ヴィーガンファッションとは、ウール、ファー、レザーなど動物由来の素材を使わずに作られた衣類・バッグ・シューズを選ぶ考え方です。いまは朝晩が冷え込み、コートやニットを買い足す人が増える時期です。素材のタグを見る機会が多いこの季節は、動物を傷つけない選択肢を知る良いタイミングでもあります。
ただ、タグに「フェイクレザー」「エコファー」と書いてあれば安心、とは言い切れません。この記事では、海外ブランドの毛皮廃止の流れと日本の素材産地を紹介します。あわせて、ヴィーガン素材の落とし穴と、売り場で迷わないための選び方も整理します。
ヴィーガンファッションで避ける素材と選べる素材
ヴィーガンファッションは、「動物を使わない」ことを軸にした服選びです。何が対象になるかは、人によって幅があります。毛皮だけを避ける人もいれば、革やウールまで避ける人もいます。「ここまでやらなければヴィーガンではない」という決まりがあるわけではありません。自分が納得できる範囲を決めることが出発点になります。
避ける対象になりやすい動物由来素材
代表的なのは、羊などの毛を使うウール、ウサギやキツネなどの毛皮を使うファー、牛・羊・ヤギなどの皮を使うレザーです。蚕の繭から作るシルクを対象に含める人もいます。素材のなかには、食肉の副産物として得られるものと、素材を得ること自体を目的に飼育される動物から得られるものがあります。避けたい理由はそこで分かれます。
代わりに使われる素材
動物由来素材の代わりには、ポリウレタン(PU)などの合成素材を使ったヴィーガンレザー(フェイクレザー)や、化学繊維で作るフェイクファー(エコファー)があります。コットンや麻などの植物繊維も代わりになります。リンゴの搾りかす、サボテン、パイナップルの葉などを原料にした植物由来のレザーも登場しています。
なお、オーガニックコットンは、動物を使わない素材であるうえに、農薬や肥料の基準を満たした農地で育てた綿花を使います。動物保護と農業環境の両方に関わる素材ですが、ヴィーガンかどうかは製品ごとに確認が必要です。たとえば、ボタンや接着剤、裏地に動物由来の成分が使われている場合があるためです。
海外ブランドは毛皮をどう手放してきたか
動物由来素材のなかで、ブランドの方針転換が最も進んだのは毛皮です。毛皮は防寒の必需品ではなくなり、代替素材の質も上がりました。そのため、企業が「使わない」と決めやすい素材になったといえます。
先に動いたラグジュアリーブランドとアウトドアブランド
高級ブランドの動きは具体的に確認できます。グッチは2017年に毛皮の使用をやめました。ケリング(グッチ、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタ、サンローランなどを擁するグループ)は、2021年9月に全ブランドを毛皮不使用とすると発表しました。2022年秋冬コレクションから適用されています。
そのほか、動物保護団体と協働して毛皮不使用の方針を作ったブランドとして、アルマーニ、プラダ、ヒューゴ・ボスが挙げられています。アウトドア系では、カナダグース、モンクレールなどが毛皮不使用の方針をとっています。2026年10月には、ウールリッチ・ヨーロッパが2026年12月31日までに毛皮を使う新製品の生産をやめると発表しました。ヒューメイン・ワールド・フォー・アニマルズによると、この毛皮不使用の小売プログラムに参加するブランド・小売企業は世界で約1,700に上ります。
欧州では制度の議論が進んでいる
企業の自主的な動きに加えて、欧州では制度の議論も進んでいます。毛皮用の動物の飼育を禁止した欧州の国は20か国を超えると報告されています。EU全体での禁止を求める市民イニシアチブ「Fur Free Europe」には、150万人を超える署名が集まりました。欧州委員会の回答は当初の想定から遅れ、2026年夏以降にずれ込んでいると伝えられています。2026年10月時点で、EU全体の禁止が決まったとは確認できていません。
毛皮をやめても、革やウールは別の話
ここで混同しやすい点があります。ケリングは毛皮の使用をやめましたが、革やウールなどの素材は引き続き使っています。2019年に公表した動物福祉基準を適用し、調達先の飼育状況を確認する運用です。つまり「ファーフリー」は「アニマルフリー」ではありません。ブランドが何を使わないと宣言しているのかは、毛皮だけなのか革やウールまで含むのかを分けて読む必要があります。
日本ではどこで素材が作られ、どこで探せるのか
海外ブランドの話だけでは、日本の読者が今日から使える情報になりません。国内の素材産地と、売り場での探し方を見ていきます。
和歌山・高野口のパイル織物
