「完全平等まで123年」。世界経済フォーラム(WEF)が2025年6月12日に公表した「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2025」は、世界のジェンダーギャップ(男女格差)が68.8%まで埋まった一方で、現在のペースでは完全な平等の実現に123年かかると試算しました。日本は148か国中118位で、G7(主要7か国)では唯一、100位以内に入れませんでした。
その後、2026年9月には最新の2026年版も公表されています。日本は145か国中117位、完全平等までの試算は120年に更新されました。この記事では、2025年版が示した世界の現実を軸に、日本の順位の中身、2026年版での変化、そして職場・家庭・地域で次に確かめられることを順に整理します。
2025年版レポートが示した世界の現状
ジェンダーギャップ指数は、経済・教育・健康・政治の4分野で男女の差を測り、0から1のスコアで表します。1が完全な平等、0が完全な不平等です。WEFが毎年公表しており、2025年版は第19版にあたります。
「123年」の中身と、前年からの変化
2025年版の対象は148の国・地域です。世界全体のジェンダーギャップは68.8%が埋まったと報告されました。完全な平等に至るまでの年数は、2024年版の推計(134年)から11年短縮して123年となっています。前年からの改善はあったものの、1年で埋まった幅は1ポイントに満たず、歩みは緩やかです。
この年のレポートでは、進展の主な推進力は政治参画と経済参画だったと整理されています。一方で、完全な平等を達成した国はまだ一つもありません。
進んだ分野と、残っている分野
分野ごとの差は大きく開いています。教育と健康の分野は、世界全体でも95%を超える水準に達しています。学ぶ機会や健康に生きる権利の面では、男女差はかなり縮まっているといえます。
それに対して、働く場と意思決定の場には大きな壁が残っています。世界の労働力に占める女性の割合は41.2%ですが、経営の最上層である上級管理職に占める女性の割合は28.8%にとどまります。「働く女性は増えたのに、決める立場には届きにくい」という構図が、数字ではっきりと出ています。
首位はアイスランド、上位に並ぶ国々
2025年版の首位はアイスランドで、16年連続でした。ジェンダーギャップの92.6%を埋めており、90%を超えた唯一の国です。2位以下はフィンランド、ノルウェー、英国、ニュージーランドの順でした。
「123年」をどう読むか|誤解されやすいポイント
「あと123年」という数字は印象が強く、そのまま独り歩きしがちです。検索で見かけた数字をもとに「自分が生きている間には変わらない」と受け止める方もいるかもしれません。ここでは、数字を読むときに押さえておきたい点を3つ整理します。
123年は予言ではなく、現在のペースを延ばした試算
123年という年数は、直近の改善速度が今後も続くと仮定して計算した結果です。実際の速度は、法制度の変更や社会の動きによって変わります。2024年版では134年と試算されていたものが、1年で11年短縮されたことからも、数字が固定されたものではないとわかります。
2026年版ではさらに120年へ更新されました。「あと何年」という数字は、現在地を知るための目安として使うのが適切です。
順位は他国との相対で動く
もう一つの注意点は、順位が自国の変化だけで決まらないことです。日本の総合スコアは、2025年版で0.666、2026年版で0.670でした。わずかに上がったことで、順位は118位から117位へ一つ上がっています。
つまり、日本のスコアが良くなっても、他国がそれ以上に進めば順位は下がり得ます。順位の上げ下げに一喜一憂するよりも、スコアと分野別の中身を見るほうが、実態に近づけます。
指数が測るもの、測りにくいもの
指数が主に使うのは、賃金、就業率、管理職の比率、議員や閣僚の人数など、国際的に比較しやすい統計です。そのため、家庭内での家事・育児・介護の分担のように、統計に表れにくい領域は十分に反映されない面があります。
反対に、女性閣僚の人数のように、1回の内閣改造で数字が大きく動く項目もあります。指数は有用な物差しですが、暮らしの実感のすべてを表すものではない、と理解しておくと数字を落ち着いて読めます。
上位国とG7を比べると見える日本の位置
世界全体の数字を押さえたところで、日本がどこに立っているかを見ていきます。比較の相手は、首位を続ける北欧諸国と、同じ先進国グループであるG7です。
北欧が上位を保ち続ける背景
アイスランドをはじめ北欧諸国が上位に並び続ける背景として、育児休業制度、保育の整備、政治分野での女性登用を後押しする仕組みといった、制度面の積み重ねがしばしば指摘されます。数字は一朝一夕には動かず、長い年月をかけた制度設計の結果として表れています。
北欧5か国は、国連の女性の地位委員会(CSW)でも共同で発信を行っています。その内容は、次の記事で詳しく紹介しています。
G7の中で日本はどこにいるか
2025年版のG7各国の順位は次のとおりです。
- 英国は4位
- ドイツは9位
- カナダは32位
- フランスは35位
- 米国は42位
- イタリアは85位
- 日本は118位
