サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、製品や資源をできるだけ長く価値を保ったまま使い続け、廃棄物そのものが出にくい形に経済の仕組みを組み替える考え方です。「作る→使う→捨てる」という一方通行の流れを、修理・再利用・再生を組み込んだ輪に変えます。日本では、2024年8月に閣議決定された国の計画が循環経済を国家戦略に位置づけました。2026年4月には資源有効利用促進法の改正も施行されています。
定義を知ったあとに残る疑問は、日本では実際に何が変わっているのか、リサイクルとどう違うのか、自分は何を選べばよいのか、といったところでしょう。この記事では、世界の現在地、日本の制度、企業の実践例を順に見たうえで、暮らしの中での選び方の順番まで整理します。
サーキュラーエコノミー(循環経済)の基本|リニアとの違いと3つの原則
サーキュラーエコノミーは、環境省が「従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動」と整理している考え方です。環境にやさしい活動というだけでなく、資源の使い方を変えることで経済の価値も生み出す点に特徴があります。
ここでは、従来の仕組みとの違いと、考え方の土台になる原則を順に見ます。
リニアエコノミーとの違い
これまでの経済は「リニアエコノミー(線形経済)」と呼ばれます。資源を採って、製品を作り、使い、捨てるという一方通行の流れです。この流れでは、製品が増えるほど資源の採取量とごみの量も増えます。
サーキュラーエコノミーは、この流れの途中に「修理して使う」「貸し借りする」「部品を取り出して再生する」「素材に戻して次の製品に使う」といった戻り道を何重にも設けます。重要なのは、素材に戻す前に、製品のまま長く使う戻り道を優先することです。形を保ったまま使うほうが、加工にかかるエネルギーも資源も少なくて済むためです。
設計から変える3つの原則
循環経済の考え方を広めた英国のエレン・マッカーサー財団は、次の3つの原則を掲げています。
- 廃棄物と汚染を、そもそも生まれない設計にする2. 製品と素材を、できるだけ長く使い続ける
- 自然のシステムを再生する
3つ目は、たとえば食品残さを堆肥にして土に返すような取り組みを指します。どれも、捨てる段階で何とかするのではなく、作る段階から変えるという発想が共通しています。
世界の循環はどこまで進んでいるのか|6.9%という現在地
世界の現状は、掛け声ほど進んでいません。オランダの非営利団体サークル・エコノミーが2025年に公表した「Circularity Gap Report 2025」によると、世界で毎年使われる約1,060億トンの資源のうち、リサイクルなど循環した素材由来のものは6.9%にとどまります。この割合は2015年から2.2ポイント下がったと報告されています。
リサイクルが増えても割合が下がる理由
リサイクルの量が増えているのに割合が下がるのは、資源の使用量そのものがそれ以上のペースで増えているからです。同報告は、世界の資源消費が人口の伸びを上回って増え、再資源化の仕組みが追いつかないことを背景に挙げています。分母が膨らめば、分子が増えても割合は下がります。
この数字から言えるのは、リサイクルの強化だけでは足りないということです。使う資源の総量を抑え、製品を長く使い、素材として戻す量も増やす、という複数の手を同時に打つ必要があります。
目標として示されている水準
同団体は、地球の気温上昇を2度未満に抑える道筋として、世界の循環度を2032年までに17%へ高める目標を示しています。6.9%からの引き上げは大きな変化です。個人の努力だけで届く水準ではなく、制度や産業の設計を変えることが前提になります。
なぜ必要なのか|温室効果ガスと資源の安定確保
日本でサーキュラーエコノミーが重視される理由は、大きく2つに分けて説明できます。
資源循環が貢献できる排出の余地は約36%
環境省の資料では、日本の温室効果ガス排出のうち、資源循環の取り組みが貢献できる余地のある部門の排出量が約36%と推計されています。2020年度の全排出量11.49億トン(二酸化炭素換算)のうち、約4.13億トンにあたる規模です。
注意したいのは、これを「廃棄物の処理で出る排出が36%」と読むのは誤りだという点です。廃棄物分野そのものの排出は全体の数%にとどまります。36%は、素材の生産や製品の製造など、資源をたくさん使う過程で出る排出を含んだ数字です。つまり、ごみの出口よりも、モノを作る入口で資源を減らすことのほうが、排出削減への影響が大きいと読めます。なお、あくまで貢献できる余地の推計であり、実際の削減量を示す数字ではありません。
資源を輸入に頼る国としての安定確保
日本は金属や化石資源の多くを海外に頼っています。使い終わった製品から金属を取り出して国内で使い直せれば、価格の変動や供給の停止といったリスクを和らげられます。