フェイクファーの素材として知られる産地が、和歌山県橋本市の高野口です。和歌山県の広報資料によると、1877(明治10)年に、織った生地を裁断して糸状に加工し、再び織り込む「再織(さいおり)」が考案されました。これが現在のパイル織物の原型とされています。
同資料では、和歌山を「日本で唯一、すべての生産工程を同一産地内で完結できる総合パイルファブリック産地」と紹介しています。用途は衣料のほか、寝具、インテリア、車両用シートなど幅広く、世界の高級ブランドにも採用されているとされています。国内の毛足の長いボア素材やエコファーの背景には、こうした産地の技術があります。ただし、日本で売られているフェイクファー製品がすべて国産というわけではありません。
国内でも広がる植物由来レザー
リンゴ果汁の搾りかすから作るアップルレザーなど、植物由来のレザー素材を使う小規模ブランドも、国内で生まれています。国産化に向けた研究開発の動きも報じられています。価格は、キーケースなどの小物で数千円台のものが目立ちます。ただし、扱いの有無や価格は変わるため、購入前に各社の公式サイトで確認してください。
日本には「これを見ればヴィーガン」という統一マークがない
売り場での見分けやすさには課題があります。調べた範囲では、日本国内で動物由来素材の不使用を保証する、広く通用する統一の認証マークは確認できませんでした。海外の第三者認証機関では、TÜV SÜD(テュフズード)が衣類・靴向けのヴィーガン製品認証マークを提供しています。材料構成の試験と生産工程の監査で、動物由来の材料が含まれないことを確認する仕組みです。ただし、国内の商品でこのマークを見かける機会はまだ限られます。
そのため、日本では素材の組成表示とメーカーの説明を自分で読む力が、実質的な判断材料になります。具体的な読み方は後の章で紹介します。
「ヴィーガン=環境にやさしい」とは限らない理由
ここまで読むと、動物由来素材を避ければ万事解決のように見えるかもしれません。実際はそう単純ではありません。動物への配慮と環境への影響は、別々に確認すべき論点です。
主流のヴィーガンレザーは石油由来
世界で最も普及しているヴィーガンレザーは、ポリウレタン(PU)です。化石燃料由来で、製造や使用の際に有害物質を出す可能性があり、埋立地では分解に長い年月がかかるとされています。フェイクファーも同様に、アクリルやポリエステルといった化学繊維が主原料です。動物は傷つけなくても、石油資源とごみの問題は別に残ります。
寿命が短いと、買い替えでかえって負荷が増える
2026年5月のニューズウィーク日本版の記事は、ヴィーガンレザーの寿命と廃棄の問題を指摘しています。多くの製品は裏地にPUや塩化ビニール樹脂のコーティングを施しています。植物由来の素材でも樹脂を併用する例が多く、「植物由来だから環境にやさしい」とは限りません。本革より劣化が早く、修理もしにくい傾向があり、キノコやリンゴ繊維のバッグで寿命が2年ほどだった例も報告されています。
一方で同記事は、本革にも家畜由来のメタン排出や、なめし工程の化学物質といった課題があると述べています。そのうえで、動物由来素材を避けることは依然として重要な倫理的選択だと位置づけています。どちらが優れているかを決めるより、何年使えるかまで含めて選ぶ視点が大切です。
新素材は「量産できるか」が壁になる
キノコの菌糸から作るMylo(マイロ)は、ステラ・マッカートニー、アディダス、ケリングなどが参加するコンソーシアムで量産を目指していました。しかし開発元のボルト・スレッズ社は、資金調達が難航したとして、2023年7月にMyloの事業を一時停止したと報じられています。新しい素材が店頭に並ぶまでには、技術だけでなく資金と量産体制という壁があります。新素材のニュースを見たときは、「いま買える製品があるか」まで確かめると、期待と現実のずれを減らせます。
動物由来素材を使う人にもできる中間の選択肢
ヴィーガンファッションは、全員が同じ基準で実践するものではありません。ウールの暖かさや革の耐久性を必要とする人もいます。動物由来素材を使っていても、動物福祉に配慮した調達を選ぶという道があります。完全にやめるか使い続けるかの二択ではなく、段階的な選択肢があると考えると、続けやすくなります。
たとえば、羊毛には「レスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)」という国際的な自主規格があります。環境省のエコラベル情報では、Textile Exchangeが運営し、羊の飼育場の動物福祉と、認証農場から最終製品までの管理の連鎖を対象とする規格と紹介されています。認証ウールを5%以上含む製品が対象で、国内の問い合わせ先はケケン試験認証センターです。タグや商品説明にRWSの表記があれば、調達方針を確認する手がかりになります。