G7の中で100位以内に入れなかったのは日本だけです。日本の次に順位が低いイタリアとも、30位以上の開きがあります。同じ先進国でも、ジェンダーギャップの度合いは国によって大きく異なります。
日本が118位になった理由|分野別に見る
日本の総合スコアは0.666でした。数字の中身を分けて見ると、順位を押し下げている分野と、そうでない分野がはっきりします。
経済112位、政治125位という二つの壁
2025年版の分野別の結果は次のとおりです。
- 経済は0.613で112位
- 教育は0.994で66位
- 保健は0.973で50位
- 政治は0.085で125位
教育と保健はほぼ平等に近いスコアですが、経済と政治は順位が大きく下がります。学ぶ機会は男女でほぼ同じように得られているのに、働く場や意思決定の場に出ると差が開く。日本のジェンダーギャップは、この落差に特徴があります。
閣僚の人数で、政治分野の順位は12位動いた
政治分野は、前年の113位から125位へ12位下がりました。背景として指摘されているのが、女性閣僚の減少です。2024年10月に発足した石破内閣の女性閣僚は2人で、全体の10%でした。それ以前の内閣では5人(25%)でした。
人数が数人変わるだけで順位が大きく動くのは、閣僚の比率が指数の政治分野を左右するためです。ただ、この変動は一時的な内閣の顔ぶれの話にとどまりません。議会や政党の中で女性が増える仕組みが十分でないことの表れとも読めます。
「教育・保健が高いから大丈夫」とは言い切れない
教育と保健のスコアが高いことは、日本の強みです。一方で、学ぶ場での平等が、そのまま働く場や政治の場での平等につながっていない点が課題として残ります。この差の背景には、働き方、昇進の慣行、家庭内の役割分担など、複数の要因が重なっていると考えられます。
特定の誰かの責任に帰せる話ではなく、社会の仕組み全体で考える必要があるテーマです。
2026年版で何が変わったか
2025年版から約1年後の2026年9月16日、WEFは最新の2026年版を公表しました。記事の主題は2025年版ですが、いま検索している方が知りたいのはおそらく最新の状況でもあるため、変化を押さえておきます。
世界全体の数字
2026年版の対象は145の国・地域です。世界全体のジェンダーギャップは69.2%が埋まり、完全な平等までの試算は120年となりました。首位はアイスランドで17年連続、スコアは0.930でした。2位はフィンランド、3位はノルウェーです。分野別では、経済参画(61.7%)と政治参画(22.1%)が平等から最も遠い分野として挙げられています。
123年から120年へという変化は小さな前進ですが、同時にレポートの見出しには、20年間の進展が「脆い」状態にあるという趣旨の警告も含まれています。数字が良くなったことと、これからも良くなり続けることは別の問題だ、というメッセージです。
日本は117位、政治は4つ上昇
日本は145か国中117位で、前年の118位から一つ上がりました。分野別では、政治が121位(前年から4つ上昇)、経済が119位、教育が68位、健康が49位と報じられています。G7では引き続き最下位です。
レポートは、高市早苗氏が2025年10月に初の女性首相に就任したことを「歴史的な出来事」と評価しました。ただし政治分野は「なお下位にとどまっている」とも指摘しています。東アジア・太平洋地域では下から3番目で、中国(96位)や韓国(101位)より低い順位です。
首相という最上位の役職に女性が就いたことと、議会や管理職の裾野が広がることは、別の課題です。2026年版の結果は、その両方を映しています。
日本の現場で起きていること|管理職・法改正・育休・議会
世界の数字と順位を見たうえで、日本国内の最新データに目を移します。順位の背景にある現場の数字と、変化を後押しする制度を確かめます。
女性管理職の比率は、緩やかに上がっている
厚生労働省の「雇用均等基本調査」で、管理職等に占める女性の割合を見ると、令和6年度(2024年10月時点)は部長相当職が8.7%、課長相当職が12.3%でした。令和7年度(2025年10月時点、2026年7月公表)は、部長相当職が9.2%、課長相当職が13.2%、係長相当職が20.9%となっています。
1年でそれぞれ0.5〜0.9ポイントの上昇で、方向は改善に向かっています。ただし政府が掲げる女性管理職30%という目標との距離は大きく、このペースのままでは時間がかかります。同じ調査で、女性の正社員のうち総合職の割合が41.0%となり、初めて一般職を上回りました。入口の段階では変化が見え始めています。
2026年4月施行|改正女性活躍推進法で何が変わったか
制度面では、改正女性活躍推進法が2026年4月1日に施行されました。主なポイントは次のとおりです。
- 男女間賃金差異の情報公表義務が、従業員301人以上から101人以上の企業へ拡大された
- 女性管理職比率の情報公表が、101人以上の企業に新たに義務づけられた
- 法の有効期限が2036年3月31日まで10年間延長された
- 女性の健康上の特性に配慮することが基本原則に明記され、ハラスメント対策が政府の基本方針に位置づけられた
賃金や管理職の実態が数字で公表されることで、企業は自社の課題を客観的に把握できます。働く人や求職者も、勤め先や志望先を比べる材料を得られます。施行から半年が過ぎた今、各社の公表内容は、情報が出そろいつつある段階です。
