近年、環境問題や他国へのエネルギー依存の低減など、さまざまな面から注目されている再生可能エネルギー。
日本では、とくにメガソーラー(大規模太陽光発電)の導入が進んでおり注目している企業も増えています。
しかし、なかには「環境破壊の原因になるかもしれない」という意見があることも事実です。
本記事では、メガソーラーのメリットやデメリット、企業の導入事例などをまとめました。
まずは、メガソーラーについて知りましょう。
メガソーラーとは
メガソーラーとは、発電規模が1,000kWを超える太陽光発電システムです。
この発電量は、システムによって多少異なりますが一般家庭の約200世帯分に相当します。
また家庭用の太陽光発電システムは、一般的に10kW未満であるため、その100倍以上の発電規模になるのです。
これほどの電力をつくりだす太陽光発電システムには、数百~数千枚の太陽光パネルが必要となり、太陽光パネルを設置する2ha以上の土地も確保しなければいけません。
そのため、遊休地や休耕地などの使われていない土地が注目されているのです。
近年、遊休地や休耕地を有効活用するためにメガソーラーの設置が増加傾向にあります。
それに伴い、産業用の電力としてメガソーラーを運営する企業も増えているのです。
ここまでは、メガソーラーについてお伝えしました。
続いては、設置することによってどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
参照元:メガソーラーの発電量はどのくらい?売電収入や初期費用も解説!|Earthcom
メガソーラーのメリット
メガソーラーを設置すると、下記のようなメリットがあります。
①売電収入が得られる
メガソーラーは、発電したエネルギーを自社で使う以外に、「販売する」という選択肢もあります。
システムの規模が大きい分、生みだす発電量も豊富なため、高い売電収入が期待できるでしょう。
②FIT制度による収入の長期安定化
FIT制度は、再生可能エネルギーの普及を促すために2012年7月に創設されました。
この制度によって、再生可能エネルギーを20年間は固定価格で買い取ってくれることが国から約束されています。
そのため、長期間安定した収入を得られるのです。
参照元:制度の概要|資源エネルギー庁
売電価格に上乗せするFIP制度
FIT制度により再生可能エネルギーは急速に拡大していきましたが、「賦課金(※)」のような課題も出てきました。
そこで新たに登場したものが「FIP制度」です。
引用元:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート|資源エネルギー庁
「Feed-in Premium(フィードインプレミアム)」の略称であるFIP制度は、再エネの導入が進む欧州でも取り入れられている制度です。
買い取り価格が固定化していたFIT制度とは異なり、FIP制度は売電価格に一定の補助額(プレミア)を上乗せします。
つまり再生可能エネルギー発電の事業者は、販売した電気と補助額を合わせた金額を収入として受け取れるのです。
FIP制度について詳しく知りたい方は、資源エネルギー庁のHPをご覧ください。
参考サイト:資源エネルギー庁HP
(※)賦課金:再生可能エネルギー普及のために、電力契約者(消費者)が負担する費用のこと。 電気事業者がFITを通して電気を買い取った際に、かかったコストをまかなう目的で設けられている。消費者が負担することによって、電気事業者が赤字になるのを防いでいる。
参照元:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート|資源エネルギー庁
③二酸化炭素を排出しない
日本のエネルギー発電方法は、「火力発電」が大部分を占めています(2020年時点)。
(※)火力発電:石油、LGN、石炭、その他火力
引用元:2020年の自然エネルギー電力の割合|ISEP環境エネルギー政策研究所
しかし、化石燃料を燃やしエネルギーをつくりだす際に、二酸化炭素が大量に排出されるため問題視されているのです。
その一方でメガソーラーは、太陽光を利用していることから二酸化炭素が発生しません。
人や地球環境に優しいエネルギーになります。
④SDGsの目標達成に貢献する可能性も
