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アマゾン火災はなぜ止まらないのか|原因・最新動向と日本にできること

アマゾン火災の原因と地球とわたしたちへの影響

南米の熱帯雨林アマゾンで発生する「アマゾン火災」のニュースを、報道や動画で目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。乾季になるたびに繰り返される大規模な火災は、遠い南米の出来事に見えて、実は気候変動や日本の消費生活ともつながっています。この記事では、アマゾン火災がなぜ起き続けているのか、その原因を自然要因と人為的要因に分けて整理したうえで、2024年以降の動向、先住民や生態系への影響、そして日本に暮らすわたしたちが今日から取れる行動までをまとめて解説します。

アマゾン熱帯雨林が担う役割

アマゾンは南米大陸に広がる世界最大級の熱帯雨林で、地球上に残る熱帯雨林の約半分を占めるといわれています。全長7,000kmに及ぶアマゾン川が流れ、豊富な水資源が多様な生態系を支えてきました。熱帯雨林は年間を通じて活発に光合成をおこない、大量の二酸化炭素を吸収しながら酸素を供給する役割を担っています。気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)でも、森林が二酸化炭素と酸素の循環を調整する機能を持つことが紹介されています。

この「地球の肺」とも呼ばれる森が、毎年の乾季になると大規模な火災に見舞われています。次の章では、実際にどれほどの規模で火災が起きてきたのか、推移を確認していきましょう。

アマゾン火災の推移|2019年の急増から2024年の干ばつまで

アマゾン火災が国際的に大きく注目されたのは2019年です。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)の観測データでは、2019年8月だけで約8万件もの火災が検知され、前年の同時期と比べて8割以上増加したと報告されました。この年は森林減少の被害面積も過去最大級となり、東京ドーム2,000個分に相当する約9,000平方キロメートルの森林が失われたとされています。

その後も状況は一進一退を続けており、2022年5月の火災件数は2,287件と前年同月の1,166件から倍近くに増加、同年7月も前年を上回る件数が観測されました。一方で2023年1月にルラ・ダ・シルバ大統領が就任して以降は、環境保護を重視する政策への転換が進み、森林破壊の監視・取り締まりが強化されたことで、森林減少のペースが鈍化したと複数の国際報道で伝えられています。

ただし、森林破壊(違法な伐採による恒久的な森林消失)と森林火災(一時的な燃焼)は別の指標である点に注意が必要です。2024年はアマゾン流域全体が記録的な干ばつに見舞われ、乾燥した植生が燃えやすい状態となったことで、政策による抑制効果とは裏腹に火災件数そのものは悪化したと報じられました。乾季のピークにはサンパウロなど3,000km以上離れた大都市の空にまで煙がたなびき、空が暗く色づく様子が国際メディアでも伝えられています。森林破壊面積は減っても火災は増えるという、一見矛盾したことが同時に起こり得るのがアマゾンの現状です。

火災の原因を分解する|自然発火と人為的な火入れの違い

「アマゾン火災」とひとくくりに語られがちですが、原因は大きく自然要因と人為的要因の2つに分けて考える必要があります。どちらか一方だけが単独で火災を引き起こしているわけではなく、複数の要因が重なり合って被害を拡大させている点が、この問題の理解を難しくしています。

落雷とフェーン現象による自然発火

アマゾンは7〜10月が乾季にあたり、この時期は落雷による自然発火が起きやすくなります。7月は現地で「火災の季節」の始まりと呼ばれています。さらに気象条件が火の広がり方に影響します。気象庁は、フェーン現象について次のように説明しています。

湿潤な空気が山を越えて反対側に吹き下りたときに、風下側で吹く乾燥した高温の風のことを「フェーン」と言い、そのために付近の気温が上昇することを「フェーン現象」と呼びます。

フェーン現象|気象庁

強い乾いた風は延焼のスピードを速めるだけでなく、火の粉を遠くまで飛ばし、新たな発火点をつくる原因にもなります。

農地開発と違法な火入れという人為的要因

アマゾン火災の多くは、実は自然発火ではなく人の手による「火入れ」が発端になっているとされています。牧草地や農地、鉱山を開発するために伐採後の木々を焼却する伝統的な土地開拓の手法があり、乾燥した天候の年にはこの火が制御を失い、周囲の森林へ燃え広がってしまうのです。2019年に就任したボルソナロ元大統領のもとで環境規制が緩和され、開発目的の伐採・火入れが活発化したことが、火災件数の急増につながったと指摘されています。政権交代後は取り締まりが強化されましたが、違法な火入れそのものがなくなったわけではありません。

エルニーニョ/ラニーニャ現象と干ばつの連鎖

気候変動に関連する現象として見逃せないのが、エルニーニョ/ラニーニャ現象です。気象庁は次のように解説しています。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。

エルニーニョ/ラニーニャ現象|気象庁

これらの現象が発生すると、アマゾン流域の降水量が減少し、河川の水位や土壌の貯水量も低下します。乾燥した森林は延焼しやすくなるため、干ばつの年ほど火災被害が拡大しやすい傾向にあります。2024年に記録的な乾燥状態が続いた背景にも、この海洋変動と地球温暖化の複合的な影響があったと考えられています。

火災の影響を受けるのは誰か|先住民・生態系・地域住民

アマゾン火災の被害は森林面積の減少だけにとどまりません。実際にそこで暮らす人々や生き物への影響は深刻です。

先住民族の暮らしと文化への打撃

ブラジル全土には約90万人の先住民族が暮らしているとされ、その半数近くが今もアマゾン地域で生活しています。305の民族、274の言語が存在するといわれるほど多様な社会が、この森とともに築かれてきました。火災による森林減少は野生動物の減少による食料難や、薬用植物の採取困難につながり、生活基盤そのものを揺るがします。森が失われることは、先住民族のコミュニティや歴史・アイデンティティの喪失にもつながりかねないと、熱帯森林保護に取り組む団体からも指摘されています。

