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水圏環境の未来を創る大学生たち―東京海洋大学 igoan ユネスコクラブの歩みとこれから

コロナ禍の影響によって、大学でも思うようにサークル活動ができない時期がありました。そんな制約の中でも「海や川、湖といった水圏環境にまつわる魅力や課題を、多くの人に知ってほしい」という熱い想いを原動力に立ち上がったのが、「東京海洋大学 igoan ユネスコクラブ」です。

メンバーは全員東京海洋大学の学生であり、海と水の専門的な学びを生かしながら、企業・学校・NPOなどと連携し「体験型の教育イベント」や「魚食の普及活動」を展開しています。今回は、団体設立の経緯や活動の特徴、そして未来を見据えた挑戦について、同団体代表の城取さん、副代表の中川さんに詳しくお話を伺いました。

東京海洋大学 igoan ユネスコクラブ」設立の経緯

―団体の設立年、設立目的、立ち上げの経緯を教えてください。

城取さん)実は私たちの団体は、もともと私の兄が立ち上げたサークルで、私は3代目の代表です。当時、新型コロナウイルスの影響によって、大学で「水圏環境」に関するサークル活動がなかなかできなくなっていた時期がありました。それでも、私たち海洋大学の学生として、海や川、湖など「水圏」と呼ばれる環境に関わる課題と魅力を伝えたい。さらに教育活動にも力を入れ、未来により良い環境を残すための取り組みをしようという想いで、2021年に設立されました。

―「水圏環境」とは具体的にどんなものを指すのですか?

中川さん)海や川、湖、沼など、地球上のあらゆる水域の環境全般を指しています。東京海洋大学では、水圏環境教育学といって、海や水にまつわる課題・魅力を伝える方法を学ぶ授業があります。私たちが行っている活動は、そこで学んだ内容を実際に子どもたちや地域の方に伝えていく、いわば「実践の場」にあたります。

団体名の由来を教えてください。

城取さん)私たちの団体名は、英語の Innovation Group Of Aquatic Nature というフレーズの頭文字を取って「igoan(アイゴーン)」と名付けました。意味としては、水圏環境の新しい可能性を切り拓いていきたいという想いが込められています。

また、私たちはユネスコクラブに所属しているのですが、メンバーが全員東京海洋大学の学生なので、正式には「東京海洋大学 igoan ユネスコクラブ」という名称で活動しています。

具体的な活動内容

現在の主な活動を教えてください。

 城取さん)企業や学校、NPOなどと連携しながら「体験型」の教育イベントを企画・実施しています。たとえば、学校に出向いて出前授業を行ったり、地域のコミュニティプラザで子ども向けの海洋学習イベントを行ったり。さらに、魚食普及活動の一環として料理教室を開き、豊洲市場から仕入れた新鮮な魚を調理してもらう体験会も行っています。魚を実際に食べたり触れたりすることで、海への関心を高める狙いがあるんです。

仕入れの様子-豊洲市場

 

中川さん)子どもたちへの授業は中学生や高校生を中心に行うことが多いですが、小学生向けに真珠の取り出しもやっています。その際、子どもたちだけでなく、一緒に来られる保護者の方までとても関心を持ってくださるのも嬉しいです。

団体活動の特徴とは?

igoanの何かユニークな特徴があれば教えてください。

城取さん)私たちの団体の強みは、学内や豊洲市場、小田原漁港などの専門家や仲買人の方々と直接つながっていて、「仕入れ」から「イベント」までを自分たちでやっている点ですね。たとえば、漁港でセリに立ち会いながら新鮮な魚を仕入れて、当日に子どもたちと一緒に「魚拓(ぎょたく)」を取るイベントを行いました。触った魚は最終的に「魚粉」としてリサイクル業者さんに渡して有効活用してもらうなど、捨てずに循環させる仕組みも整えています。

魚拓体験

また、200キロ級の本マグロや70キロ級のキハダマグロの尾びれを仕入れたこともありました。子どもたちはマグロの大きさに驚きながら尾びれを触って、本物を体感できます。こうした「実際に触れる」体験はやはり好評ですね。

小田原漁港での魚の仕分けの様子

小田原漁港での魚の仕分けの様子

 

活動を行う中でのやりがいや、反対に大変なこと、学びを教えてください。

 城取さん)まず、自分たちが学んできたことをイベントなどで参加者に伝えるって難しいと思うことが多く、どうやったらわかりやすく伝えることができるかを常に試行錯誤しています。それから、企業や自治体とのコミュニケーションや合意形成も大事です。日程調整やそれぞれの目的、お金の管理などいろいろある中で、お互いが納得できるイベントづくりには調整力が必要だと日々痛感しています。

中川さん)活動を通じて「社会とのつながりっていいな」と感じられることが多々あります。私たちの活動に共感してくださる方が、「協力したい」「これを活用してほしい」と手を差し伸べてくれることが多い。そうした声やサポートを得られると、本当に嬉しいです。もう一つは、「プロジェクトをゼロから完成させる」ことの難しさとやりがいですね。メンバー同士の意見調整もぶつかることがありますが、イベントが終わって子どもたちや保護者のアンケートを読むと、「こんなにイベントを楽しみ、学んでくれたんだ!」と手応えを感じられて、また次の活動に挑戦したくなります。

今後の活動予定について教えてください。

城取さん)まず5月末に、葉山の「真名瀬海岸」で中学3年生約120人規模の「ひじき漁」体験イベントを行う予定があります。漁師さんの仕事を実際に見たり、海の生態系やそこで起こっている環境問題をその場で学んでもらったりと、大規模な体験学習を企画しています。都会の子どもたちが海で学べる貴重な機会になりそうです。

中川さん)もう一つは「廃棄漁網(はいきぎょもう)」を活用したアップサイクルへの取り組みです。漁で使い古された網を再利用し、ファッションデザイナーの方と協力してドレスを制作しています。網をただ捨てるのではなく、新しい価値に変えて多くの人に見てもらうことで、漁業の現場にある課題や資源の大切さを知ってもらいたいんです。これも大学内での展示や外部ファッションイベントへの参加など、いろいろな形で発信していきたいと思っています。

最後に読者の方にメッセージをお願いします。

 城取さん)海や魚に関心を持つというのは、決して研究者や漁業従事者だけの問題ではありません。私たちが普段食べる魚や、レジャーで訪れる海水浴場など、実は「海」は私たちの生活と密接に関わっています。小さな興味からでも構わないので、ぜひ海の現状や課題に目を向けてみてほしいと思います。

中川さん)環境問題というと難しく聞こえがちですが、一番大事なのは「まずは知る」こと。子どもの頃に海や魚を好きになってもらうことで、将来の選択肢が広がるし、大人になってからの行動にもつながります。私たちも「楽しく学んでもらう」イベントを目指していますので、ぜひどこかで一緒に海や魚に触れる機会をつくってみてください。

―今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。

▼ 今回活動をご紹介した「東京海洋大学 igoan ユネスコクラブ」のページはこちら
Instagram:https://www.instagram.com/igoan__/
X(旧Twitter):https://x.com/igoan2

 

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