長野県は、環境省の一般廃棄物処理事業実態調査で、1人1日当たりのごみ排出量が平成26年度から令和元年度まで6年連続で全国最少でした。いわゆる「ごみ排出量日本一」です。令和2年度以降は京都府が1位で、令和6年度の長野県は全国4位ですが、排出量は769グラムと過去最少を更新し、全国平均の839グラムを下回っています。順位が下がっても減量は続いているということです。
この記事では、6年連続日本一の中身と、その後の順位の変化を最新の数字で整理します。そのうえで、長野県の減量を支えた取り組みと、順位の数字を読むときの注意点、10月の今から実践できる行動を紹介します。
6年連続日本一の中身と、その後の順位
長野県の「日本一」は、ある年に急に生まれたものではありません。順位を少しずつ上げた末の結果であり、日本一のあとも数字は下がり続けています。まず、その経過を数字で追います。
順位を上げて日本一になるまで
県の資料や専門家の解説によると、長野県の順位は平成19年度の7位から、平成20年度に5位、平成21・22年度に4位、平成23・24年度に3位、平成25年度に2位と上がりました。そして平成26年度に初めて1位になり、平成28年度までの3年連続を含めて、令和元年度まで6年連続で1位を保ちました。
平成28年度の実績は1人1日当たり822グラムで、全国平均の925グラムを大きく下回っていました。令和元年度は816グラムです。前年度の811グラムより5グラム増えましたが、県は令和元年東日本台風の災害で可燃ごみが増えたことが影響したと説明しています。
令和2年度以降は京都府が1位、長野県は4位
令和2年度に京都府が785グラムで1位になり、長野県は807グラムで2位になりました。6年続いた1位はここで途切れています。ただし、長野県の数字が悪化したわけではありません。令和元年度の816グラムから、むしろ減っています。環境省の調査結果を抜粋した資料で、近年の上位の推移を見てみましょう。
- 令和2年度は京都府785グラム(1位)、長野県807グラム(2位)、全国平均901グラム
- 令和3年度は京都府775グラム、長野県800グラム(2位)、全国平均890グラム
- 令和4年度は京都府770グラム、滋賀県789グラム、神奈川県801グラム、長野県802グラム(4位)、全国平均880グラム
- 令和5年度は京都府749グラム、長野県770グラム(4位)、全国平均851グラム
- 令和6年度は京都府736グラム、長野県769グラム(4位)、全国平均839グラム
全国の平均は年々下がっています。上位の府県も大きく減らしているため、長野県は絶対量を減らしても順位が上がりにくい状況です。令和6年度の769グラムは、令和5年度より1グラム少なく、県は過去最少を更新したと発表しています。
県が掲げる次の目標
長野県廃棄物処理計画(第5期)は、令和7年度に1人1日当たり790グラムという目標を置いていました。令和6年度の実績は769グラムで、数字の上ではすでに目標を下回っています。県は令和8年度から12年度までの次期計画で、令和12年度に740グラムまで減らす目標を掲げていると報じられています。令和5年度の全国最少値(749グラム)以下を目指す水準です。
つまり長野県は、日本一を守る段階から、もう一段低い水準へ挑戦する段階に入っています。
長野県のごみ減量を支えた3つの県民運動
長野県は、啓発だけに頼らず、複数の運動を並行して進めてきました。ここでは代表的な3つを紹介します。
「チャレンジ800」ごみ減量推進事業
県は「もったいないを大切にして ごみ減量日本一」を掲げ、1人1日当たり800グラム台を目指す「チャレンジ800」ごみ減量推進事業を進めてきました。家庭と職場の両方に具体的な行動を呼びかけたのが特徴です。呼びかけの例は次のとおりです。
- 詰め替え用の商品や、繰り返し使える容器の飲料を選ぶ
- 冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行き、余分な食材を買わない
- 食べ残しをしない
- 生ごみはひと絞りして水を切り、重さを減らす
- ダンボールコンポストなどで堆肥化する
- 職場ではマイボトルやマイカップを使う
ごみの重さの多くは水分と食品です。そのため、生ごみの水切りと食材の買いすぎ防止は、特別な道具がなくても始められる減量策になります。
「食べ残しを減らそう県民運動」と30・10運動
