FSC認証とは、Forest Stewardship Council(森林管理協議会)が定めた基準に沿って適切に管理された森林や、そこから生まれた木材・紙製品に与えられる国際的な認証です。ラベルを見かける機会は増えましたが、「3種類あるラベルの違い」「日本ではどれくらい広まっているのか」「企業が取得するには何が必要か」まで知っている人は多くありません。この記事では、FSC認証の取得方法やメリットを押さえたうえで、日本の認証林の現状、日本企業の実践例、買い物での選び方まで順に整理します。
数字で見る森林破壊の現状とFSC認証の広がり
FSC認証が必要とされる背景には、森林の減少があります。まず最新の数字で、世界の森林が今どうなっているかを確認します。
森林減少のペースは鈍化したが、依然として大きい
国連食糧農業機関(FAO)が2025年10月に公表した「世界森林資源評価2025」によると、世界の森林面積は約41.4億ヘクタールで、陸地の約3分の1を占めます。森林減少の速度は2015〜2025年で年間1,090万ヘクタールと報告され、1990〜2000年の年間1,760万ヘクタールから大きく下がりました。
とはいえ、1,090万ヘクタールは平方キロに直すと約10.9万平方キロです。北海道の面積(約8.3万平方キロ)を上回る規模の森林が、毎年なくなっている計算になります。FAOはこの水準を「依然として高い」としています。
同じ報告では、世界の森林の55%にあたる21.3億ヘクタールが長期的な管理計画のもとにあるとされています。森林を「守る」だけでなく「計画的に管理する」流れが広がっていることがわかります。
FSC認証林は世界で1億7,100万ヘクタールを超えた
FSCの発表によると、2025年末時点でFSC認証林は世界で1億7,100万ヘクタールを超え、1年間で12万ヘクタールではなく1,200万ヘクタール以上、率にして6%超増えました。加工・流通の認証であるCoC認証の証書も世界で6万8,000件を超え、7%超の増加です。
地域別では、認証林の面積が最も大きいのは欧州です。CoC認証はアジア太平洋地域が全体の約半数を占めるまでになっています。森林を持つ国だけでなく、紙や木製品をつくって売る側の国でも、認証の取得が進んでいることを示す数字です。
認証は森林破壊を止める唯一の手段ではない
FSC認証は、消費者や企業が「責任ある管理をされた森林の木材を選ぶ」ための仕組みです。法規制、各国の森林保護政策、違法伐採の取り締まりなどと並ぶ手段の一つで、これだけで森林減少が止まるわけではありません。
それでも、売り場でラベルを選ぶという行動が、森林管理を求める需要として企業の調達に届く点に意味があります。次の章から、そのラベルがどんな仕組みで付くのかを見ていきます。
FM認証とCoC認証、ラベルが付くまでの仕組み
FSCラベルの付いた商品が手元に届くまでには、森林と、その木材を扱う事業者の両方が認証を受ける必要があります。ここでは2つの認証の役割と、審査の基準を整理します。
森林を認証するFM認証、流通を認証するCoC認証
FM(Forest Management)認証は、森林そのものの管理を審査する認証です。FSCの森林管理の規格を満たした森林が認定されます。
CoC(Chain of Custody)認証は、認証林から出た木材が製品になるまでの加工・流通の過程を認証します。製材所、製紙会社、印刷会社、卸売業者などが対象で、途中で認証を受けていない木材が混ざらないよう、管理の仕組みが整っているかを確認されます。
つまり、FSCラベルを付けて製品を売るには、認証林などの適格な原料を調達し、加工・流通に関わる組織がそれぞれCoC認証を受けている必要があります。どこか一社でも認証を受けていなければ、ラベルは付けられません。
10の原則と70の基準が審査の土台になる
FM認証の審査は、10の原則と70の基準にもとづきます。原則には、法律の順守、労働者の権利と労働環境、先住民族の権利、地域社会との関係、森林のもたらす便益、環境への影響の抑制、管理計画、モニタリングと評価、高い保護価値(HCV)を持つ森の保全、管理活動の適切な実施が含まれます。
