求められる働き方やライフスタイルの変化により、注目が集まる半農半X。
「半農」とはどういうことなのか、「X」とは何を表すのかなど、疑問を抱く人も多いでしょう。
本記事では、半農半Xと似た言葉である「兼業農家」との違いや、行う際の注意点・SDGsとの関係性をまとめました。
まずは、半農半Xとは何かを知りましょう。
半農半Xとは?
半農半Xとは、自分や家族が食べる分だけの食料を農業で得て、その他の時間は自分の「好きなこと」「やりたいこと」などを行う新しいライフスタイルになります。
半農半X研究所代表の、塩見直紀氏により提唱されました。
分かりやすく例を挙げると、農業を行いつつヘルパーの仕事もする、という感じです。
農業によって必要最低限の食を確保し、残り半分は長所や特技を活かして積極的に社会と関わっていく。
半農半Xは、自分と社会の両方にメリットがあると言えるでしょう。
Xに当てはまるものは、人によってさまざま
半農半Xの「X」に当てはめるものは、人によってさまざまです。
例えば、半農半Xを実際に行っている人の中には、
・NPO
・映画字幕翻訳者
・画家
・デザイナー
・ライター
・プログラマー
・バーテンダー
など、多種多様な人々がいます。
そして、「好きなこと」「やりたいこと」は勿論ですが、その人が生まれ持った個性や長所・特技などの活かせることの場合もあるのです。
ここまでは、半農半Xとは何かをお伝えしました。
内容を理解したところで、続いては注目理由を見ていきます。
半農半Xはなぜ注目されているの?
半農半Xが注目されるようになった理由の1つに、「働き方へ対する変化」が挙げられます。
これまでは、決められた時間に出社し長時間働くことが当たり前でした。
しかし近年は、働き方改革や新型コロナウイルスの影響などによって、テレワークや在宅ワークが一般化。
とくに都市部に暮らす人は、出社して働かなくてもよい環境に、「都市部に暮らす重要性やメリットを感じられない」と思うようになりました。
そういった理由もあり、半農半Xが注目されるようになったのです。
半農半Xと兼業農家の違いは?
農業とは別に他の仕事をする半農半Xですが、似た言葉として「兼業農家」が挙げられます。
この2つは何が違うのでしょうか。
まずは、兼業農家について知りましょう。
兼業農家とは
兼業農家とは、世帯員の中に兼業従事者が1人以上いる農家です。
例えば、家族で農業を営んでいるが妻は農業の他に別の仕事もしている、という場合は兼業農家になります。
このように、農家以外の収入源を持つ人の有無で判断されるのです。
参照元:用語の解説|農林水産省
半農半Xと兼業農家の違いは?
半農半Xと兼業農家の大きな違いは、「農業が収入源の1つになっているかどうか」です。
半農半Xでは、自分や家族が食べる目的で農業を行います。
そのため、利益は発生しません。
しかし、兼業農家は販売目的で農業を行います。
半農半Xを行う際に気をつけること
注目が高まる半農半Xですが、いくつか注意点があります。
何も知らずに挑戦し失敗することを防ぐためにも、注意点を把握しておきましょう。
半農半Xの注意点は、下記の通りです。
失敗を避けるためには、これらの注意点に気をつけ、自治体などが行っている支援を活用することが大事です。
必ずしも農業が軌道に乗るとは限らない
半農半Xは、自分や家族が食べる分の食料を農業で確保します。
そのため、農業経験がない人が挑戦するには少しハードルが高いかもしれません。
最初は農業経験者に教えてもらったり手伝ってもらったりと、協力をお願いすることをおすすめします。
また農業は、天候や自然環境に大きく左右されます。
そのため、台風や大雨による洪水などによって農作物が被害に遭う可能性もないとは言い切れません。
このようなリスクがあることも理解したうえで挑戦しましょう。
収入が下がる可能性も
先述したように、農業は経験や天候などに大きく左右されます。
そのため以前より収入が低くなる可能性もありますが、生活コストを下げることによって解決できる場合もあります。
そもそも半農半Xは、自分の「好きなこと」や「やりたいこと」を大切にするライフスタイルです。
「収入を上げたい」と思っている人には向かないかもしれません。
周囲とよく話し合う
「農業未経験者が挑戦するには少しハードルが高い」や「収入が下がる可能性がある」など、半農半Xは挑戦したら必ず成功するという保証はありません。
移住をしなければいけない場合もあり、生活環境も変わります。
家族がいるのであれば、しっかりと話し合い、全員が納得したうえで始めましょう。
半農半Xの支援事例
ここからは、各自治体がどのような支援を行っているのか確認していきましょう。(記載した支援情報は、2022年8月時点のものとなります)
愛知県新城市
引用元:あいちdeニューノーマルの選択肢、半農半Xな暮らしガイド|愛知県農業水産局農政部
新城市は、出産や子育て支援・就学支援など、農業以外の支援も充実。
家族で移住し、半農半Xに挑戦する人には心強い地域ではないでしょうか。
農業に興味がある人を市内外から募集し、独立し営農開始までサポートや支援をしてくれます。
とくに新城市は、イチゴ・ホウレンソウ・トマトなど振興作物(※)の新規就農者を募集しているそうです。
島根県
2021年から半農半X支援事業を開始した島根県。
市町村から「半農半X実践者」の認定を受けた65歳未満の県外からUIターンした人が対象となっています。
支援内容は、下記の通りです。
支援名 | 助成額・助成率 |
就農前研修経費助成事業 | 12万円/月 (最長1年間) |
定住定着助成事業 | 12万円/月 (最長1年間) |
半農半X開始支援事業(ハード事業) | 3分の1以内 (助成上限額100万円) |
参照元:「半農半X」紹介パンフレット|島根県青年農業者等育成センター
(※対象者の要件に関しては、今回紹介した以外もあるため、詳細は島根県農林水産総務課に問い合わせてください)
半農半XとSDGs
2015年の国連総会にて、193カ国が賛同した国際目標であるSDGs。
半農半Xは、SDGsの目標達成にも貢献すると考えられています。
とくに目標8「働きがいも経済成長も」は、「働きがいのある人間らしい仕事をして、経済も持続的に成長させよう」という内容です。
農業を行いながら、「自分の好きなこと」「やりたいこと」をする。
または、個性や特技を活かして社会と関わっていく。
半農半Xは、まさに目標8を体現していると言えるでしょう。
まとめ
半農半Xは、働き方やライフスタイルなど、さまざまな変化が重なり注目されるようになりました。
農業をしながら自分の特技や個性を活かして働く、とても魅力的なライフスタイルです。
しかし、本記事でもお伝えした通り注意点がいくつかあります。
半農半Xを行うのであれば、注意点も理解し対策をして挑戦しましょう。