秋の味覚として親しまれてきたサンマが、記録的な不漁と価格高騰に見舞われる年が続いています。日本近海の海面水温が上昇し、寒流に乗って南下してくるはずのサンマが日本の漁場に近づきにくくなっていることが背景の一つとして指摘されています。魚の値段が変わるという身近な出来事の裏側に、地球規模の環境問題が横たわっているのです。
環境問題という言葉自体はニュースや教科書で繰り返し目にしますが、実際に「何がどう起きていて、企業や個人が具体的に何をしているのか」まで踏み込んで理解している人は多くありません。この記事では環境問題の種類を整理したうえで、日本企業の取り組み事例と、暮らしの中で実践できる行動を中心に紹介します。
- 環境問題の主な種類と原因
- 日本の暮らしに現れている具体的な影響
- 国内企業の脱炭素・資源循環の取り組み事例
- 個人が今日から始められる行動
- SDGsの目標との関係
環境問題とは|人間活動が引き起こす変化の総称
環境問題とは、人間の活動が原因となって周囲の自然環境が変化し、生態系や人の暮らしに悪い影響が生じる状態を指します。工業化やエネルギー消費の拡大、大量生産・大量消費のライフスタイルが定着する過程で、大気・海・森林・生物多様性など複数の領域に同時多発的な変化が積み重なってきました。ひとつの原因が単独で存在するのではなく、気候変動が水不足を招き、水不足が農地開発による森林伐採を招くというように、問題同士が連鎖している点が環境問題を理解するうえで重要なポイントです。
環境問題の主な種類|地球温暖化・海洋汚染・森林破壊・生態系の危機
一括りに環境問題と言っても内容はさまざまです。ここでは代表的な4つの領域について、原因と現状を整理します。
地球温暖化と気候変動
地球温暖化は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが大気中に増えすぎることで地表付近の熱が過剰にとどまり、平均気温が上昇する現象です。世界気象機関(WMO)や欧州の気候機関からは、2024年が観測史上もっとも気温の高い年になったとする分析が示され、産業革命前と比較した気温上昇が一時的に1.5度の水準に達したと報告されています。石油や石炭といった化石燃料を燃やすことで発生する二酸化炭素が主要な原因とされ、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書でも人間活動が温暖化の主因であることはほぼ疑いの余地がないと結論づけられています。
海洋プラスチックごみと海洋汚染
海に流れ込んだペットボトルやレジ袋は紫外線や波の力で砕かれ、5ミリ以下のマイクロプラスチックへと変化します。海洋生物がこれをエサと誤って食べ、生態系や食物連鎖を通じて人間の生活にも影響が及ぶ可能性があると指摘されています。海洋汚染の原因はプラスチックごみだけでなく、船舶事故による石油流出や工場・生活排水、不法投棄なども挙げられます。国内でも生活排水の処理は産業排水ほど厳格な基準がなく、家庭からの負荷が積み重なっている点は見落とされがちです。
海洋プラスチックごみ問題についてより詳しく知りたい方は、フードロスなど暮らしの中の廃棄物問題を扱った記事もあわせて参考にしてください。

森林破壊と生物多様性の損失
国連食糧農業機関(FAO)の世界森林資源評価(FRA2020)によると、世界の森林総面積は約40億6,000万ヘクタールで陸地の31%を占めていますが、1990年以降で1億7,800万ヘクタールの森林が失われたとされています。原因は森林火災や違法伐採、農地・放牧地への転用、焼畑農業、道路などのインフラ整備と多岐にわたります。一方で中国をはじめとする国々では大規模な植林活動が進み、世界全体の森林減少のペースは緩やかになってきているとも報告されています。
森林破壊は生態系にも直結します。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅の危機にある野生生物の種数が増加傾向にあると継続的に報告されており、生息地の減少がその大きな要因の一つとされています。スマトラ島の熱帯雨林に暮らすスマトラオランウータンのように、農地開発による森林伐採で住処を失い、生存が脅かされている種も少なくありません。
日本の暮らしに現れている影響|サンマ不漁と気象災害
環境問題は遠い国の出来事ではなく、日本の食卓や地域社会にも影響を及ぼしています。冒頭で触れたサンマのように、海水温の上昇によって回遊ルートや漁獲量が変化する魚種は複数報告されており、水産業に携わる人々の生計にも関わる問題です。また、集中豪雨や大型台風による水害が毎年のように各地で発生し、気候変動がその頻度や強度に影響しているとの分析も示されています。こうした変化は、農作物の収穫時期や品質、防災インフラのあり方など、私たちの生活設計そのものに関わってくる問題だと言えます。
企業はどう向き合っているか|国内企業の脱炭素・資源循環の取り組み
環境問題の解決には行政や個人だけでなく、事業活動を通じて大きな環境負荷を生み出しうる企業の取り組みが欠かせません。ここでは複数の国内企業の事例を紹介します。
イオンの植樹活動「イオン ふるさとの森づくり」
イオン株式会社は1991年から「イオン ふるさとの森づくり」を続けており、公表資料によると2021年2月時点での累計植樹本数は1,222万6,872本に達しました。単に木を植えるだけでなく、地域住民や顧客と一緒に活動する中で得られる気づきを共有し、地域に根ざした森づくりを目指している点が特徴です。活動は日本国内にとどまらず、中国やマレーシア、タイなどアジア各国にも広がっています。
サントリーグループのペットボトル資源循環
サントリーグループは、2030年までに国内で使用するペットボトルをすべて再生素材または植物由来素材に切り替える方針を公表しています。新たに石油から作られるプラスチックの使用をなくすことを目指す取り組みで、清涼飲料業界における資源循環の代表的な事例のひとつとされています。
パナソニックグループの脱炭素ビジョン
パナソニックグループは、自社の事業活動だけでなくサプライチェーン全体を含めたCO2排出の実質ゼロを2050年までに目指す環境ビジョンを掲げています。製品の省エネ性能向上に加え、再生可能エネルギーの活用や生産工程の見直しなど、事業のあらゆる段階で排出削減を進める姿勢を示している点が特徴です。
これらの取り組みをさらに詳しく知りたい方は、企業のサステナビリティ経営を取り上げた記事もチェックしてみてください。