基準の下には、各国の事情を踏まえた200を超える指標が設けられており、審査ではこの指標がチェック項目になります。環境面だけでなく、働く人や地域住民、先住民族の権利まで審査対象に入っている点が、FSC認証の特徴です。
認証は一度取って終わりではない
FSC認証の証書は5年間有効ですが、その間も年に1回、認証機関による年次監査を受ける必要があります。基準を外れる点が見つかれば、一定期間内に改善しなければなりません。
この継続的な監査があるため、ラベルは「過去に一度審査に通った」ではなく「今も基準を満たし続けている」という意味を持ちます。
FSCラベル3種類の見分け方と、買う前に確認したいこと
売り場で実際に目にするのは、FSCのロゴとラベルです。ラベルの種類によって、使われている原料が異なります。
100%、MIX、RECYCLEDの違い
FSCジャパンの説明では、ラベルは次の3種類に分かれます。
- FSC 100% FSC認証林からの原料だけを使った製品
- FSC MIX FSC認証林の原料に、リサイクル材やFSC管理木材などの適格な原料を組み合わせた製品
- FSC RECYCLED 回収原材料だけを使った製品
MIXには細かい条件があります。パーセンテージシステムで生産する製品では、FSC 100%などの優位な原材料が70%以上使われていなければ、ラベルを付けられません。RECYCLEDについても、木材製品の場合は回収原材料の70%以上が消費後に回収されたものである必要があります。
ラベルがなくてもライセンス番号で確認できる
製品によっては、ラベルの文言がなく、ロゴとライセンス番号だけが印刷されていることがあります。FSCは認証取得者のデータベースを公開しており、番号から認証の有無を確認できます。気になる商品があれば、番号を控えて調べる方法があります。
誤解されやすい3つのポイント
1つ目は、FSCマークがない商品を「環境に悪い」と決めつけないことです。認証を取らなくても、環境に配慮してつくられた製品は存在します。ただし、どの森林からどのように切り出されたかを第三者の審査で確認できるという点は、FSC認証ならではの強みです。
2つ目は、MIXのラベルが「すべて認証林の木材」を意味するわけではない点です。リサイクル材などが含まれることを前提とした表示です。
3つ目は、FSC認証が伐採を禁じる仕組みではない点です。認証は、森林を適切に管理しながら木材を利用し続けることを前提にしています。ラベルは製品の木材の由来を示すものであり、その企業の環境対応全体を評価するものでもありません。
日本の現状|FSC・SGEC・PEFCと認証林の規模
世界では認証が広がっていますが、日本の国内の森林ではどうなっているのでしょうか。林野庁の資料などから確認します。
日本の認証林と加工・流通の認証数
林野庁の資料によると、日本国内のFSC認証林は約42万ヘクタール、FSCのCoC認証は2024年12月1日時点で2,234件です。三井物産の解説記事では、国内のFSC認証林は日本の森林面積の約2%に満たないとされています。
一方、日本発の森林認証であるSGEC(緑の循環認証会議)の認証林は約220万ヘクタールで、CoC認証は472件(PEFC認証を含む)です(2025年1月時点)。国内の認証林だけを見ると、FSCよりSGECのほうが広い面積をカバーしています。
FSCとSGEC・PEFCの違い
森林認証には、FSCのほかにPEFCがあります。SGECは2003年に日本独自の制度として創設され、2016年にPEFCと相互承認されました。SGEC認証の材は、PEFCの認証材として国際的にも扱える関係にあります。
どの認証が優れているかは一概に言えず、森林の所有者や取引先の事情で選ばれています。消費者の側から見るときは、FSCとSGEC・PEFCはいずれも第三者が森林管理を確認する仕組みである、と押さえておくと混乱しません。
