「サーキュラー・バイオエコノミー」という言葉を聞いたことはありますか。これは、持続可能な形で資源を効率的・循環的に有効利用する循環経済(サーキュラーエコノミー)と、バイオマスなどの再生可能資源を活用する「バイオエコノミー」を組み合わせた考え方です。気候変動や資源枯渇が深刻化する中で、企業や社会全体が注目する新しい経済モデルの1つです。この記事では、サーキュラー・バイオエコノミーの意味や重要性、私たちに何ができるのかを、わかりやすく解説します。
サーキュラー・バイオエコノミーの基本的な意味
サーキュラー・バイオエコノミーとは、2つの概念を組み合わせたものです。まず「サーキュラーエコノミー」とは何か、説明しましょう。
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです(環境省・令和3年版環境白書)。
これまでの経済は「作る→使う→捨てる」という一方通行でしたが、サーキュラーエコノミーは資源を何度も循環させることで、廃棄物をできるだけ減らそうという考え方です。そしてこれにバイオマス(植物や農業廃棄物など再生可能な生物資源)を活用する「バイオエコノミー」の視点を加えたのが、サーキュラー・バイオエコノミーです。つまり、自然界で再生可能な資源を最大限に活用しながら、それらを循環させる経済システムということになります。
従来の経済との大きな違い|廃棄物をどう考えるか
3Rでは少なからず廃棄物が発生するのに対して、サーキュラーエコノミーでは廃棄物が生しないことが大前提です。これまでの「リサイクリング経済」と、サーキュラーエコノミーの間には、廃棄物に対する考え方に大きな違いがあります。
リサイクル(3R:Reduce、Reuse、Recycle)も大切な取組ですが、基本的には廃棄物が出ることを前提としています。一方、サーキュラー・バイオエコノミーでは、製品が生まれる設計段階から「廃棄物をなくす」ことを目指します。例えば、修理しやすい設計にする、リサイクルしやすい素材を選ぶ、そもそも長く使える製品にする、といったアプローチです。
なぜ今、必要とされているのか
複数の理由から、サーキュラー・バイオエコノミーが注目されています。
気候変動への対応
日本における温室効果ガス全排出量のうち、資源循環の取組で約36%の温室効果ガスを削減できるという試算があります。製品の製造から廃棄までの全段階で、資源を効率的に使い、廃棄物を減らすことで、大幅なCO2削減につながるのです。
資源枯渇リスルへの対応
2015年には880億トンだった世界の資源採掘量が2060年には1,900億トンまで増加すると見込まれており、将来的には資源価格のさらなる高騰が予測され、輸入に頼らざるを得ない日本では安定的確保が困難になるおそれもあります。限られた資源を何度も循環させることが、経済安全保障の強化にも繋がるとされています。
経済的な機会
サーキュラーエコノミー市場として2030年までに全世界で4.5兆ドル(約700兆円)、日本だけでも約80兆円の市場規模を見込んでいます。新しいビジネスモデルやサービスが生まれ、経済成長につながる可能性も高いのです。
具体例|実際の取組
サーキュラー・バイオエコノミーの実現には、様々な技術や工夫が使われています。
- リペア・リユース: 洋服の修理、家具のリフォーム、中古品の販売やシェアリングサービス。
- バイオマス活用: 農業廃棄物から新しい素材や燃料を作る、食品ロスを肥料に変える。
- リサイクル技術: プラスチックや金属を高度に再資源化し、同じレベルの製品に戻す「ケミカルリサイクル」。
- 設計の工夫: 部品が交換しやすい製品、分解しやすい素材構成、長く使える耐久性の追求。
- デジタル活用: IoTやAIを使い、資源の流れを見える化し、最適な循環を実現する。
日本での推進体制
日本では、環境省を中心にサーキュラーエコノミーへの転換を推進しています。
環境省は「循環経済工程表」を2022年9月に公表し、2050年を見据えた目指すべき循環経済の方向性と、素材や製品など分野ごとの2030年に向けた施策の方向性を示しており、これに基づき、ライフサイクル全体での資源循環に基づく脱炭素化の取組を、官民が一体となって推進しています。
さらに2023年9月に立ち上げた「サーキュラーパートナーズ」(サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ)の枠組みを活用し、2024年3月末時点で400者が参画しており、企業・自治体・大学などが連携して取り組んでいます。
私たちにできること
サーキュラー・バイオエコノミーの実現は、企業や政府だけの責任ではなく、一人ひとりの行動が大切です。日常生活でできる工夫があります。
- 長く使う: 服や家具を大切にし、修理して使い続ける。
- 中古品を活用: メルカリやフリマアプリで不要な物を売る、フリマで欲しい物を買う。
- 分別とリサイクル: 自治体のルールに従い、正しく分別・回収に協力する。
- 食品ロスを減らす: 必要な量だけ買う、期限が近い食材から使う、家庭の余った食品を寄付する。
- バイオマス商品を選ぶ: 再生可能資源から作られた商品や、再生材を使った製品を意識的に選ぶ。
- シェアサービスを利用: 季節用品や工具をシェアすることで、過度な生産を減らす。
まとめ|循環と再生可能性を組み合わせた未来へ
サーキュラー・バイオエコノミーは、単なる「ゴミを減らそう」という取組ではなく、経済システムそのものを根本から変える大きな転換です。気候変動、資源枯渇、生物多様性の損失といった課題に対して、企業の競争力強化と経済成長を両立させる道として、世界中で注目されています。
ネット・ゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブ相互の連携が重要であり、これらの3つの取組が一体となって初めて、本当に持続可能な社会が実現するのです。私たち一人ひとりが、毎日の選択を通じてこの転換に参加することが、未来の地球を守る第一歩となります。

