公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
SOCIETY

9人に1人が貧困状態|法改正・支援金制度で動き出す「こどもの貧困解消」の今

9人に1人が貧困状態|法改正・支援金制度で動き出す「こどもの貧困解消」の今

日本では、17歳以下の子どものおよそ9人に1人が貧困状態にあります。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2022年調査)では、子どもの貧困率は11.5%でした。2024年6月には法律の名称が「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」に改められ、国の目標が「対策」から「解消」へ引き上げられました。2026年4月には子ども・子育て支援金制度による徴収が始まり、共同親権の導入や法定養育費の施行も重なっています。この記事では、「9人に1人」という数字の意味、制度で何が変わり何がまだ変わっていないか、そして私たちが次にとれる行動を整理します。

この記事で学べること

  • 「9人に1人」という数字の意味と、相対的貧困が見えにくい理由
  • 2024年の法改正と2026年の新制度で、何が変わり何が変わっていないのか
  • こども食堂や企業・NPOなど、地域で広がる支援の現在地
  • 支援先を選ぶときの判断基準と、今日からできる関わり方
目次

「9人に1人」の数字が意味するもの|相対的貧困率11.5%と貧困線127万円

「9人に1人」という言葉から、食べ物も住まいもない状態を思い浮かべる人は少なくありません。しかし、この数字が指しているのは「相対的貧困」です。まずは何を測った数字なのかを押さえておきます。

相対的貧困とは何を測っているのか

相対的貧困とは、世帯の収入から税金や社会保険料を差し引き、世帯人数で調整した「等価可処分所得」が、全体の中央値の半分に届かない状態を指します。2022年調査(2021年の所得)では、その貧困線は年間127万円でした。この線を下回る世帯で暮らす17歳以下の子どもの割合が11.5%です。

絶対的な欠乏ではなく、「その社会で当たり前とされる生活」から外れてしまう状態を測る指標です。調査は3年ごとに大規模に実施されるため、この記事の数値は2022年調査に基づいています。新しい結果が公表された際は、厚生労働省の公表資料で更新を確認してください。

ひとり親世帯の貧困率は44.5%

同じ調査では、大人が2人以上いる現役世帯の子どもの貧困率が8.6%でした。ひとり親世帯では44.5%に上ります。ひとり親世帯の子どもの2人に1人近くが、貧困線を下回る世帯で暮らしている計算です。

母子世帯の約8割以上が就労していても、母親自身の平均年間収入は300万円に届きません。厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」では、母自身の平均年間収入は272万円とされています。働いていても貧困から抜け出しにくい構造がここにあります。

数字が「見えにくい」理由

相対的貧困は、見た目だけでは判別できません。スマートフォンを持っていても、制服を着ていても、食事や進学、体験の機会を削ってやりくりしている家庭があります。当事者が周囲に知られたくないと感じやすいことも、問題が長く見過ごされてきた理由のひとつです。

貧困が子どもに与える影響|学力だけでなく「体験」にも格差が広がる

子どもの貧困は、家計の苦しさだけで終わりません。学習、体験、人間関係、将来の選択肢へと影響が連鎖していきます。

放課後と長期休みに広がる教育格差

公立学校の授業料は無償でも、塾や習い事、教材、部活動の費用は家庭の負担です。経済的に厳しい家庭への就学援助の利用率は、全国で14%前後と、約7人に1人の水準で推移しています。教室の中でも、援助を受けている子どもが複数いる計算です。

教育格差の背景や学力・進学率の差については、別の記事で詳しく整理しています。

「体験格差」という見落とされやすい壁

公益財団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査では、世帯年収300万円未満の家庭の子どもの約3割(29.9%)が、過去1年間に学校外の体験を一度もしていませんでした。年収600万円以上の家庭では約1割(11.3%)です。旅行やキャンプ、スポーツ、音楽といった体験は、学力の指標には表れにくいものの、自信や視野の広がりにつながります。

貧困の連鎖と、社会全体の損失

進学をあきらめたり、不安定な仕事にしか就けなかったりすると、大人になってからも低収入が続きやすくなります。親から子へ貧困が引き継がれるこの連鎖を、社会全体で断ち切る必要があります。子どもの貧困と教育格差の関係を当事者の視点から掘り下げた記事もあります。