生態系のバランスが崩れるリスク

アマゾンには判明しているだけで植物が約4万種、哺乳類が400種以上、鳥類が1,000種以上生息しているとされ、この森でしか見られない固有種も数多く存在します。森林が減少すると土壌がやせて荒廃し、環境に適応しながら進化してきた生物のなかには絶滅リスクが高まる種も出てきます。豊かな水源に支えられて成り立ってきた生態系のバランスは、ひとつの種や環境が失われることで連鎖的に崩れていく可能性があります。

呼吸器疾患など健康被害の広がり

アマゾン環境研究所(IPAM)は、火災による煙害で呼吸器疾患による入院や心血管系疾患が増加していると発表しています。特に1歳未満の乳児で500人近く、60歳以上の高齢者で1,000人を超える患者数が報告されており、年齢が低いほど症状が深刻化しやすいとも指摘されています。Human Rights Watchの報告でも、アマゾン地域に暮らす約300万人が有害な大気汚染にさらされている実態が伝えられました。火災は森を燃やすだけでなく、そこで暮らす人々の呼吸そのものを脅かしているのです。

地球規模で見た影響|CO2循環と気候変動への波及

これまでアマゾンは地球全体の二酸化炭素吸収源のひとつと考えられてきました。しかし森林減少が進むにつれて吸収量は年々低下しており、一部の研究では特に破壊が進んだ地域が吸収源から排出源へ転じつつある可能性も指摘されています。森林は一度失われると回復に長い年月を要するため、貯め込まれていた炭素が大量に大気中へ放出され、二酸化炭素と酸素の循環バランスを崩す一因になります。大気中の二酸化炭素濃度が高まれば地球温暖化が進行し、その影響で世界各地の異常気象がさらに強まる可能性があるといわれています。アマゾンの問題は、南米だけでなく地球規模の気候システムに関わる問題なのです。

気候変動が私たちの暮らしにどうつながっているのか、さらに広い視点で知りたい方は、あわせて次の記事も参考にしてみてください。

国際社会とブラジルの対応|政策転換とCOP30

ルラ政権はアマゾン保護を主要政策のひとつに掲げ、違法伐採の取り締まり強化や保護区の設定拡大などを進めてきたと報じられています。国際社会も資金支援の枠組みを通じてこの動きを後押ししており、欧州諸国を中心に森林保全への関心はますます高まっています。象徴的な出来事として、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が2025年11月にブラジル・パラ州のベレンで開催されました。アマゾンの玄関口とも呼ばれる都市でCOPが開かれたことは、熱帯林保全と気候変動対策を切り離せない課題として世界に示すものだったといえます。

もっとも、政策や国際会議だけでアマゾン火災が止まるわけではありません。実際に森を焼く火入れの多くは、農産物や木材、紙製品といったグローバルなサプライチェーンの需要に突き動かされています。だからこそ、消費する側であるわたしたちの選択にも影響力があるのです。

日本にいるわたしたちにできること|FSC認証という選択肢

アマゾン火災に対して、直接現地へ駆けつけて消火活動をすることはできません。しかし、日々の買い物の中で森林破壊につながらない選択をすることは、誰にでも始められます。代表的な仕組みが、適切に管理された森林から生産された木材・紙製品であることを示す「FSC認証」です。日本国内でもコンビニのレシート用紙や文具、書籍、飲料の紙パックなどにFSCマークを見かける機会が増えており、認証製品を選ぶ消費者が増えることは、認証を取得する生産者・企業を後押しする力になります。

次のような行動は、特別な知識がなくても今日から取り入れられます。

  • コピー用紙やノート、ティッシュなどを選ぶときにFSC認証マークの有無を確認する
  • 紙製品や割り箸の使用量そのものを見直し、必要な分だけ使う
  • 牛肉・大豆など、アマゾンの農地開発と関連が指摘される品目の産地表示に関心を持つ
  • 熱帯林保全に取り組む団体への寄付や情報発信を通じて関心を持ち続ける

フェアトレードやエシカル消費の考え方も、こうした認証制度を支える土台になっています。日々の消費行動を見直すヒントとして、次の記事もあわせてご覧ください。

森林保全と企業活動の関わりについては、こちらの記事でも取り上げています。

まとめ

アマゾン火災は、落雷やフェーン現象のような自然要因と、農地開発のための火入れという人為的要因が絡み合って発生し、エルニーニョ/ラニーニャ現象による干ばつがそれを加速させています。被害は森林面積の減少にとどまらず、先住民族の暮らしや生態系のバランス、地域住民の健康、さらには地球全体の炭素循環にまで及びます。2024年以降も干ばつによる火災の激化とブラジル政府の保護政策強化という相反する動きが同時に進んでおり、状況を注視し続ける必要があります。遠く離れた場所の出来事に思えても、紙製品や食品の消費というかたちで、わたしたちの暮らしはアマゾンの森とつながっています。

  • アマゾン火災は自然発火と人為的な火入れが重なり合って発生している
  • 2024年は記録的な干ばつで火災が激化した一方、森林破壊の取り締まりは強化されている
  • 被害は先住民の暮らし・生態系・健康・地球の炭素循環にまで広がっている
  • FSC認証製品を選ぶなど、日本の消費行動からも森林保全に関わることができる

本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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