法改正の背景や、具体的にどのような企業が取り組みを進めているかは、次の記事にまとめています。
男性の育休、そして議会の女性比率
家庭側の変化を示すのが、男性の育児休業取得率です。令和7年度の雇用均等基本調査では50.9%となり、初めて50%を上回りました(前年度は40.5%)。女性の取得率は88.3%でした。取得率の上昇は、家事・育児の負担を分け合う方向への動きとして注目できます。ただし取得期間の長さや、復帰後の働き方まで含めて見る必要があります。
政治では、2026年2月の衆議院議員総選挙で、候補者に占める女性の割合は24.4%、当選者に占める女性の割合は14.6%でした。地方議会は、令和7年12月末時点で特別区議会が36.2%、市議会全体が20.3%、町村議会が14.9%、都道府県議会が14.7%です。同じ地方議会でも、地域や自治体の種類によって大きな差があります。
国の方針として、男女共同参画の取り組みを5年ごとに計画する第6次基本計画も閣議決定されています。その内容は、次の記事で確認できます。
数字を自分の暮らしに引き寄せる|今日から確かめられること
世界や国の数字は大きく、自分には遠く感じられるかもしれません。ここでは、10月の今、秋の就職活動や転職の検討、来年度の準備が重なる時期に、手元で確かめられることを挙げます。
職場や志望先の公表データを読む
改正法の施行で、101人以上の企業は男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務になりました。公表先として、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」が最も適切とされています。働いている会社や、就職先として考えている会社のページを一度開き、次の点を確かめてみてください。
- 男女間賃金差異の数値と、その差が生じている理由の説明があるか
- 女性管理職比率が、前年と比べてどう推移しているか
- 同じ業界の他社と比べて、どの位置にあるか
数字が低いからといって、直ちに「悪い会社」とは限りません。改善に向けた目標や取り組みが説明されているか、という点が判断の手がかりになります。
家庭での分担を話し合う
育休取得率の上昇は、家庭内の話し合いが変化のきっかけになる可能性を示しています。仕事、家事、育児、介護を誰がどれだけ担っているかを、一度言葉にして書き出してみる方法があります。負担が一方に偏っていないかを確かめるだけでも、見直しの出発点になります。
地域の議会を確かめる
地方議会の女性比率は、自治体によって大きく異なります。自分が住む市区町村や都道府県の議会の男女比は、各議会のウェブサイトなどで調べられます。次の選挙で、候補者の顔ぶれや政策を見る際の一つの視点になります。
まとめ
2025年版のレポートは、世界のジェンダーギャップが68.8%まで埋まり、完全な平等まではあと123年かかると試算しました。教育と健康はほぼ平等に近づいた一方、経済参画と政治参画に大きな壁が残っています。日本は148か国中118位で、G7では唯一100位以内に入れませんでした。
最新の2026年版では、世界の試算は120年に、日本は117位に更新されました。数字は少しずつ動いていますが、レポートは進展の脆さも指摘しています。日本国内でも、女性管理職比率の上昇、男性育休取得率の初の50%超え、改正女性活躍推進法の施行といった変化が起きています。
123年という数字は、動かせない未来の予告ではありません。制度の整備と、職場・家庭・地域での確認の積み重ねによって、変わり得る試算です。まずは、気になる会社の公表データを一つ開いてみることから始めてみてください。
- 2025年版は世界の男女格差を68.8%解消、完全な平等まで123年と試算した
- 日本は148か国中118位で、経済112位・政治125位が順位を押し下げている
- 2026年版では世界が120年、日本が117位に更新され、進展は脆いとも指摘された
- 2026年4月から、101人以上の企業に賃金差異と女性管理職比率の公表が義務づけられた
- 公表データの確認、家庭での分担の見直し、地域議会の男女比の確認が、身近な一歩になる
参考文献
- 世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」(2025年)
- 世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2026 Digest」(2026年)
- nippon.com「ジェンダーギャップ指数、日本は118位のまま」(2025年)
- nippon.com「ジェンダーギャップ指数117位」(2026年)
- 秋田魁新報「男女平等、日本117位 高市首相就任もG7最低」(2026年)
- 厚生労働省「女性活躍推進法改正で何が変わる?」(2026年)
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(2026年)
- 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和8年版 政治分野」(2026年)




