だとわかりにくく、見落とされがちです。
相対的貧困が与える影響とは
社会や身近な人からも気付かれにくい相対的貧困ですが、その生活には様々な影響が考えられます。
貧困状態にあるため、いわゆる「一般的な暮らし」を営むことができません。
続いては、相対的貧困によって与えられる影響について、細かく紐解いていきます。
働かざるを得なくなる
相対的貧困になると、最低限の生活以外に使うお金がほとんどありません。
可処分所得が貧困線を満たしており、さらに余裕がある家庭であれば、衣食住だけではなく、子供の進学に関わるお金も親が支払うのが一般的でしょう。
しかし、相対的貧困の状態にある場合、子供達も家計を支えなくてはなりません。
さらに、自分や兄弟の進学費を補うために、自らが毎日のようにアルバイトをすることになります。
いわゆる「高校生ワーキングプア」と呼ばれる状態で、学校に通いながら毎日働き、中にはダブルワークまでしている人も少なくありません。
進学を諦める
相対的貧困状態にある子供は、いくら夢や希望を持っていたとしても、簡単には進学ができません。
学力に自信があったとしても、多額の学費を支払うのが困難といった理由で、進学を諦める人も多いでしょう。
奨学金制度を利用したとしても、将来的には返済が必要であり、再び貧困生活に陥るケースも考えられます。
家庭環境が悪化する
相対的貧困の状況にある家庭では、精神的な余裕が少ない人も多く、家族仲が悪くなる可能性も否めません。
また、満足な食事ができないため、栄養が足りず、子供の成長に影響が出ることもあるでしょう。
相対的貧困を解決するために
相対的貧困は、国や自治体によってしっかりと状況を把握する必要があります。
その上で、多くの人が日本のような国でも貧困に苦しむ人たちがいることを認識することが大切です。
続いては、相対的貧困を解決するための手段を紹介します。
寄付をする
相対的貧困に悩む人に対して、直接的な支援は誰にでもできることではありません。
しかし、寄付であれば多くの人が支援しやすいでしょう。
例えば、日本財団では、貧困が原因で奪われた子供達の可能性やチャンスをサポートする支援を行なっています。
全国に子供達の居場所を作るために寄付を募っており、寄付の手段は銀行振込から電子マネーまで様々です。
参照元:
・子どもの貧困対策|日本財団
・日本財団への寄付について よくあるご質問|日本財団
ボランティア
相対的貧困の状態にある子供のサポートを手がけるボランティア団体に参加するのも一つの支援方法です。
例えば、放課後児童クラブの指導員やキャリア支援、学習支援などがあげられるでしょう。
ボランティアは、自分の得意分野を生かして参加できるといった点がメリットで、全国各地でボランティア団体が存在しています。
まとめ
相対的貧困は、どんなことがきっかけで陥るかわかりません。
例えば、病気や災害は、自分の意思とは関係なく起こります。
また、子供にとっては親の離婚や失業など、突然経済状況が悪くなるケースもあるでしょう。
このように、人ごとではないのが相対的貧困です。
可視化しづらい相対的貧困を見逃さないためには、一人一人が意識をする必要があります。
誰もが暮らしやすい社会を実現するために、しっかりと理解を深めていきましょう。