スーパーの棚に並ぶ食品のほとんどは新しく見えますが、その一方で毎日大量の食べ物が廃棄されていることをご存じですか?その背景に「3分の1ルール」という日本独特の商習慣があります。私たちが日ごろ何気なく買い物をしているその先に、どのような仕組みが隠れているのでしょうか。この記事では、3分の1ルールの定義から、その問題点、そして私たちにできることまでを、わかりやすく解説します。
3分の1ルールとは何か
3分の1ルールは、食品流通におけるサプライチェーンで、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例
です。
製造日から賞味期限までの期間を3分割し、それぞれに期限を設ける仕組みで、最初の3分の1の期間は「納品期限」、次の3分の1の期間は「販売期限」、最後が「賞味期限」
となります。
具体例を挙げると、製造日から賞味期限までが6ヶ月の食品の場合、最初の2ヶ月の間にメーカーや卸売業者は小売店に納品しなければなりません。その後の2ヶ月間が小売店での販売期限で、残りの2ヶ月が消費者がおいしく食べられる賞味期限として機能します。
3分の1ルールは法律で定められているわけではなく、食品業界が自主的に行ってきた商習慣
です。ただし
海外にも同様の商習慣があり、アメリカは2分の1ルール、ヨーロッパは3分の2ルール
となっており、日本のルールがいかに厳しいかがわかります。
なぜ3分の1ルールが生まれたのか
3分の1ルールは1990年代のバブル崩壊後、消費が低迷する中で始まった商習慣で、3分の1という期間は、顧客・流通チャネル・メーカーの3者が賞味期限を等分するという考えに基づいています。
メリットは、小売チャネルにおける食品在庫の鮮度確保や賞味期限切れの防止にあり、日本の消費者が鮮度にこだわり、なるべくなら賞味期限の長いものを選ぼうとすることが背景にあります。消費者のニーズに応えるため、小売店は常に新しい商品を棚に並べる必要があったのです。
深刻な食品ロスの問題
しかし、この仕組みには大きな問題があります。
納品期限を過ぎた商品は、賞味期限まで多くの日数を残すにも関わらず廃棄とされる可能性があります。つまり、食べられるのに捨てられてしまう食品が大量に発生するのです。
日本国内では、年間570万トンの食品ロスが発生しており、なかでも3分の1ルールが主な原因といわれている事業系の食品ロスは年間309万トン
です。
日本では1年間に約523万トンもの食料が捨てられており、これは毎日に換算すると大型トラック(10トン車)約1,433台分に相当します。
改善に向けた取り組み
こうした課題に対応するため、農林水産省を中心に動きが進んでいます。
2020年10月時点で、納品期限を緩和(または予定)している小売事業者は142事業者に達し、前年度より拡大しています。
農林水産省では、食品小売業者に対し納品期限の緩和を、食品メーカーに対しては賞味期限表示の大括り化や賞味期限の延長、食品事業者全般に対してはフードバンクや子ども食堂等への食品の提供を呼びかけています。
また、セブン‐イレブン・ジャパンは常温加工食品については納品期限を3分の1から2分の1に変更しました
など、個別企業の取り組みも広がっています。
私たちにできること
この問題の解決は、企業の取り組みだけでなく、消費者である私たちの行動も重要です。
賞味期限が近い食品を積極的に購入することや、賞味期限は「おいしく食べられる期間」であり「食べてはいけない期間」ではないことを知って行動するだけでも、販売側の売れ残りへの懸念を緩和させることができます。
さらに、店頭では奥の商品ではなく手前の商品を選ぶ「てまえどり」の実践や、訳あり品を購入するなど、日々の買い物での心がけが食品ロス削減につながります。一人ひとりの小さな行動が、やがて大きな変化を生み出していくのです。