国内の認証林が少ない理由
三井物産の解説は、日本の林業が1980年代以降の木材価格の下落で厳しい状況にあり、認証の取得にかかる費用と手間が大きな障壁になっている点を指摘しています。
加えて、日本の森林の多くは小規模な私有林です。審査のためのコストを、木材の売上で回収するのが難しい面もあります。そのため、国内の認証林が少ないからといって、日本の森林管理の質が低いと断定することはできません。認証を取る余力があるかどうかも、数字に表れています。
日本企業の実践例|年賀はがき・社有林・化粧品の外装
日本でも、用途の異なる複数の分野でFSC認証が使われています。公表されている3つの取り組みを紹介します。
日本郵便の年賀はがき
日本郵便は2022年用の年賀はがきからFSC認証紙を使っており、2026年用でも継続しています。あて名面にはFSC認証の表示と説明が記載されており、手にした人が森林保全に関わる商品だと気づける設計です。
年賀状の準備が始まるこの時期は、身近な紙製品のラベルを確かめる良い機会になります。
三井物産の社有林
三井物産は、日本全国75か所、合計約45,000ヘクタールの社有林「三井物産の森」でFSC認証を取得しています。これは、紙や製品を売る側ではなく、森林を所有して管理する側の取得例です。
国内のFSC認証林は限られていますが、こうした大規模な社有林が認証を取ることで、国内の認証林が積み上がっています。
再春館製薬所のパッケージ
再春館製薬所は2026年5月26日、「ドモホルンリンクル」の外装を約30年ぶりに刷新したと発表しました。大塚包装工業と共同開発した「結び箱」は、主原材料をすべてFSC認証紙とする紙製のブリスター包装で、複数のプラスチック製包装パーツをなくしています。年間約30%のCO₂削減を見込んでいます。
3つの事例を並べると、認証の使われ方は、紙を使う側(日本郵便、再春館製薬所)と森林を持つ側(三井物産)に分かれていることがわかります。取得の出発点は企業ごとに違っても、最終的にラベルが商品に付くことで、消費者に届く形になっています。
企業がFSC認証を取得するメリットと5ステップ
ここからは、企業の視点です。製品にFSCラベルを付けて販売したい場合の取得の流れと、得られるものを整理します。
企業が得られるメリット
FSC認証を取得したい企業の動機は、主に次の3つです。
- 環境や社会に配慮した調達をしていることを、第三者の確認つきで示せる
- 他社製品との違いを、消費者に伝えやすくなる
- 取引先や投資家に対して、調達の透明性を説明しやすくなる
木材や紙を製造する企業だけでなく、パンフレットや名刺、パッケージを扱う印刷会社や包装会社も、CoC認証を受けています。自社製品の原料を説明する根拠として使えるため、認証は営業上の信頼にもつながります。
取得までの5ステップ
FSCジャパンによると、認証の取得は次の5ステップで進みます。
- FSC認定の認証機関に問い合わせ、費用と所要時間の見積もりをもらう
- 認証機関と契約を結ぶ
- 認証機関が派遣する審査員が、事務所・工場・倉庫などを訪問して審査する
- 審査報告書にもとづき、要求事項を満たしていれば認証機関が認証の発行を決める
- 5年間有効の証書が発行され、年1回の年次監査を受けて維持する
審査では、管理体制や手順、使用している伝票の確認に加え、担当者へのインタビューも行われます。不適合があった場合は、一定期間内に改善できなければ認証は取得できません。
費用と相談先の探し方
費用は認証の種類、事業規模、拠点の数などで変わるため、認証機関の見積もりで確認する必要があります。日本国内でFSCのCoC認証サービスを提供する認証機関は7社あります。FM認証については、アミタ、プリファード・バイ・ネイチャー、SGSジャパンの3社が新規の顧客を受け付けています。
自治体によっては、森林認証の取得費用を補助する制度を設けている場合があります。所在地の林務担当窓口に確認してみてください。
