サーキュラー・バイオエコノミーとは、資源を使い捨てにせず循環させる「サーキュラーエコノミー(循環経済)」と、植物や農業・林業の副産物などの再生可能な生物資源(バイオマス)を活用する「バイオエコノミー」を組み合わせた考え方です。石油などの限りある資源に頼りすぎず、自然の力で再生できる資源を、できるだけ長く、何度も使う経済のかたちを指します。
用語の意味を知ったあとに気になるのは、「日本では実際に何が進んでいるのか」「自分の暮らしで何を選べばよいのか」ではないでしょうか。この記事では、定義は最初の段落にとどめ、日本の国の計画と地域の取り組み、よく起こる誤解、暮らしでの見分け方に重点を置いて整理します。
循環経済とバイオエコノミーはどこで重なるのか
サーキュラー・バイオエコノミーは、2つの考え方が重なる部分にあります。1つめの循環経済は、環境省が示す説明では、従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みに加え、資源の投入量や消費量を抑えながら、ストック(すでにある製品や素材)を活用し、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動です。2つめのバイオエコノミーは、生物資源や生物の機能を産業に生かす経済を指します。
「作る→使う→捨てる」から「長く使い、巡らせる」へ
これまでの経済は、資源を採って製品を作り、使い終わったら捨てる一方通行の形でした。循環経済では、製品を設計する段階から「修理しやすいか」「分解しやすいか」「再び素材に戻せるか」を考えます。リサイクルは廃棄物が出ることを前提にした対応ですが、循環経済は廃棄物が生まれにくい設計に重心を置きます。
「再生できる資源」を使う意味
石油や鉱物などの枯渇性資源は、使うほど減ります。一方、木材や農作物、食品の残りなどは、適切に管理すれば再び育ち、再生します。バイオマスを使えば、新しく掘り出す化石資源を減らせる可能性があります。そのうえで、使い終わった素材を堆肥やエネルギー、再生素材として次の用途へ回すことで、「再生できる資源を、巡らせて使う」形になります。
3つの視点を組み合わせて考える
環境省は、ネット・ゼロ(脱炭素)、循環経済、ネイチャーポジティブ(自然再興)の3つを統合して進める方向性を示しています。バイオ資源は、気候、資源、自然の3つに同時に関わるため、サーキュラー・バイオエコノミーはこの3つの交点にある分野です。ただし後述のとおり、バイオ資源の使い方を誤ると、自然環境にかえって負荷をかけることもあります。
世界の資源利用と、いま注目される背景
なぜ今、資源の「量」と「出どころ」が問われているのでしょうか。国連環境計画(UNEP)の国際資源パネルが2024年3月に公表した「世界資源アウトルック2024」では、世界の資源利用量は1970年の約300億トンから2020年には約1,060億トンへ増えたとされています。また、何も対策をしなければ、2060年までにさらに約60%増える見通しが示されています。
日本は資源の多くを海外に頼っている
日本は、化石資源や金属資源の多くを輸入に頼っています。資源価格の変動や国際情勢の影響を受けやすいため、国内で調達できる資源を増やし、使った資源を回収して再び使うことは、経済安全保障の観点からも重要だとされています。環境省の白書でも、循環経済への移行は、環境課題と地方創生、産業競争力、経済安全保障などの社会課題を同時に解決する手段と位置づけられています。
温室効果ガスの削減余地
環境省の資料では、2020年度の日本の温室効果ガス排出量約11.49億トン(CO2換算)のうち、約4.13億トン、割合にして約36%は、資源循環の取り組みによって削減に貢献しうる量と試算されています。製品の原材料の採掘や製造、輸送、廃棄の各段階で出る排出量を減らす余地が大きいことを示す数字です。これは「資源循環だけで36%減らせる」という約束ではなく、貢献しうる上限に近い試算として読むのが適切です。
日本の国の計画はいま、どこまで進んでいるのか
日本では2024年以降、循環経済とバイオエコノミーの両方で、国の計画が相次いで整いました。それぞれ別の省庁が担当しているため、時系列で並べると全体像がつかみやすくなります。
循環経済側の流れ
2022年9月に環境省が「循環経済工程表」を公表し、2050年に向けた方向性と、2030年に向けた施策の方向性を示しました。その後、2024年8月2日に「第五次循環型社会形成推進基本計画」が閣議決定され、循環経済への移行が国家戦略として位置づけられました。計画は、2030年度を目標年次に数値目標を設けています。
