SDGsやダイバーシティといったキーワードが、日本ではまだ十分に注目されていない2018年頃、東洋大学の学生が自らの手で変化を起こそうと立ち上がったのが、東洋大学の学生団体TIPSです。
今回は、学生団体TIPSの設立の経緯、活動内容、そして学生としてどのようにSDGsとダイバーシティの問題に取り組んでいるのか、MIRASUS編集部がお話を聞きました。
「TIPS」設立の経緯
―団体の設立年、設立目的、立ち上げの経緯を教えてください。
2015年9月に国連でSDGsが設定されましたが、日本国内ではまだまだ知名度が低かった2017~2018年頃、当時の設立メンバーが海外に行く中で、サステナビリティやダイバーシティといったキーワードが盛んに議論されていることを知りました。
私たち学生や若者がこれらの課題に取り組むべきだと感じ、2018年に東洋大学の経済学部総合政策学科と、国際学部グローバルイノベーション学科の当時2年生の計4名で学生団体TIPSを設立しました。
SDGsは多様な領域に関わることから、東洋大学の学生の学部・学年を超えた交流を活性化し、上述の通り当時まだ日本国内での知名度が低かったサステイナビリティやダイバーシティなどの考え方を普及することを活動目的としました。
―団体のビジョン・ミッションを教えてください。
活動テーマとして「SDGs・ダイバーシティ × 学生の成長」を掲げています。
ここに行き着いた経緯としまして、SDGsは世界をより良くするためのあくまで手段であり、SDGsを目的にすると活動が行き詰まってしまう可能性があります。そのため、SDGsを軸にしつつ、大事なのは具体的にどのようなアクションを起こすか、という部分だと考えています。
学生である私たちが、社会に対して具体的なアクションを取っていけるような人材にならなくてはいけないという思いで、活動テーマの中にも「学生の成長」を言葉として取り入れました。
具体的な活動内容
―現在の主な活動を教えてください。
企業や団体と連携し、SDGsやダイバーシティをテーマとした情報発信が活動の軸となっています。
具体的には、学生・社会人を対象に、ビジネスとして本質的にSDGsに取り組む企業をゲストに迎えたオンラインイベントの開催や、サステイナビリティ・ダイバーシティに関わる事業を行うスタートアップ企業や店舗等を取り上げて掲載するWEBメディア『RECT』の運営を行っています。
また、そのほかの活動として、SDGs等をテーマとしたイベントやセミナー、メディアへの登壇・出演や、アイデアコンテスト等への出場、メンバーや外部のビジネスパーソンが登壇する勉強会の開催などに取り組んでいます。
―現在のメンバー数と組織構成を教えてください。
メンバーは約25名。学生時代にTIPSメンバーとして活動していたOB・OGが団体に関わり続け、後輩たちと交流することをひとつの特徴としており、メンバーのうちOB・OGは6名います(2023年度)。東洋大学の学生が多いですが、他大学の学生も参加可能です。
―活動を行う中でのやりがいや、反対に大変なことを教えてください。
指導教員を持たない団体のため、イベントやメディアを学生の力でゼロから創っている点は、大変な部分ですが、その分とてもやりがいを持って取り組んでいます。
企業との交渉や調整、参加者の募集、記事の編集など、苦労することは多いですが、過去開催したイベントの満足度は非常に高く、またメディアの閲覧数も少しずつ伸びてきて、関わった企業や団体からも評価をいただけることが多いため、各企画を世に出した大きな達成感を感じられます。
一方で、SDGsやダイバーシティに対する世間の認識の変化が大きく、発信の仕方に苦労する場面があります。また、活動内容として、イベントやメディアで企業と関われるといった華やかな印象に対して、活動にかかる労力やエネルギーの負担が大きく、学生のコミットメントが低下していることは現状の課題です。
―他団体の違う何かユニークな特徴があれば教えてください。
毎年度末に、卒業を迎えるメンバーが後輩向けに就職活動を振り返って話をする『就活トーク』という企画を開催しています。
これには、卒業を迎えるメンバーが「自身の学生生活を振り返る」という目的と、後輩メンバーがその後の学生生活を考えるきっかけをつくることの2つの目的があります。
また前述の通り、卒業後にも任意で団体に関わってもらう体制を作っており、学生生活における相談を、社会人になった先輩にすることが可能になっています。
さらに、ミーティング等を含め、毎週必ず何曜日の何時など、定期的な活動時間をあえて設けていない点も、他団体にあまりないかもしれません。
TIPSでは「プロジェクト制」と呼んでいるのですが、企業からのオファーがあると、それを全メンバーに共有し、3〜5人程度のチームを組成して実行する活動体制を取っています。学生にはそれぞれ授業やアルバイト、就職活動などがあるので、スケジュール調整してなるべく自分が興味のある活動に関われる環境を作れるように工夫しています。
外部との関わりや今後の展望
―大学や企業、自治体や地域の方など外部との関わりは何かありますか?
東洋大学のなかで非常に早期にSDGsを掲げた団体であったことから、大学がSDGs行動憲章を制定した際のシンポジウムに学生を代表して登壇しました。また、企業や法人とは、前述のWEBメディアやオンラインイベント等を通じて数多く関わりを持っています。
自治体や地域の面では、文京区で活動する「ケムラン」という完全禁煙のお店を紹介するネットワークへの協力や、茅ヶ崎市の青年会議所が主催する茅ヶ崎市のエコタウン化推進の取り組みでは、海洋汚染の問題をテーマに夏のイベント開催を提案させていただくなどしました。
―学生にとって企業や自治体とゼロから関係を築くことはハードルが高いと感じますが、どのように取り組んでいるのですか?
実は、我々のホームページやSNSを通じて、企業や団体からお声がけをいただくことが多いです。
信頼できる学生団体と思っていただけるよう、戦略的に活動の実績や取り組みをホームページ等で発信していますが、そういった学生団体はまだまだ少なく、積極的に情報を発信することで、新しい案件の依頼が増えてきました。
また、一度関わった企業や団体からの紹介や、外部コンテストでの受賞などが、新しいパートナーとの関係構築のきっかけとなりました。SDGsやダイバーシティといった考え方はここ数年で大きく広がりましたが、それに伴って、学生や若者と連携して、サステイナビリティやダイバーシティを考えたい・発信したいと考えている企業や団体が増えていると感じます。
―最後に今後の活動予定や方針などありましたら教えてください。
コロナ禍で、オンラインイベントやWEBメディアの活動を通じて多くの方にサステイナビリティやダイバーシティについて考えるきっかけを提供することができたと考えています。
今後は対面機会が再開し、コロナ禍を学生として過ごしてきたメンバーの卒業、留学などが再び可能になったことや、対面でのイベント機会をつくることができるようになったこともあり、活動環境が大きく変わるので、これからの活動方針を模索している段階です。
また、今は企業や自治体からお声がけをいただく点で少し受け身になってしまっている部分もあるのですが、今後は企業とのコラボも含め、TIPSとしてこちらからさらに積極的に提案できるようにしたいと考えています。
SDGsは17の目標に沿って幅広い領域に渡っているので、私たちも今よりさらに広い視野でアプローチできるようにしたいです。
―今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。
▼ 今回活動をご紹介した学生団体TIPSのホームページはこちら
https://toyotips.themedia.jp/