取引先から求められる場面も増えている
EUでは、森林破壊に関わる商品の流通を規制する「EU森林破壊防止規則(EUDR)」の適用が、大企業は2026年12月30日、小規模・零細企業は2027年6月30日まで延期されています。対象品目には木材由来の製品が含まれ、今回の改正で書籍や新聞などの印刷物は適用範囲から外れました。
EUDRはFSC認証とは別の制度で、産地の情報などの提供が求められる点が異なります。ラベルがあればそれで足りるのか、別途情報が必要なのかは、取引先や制度ごとに異なります。EUと取引のある企業は、個別に確認が必要です。
消費者が今日からできるFSC認証商品の選び方
最後に、買い物をする側ができることをまとめます。難しい知識は必要なく、見る場所さえ決めておけば続けられます。
まず手元の紙製品でラベルを探す
コピー用紙、ノート、紙袋、お菓子や日用品の紙箱、封筒など、身の回りの紙製品の裏面や底面にFSCのロゴがないか探してみてください。ロゴのないものは、パッケージの原材料表示や製造元のウェブサイトで、紙の調達方針を確認する方法があります。
買い替えのタイミングで選ぶ
新しく買うタイミングに合わせて、同じ価格帯のなかでFSC認証品を選ぶ方法があります。いきなりすべてを切り替える必要はありません。年賀はがきや名刺、ノートなど、毎年買うものから始めると、無理なく習慣になります。
認証がすべてではないことも知っておく
FSC認証のない製品にも、環境に配慮したものはあります。ラベルは判断材料の一つにとどめ、その商品が本当に必要か、長く使えるかといった視点とあわせて選ぶと、納得して買えます。
まとめ
FSC認証は、適切に管理された森林と、その木材を扱う加工・流通の過程を第三者が確認し、ラベルで消費者に伝える仕組みです。世界のFSC認証林は1億7,100万ヘクタールを超えましたが、日本国内では約42万ヘクタールにとどまり、これから広がる余地が残っています。
ラベルは100%、MIX、RECYCLEDの3種類があり、それぞれ使われる原料が違います。認証がない製品が悪いわけでも、MIXがすべて認証林の木材でもありません。違いを知っていれば、パッケージの表示を落ち着いて読めます。
企業にとっては、取引先や消費者に調達の透明性を示せる手段になります。日本郵便、三井物産、再春館製薬所のように、紙を使う側も森林を持つ側も、それぞれの立場で取り組みを進めています。まず1つだけ、手元の紙製品でFSCのマークを探してみてください。
- FAOによると、世界の森林減少は年間1,090万ヘクタールまで鈍化したが、依然として高い水準にある
- FSCラベルは100%、MIX、RECYCLEDの3種類で、使われる原料が異なる
- 認証にはFM認証とCoC認証があり、ラベルを付けるには加工・流通の全員が認証を受ける必要がある
- 日本のFSC認証林は約42万ヘクタール、SGEC認証林は約220万ヘクタールで、認証の取得はこれからの課題でもある
- 企業の取得は5ステップで、証書は5年有効、年1回の年次監査がある
参考文献
- FAO「Global deforestation slows, but forests remain under pressure, FAO report shows」(2025年)
- FSC「Reflexiones sobre 2025 y una mirada al año que tenemos por delante」(2026年)
- 林野庁「森林認証の状況」(2025年)
- FSCジャパン「FSCの登録商標の種類」
- FSCジャパン「認証を取得するには」
- 三井物産「『FSC®認証』が目指す、森林の保全と活用の両立」
- 日本郵便「2026年用年賀はがきに関するお知らせ」(2025年)
- ELEMINIST「FSC®認証紙『結び箱』で循環へ ドモホルンリンクルの外装を30年ぶり刷新」(2026年)
- EY Japan「Tax Alert」EUDR改正に関する記事(2026年)

