「サステナブル」「エシカル」など、さまざまな言葉を聞きますが「デカップリング」という言葉はご存知でしょうか?
まだあまり聞き慣れない言葉かと思います。
デカップリングは、持続可能な社会をつくる上で、ぜひ知っておきたい言葉です。
この記事では、デカップリングについて詳しく解説するとともに、世界でのデカップリング例や私たちにもできる取り組みについてご紹介していきます。
デカップリングとは?
デカップリングとは「連動しているものを切り離す」という意味で、経済・農業・環境分野でよく使われている言葉です。
カップル(Couple)は、動詞として「連動する・連結する」という意味があり、否定の意味を持つde-を前につけたデカップル(Decouple)は「切り離す・分離する」となります。
そして、現在分詞のデカップリング(Decoupling)は「切り離すこと・分離すること」という意味になります。
デカップリングによって、何と何が切り離されるのか。
これは専門分野によって異なります。
環境分野におけるデカップリングは「経済成長の度合い」と「天然資源利用量」「環境影響」を切り離す専門用語として使われています。
経済成長の指標:GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
環境影響の指標:CO2排出量、温室効果ガス排出量、資源使用量など
参照元:循環・廃棄物の豆知識 デカップリング:○○と●●を切り離す|国立環境研究所
デカップリングの現状
「経済成長のためには、環境への影響が大きくなってしまうのは仕方がない」
このように考えられてきた時代もありましたが、現在では日本をはじめ、さまざまな国でデカップリングを実現させています。
海外のデカップリング
海外では、アメリカやドイツで、デカップリングが進んでいます。
例えば、ドイツの2021年の電力消費は、約42%が温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーとなっています。
さらに、2030年までに電力消費量の80%以上を再生可能エネルギーにして、2035年以降は発電・消費される電力は温室効果ガスの排出をほぼ実質ゼロにすると目標を掲げています。
参照元:ビジネス短信再生可能エネルギー拡大へ関連法改正案を閣議決定(ドイツ)|日本貿易振興機構(ジェトロ)
日本のデカップリング
日本では、2020年度の電力における再生可能エネルギーの割合は19.8%です。
ドイツには及びませんが、前年度から1.6%増と着々と再生可能エネルギーの割合を増やしています。
また、温室効果ガスの排出量は、2014年度から7年連続で減っており、排出量を算定している1990年度以降での最小値を更新しています。
参照元:2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要|環境省
一緒に覚えておきたい用語
ここでは、デカップリングと一緒に覚えておきたい用語をご紹介します。
これから目にすることもあるかもしれないので、ぜひチェックしてみてくださいね。
相対的デカップリングと絶対的デカップリング
デカップリングは、大きく2種類の状態があります。
相対的デカップリング:経済成長の割に、環境影響が少ない状態
絶対的デカップリング:経済成長をしているが、環境影響がゼロもしくはマイナス
環境分野では、絶対的デカップリングを起こすことが理想とされており、さまざまな国で対策をしています。
サーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーとは、循環経済のことです。
3R(リデュース・リユース・リサイクル)に加えて、資源の消費をおさえたりストックを有効活用したりして、サービスに付加価値を助ける経済活動となっています。
海洋プラスチックから作った再生樹脂で筆記具を作る取り組みも、サーキュラーエコノミーの一例です。
参照元:循環経済への移行|環境省
ESG投資
ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。
つまりESG投資とは、環境に配慮した取り組みをしている企業を応援することです。
株主になる他にも、企業の商品やサービスを購入することも広い意味でのESG投資と言えます。
私たちがデカップリングのためにできること
デカップリングの成功には、国や企業の力だけではなく、私たち一人ひとりの取り組みも大きく影響してきます。
すでに実践されている方も多いかと思いますが、あらためて私たちにできることをご紹介します。
リサイクル・リユース商品を購入する
最近では、リサイクルプラスチックをパッケージに使用している商品も増えてきました。
また、植物原料からできたバイオプラスチックを使った商品もあります。
商品を選ぶのに迷ったら、エコマークのついた商品を選ぶと良いでしょう。
エコマークは、商品の生産から廃棄まで環境負荷が少なく、持続可能な社会に貢献している商品に付けられています。
参照元:循環経済への移行|環境省
省エネ生活を取り入れる
節電などの省エネ生活も、デカップリングには欠かせません。
使わない電源はコンセントを抜いておく、エアコンの設定温度は夏は高め・冬は低めに設定するなど、簡単なことからで構いませんので、少しずつ省エネ生活を意識してみましょう。
またソーラーパネルを取り入れたり、電化製品を最新のものに買い替えたりすることも、初期費用はかかってしまいますが、省エネにつながります。
ESG投資をする
持続可能な取り組みをしている企業を応援することも、デカップリングにつながります。
応援の仕方は人それぞれです。
企業の株を購入するでも良いし、商品やサービスの購入、購入できない場合はSNSでシェアするのも良いでしょう。
まとめ
まだあまり聞き慣れないデカップリングについて、解説してきました。
世界には、特に発展途上国など、経済成長が必要な国はまだまだあります。
しかし、経済成長のために環境を破壊してしまっては、世界の平和な未来が見えてきません。
持続可能な社会をつくっていくために、デカップリングの成功は欠かせないということがお分かりいただけたでしょうか。
世界の持続可能な発展のために、私たちにできることを少しずつ始めてみませんか?