ここ数年、バンコクでは大気汚染が加速しています。
その深刻ぶりは、バンコク市内の学校が臨時休校するほどで、進出している日系企業にも影響が出ているようです。
この記事では、バンコクにおける大気汚染の原因を探るとともに、その対策方法について解説していきます。
バンコクの大気汚染における原因とは?
2021年現在も、バンコクの大気汚染は悪化し続けています。
タイ政府や在タイ日本国大使館からも、注意喚起の知らせが出るほどです。
タイ政府では、タイ国内各地で大気質指標(AQI)を発表しており、ウェブサイトやアプリでチェックすることができます。
こうした深刻な大気汚染の原因について探っていきましょう。
参照元:
・在タイ日本国大使館
・Thailand’s air quality and situation reports (Pollution Control Department, Air Quality and Noise Management Bureau)
主な原因はPM2.5によるもの
バンコクの大気汚染を悪化させる原因は、PM2.5です。
日本においても、アレルギーの原因となりニュースで耳にすることも多いでしょう。
PM2.5とは、大気中に浮遊する小さな粒子のことをさします。
そのサイズは、実に2.5μm以下と極小です。
μmとは、1mmの1/1000なので、いかに小さなサイズかがわかります。
そのため、肺の奥にまで入り込むことができ、呼吸器だけではなく循環器への影響も心配されている微小粒子物質です。
バンコクでPM2.5が発生する原因
バンコクでは急激な経済発展が進み、車の排気ガスが増えるほか、高層ビルの建築ラッシュが起きています。
こうした経済発展は、PM2.5の大きな要因です。
タイ政府では、ディーゼル車の不完全燃焼が大気汚染の6割を占めていると報告しています。
加えて、バンコクの気候における特徴である乾季も、PM2.5を悪化させる原因です。
乾季になると、雨が全く降らなくなるため、微小な粒子が舞い上がりやすくなるため、深刻化させます。
参照元:「バンコクの大気汚染について一般調査報告」|バンコク産業情報センター
農村部の野焼きによるもの
バンコクの都市部では、PM2.5が大気汚染の大きな要因ですが、農村部でも大気汚染は拡大しています。
その原因となるのが、野焼きや山火事です。
PM2.5と合わさり、AQI数値が200を超えるような事態にも発展しています。
AQIの数値には、100までが許容範囲とされていることから、異常事態であることが数値的にもわかるでしょう。
バンコクにおける大気汚染対策
深刻化する大気汚染に対して、タイ政府は様々な対策を打ち出しています。
それぞれの対策について、細かく見ていきましょう。
幼稚園や学校を臨時休校
バンコクでは、深刻な大気汚染に合わせて、幼稚園や全ての公立小中学校の臨時休校命令を出しています。
また、私立学校や日本人学校も同様に臨時休校を発表する時期がありました。
臨時休校に当たらない日も、PM2.5に対応したマスクをして学校に通う子どもたちの姿が見られます。
散水対策
ビルの屋上や散水車を使って、バンコク市内に水を撒く対策もタイ政府により実施されています。
空気中に舞い上がる汚染物質を、抑えることが目的です。
また、飛行機やドローンを使用して、人口雨を降らせる計画も発表されました。
ディーゼル車の検問や車検対策
バンコクの大気汚染を深刻化させる最大の要因が、ディーゼル車です。
タイ政府では、ディーゼルを使用するトラック等の検問を実施しています。
そのほか、車検の検査方法を改善する措置も撮りました。
また、これまでディーゼルを活用していたバスも、バイオディーゼルの割合が多い燃料に切り替える動きがあります。
タイ国内にある自動車メーカーに対しても、大気汚染に関する措置が取られました。
車両生産全てに対して、ヨーロッパの排ガス規制である「ユーロ5」を提供する動きです。
工場に対する立入検査
10万件を超える工場についても、立入検査を実施した上で、問題のある工場の操業を一時的にストップさせるといった措置が取られました。
そのほか、現在進行が進む建設ラッシュについても、粉じん対策の強化を求め、この先、建築が予定されているプロジェクトに対しては、法律改正を進めています。
大気汚染はアジアに共通する問題
バンコクのような大気汚染は、アジア各国で起こっています。
例えば、ジャカルタやクアラルンプールといった東アジアの各都市でも深刻です。
共通していえるのは、急速な経済成長と自動車産業の発展に環境規制が間に合っていない点でしょう。
現在、バンコクでは環境や健康に対する課題意識が高まっています。
こうした大気汚染や環境問題に対する考えは、今後各都市にも影響していくでしょう。
まとめ
バンコクを悩ませるPM2.5の大気汚染は、日本も他人事ではありません。
大陸からの季節風に乗って、日本でもPM2.5の濃度が高い時期があります。
また、急激な経済成長は日本も経験してきたことです。
今のバンコクと同じように、大気汚染が深刻化した時代をへて、現在の日本が成り立っています。
大きな課題を乗り越えて培ってきた日本の技術は、バンコクや東アジア諸国でも役立つでしょう。