同年7月には循環経済に関する関係閣僚会議が設置され、12月には「循環経済への移行加速化パッケージ」が公表されました。さらに、環境省の令和8年版白書によると、2026年4月には「循環経済行動計画」が公表され、再生資源のサプライチェーン(供給網)の強靱化や国際的な資源循環ネットワークの構築を進める方針が示されています。2030年に向けた鉄や永久磁石などの再生材の供給目標や、金属・プラスチックの再資源化拠点づくりなどに、官民で約1兆円の投資を目指すことも盛り込まれています。
企業と行政をつなぐ「サーキュラーパートナーズ」
経済産業省が事務局を担う官民の枠組み「サーキュラーパートナーズ」は、2023年12月の第1回総会時点で307団体でしたが、2025年1月末には610を超える団体に増えたと報告されています。参画した企業や団体は、1年以内に循環経済に関する定量目標を提出して公表する仕組みになっており、取り組みを外から確認しやすい点が特徴です。
バイオエコノミー側の流れ
バイオエコノミーについては、2019年に策定された「バイオ戦略」を発展させる形で、2024年6月に統合イノベーション戦略推進会議が「バイオエコノミー戦略」を決定しました。戦略では、バイオものづくり・バイオ由来製品を含む5つの市場領域でロードマップが示されており、導入文では、環境・食料・健康などの課題解決と、サーキュラーエコノミーを伴う持続可能な経済成長の実現につながるものと説明されています。
なお、この戦略が掲げる市場規模の目標は、二次資料で「2030年に国内外で100兆円規模」と紹介されていますが、内閣府の本文で金額を確認できていないため、この記事では数値を断定しません。
地域で動くバイオマス活用|複数の自治体から見る実践
国の計画だけでなく、各地の自治体でもバイオマス活用が進んでいます。農林水産省は「バイオマス産業都市」として、地域のバイオマスを使って産業と雇用をつくる構想を持つ市町村を選定しています。2026年2月24日の発表では、令和7年度に千葉県長柄町、静岡県小山町、宮崎県西都市の3市町が新たに選ばれ、選定地域は合計107地域となりました。
森林の未利用材を電気に変える|岡山県真庭市
岡山県真庭市は、バイオマス産業都市の代表例としてよく紹介されます。環境省の資料によると、真庭バイオマス発電所は発電能力が10,000kWで、地域の間伐材や製材端材などの未利用資源を燃料にしています。2015年から稼働しており、燃料となる木材の調達が地域の林業や製材業の仕事にもつながる仕組みです。
一方で、真庭市の資料では、固定価格買取制度(FIT)の期間終了後の運営が課題として挙げられています。バイオマス活用は、素材が地域にあれば成り立つ単純な話ではなく、燃料の安定供給や経済性も含めた設計が欠かせません。
都市部でも使われる剪定枝や食品残さ
2022年9月に閣議決定された「バイオマス活用推進基本計画(第3次)」では、2030年までにバイオマスの利用率を年間産出量の約80%にする目標が報じられています。これまで十分に使われてこなかった街路樹の剪定枝など、都市で発生するバイオマスの活用も進める方針です。農山村だけでなく、都市部の自治体や企業にも取り組みの余地があることを示しています。
素材としてのバイオプラスチック
素材分野では、環境省が2021年1月に「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入する目標を示しています。この目標は業界向けの資料で野心的だと指摘されており、達成には供給の拡大と、使用後の回収や処理の仕組みの整備が欠かせないと考えられます。
サーキュラーエコノミー全般の仕組みや、日本の制度・暮らしでの選び方をあわせて確認したい方は、次の記事も参考になります。
「バイオ由来なら環境に良い」は本当か|誤解されやすい3つの点
サーキュラー・バイオエコノミーの話題では、「植物由来だから安心」と受け取られやすい場面があります。実際には、見極めるべき点がいくつかあります。
誤解1|バイオマスなら何でも脱炭素になるわけではない
バイオマスは、育つ過程で二酸化炭素を吸収するため、燃やしても全体の排出量が増えにくいと整理されることがあります。しかし、原料の栽培や輸送、加工でエネルギーを使えば、その分の排出は生じます。燃料用に森林を伐採したり、食料と競合する作物を大量に使ったりする場合は、自然環境や食料供給への影響も考える必要があります。
誤解2|「生分解性」と「バイオマス由来」は別の話