家電や携帯電話などに含まれる金属を「都市鉱山」として活用する考え方は、この文脈で語られます。環境対策であると同時に、経済安全保障の手段でもあるわけです。
3Rとの違いとよくある誤解
循環経済は3R(リデュース・リユース・リサイクル)の延長にありますが、同じものではありません。違いは、廃棄をどう位置づけるかにあります。
3Rは出口の対策、循環経済は設計とビジネスまで含む
3Rは、すでに製品が作られたあと、ごみをどう減らすかに重心がありました。循環経済は、分解しやすい設計、修理部品の供給、製品を売り切らずサービスとして提供するといったビジネスモデルまで含みます。作る側の事業の組み立て方を変える点が、大きな違いです。
リサイクルしていれば循環している、とは限らない
よくある誤解の1つが、リサイクルしている企業や製品は循環型だというものです。ペットボトルを回収して燃料として燃やしてしまえば、素材としての循環は途切れます。衣料を回収しても、断熱材などに加工して最終的に焼却するなら、輪は閉じていません。
確かめたいのは、回収の事実よりも、集めたものが何として、どの割合で次の製品に戻っているかです。
「循環型」がいつでも環境負荷が小さいわけではない
もう1つの誤解は、循環させる仕組みなら必ず環境にいい、という思い込みです。繰り返し使う容器を回収・洗浄・配送するときには、運ぶ燃料や洗浄の水とエネルギーがかかります。利用回数が少なければ、使い捨てより負荷が大きくなる場合もあります。
環境省の整理でも、資源循環と脱炭素は多くの場合に両立する一方、両立しない場面もあるとされています。「ライフサイクル全体でどうか」を見る視点は、循環経済を理解するうえで欠かせません。
日本の制度はどう変わったのか|計画・法改正・認定制度
日本では、2024年から2026年にかけて、国の計画と法律が続けて動きました。ここでは3つを押さえます。
第五次循環型社会形成推進基本計画(2024年8月)
2024年8月2日に閣議決定された第五次循環型社会形成推進基本計画は、「循環経済を国家戦略に」を掲げています。2030年度に向けて、資源生産性を約60万円/トン、入口側の循環利用率を約19%、出口側の循環利用率を約44%、最終処分量を約1,100万トンとする指標が示されています。最終処分量は2000年度の約5,600万トンからの大幅な削減になります。
あわせて、循環経済関連ビジネスの市場規模を2030年までに80兆円以上へ拡大する目標が示されています。
改正資源有効利用促進法(2026年4月1日施行)
暮らしに近いところで動いたのが、改正資源有効利用促進法です。2025年12月に政令が公布され、2026年4月1日に施行されました。
柱は2つです。1つ目は、再生材の利用を促す仕組みです。国が対象の製品を指定し、メーカーなどに再生材の利用計画の提出と定期報告を求めます。経済産業省の資料では、第一弾の対象として、自動車、家電4品目、容器包装(食品や医薬品などの一部を除く)が挙げられ、再生材の種類は再生プラスチックです。2つ目は、解体や分別がしやすいといった環境配慮設計を国が認定する制度の新設です。
ここで大切なのは、これまで消費者の「分別の努力」に頼りがちだった領域が、作る側の義務に広がり始めたことです。対象事業者の基準や提出時期は政令・省令で定められるため、詳細は所管省庁の公表資料で確認してください。
再資源化事業等高度化法(2025年11月に全面施行)
2024年5月に公布された再資源化事業等高度化法は、2025年11月21日に認定制度が全面施行されました。回収から再生材の供給までを一体で行う事業などを、国がまとめて認定する仕組みです。これにより、廃棄物処理法に基づく許可手続の一部が特例の扱いになります。
認定には、再資源化の全体を担う事業、高度な分離・回収を行う事業、再資源化の工程を高度化する事業という3つの類型があります。環境省の資料には、3年で100件以上の認定を目指す方針が示されています。ものを捨てる側(静脈)と作る側(動脈)をつなぐことで、質の高い再生材を安定して供給する狙いです。
日本企業の実践例|製品・衣料・容器、3つの回し方
企業の取り組みは、何を回すかによって性格が大きく変わります。ここでは製品、衣料、容器の3つを取り上げます。
製品を丸ごと再生するリコーの複合機
リコーは1994年に「コメットサークル」という考え方を定め、資源を循環させる事業の枠組みをつくってきました。2025年10月の中央環境審議会への発表資料では、複合機の再使用・再生事業がグローバルで約300億円規模に育ったことが紹介されています。
使い終わった機器を回収して部品を再生し、新品と同じ品質基準で再び市場に出すというやり方です。素材に砕く前に「製品のまま」戻すため、前に見た優先順位に沿った、価値を保つ循環の例といえます。
衣料を回収する店頭回収の広がり
衣料の分野では、ユニクロの「RE.UNIQLO」や無印良品などが、店頭での回収を進めています。回収した衣料は、状態のよいものを難民支援などに回したり、リメイクしたり、服から服へのリサイクルを目指したりと、出口が複数に分かれます。
