アフリカ大陸の南東部に位置するマラウイ共和国。貧困や紛争といったイメージが先行しがちなアフリカの国々の中でも、温厚で親しみやすい国民性で知られています。そんなマラウイと日本をつなぐべく、2015年に筑波大学の学生によって設立されたのが日本マラウイ学生団体です。
現在では「日本とマラウイの架け橋になる」という理念を掲げ、渡航活動や勉強会、講演会、料理会など、多彩な活動を展開しています。今回は同団体代表で筑波大学3年の遠藤さんと2の3名にお話を伺いました。
「日本マラウイ学生団体」設立の経緯
―団体の設立年、設立目的、立ち上げの経緯を教えてください。
2015年に設立されたこの団体は、「大学生としてアフリカの一国、マラウイ共和国と継続的に関わり、マラウイに見られる国際的な問題に立ち向かう」という目的でスタートしました。
設立のきっかけは、当時2名の筑波大学生が「国際協力ができる団体を作りたい」という強い想いを持ち、東京にあるたくさんアフリカの国々の大使館を訪ね歩き、その中で、在日マラウイ共和国大使館が特に親身な対応をしてくれたことが縁となり、マラウイを選んだそうです。
また、実際に活動を重ねる中で、団体として目指す方向性は次第に変化しています。当初はマラウイの国際問題に正面から立ち向かうというイメージでしたが、現在では「日本とマラウイの架け橋になる」ことを理念とし、日本人におけるマラウイやアフリカのイメージをより豊かなものにしていくことをミッションとしています。この変遷は、現地への渡航や活動を通じて得た多くの学びや気づきが背景にあります。
―団体のビジョン・ミッションを教えてください。
団体理念は、「日本とマラウイの架け橋になる」です。途上国支援というよりは、「みずから学び、発信することを通じて日本人におけるマラウイやアフリカのイメージをより豊かなものにしていく」ことをミッションに活動しています。
途上国の人達に何かできることはないかという視点で始まった団体ですが、実際に渡航すると学生である私たちにできることは少なく、むしろ彼ら彼女らの前向きさと底抜けの笑顔から学ばされることが多く、実際に私たちも去年渡航した際に同じようなことを感じました。
多くの日本人がアフリカについて抱くのは、貧困や紛争といった負の側面に偏ったイメージで、マラウイ渡航活動で感じたそのような「明るさ」や「豊かさ」の側面は、いまだ日本においてほとんど報道されることが無いように感じます。
マラウイやアフリカに沢山ある「正の側面」も含めたリアルなアフリカ像を発信していき、そうした見方を少しずつ変えていくことが、私たちにできる最も有意義な国際協力の一つなのではないか。現在はそうした思いのもと活動を続けています。
具体的な活動内容
―現在の主な活動を教えてください。
アフリカやマラウイについて「知り」、それを団員内で噛み砕いて外部の方々に「伝える」という活動を主にしています。
日々、マラウイやアフリカについての勉強を進め、毎週のミーティングで発表を行う「勉強会」を実施したり、アフリカに関わりのある方々が集まるイベントに参加したりしながら、交流や意見交換を行っています。
さらに、ガーナ出身の留学生メンバーに地元料理を教わりながら一緒に作って楽しむ「料理会」や、マラウイの伝統布「チテンジ」を使って巾着を作る手芸イベントも開催しました。大学の学園祭にも出店し、マラウイ産のコーヒーを提供するなど、日本とアフリカを繋ぐ活動を行っています。
他に講演会も開催していて、留学経験のある団員の先輩や、青年海外協力隊員としてマラウイで活動された方を招いて、現地のリアルな声を共有しました。また、来年には、今年残念ながら実現できなかった渡航活動も実施する予定です。
―勉強会は具体的にどのようなことを学んでいるのですか?
勉強会は基本的に個人がテーマを決めて発表するスタイルです。たとえば、「理学療法に興味があるから、マラウイの医療制度を調べてみよう」「環境分野が好きだから、マラウイ湖の漁業状況をレポートしてみよう」など。それぞれがスライド資料を作成したり、文献を読んだりして発表した後、全員でディスカッションをします。
―マラウイへの渡航活動も行っているのですか?