今日から始められる実践ガイド|個人でできる行動
企業や国の取り組みだけに頼らず、私たち一人ひとりの選択も環境問題の解決に影響します。特別なことをする必要はなく、日々の買い物や移動の中で少しずつ選択を変えることが出発点になります。
- 過剰包装の商品やプラスチック製品の購入を控える
- 長く使えて質の良いものを選び、買い替えの頻度を減らす
- 環境ラベルの付いた商品を選択肢に入れる
- 地産地消を意識し、輸送に伴う二酸化炭素排出を減らす
- マイボトルやマイバッグを持ち歩く
- 近距離の移動は自動車ではなく徒歩や自転車を選ぶ
- 照明はLED、家電は省エネ型を選ぶ
これらの行動はいずれも、地球温暖化や海洋プラスチックごみ、森林破壊といった前述の環境問題と直接つながっています。例えば地産地消を意識することは輸送に伴う二酸化炭素排出の削減に、マイボトルの携行は海洋プラスチックごみの削減にそれぞれ関わっています。すべてを一度に実践する必要はなく、自分の生活に取り入れやすいものから始めることが継続のコツです。
日々の消費行動を見直すヒントをさらに知りたい方は、エシカルな選び方を扱った記事も参考にしてみてください。

SDGsとの関わり|目標6・13・14・15から見る環境問題
2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、環境問題と密接に関わる目標が複数含まれています。なかでも目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」の4つは、ここまで紹介してきた地球温暖化・海洋汚染・森林破壊と直接結びついています。
目標15については、各国のSDGs達成度を比較した報告書の中で、前年より状況が悪化していると評価された年もあり、森林伐採や砂漠化といった課題の根深さがうかがえます。SDGsの目標は互いに関連し合っており、気候変動対策として進められる再生可能エネルギーの拡大や資源循環の取り組みは、結果的に複数の目標達成に同時に貢献することになります。ひとつの目標だけを切り離して考えるのではなく、関連する目標を意識しながら取り組む視点が求められています。
まとめ|まずは1つの行動から始めてみましょう
環境問題は地球温暖化、海洋汚染、森林破壊、生態系への影響など、複数の課題が連鎖しながら進行しています。原因をたどると、化石燃料の使用や大量消費のライフスタイルなど、人間の活動に行き着くものが少なくありません。一方で、イオンの植樹活動やサントリーグループのペットボトル資源循環、パナソニックグループの脱炭素ビジョンのように、企業側も具体的な数値目標を掲げて対策を進めています。
大きな変化は、多くの人の小さな選択の積み重ねから生まれます。この記事で紹介した行動の中から、まず1つだけ試してみてください。
- 環境問題は地球温暖化・海洋汚染・森林破壊・生態系の危機など複数の課題が連鎖している
- イオン、サントリーグループ、パナソニックグループなど国内企業も具体的な数値目標を掲げて取り組んでいる
- マイボトルの携行や地産地消の意識など、日常の小さな選択から実践できる
本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。
参考文献
- 環境省「海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組」(https://www.env.go.jp/water/marine_litter/)
- 外務省「JAPAN SDGs Action Platform」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html)
- 林野庁「世界森林資源評価(FRA2020)主な調査結果」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/kyoryoku/fra.html)