バイオマス由来のプラスチックは、原料が植物などの再生可能資源であるという意味です。生分解性のプラスチックは、特定の環境で微生物によって分解される性質を指します。両者は一致する場合もありますが、バイオマス由来でも自然には分解されないものがありますし、石油由来でも生分解性を持つものがあります。ごみとして出すときも、自治体の分別ルールに従う必要があり、「自然に還るからそのまま捨てていい」わけではありません。
誤解3|リサイクルしやすければ、すぐ循環が成り立つわけでもない
素材が循環するには、回収する人、再資源化する事業者、再生素材を買う製造業者がそろう必要があります。2024年に公布された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」は、製造業者が必要とする質と量の再生材を確実に供給できるよう、再資源化事業の高度化を促す内容です。環境省の資料では、令和7年2月に一部が施行され、同年11月下旬に全体が施行される予定とされています。素材そのものの性質だけでなく、供給の仕組みづくりが進行中であることがうかがえます。
暮らしの中で見分ける3つの視点と、できる行動
制度や技術の話が続くと、自分とは遠く感じるかもしれません。ここでは、買い物や日々の習慣の中で使える見分け方と行動を整理します。
商品を選ぶときの3つの視点
1つめは「何が根拠として示されているか」です。「環境に優しい」だけで終わらず、原料の割合、認証、第三者の確認などが示されているかを見ます。2つめは「使い終わった後の道筋があるか」です。回収の仕組みや、自治体での分別方法が案内されている商品は、循環を考えて設計されている可能性が高いといえます。3つめは「長く使えるか」です。どれほど素材が優れていても、すぐ買い替える前提では資源を節約できません。
家庭でできる行動
食品ロスを減らすことは、バイオマス資源を無駄にしない最も身近な行動です。必要な量を買い、期限の近いものから使います。衣類や家具は、修理して長く使う、不要になったら中古品として譲る、といった選択もあります。自治体の分別ルールに沿ってごみを出すことは、回収した資源を再び使う第一歩です。生ごみの堆肥化や剪定枝の回収事業を行っている自治体もあるため、お住まいの地域の取り組みを確認してみてください。
企業側の動きを具体的に知りたい方には、日本企業の取り組みと法改正の動向をまとめた次の記事が役立ちます。
秋のいま、取り入れやすい一歩
10月末のいまは、秋の行楽や衣替えの時期です。冬物を出すタイミングで、着なくなった服を修理するか、必要とする人へ譲るかを考えてみるのはどうでしょうか。庭のある方は、落ち葉を集めて堆肥にする方法もあります。大きな行動でなくても、「捨てる前に一度立ち止まる」習慣が、循環の入り口になります。
まとめ
サーキュラー・バイオエコノミーは、「資源を巡らせる」考え方と「再生できる資源を使う」考え方を組み合わせたものです。日本では、2024年8月の第五次循環型社会形成推進基本計画、2024年6月のバイオエコノミー戦略、2026年4月の循環経済行動計画など、国の計画が整いつつあります。同時に、岡山県真庭市のように、地域の未利用木材を活用する自治体の実践も積み重ねられています。
一方で、「バイオ由来だから環境に良い」と一括りにすることはできません。原料の調達の仕方、製造や輸送で使うエネルギー、使い終わった後の回収と再資源化の仕組みまで含めて、初めて循環が成り立ちます。私たちの側では、根拠を確認して選ぶこと、長く使うこと、自治体のルールに沿って分別することから始められます。まず1つだけ、今週の買い物や片づけの中で試してみてください。
- サーキュラー・バイオエコノミーは、循環経済とバイオ資源の活用を組み合わせた考え方
- 日本では2024年以降、国の計画が整い、サーキュラーパートナーズには610を超える団体が参画(2025年1月末時点)
- バイオマス産業都市は107地域に広がり、地域資源を生かした取り組みが進んでいる
- 「バイオ由来」「生分解性」は意味が異なり、環境への影響は原料と使い方で変わる
- 暮らしでは、根拠の確認、使い終わりの道筋、長く使うことの3点が選ぶときの目安
参考文献
- 環境省「令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1部第1章第2節 国家戦略としての循環経済への移行」(2026年)
- 環境省「循環型社会形成推進基本計画」(2024年)
- 内閣府「バイオエコノミー戦略」(2024年)
- 農林水産省「令和7年度バイオマス産業都市の選定結果」(2026年)
- UNEP・国際資源パネル「Global Resources Outlook 2024」(2024年)