誤解されやすい4つのポイント|「自己責任」で片づけられない理由

子どもの貧困をめぐっては、いくつかの思い込みが支援の広がりを妨げてきました。ここでは代表的な4つを取り上げ、事実との違いを確認します。

「日本に貧困はない」という誤解

国際的に見れば日本は豊かな国です。しかし、相対的貧困は「その社会の中での格差」を測る指標であり、豊かな国でも存在します。進学や食事、医療の機会を諦める子どもがいる以上、貧困の問題は日本国内にもあります。

「働けば抜け出せる」という誤解

ひとり親世帯の就労率は高く、貧困率の高さは「働いていないから」だけでは説明がつきません。非正規雇用の割合や賃金水準、養育費の不足が重なっています。養育費を受け取っている母子世帯は3割に届かず、厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」では28.1%でした。

「相対的貧困はぜいたくな悩み」という誤解

相対的貧困は、栄養のある食事、学習の機会、友人との付き合いといった「当たり前」に手が届かない状態です。進学の断念や心身の不調につながる例もあり、絶対的貧困と比べて軽い問題とはいえません。

「支援は一部の人のためのもの」という誤解

子どもが貧困の中で育つと、将来の所得や納税額、健康状態にも影響が出るとされています。そのため、社会全体にとっても損失が大きい問題です。子どもへの支援は、将来の社会を支える基盤への投資としても捉えられます。

2024年の法改正で変わったこと|「対策」から「解消」へ

国の方針は、2024年に法律レベルで大きく動きました。

法律名と目的の変更

2024年6月19日、子どもの貧困対策の推進に関する法律の改正法が成立しました。法律名は「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」に改められています。対策を進めるだけでなく、貧困の解消そのものを目標に掲げた点が最大の変化です。

基本理念に盛り込まれた考え方

基本理念には、貧困によってこどもの権利利益が害され、社会から孤立することが深刻な問題であるという認識が盛り込まれました。あわせて、現在の貧困の解消に加え、将来の貧困の予防も目的に位置づけられています。妊娠・出産期からの切れ目ない支援や、家庭の責任だけにしない社会的な対策という考え方も示されています。

現場にとっての意味

法律の改正だけで、すぐに家計が楽になるわけではありません。ただ、国が「解消」を目標に掲げたことで、自治体の計画づくりや予算の説明、NPOとの連携に根拠が生まれます。2023年12月に閣議決定されたこども大綱と合わせ、こども家庭庁が関係省庁と連携して対策を進める体制が整えられています。

2026年4月の支援金制度と家計への影響|児童手当・養育費・高校無償化

制度の変更点は多岐にわたります。何がいつ始まったのかを整理しておくと、混同を避けられます。

児童手当の拡充は2024年10月から

児童手当は2024年10月分から拡充されています。所得制限が撤廃され、支給対象が高校生年代(18歳到達後の最初の年度末)まで延びました。第3子以降は月3万円に増額され、第3子の数え方も、22歳年度末までの上の子を含める形に変わっています。元の報道で「2026年4月から拡充」と読めるものがありますが、拡充はすでに始まっています。

2026年4月に始まった子ども・子育て支援金

2026年4月から始まったのは、児童手当の拡充などの財源を支える子ども・子育て支援金の徴収です。医療保険料とあわせて、すべての世代・企業が負担する仕組みです。こども家庭庁の試算では、規模は段階的に拡大し、2028年度には年間1兆円程度が見込まれています。負担額は加入する医療保険や所得によって異なります。

使い道は子ども・子育て支援に限られています。児童手当の拡充のほか、妊婦への支援給付や育児期の給付などに充てられます。子どもがいない世帯にも負担が生じるため、負担と恩恵が見えにくいという批判もあります。ただし、少子化対策と貧困対策の双方を支える財源として設計されています。

ひとり親支援につながる2つの制度

2026年4月には、改正民法も施行されました。離婚後の共同親権が選べるようになり、養育費の取り決めがない場合に最低限を請求できる法定養育費(子ども1人あたり月2万円)も始まっています。養育費の受け取りが3割に届かない現状を考えると、実効性のある運用が課題です。

