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「健康経営」から「ウェルビーイング経営」へ|2026年、企業と自治体が変わるべき理由

「健康経営」から「ウェルビーイング経営」へ|2026年、企業と自治体が変わるべき理由

従業員の健康は、もはや「福利厚生の話」ではありません。少子高齢化による労働力不足が深刻化するなか、企業が従業員の心身の健康に戦略的に投資する「健康経営」が急速に広がっています。さらに近年は、病気を防ぐだけでなく、人が「よく生きる」状態を目指す「ウェルビーイング経営」という概念が台頭し、企業と自治体の取り組みは新たな局面を迎えています。

認定数が急増|健康経営優良法人2026の最新動向

経済産業省は、健康長寿社会の実現に向けた取り組みの一つとして、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践する「健康経営」を推進しています。
2025年3月10日には「健康経営優良法人2025」が発表され、大規模法人部門に3,400法人、中小規模法人部門に19,796法人が日本健康会議より認定されています。

そして直近の動向として、「健康経営優良法人2026」の速報値では、大規模法人部門が4,175法人(前年度比+7.9%)、中小規模法人部門が23,485法人(前年度比+15.9%)に上ることが明らかになっています。
認定の前提となる健康経営度調査への回答法人数も年々増加しており、特に日経平均株価を構成する225銘柄の8割を超える企業が回答するなど、各業界のリーディングカンパニーの多くが経営戦略の一つとして健康経営に取り組んでいます。
健康経営度調査の開始から10年が経過し、認定申請の有料化などの変更があったにもかかわらず、申請・認定企業数は増加し続けており、「健康経営」に対する企業の関心・意識の高まりがうかがえます。

2026年認定の注目ポイント|「量」から「質」へのシフト

今回の健康経営優良法人2026の認定では、評価の考え方に大きな変化が見られます。

従来の「適合項目数」を評価対象外とし、「健康経営の組織への浸透に向けた取り組み」「健康経営の推進による企業の健康風土の把握」が追加されました。この変更により、取り組みの量から質に評価のポイントがシフトしています。

また、企業と保険者(健康保険組合)の連携強化も今回の大きな改定ポイントです。
令和7年度(健康経営優良法人2026)の制度改正では、保険者との連携が「任意」から「必須」へと明確に強化されました。従業員の健康データを最も多く保有しているのは保険者であり、その情報を適切に活用しないままでは効果的な健康施策は打ちにくいという背景があります。

さらに注目すべきは、メンタルヘルスの位置づけの変化です。
令和7年度(健康経営優良法人2026)では、従来の「メンタルヘルス対策」から、「心の健康保持・増進に関する取り組み」という用語へと変更されました。これは、心の健康を病気予防としてではなく、持続的に良好な状態を保つものとして位置づける、よりポジティブな認識の転換を表しています。
また、これまで健康経営の評価は主に「自社の従業員」に向けた施策が中心でしたが、令和7年度では、その枠を超え「ステークホルダー全体」への配慮がより明確に求められるようになりました。サプライチェーンや家族、地域社会など、企業を取り巻く広範な関係者を対象とした施策が重視されています。

「ウェルビーイング経営」という新たな潮流

健康経営の次のステージとして、いま注目を集めているのが「ウェルビーイング経営」という考え方です。

健康経営優良法人認定事務局によると、健康経営は単なる福利厚生ではなく、持続可能な社会を構築するための重要な経営基盤となっており、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や社会保障費の増大といった構造的な課題に対し、企業と社会に大きな価値をもたらすとされています。
従来の「健康経営」の成果を土台とし、従業員の「生きがい」にも目を向けた「ウェルビーイング経営」へと進化させることを目指す動きが広がっており、取引先や地域社会へと活動の輪を広げることも視野に入れる企業が増えています。

食品大手のニチレイは、こうした「健康経営からウェルビーイング経営へ」の移行を実践する企業の一つとして知られています。
同社はエンゲージメント、アブセンティーイズム(健康上の理由による欠勤)、プレゼンティーイズム(出社しているが本来のパフォーマンスを発揮できない状態)を重要なKPIと定め、2030年に向けた高い目標を設定しているとされています。

ライフステージを越えた支援も必須に

2026年度の認定では、仕事と生活の両立支援も重点項目として強化されています。
「健康経営優良法人2026」の認定基準には「家庭と仕事の両立」という視点が新たに加わり、育児期や介護期にある従業員が働きやすい制度・風土を持つ企業が、人的資本への投資姿勢として高く評価される傾向にあります。
就業者における性差・年齢が多様化するなかで、女性や高年齢従業員が働きやすい職場づくりを進めることの重要性が高まっており、女性の健康課題への対策および高年齢従業員への対策が評価項目として整理されています。また、育児・介護休業法の改正を踏まえ、仕事と介護の両立支援においても法定を超える取り組みが求められるようになっています。

認定がもたらすメリット|中小企業にも広がる恩恵

認定を受けた法人は「健康経営優良法人」のロゴマークを使用できるほか、自治体や金融機関からのインセンティブ(融資や公共調達での加点評価など)を受けられるなど、さまざまなメリットがあります。
健康経営は「人材にかかる経費をコストではなく投資とする」経営戦略であり、多くの企業が採用活動に困難を抱える現在において、就活生や求職者への大きなアピール材料として効果的です。
特に中小企業においては、人材不足や従業員の高齢化が深刻化しており、解決策の一つとしての健康経営の普及拡大が望まれています。

健康経営をどう始めるか|企業・自治体への実践ガイド

健康経営に取り組む際には、段階的なアプローチが有効です。
従業員アンケートや健診データを用いた「見える化」を起点に、体調不良や本来のパフォーマンスを発揮できない状態の早期発見が、効果的な健康経営サポートにつながります。また、地域包括支援センターや産業医、行政と連携した外部支援もコストを抑えた健康経営の有効な手段です。
「健康経営優良法人」に認定されると、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となるほか、自治体や金融機関においてさまざまなインセンティブが受けられます。
認定制度は自治体にとっても、地域企業の健康づくりを後押しするプラットフォームとして機能しており、官民連携の場としての役割が高まっています。

まとめ|「健康」は経営の中心課題へ

健康経営の認定企業数が急増し、その評価軸が「量から質へ」シフトしたことは、日本における働き方と企業経営の大きな転換点を示しています。従業員の健康を守るだけでなく、生きがいや幸福感を含む「ウェルビーイング」を企業経営の中心に据える流れは、今後さらに加速していくことが予想されます。

まだ取り組みを始めていない企業も、まずは健診データの整理や健康宣言の策定といった小さな一歩から始めることができます。「健康な職場」は、従業員一人ひとりの日々の働きやすさにつながり、ひいては企業全体の持続可能な成長を支える基盤となるのです。

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