2019年までは毎年渡航していましたが、コロナ禍で一時ストップし、2023年にようやく再開しました。ただ、2024年は資金的な問題などで行けず、来年こそは再び渡航を実現させたいと思っています。
―現在のメンバー数と組織構成を教えてください。
現在、団体には17名のメンバーが所属し、その中にはガーナやジンバブエ出身の2名のアフリカ人留学生もいます。組織は代表1名、副代表2名を中心とした幹部陣が全体の運営を担い、SNSの運用や会計管理を担当するメンバーがそれぞれ役割を分担しています。また、新たな企画が立ち上がるごとに、その推進メンバーが組織される柔軟な構成となっています。
団体活動の特徴とは?
―他団体と違う何かユニークな特徴があれば教えてください。
「アフリカに焦点を当てている点」と「自由な活動ができる点」が挙げられます。アフリカやマラウイに関することなら幅広く探求できるため、メンバーの興味に応じて柔軟に決めることが可能です。
―活動を行う中でのやりがいを教えてください。
メンバーの一人は、「マラウイやアフリカへの解像度を高めることができるのが、この活動の一番のやりがい」と語ります。日本に暮らしていると、アフリカの文化や現地の人々の暮らしに触れる機会は少なく、報道を通じて植え付けられるネガティブなイメージが先行しがちです。
でも、団体の活動を通じて得た現地の「前向きさ」や「明るさ」に触れることで、新たな視点を得ることができたそうです。そして、知れば知るほど「自分がどれだけ知らなかったのか」に気づかされ、ますます現地に行って学びたいという気持ちが強くなったといいます。
―反対に大変と思うことはありますか?
活動に対して制限がなく自由な点が多い一方で、裏を返せば活動内容の大半を自分たちで決めなければならないということでもあります。
つまり「どんな活動をすれば良いのか、毎回一から活動内容を考える必要がある」という点で、自分たちで方向性を模索しながら進めなければならず、ときには「自分たちは何をしたいのか?」と悩んだり、立ち止まったりすることもあります。ただ、考え悩み続けることが結果としてマラウイやアフリカに対してもっと深くかかわっていきたいという気持ちにつながったという声も多いです。
また、渡航を希望していますが、費用面はどうしても課題です。過去にはクラウドファンディングの実施や、助成金の申請などを行いましたが、最近は飛行機代も高騰していてますます必要な渡航費が上がっているので大変です。
―確かに渡航費の工面は大変ですよね。でも現地での学びはやはり大きいですか?
はい、「実際に自分の目で見て学ぶ」経験は大きいと思います。僕自身は大学2年生のときに初めて現地に渡航し、現地の空気や町の雰囲気を直接感じられたことがとても印象的でした。今度は新しく入ったメンバーも現地を見られるよう、来年は何としても渡航したいですね。
―団体に加入するのはどんな入会理由が多いですか?
大学で学びたい分野とアフリカを結びつけてみたいと思ったり、アフリカの文化的な側面に対して興味を持っていたり、国際協力への興味から団体に興味を持ったり、アフリカに渡航したいと思ったりと、入団の動機は様々です。
共通しているのは、アフリカに焦点を当てているという点に惹かれ入団のきっかけとなったというメンバーが多いような気がします。
代表の僕は元々アフリカという地域に漠然とした関心があり、入学して日本マラウイ学生団体の存在を知ったときに自分が興味のある分野について、アフリカを軸に学べるという点がユニークに感じました。さらに、マラウイにいけるかもしれない!ということも魅力的に感じ入団することにしました。
―最後に、今後の活動方針について教えてください。
こちらもメンバーそれぞれに様々な考えがありますが、例えば、これまでは日本人にマラウイを知ってもらう活動が中心でしたが、今後はマラウイの人にも日本のことを知ってもらえるような活動をして相互理解を深めたいという意見もあります。
そのためには、マラウイの大学生と対話を重ね、互いの物事の見方を共有し、新たな視点を生み出したいと考えています。日本とマラウイの若者が協働し、より良い未来を共創していくことを目指したいです。
また、来年はぜひ現地への渡航を再開し、現地の様子を発信したり、筑波大学内だけでなくもっと外部に向けてアフリカやマラウイのことを伝えていき、発信面でも強化していきたいと思っています。
―今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。
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