もう一つの選択肢は、すでに持っている服を長く着ることです。環境省は、2024年の国内の衣服の供給量を約35億着と示しています。家庭から手放されて焼却・埋め立てされる衣類は、約46.1万トンとされています。環境省のサステナブルファッションのページには「買わないこともサステナブルファッション」とあり、1着をもう1年着ることや、古着・レンタルの利用が紹介されています。新たな生産を伴わない選択は、動物にも環境にも負荷をかけにくい方法です。
今季の買い物で使える選び方の判断基準
ここからは、売り場やネットショップで実際に迷ったときの手順です。完璧を目指す必要はありません。確認する順番を決めておくと、判断が楽になります。
まず組成表示を読む
衣類のタグには、繊維の組成が書かれています。「毛」「アンゴラ」「カシミヤ」などは動物由来、「ポリエステル」「アクリル」「ナイロン」は合成繊維、「綿」「麻」は植物繊維です。靴やバッグは、「合成皮革」「人工皮革」と書かれていれば動物由来の革ではありません。「エコファー」「ヴィーガンレザー」は商品名や通称であることが多く、素材の中身を保証する言葉とは限りません。通称ではなく、組成表示で判断してください。
買う前に3つの問いを立てる
次の3つを順番に確認すると、後悔しにくくなります。
- 何を避けたいのか(毛皮だけか、革やウールも含むのか)
- 何年着る予定か(寿命の短い素材を、短期間で買い替えることにならないか)
- 手放すときにどうするか(修理、リユース、回収に出せるか)
この3つに答えられる1着なら、素材が何であっても、長く着られる確率が高くなります。
確認しにくいときは、ブランドに問い合わせる
素材の調達方針は、ブランドの公式サイトやサステナビリティのページに載っていることがあります。載っていなければ、問い合わせフォームで「この商品は動物由来の素材を使っていますか」と聞いてみる方法もあります。問い合わせが増えること自体が、企業が方針を整える後押しになります。
まとめ
ヴィーガンファッションは、動物由来の素材を避けて服を選ぶ考え方です。海外では毛皮を使わないブランドが増え、欧州では毛皮用の飼育を禁じる国も広がっています。日本でも、高野口のパイル織物の産地や、植物由来レザーを使う小規模ブランドなど、選べる素材が少しずつ増えています。
一方で、ヴィーガン素材が環境にやさしいとは限りません。主流のPUレザーは石油由来で、寿命が短ければ買い替えの負担が増えます。毛皮をやめることと、革やウールまで含めてやめることは別の話です。ブランドの宣言も、自分の基準も、何を使わないのかを分けて確認することが大切です。
動物由来素材を使う人にも、動物福祉に配慮した調達や、手持ちの服を長く着るという選択肢があります。まず1つだけ、次に服を買うときに組成表示を読み、「何年着るか」を考えてみてください。
- ヴィーガンファッションは動物由来素材を避ける選択で、避ける範囲は人によって異なる
- 毛皮不使用は広がっているが、「ファーフリー」は「アニマルフリー」ではない
- 日本には統一のヴィーガン認証マークが確認できず、組成表示とメーカーの説明が頼り
- ヴィーガンレザーは石油由来のものが主流で、寿命まで含めて選ぶ必要がある
- 動物福祉に配慮した調達や、手持ちの服を長く着る選択も有効
参考文献
- Humane World for Animals「Woolrich Europe goes fur free」(2026年)
- FashionUnited「Kering to go fur-free across entire brand portfolio」(2021年)
- vegconomist「Kering ends use of fur at all its fashion houses」(2021年)
- ニューズウィーク日本版「『ビーガンレザー』は本当にサステナブルなのか? 見落とされる寿命と廃棄問題」(2026年)
- Forbes JAPAN「キノコ由来のヴィーガンレザーに、ブランドから多くのラブコール」(2021年)
- FashionUnited「Bolt Threads reportedly pulls plug on Stella McCartney-backed Mylo」(2023年)
- 環境省「レスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)」(2026年閲覧)
- 環境省「サステナブルファッション」(2026年閲覧)
- TÜV SÜD「ヴィーガン製品認証マーク」(2026年閲覧)