県は「食べ残しを減らそう県民運動 e-プロジェクト」で、食べきりに協力する飲食店や宿泊施設を募っています。令和6年度の協力店舗の登録数は994店舗で、県が令和7年度の目標に置いた972店舗を上回りました。
宴会向けの「30・10運動」は、もともと松本市が始めた取り組みです。乾杯後の30分とお開き前の10分は、自分の席で料理を楽しんで食べきろうと呼びかけます。県は平成28年(2016年)10月に、県の取り組みの名称を「残さず食べよう!30・10運動」に改めました。
家庭向けにも日付が決まっています。毎月30日は、期限が近い食材から使う「冷蔵庫クリーンアップデー」です。毎月10日は、野菜の皮や茎まで使う「もったいないクッキングデー」とされています。毎年10月を中心に「信州発もったいないキャンペーン」が行われ、宴会の多い7〜9月と12〜1月には「宴会たべきりキャンペーン」で重点的に周知されます。
食品ロスの削減が、費用と二酸化炭素の削減にもつながる
食べ残しや買いすぎを減らすことは、ごみの量だけでなく費用の面でも意味があります。食べ物を余らせたまま冷蔵庫に長く入れておくと電気代がかかります。捨てれば、収集や焼却の費用がかかります。焼却すれば二酸化炭素も出ます。長野県の運動は、家計の節約と環境負荷の低減を同じ行動でねらえる点が、続けやすさにつながっていると考えられます。
海のない県が取り組む「信州プラスチックスマート運動」
長野県には海がありません。それでも県はプラスチックごみの削減に力を入れています。理由は、川の上流に位置するからです。
なぜ海のない長野県がプラスチックを減らすのか
県の説明では、海洋プラスチックごみの約8割は陸域から発生しているとされています。長野県には太平洋と日本海に注ぐ川の水源があり、県内で出たごみが川を通じて海まで運ばれる可能性があります。県はこの立場を「上流県」と呼び、暮らしの中でプラスチックと賢く付き合う運動として「信州プラスチックスマート運動」を進めています。
選ぶ、転換する、分別して回収する
この運動の行動は、必要かどうかを意識して「選択」する、使い捨てのものを少しずつマイバッグやマイボトルなどへ「転換」する、使い終えたら分別して「回収」に出す、の3つにまとめられます。プラスチックをすべてやめるのではなく、必要なものは使い、使い終えたらきちんと回収ルートに乗せる考え方です。
協力事業者の広がり
県は、プラスチック削減に取り組む事業者や団体、学校などを協力事業者として登録し、取り組みを紹介しています。令和6年度の時点で、協力事業者は180事業者723店舗です。県が令和7年度の目標に置いた790店舗には届いておらず、県の点検では「B」評価とされています。拡大の余地がある取り組みといえます。
市町村の仕組みが、県全体の数字を支えている
県の運動に加えて、市町村ごとの仕組みも数字に効いていると指摘されています。ここは専門家による分析であり、因果関係が検証されたものではない点に注意して読んでください。
指定袋と分別の徹底
食品ロスの専門家は、県内に燃やすごみ用などの有料の指定袋を使い、袋に名前を書く自治体が多いことを、要因の候補として挙げています。たとえば東御市では、分別されていないごみは回収業者が持ち帰らないという運用が紹介されています。袋の有料化は、ごみを減らすほど負担が軽くなるため、家庭の行動を変えやすい仕組みです。
生ごみを家庭で減らす工夫
可能な家庭では、生ごみや落ち葉を堆肥にする取り組みが根づいているとされます。川上村のように、生ごみ処理機の購入に補助金を出して自家処理を促す例もあります。燃えるごみの中で重い生ごみを家庭で減らせば、収集・焼却の量も減ります。
人口の少ない自治体の数字の読み方
人口10万人未満の自治体では排出量が特に少なく、それが県全体の平均を下げているという指摘もあります。県の数字は、市町村ごとの差を含んだ平均であることを覚えておくと、「長野県民がみな同じ量のごみを出している」という誤解を避けられます。
順位の数字を読むときに誤解しやすい3点
「ごみが少ない県」と聞くと、それだけで環境に優しい県だと思いがちです。ここでは、数字を読むときに引っかかりやすい点を整理します。
排出量が少ないことは、リサイクル率が高いこととは別