高校の授業料についても、公立・私立ともに就学支援金の所得制限が撤廃されました。2026年度には私立高校の支援上限が年45.7万円程度に引き上げられています。家庭の経済状況による進路選択の幅を、少しずつ広げる動きです。

地域・企業・NPOで広がる支援の現在地

制度だけで貧困が解消するわけではありません。地域や民間の支援が、制度の隙間を埋める役割を担っています。

こども食堂は全国で約1万か所に

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査によると、2024年度のこども食堂は全国で約1万870か所に達しました。公立中学校の数を上回る規模です。食事の提供だけでなく、孤立しがちな親子や高齢者の居場所としての役割も担っています。一方で、運営費や人手、食材の確保が課題になっている団体も少なくありません。

食品や物資を届ける「こども宅食」とフードバンク

自宅へ食品や日用品を定期的に届けるこども宅食は、食堂まで足を運ぶことが難しい家庭にも届く仕組みです。配送の際に、保護者と顔の見える関係をつくり、困りごとを早い段階で把握できる利点があります。フードバンクと連携して、企業から寄せられた食品を届ける例も各地に広がっています。

企業と団体をつなぐマッチングネットワーク

こども家庭庁を含む「マッチングネットワーク推進協議会」は、支援したい企業・個人と、草の根で活動するNPOなどの団体を結びつけています。企業は食品や物品、寄付、人的支援を提供でき、団体は必要な支援を受け取れます。企業にとっても、地域との接点づくりや従業員の社会貢献活動につなげやすい仕組みです。

私たちにできること|支援先の選び方と関わり方の入口

制度が動き出した今、一人ひとりの関わり方も問われています。大きな行動ではなく、続けられる形を探すことが大切です。

支援先を選ぶときの3つの判断基準

寄付や支援先を選ぶ際は、次の3点を確認すると判断しやすくなります。

  1. 活動の目的と対象が明確で、活動報告が公開されているか
  2. 寄付金や物資の使い道が具体的に説明されているか
  3. 自分の住む地域や関心のある分野と合っているか

時間・物資・お金の3つの関わり方

関わり方は、お金だけではありません。食堂での配膳や学習支援といった時間の提供、余った食品や文具の寄付といった物資の提供もあります。まずは自分の地域のこども食堂やフードバンクが、何を必要としているかを調べてみてください。

知ること自体が最初の支援になる

周囲の人が相対的貧困の実態を理解するだけで、当事者が声を上げやすい空気は変わります。学校や職場、地域の会話の中で、「自己責任」で片づけない視点を持つことが、社会の見方を少しずつ変えていきます。

まとめ

日本の子どもの貧困率は11.5%、ひとり親世帯では44.5%という水準にあります。相対的貧困は外から見えにくく、体験や進学の機会にも影響が及びます。2024年の法改正で国の目標は「解消」に引き上げられ、児童手当の拡充、支援金制度、養育費制度、高校無償化の拡大が進んでいます。

ただし、制度が整っても、実際に必要な家庭に届かなければ貧困は解消されません。こども食堂や宅食、企業とNPOの連携といった地域の取り組みが、制度の隙間を埋める重要な役割を担っています。数字を知り、制度を知り、自分の地域で関われる入口を探すことが、貧困の連鎖を断ち切る第一歩になります。

まず1つだけ、お住まいの地域にあるこども食堂や支援団体のウェブサイトを開いてみてください。

  • 子どもの貧困率は11.5%(2022年調査)、ひとり親世帯は44.5%
  • 2024年の法改正で、国の目標が「対策」から「解消」へ
  • 児童手当の拡充は2024年10月、支援金の徴収は2026年4月から
  • 法定養育費や高校無償化の拡大など、ひとり親や教育費への支援も前進
  • 支援先は目的・使い道・地域との相性で選び、小さな関わりから始める

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

  1. 廃棄予定の複合機を再び使う|TMTユニバーサル「コピーキ革命」のレンタルを紹介

  2. 創業120周年を迎えたあらしおの歴史|駿河の塩づくりから平釜塩の復活まで

  3. 使い終わったノートの約4割が燃やすごみに。コクヨが小学校とオフィスで回す資源循環の輪

RELATED

PAGE TOP