気候変動の悪影響で、私たちが避けられない損失と損害が生じています。それが「ロス&ダメージ」と呼ばれるものです。簡潔に言えば、温室効果ガスを減らす対策(緩和)や影響に備える対策(適応)では防ぎきれない、気候変動による「損失と損害」を指します。この記事では、ロス&ダメージの意味や具体例、世界的な取り組みについてわかりやすく解説します。
ロス&ダメージとは|気候変動で防ぎきれない被害
ロス&ダメージは、気候変動の観測された影響と予測されるリスクによる被害を広く指すもので、経済的・非経済的なものを含みます。ただし、国際的に合意された統一的な定義はありません。
気候変動対策には2つの柱があります。第1が「緩和」で、温室効果ガスの排出量を削減することです。第2が「適応」で、社会的・経済的システムを調整することによって被害を回避する対策を指します。ロス&ダメージとは、このどちらの対策でも対処できないもの、及び回避できなかったもの
です。言い換えれば、すでに起きている損害、あるいはこれから確実に起きると予測される被害の中で、人間の力では防ぎきれないものを意味します。
具体的には、どのような被害があるのか
ロス&ダメージに伴う気候変動の影響としては、干ばつや洪水、海面上昇による土地の消失、豪雨や竜巻などの災害が想定されます。
気候変動による影響には、台風や干ばつ、洪水などの短期的なものと、海面上昇や気温上昇、土地・森林の劣化などの長期的なものがあります。
実際の被害も深刻です。
バングラディシュでは塩水侵入による地下水の塩化、ブータンではモンスーンの変化による洪水や土砂崩れの増加、ミクロネシアでは海岸侵食など、すでに多くの地域で大きな被害が発生しています。
被害額は6,000億ドルにものぼるといわれており、被害があった地域の60〜96%もの住民が、気候変動に起因する被害の影響を長期的に受け続けています。
なぜロス&ダメージが国際的に注目されているのか
ロス&ダメージの問題が深刻なのは、被害の大きさもさることながら、経済格差にあります。
支援対象の大半を新興国が占めるが、資金力が乏しいため先進国を含めた世界全体での支援が課題になっています。
国連の「アダプテーション・ギャップ・リポート2022」は、2030年までに必要な支援額が年数千億ドル(数十兆円)にのぼると推計しています。
気候変動枠組み条約の交渉中だった1991年に、島しょ国が海面上昇の被害を支援する仕組みを求めたのが発端で、2022年11月にエジプトで開いた第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)で基金の設置が決まりました。
日本の取り組み|支援パッケージの展開
日本政府も独自の取り組みを進めています。
日本政府は2022年11月15日に「気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージ」を公表し、COP27で実施を表明しました。
この支援パッケージには、防災に係る能力の向上、水災害リスクの軽減に係る技術的な貢献、災害リスク保険、災害復旧スタンドバイ借款が含まれています。さらに、環境省は新たにイニシアティブを立ち上げ、有志企業との連携の下で、アジア太平洋地域における早期警戒システムのプロトタイプを構築し、導入に向けた道筋を付けることを目指しています。
私たちにできることは何か
ロス&ダメージへの対策は、個人レベルでの行動も重要です。温室効果ガスの排出を減らすことで緩和に貢献し、気候変動の進行を少しでも遅らせることができます。また、気候変動の影響を受けやすい途上国への支援を求めるアクションにも参加できます。私たち一人ひとりが気候変動の現実を理解し、行動することが、世界中の人たちが直面するロス&ダメージを最小化する第一歩となるのです。