1人1日当たりのごみ排出量は、ごみとして出された量を人口と日数で割った数字です。リサイクルされた割合や、焼却や埋立にまわる割合を表すものではありません。排出量が少なくても、リサイクルの状況は別の指標で確認する必要があります。
県が公表する数字は、算出の基準が異なることがある
県ごとの公表値には、集団回収の量を含めるかどうかなど、算出の基準が異なる場合があります。三重県のように、国の定義変更に合わせた新しい基準で算出している県もあります。県ごとの数字を並べて比べるときは、環境省が同じ基準でまとめた調査結果を使うのが確実です。
順位は、他の県の変化にも左右される
長野県の数字は、令和元年度の816グラムから令和6年度の769グラムまで減りました。それでも順位が4位なのは、京都府などほかの府県も同時に大きく減らしているからです。順位は相対的な位置を示すもので、取り組みが後退したことを示すものではありません。数字を見るときは、順位と合わせて自分の県や市の推移も確認してみてください。
10月の今から始める、家庭と職場の減らし方
10月は食品ロス削減月間で、30日は食品ロス削減の日とされています。長野県の毎月30日の「冷蔵庫クリーンアップデー」とも重なります。年末にかけて宴会が増える前に、無理のない一歩を決めておくのがおすすめです。
家庭でできること
家庭では、次の順に試すのが取り組みやすいでしょう。
- 買い物に行く前に、冷蔵庫の中を確認して、使い切れる分だけ買う
- 期限が近い食材から使い、野菜の皮や茎まで調理する
- 生ごみは捨てる前にひと絞りして水を切る
- 詰め替え用の商品や、繰り返し使える容器を選ぶ
ダンボールコンポストは住環境によって難しい場合があります。できる範囲で、続けられるものから選べば十分です。
職場・宴会でできること
職場では、マイボトルやマイカップを持参する方法があります。忘年会や新年会など、12月から1月の宴会に向けては、乾杯後の30分とお開き前の10分は席で食べきる、注文は少なめにして足りなければ追加する、といったやり方があります。幹事の人が一言声をかけるだけでも、食べ残しは変わりやすいといわれています。
まず住んでいる市町村のルールを確認する
ごみの出し方は市町村ごとに違います。指定袋の種類や分別の区分を一度見直すと、資源として回収できるものが見つかることがあります。長野県の例は、県と市町村、家庭がそれぞれ役割を持つことで数字が動くことを示しています。住んでいる地域の取り組みも調べてみると、続ける動機になります。
まとめ
長野県は、平成26年度から令和元年度まで6年連続で、1人1日当たりのごみ排出量が全国最少でした。令和2年度以降は京都府が1位となり、令和6年度の長野県は全国4位です。それでも769グラムは過去最少で、全国平均の839グラムを下回り、県は令和12年度に740グラムまで減らす目標を掲げています。
減量を支えているのは、県の「チャレンジ800」、食べきりを促す30・10運動、上流県としての信州プラスチックスマート運動、そして市町村の指定袋や生ごみ処理の仕組みです。順位の数字だけでなく、リサイクル率や算出の基準といった別の視点を合わせて見ると、より正確に地域の取り組みを理解できます。
まず1つだけ試すなら、今月30日の冷蔵庫の中身の確認から始めてみてください。使い切れる分だけ買うだけでも、食品ロスとごみの両方を減らせます。
- 長野県は平成26年度から令和元年度まで6年連続で、ごみ排出量が全国最少だった
- 令和6年度は769グラムで過去最少を更新したが、順位は京都府などに次ぐ全国4位
- 県の運動と市町村の仕組みが組み合わさり、家庭の行動が数字に表れている
- 順位は他県の変化にも左右されるため、排出量の推移とあわせて読む
- 10月の今は、冷蔵庫の確認と食べきりから始めやすい時期
参考文献
- 長野県「長野県内の一般廃棄物排出量と処理状況」(令和6年度実績)
- 鹿児島県「リサイクルに関するページ(環境省調査の少量排出県の順位表を掲載)」(令和6年度実績)
- 環境省「令和5年度一般廃棄物処理事業実態調査の結果について(報道発表)」(2025年)
- 長野県「残さず食べよう!30・10運動」
- 長野県「信州プラスチックスマート運動」
- 長野経済新聞(tjournal)「長野県の1人1日あたりのごみ排出量が過去最少に」(令和6年度実績の発表)
- Yahoo!ニュース エキスパート(井出留美)「全国一!なぜ長野県は全国で最もごみが少ないのか」(平成28年度実績時点の解説)

