蛇口をひねれば清潔な水が出てくる。そんな当たり前の光景が、日本でも揺らぎつつあります。2025年夏、東北や西日本では深刻な水不足が報告され、宮城県の鳴子ダムでは貯水率がゼロにまで低下しました。「水が豊かな国」というイメージは、もはや過去のものになりつつあるかもしれません。この記事では、日本で水不足が起きる構造的な原因と、企業・個人それぞれが取り組める対策を解説します。
日本の水資源の現状
日本の水道は、令和4年度末時点で普及率98.3%に達し、水質の面でも世界に誇る安全でおいしい水の供給を実現しています。
一見すると、水に恵まれた国のように映ります。
しかし実態は異なります。
わが国の年間の降水量は約6,600億m³ですが、そのうち約35%は蒸発散し、残りの約4,300億m³が最大限利用できる水資源賦存量とされています。
さらに、国の面積に対して人口が多いため、一人当たりに換算すると水の余裕は大きく縮まります。
2025年8月6日時点で、18水系25河川で渇水による取水制限などの措置が取られており、新潟県関川水系では上水や工業用水に対して40%以上の節水が要請されました。国土交通省が2025年8月1日に公表した「令和7(2025)年版 日本の水資源の現況」では、渇水リスクの顕在化に加え、気候変動による水災害の激甚化、水インフラの老朽化による事故の発生、産業構造の変化に伴う水需要の変動など、企業を取り巻く水課題は多様になっていると指摘されています。
日本で水不足が起こる3つの原因
地形による制約
日本は大陸の国々と比べて国土が狭く、河川が急勾配で距離も短いという地形的な特徴があります。
日本は降雨量が世界平均の約1.6倍にもかかわらず、急勾配の河川から水がすぐに流れ出てしまうため、実際に利用可能な水量が限られています。
こうした地形の問題は、過去の大規模渇水にも影響しています。1994年には全国的な渇水(平成6年渇水)が発生し、福岡市では断水期間が295日にも及び、琵琶湖の水位が観測史上最低値を記録したとされています。
人口密度と使用量のアンバランス
日本の年間平均降水量は世界平均を大きく上回るものの、人口あたりに換算すると話は変わります。
各家庭で利用できる水の量は、世界平均の約38%程度しかないとされています。
にもかかわらず、日本人一人当たりの生活用水の使用量は多く、世界的に見ても水消費の効率化が課題となっています。
気候変動による降雨パターンの変化
近年、日本各地で渇水が深刻化しており、無降水日が増加していることが原因とされています。
短時間に集中する豪雨が増える一方で、雨が降らない期間も長引くという、これまでとは異なる降雨パターンが定着しつつあります。
気候変動の影響により無降水日はさらに増加すると予測されており、地球の平均気温が4℃上昇するシナリオの場合、全国平均で無降水日が約8.2日増加すると試算されています。
こうした変化は、安定した水の利用をより困難にするとみられています。
水不足に向き合う日本企業の取り組み
日本の企業は、技術開発や社会貢献を通じて水問題の解決に取り組んでいます。ここでは代表的な2つの事例を紹介します。
東レ株式会社|逆浸透膜による海水淡水化
東レ株式会社は、RO(逆浸透膜)技術を活用して海水を淡水化する装置を開発しています。従来の蒸発方式に比べてエネルギー消費が少なく、環境負荷を抑えた淡水化を実現できるとされています。インドネシアやパプアニューギニアなど、海外での海水淡水化プロジェクトにも携わっています。
TOTO株式会社|TOTO水環境基金による継続支援
TOTOグループは、持続可能な社会の実現のためには企業の事業活動による貢献だけでなく、地域を支える団体の活動が欠かせないとの考えから、2005年度に「TOTO水環境基金」を設立し、地域の水と暮らしの関係を見直す継続的な活動を支援しています。
これまでに国内と海外18カ国の延べ332団体に総額約4億9,900万円の助成金を拠出しており、2025年度は総額4,000万円の助成金を予定しています。
節水商品の販売による環境貢献と、地域の水問題に取り組む団体への支援を組み合わせた独自の仕組みが特徴です。
個人でできる水不足対策
水問題の解決は、企業や行政だけが取り組むべき課題ではありません。日常生活の中で実践できることも数多くあります。
節水を習慣にする
蛇口から流れる水の量は毎分11〜13リットルとされています。歯磨き中や食器洗い中に水を流しっぱなしにするだけで、かなりの量が無駄になります。こまめに蛇口を閉める、シャワー時間を短くするといった小さな習慣の積み重ねが、長期的には大きな節水効果をもたらします。
食器の油汚れを拭き取ってから洗う
油がついた食器をそのまま洗うと、洗い流すために大量の水が必要になります。また、油をそのまま排水口に流すと水質汚染にもつながります。キッチンペーパーや古布で汚れを拭き取ってから洗うだけで、水の使用量を大幅に減らすことができます。
温暖化対策と水不足は一体で考える
水不足の深刻化には気候変動が深く関わっています。そのため、節水と合わせて温暖化対策を意識することも重要です。冷暖房の適切な設定、徒歩や公共交通機関の積極的な活用、省エネ家電への切り替えなど、日常の行動を見直すことが水資源の保全にも間接的につながります。
まとめ|水への意識を行動に変えよう
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、遠い国々の問題ではありません。2025年夏の渇水が示すように、日本でも水不足は現実の問題として起きています。
渇水による被害は一時的なものではなく、今後、頻繁に発生することが懸念されています。
まずは今日から、蛇口の前で少し立ち止まってみてください。節水への意識を持つこと、それが水資源を守るための第一歩です。関心が広がれば、家庭での実践にとどまらず、水問題に取り組む企業や団体への支持・参加という形でも社会を変えていくことができます。