注目したいのは、回収した後の出口です。着られる服は再び着る、着られない服は素材に戻す、という順番がどこまで守られているかが、循環の質を左右します。
繰り返し使うテイクアウト容器のシェア
容器の分野では、NISSHAとNECソリューションイノベータが共同開発した「Re&Go(リーアンドゴー)」が知られています。利用者はアプリで容器を借り、使用後に参加店舗へ返却します。容器は洗浄・消毒されて再び使われます。
容器を使い回すこの方式は、利用回数が増えるほど効果が出ます。返却のしやすさと店舗の数が、そのまま成否を決めるタイプの取り組みです。
3つに共通するのは「戻り道が先に設計されている」こと
3つの例に共通するのは、売ったあとの戻り道が、事業の最初から組み込まれている点です。製品を売って終わりにせず、回収・再生・再販までをビジネスの一部にしています。
企業ごとの取り組みや2026年の法改正との関係は、別の記事で詳しく扱っています。
暮らしでの選び方|優先する順番と、見分け方の3つの質問
ここまでの内容を、生活の判断に落とし込みます。基本は、素材に戻す前に、できるだけ製品のまま使う方法を優先することです。
買う前、使うあいだ、手放すときの優先順位
買う前には、本当に新品が必要かを考えます。借りる、シェアする、中古を探すという選択肢で足りることがあります。使うあいだは、壊れたらまず修理の見積もりを取り、買い替えと比べます。手放すときは、まだ使える状態なら、リユースを優先します。リサイクルに出すのはその次です。
大きく並べると、次の順になります。
- 長く使う(修理・メンテナンス)
- 借りる・シェアする
- 中古を選ぶ・譲る
- 回収に出して素材に戻す
この順番は、先ほどの「製品のまま使うほうが資源の消費が少ない」という考え方と対応しています。
企業の「循環」表示を見分ける3つの質問
「サーキュラー」「循環型」をうたう製品に出会ったときは、次の3つを確認してみてください。
- 何を循環させているのか(製品なのか、素材なのか、容器なのか)
- どれくらいの割合で戻っているのか(回収率や再生材の使用率が示されているか)
- 第三者の確認や、具体的な数値の公表があるか
回収していることだけでなく、集めたものが何として戻っているかを説明している企業は、実態を伴っている可能性が高いといえます。逆に、具体的な数字がなく、イメージだけが並ぶ場合は慎重に見たほうがよいでしょう。
秋の衣替えは最初の実践の場
10月は衣替えの季節です。出てきた服を「着る・譲る・売る・回収に出す」の順に仕分けると、先ほどの優先順位をそのまま試せます。迷う服は、すぐ手放さず、1シーズン様子を見るのも1つの選び方です。
まとめ
サーキュラーエコノミーは、リサイクルを増やすだけの話ではありません。製品の設計、売り方、使い方、戻し方までを含めて、資源の使い方を組み替える考え方です。世界の循環度は6.9%にとどまり、リサイクルが増えても資源の使用量がそれ以上に増えているため、割合は下がっています。
日本では、2024年の第五次計画、2025年11月の再資源化事業等高度化法の全面施行、2026年4月の改正資源法と、制度が続けて動きました。作る側にも再生材の利用や環境配慮設計を促す方向に進んでいます。一方で、企業ごとに「何を、どれだけ回しているか」は大きく違います。
暮らしの中では、素材に戻す前に、長く使う、借りる、中古を選ぶという順番を意識するだけでも、判断の軸が変わります。まずは、今シーズンの衣替えで出てきた服を1着だけ、捨てる前に「着る・譲る・売る」の順で考え直してみてください。
- 循環経済は、設計・売り方・使い方・戻し方まで含めて資源の使い方を変える考え方
- 世界の循環度は6.9%で、リサイクルの強化だけでは足りない
- 日本では2025年11月の高度化法全面施行、2026年4月の改正資源法で制度が動いている
- 暮らしでは「長く使う→借りる→中古→回収」の順で選ぶ
- 「循環型」の表示は、何を・どれくらい戻しているかで見分ける
参考文献
- Circle Economy「Global circularity rate fell to 6.9%—despite growing recycling」(2025年)
- 環境省「令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 循環経済(サーキュラーエコノミー)」(2023年)
- 環境省「脱炭素に向けた資源循環をとりまく状況」(2023年)
- 環境省「第五次循環型社会形成推進基本計画に関する資料」(2024年)
- 経済産業省 産業構造審議会 資源循環経済小委員会 資料(資源有効利用促進法の改正)(2025年)
- 環境省「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律について」(2025年)
- 環境省 中央環境審議会 資料(リコーによる複合機の再使用・再生事業の紹介)(2025年)