2030年までに、世界中で起きている環境・社会・経済の課題解決に向けて、17目標と169のターゲットが設定されているSDGs。
そのなかでもメガソーラーの設置は、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献する可能性があります。
先述した通りメガソーラーは、二酸化炭素を排出しないクリーンな発電方法です。
そのため、目標7と13の達成に貢献できると期待されています。
メガソーラーのデメリット・課題
メガソーラーには、多くのメリットがあることが分かりました。
しかし、下記のようなデメリットや課題も存在します。
①環境破壊
太陽光発電は発電時に二酸化炭素が発生しないため、クリーンなエネルギーと言われています。
しかし場合によっては、広大な土地を確保するために森林伐採が行われることも少なくありません。
すると森林が減少するだけでなく、生態系に影響を及ぼしたり地滑りが発生したりするなど、さまざまな問題を引き起こします。
その他にも、業者による太陽光パネルの放置や不法投棄も自然環境の悪化につながるとして問題視されています。
②設備を維持するために手間と費用がかかる
メガソーラーは、広大な土地と数千~数万枚の太陽光パネルが必要です。
そして設置後も、設備を維持するために点検や地面に生えた草の撤去など、定期的なメンテナンスが欠かせません。
規模が大きければ大きいほど、手間と費用がかかります。
③自然災害の影響を受けやすい
野外に設置するため、自然災害の影響を受けやすい点もデメリットです。
風の影響で、太陽光パネルが剝がれたり飛ばされたりすることも、実際に起きています。
台風によって太陽光パネルが飛ばされ、そのパネルが建物に直撃し窓が割れるなど、二次被害が起こる可能性もあります。
なかには、破損した太陽光パネルの内部が発火するケースもあるそうです。
④近隣住民とのトラブルも
メガソーラーは設置場所によって、景観や日照が妨げられたり地盤が弱くなりがけ崩れが起きたりする危険性もあります。
そういった理由から、メガソーラーの設置に反対する近隣住民と業者の間でトラブルが発生するのです。
実際に、近隣住民からの反対によって設置を断念したケースも存在します。
メガソーラーの設置を考えているのであれば、近隣住民との話し合いは慎重に行いましょう。
企業のメガソーラーの導入事例
ここからは、実際にメガソーラーを導入している企業の事例を確認していきます。
東京都【森ケ崎水再生センター】
森ケ崎水再生センター東施設では、周辺に高い建物がないことを利用し、4,480枚の太陽パネルを設置しました。
最大出力は1MW(1,000kW)であり、1年間で約115万kWの発電が可能です。
この発電量は、一般家庭の約320世帯分に相当します。
またこの施設では、水力発電も行っており、双方の発電によって年間約900tの二酸化炭素削減を実現しました。
鹿児島県【崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所】
引用元:全国初、空港跡地のメガソーラー発電所が稼働|オリックス株式会社
オリックス株式会社と株式会社九電工は、鹿児島県枕崎市にて全国初となる空港跡地を活用したメガソーラー発電事業を2014年9月から開始。
33,544枚の太陽光パネルを設置し、最大出力は8.2MW(8,218kW)になります。
この発電量は、一般家庭の約2,550世帯分に相当するそうです。
また空港内の一部を改修し、環境教育のための施設として活用した点は「メガソーラーの地域貢献策としては珍しい」と注目されました。
参照元:全国初、空港跡地のメガソーラー発電所が稼動~枕崎空港跡地に最大出力 8.2MW~|オリックス株式会社
まとめ
カーボンニュートラルな社会実現のために、重要な鍵となる再生可能エネルギー。
そのなかでも太陽光発電は注目されており、導入する企業も増えています。
しかし、設置場所や廃棄の仕方などによって、環境破壊問題が発生する可能性がある点には注意しなければいけません。
メガソーラーの設置を考えているのであれば、環境や近隣住民のことも頭に入れて導入しましょう。
「企業・住民・環境の三方良し」を目指すことによって、メガソーラーの運営を円滑にし、尚且つSDGsの目標達成にも貢献できます。