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フードマイレージとは?日本が世界1位の理由と私たちにできること

あなたは普段の買い物で、食材がどこから来ているかを意識したことはありますか?実は私たちが食べている食料の多くは、遠く離れた国々から長い距離を移動して運ばれてきています。この食料の輸送が環境に与える影響を数値化した指標が「フードマイレージ」です。

フードマイレージとは、食料の輸送量と輸送距離をかけ合わせて計算される環境負荷の指標のことです。驚くべきことに、日本のフードマイレージは世界で最も高く、私たちの日常の食生活が地球環境に大きな負担をかけていることが分かっています。

この記事では、フードマイレージの基本的な仕組みから、日本が世界1位になってしまう理由、そして私たち一人ひとりができる環境に優しい食の選択について詳しく解説します。食を通じて環境問題を考えるきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。

フードマイレージとは何かをわかりやすく解説

フードマイレージとは何かをわかりやすく解説フードマイレージは、食料がどれだけ遠くから運ばれてきたかを示す環境指標です。「Food(食料)」と「Mileage(輸送距離)」を組み合わせた造語で、食料の輸送に伴う環境負荷の大きさを測るために作られました。

この指標が注目される理由は、食料を遠くから運ぶほど輸送に必要なエネルギーが増加し、二酸化炭素などの温室効果ガスがより多く排出されるためです。つまり、フードマイレージが大きいほど地球温暖化への影響も大きくなるということです。

フードマイレージの基本的な仕組み

フードマイレージの考え方はとてもシンプルです。食料を運ぶ量が多いほど、また運ぶ距離が長いほど、環境への負荷が大きくなるという基本原理に基づいています。

例えば、同じ重さのりんごでも、近くの果樹園から運んできた場合と、海外から輸入した場合では、環境に与える影響が大きく異なります。輸入りんごの方が輸送距離が長いため、フードマイレージは大きくなり、それだけ多くの燃料を消費してCO2を排出することになります。

この仕組みを理解することで、私たちは食材を選ぶ際に環境への影響を考慮した判断ができるようになります。

計算方法と具体例

フードマイレージの計算式は非常にわかりやすく、以下の通りです。

フードマイレージ = 食料の輸送量(トン)× 輸送距離(キロメートル)

単位は「t・km(トン・キロメートル)」で表されます。

具体例で見てみましょう。アメリカから5トンのトウモロコシを約10,000km離れた日本へ輸入する場合、フードマイレージは「5トン × 10,000km = 50,000t・km」となります。

一方、国内の農家から同じ5トンのトウモロコシを100km先の都市へ運ぶ場合は「5トン × 100km = 500t・km」です。この比較から、輸入食材のフードマイレージがいかに大きいかが一目でわかります。

農林水産省の試算によると、埼玉県で豆腐5000丁を作る場合、地元産大豆を使えばアメリカ産大豆と比べてフードマイレージを約6000分の1に、CO2排出量を約400分の1に減らすことができるとされています。

フードマイレージが生まれた背景と目的

フードマイレージが生まれた背景と目的フードマイレージという概念は、環境問題への関心の高まりと食料のグローバル化が進む中で生まれました。食べ物がどこから来ているかを意識し、環境に配慮した食の選択を促すことが主な目的です。

現代では、スーパーに行けば世界中の食材が一年中手に入る便利な時代になりました。しかし、その便利さの裏には大量の燃料消費とCO2排出という環境コストが隠れています。フードマイレージは、この見えにくい環境負荷を数値で可視化することで、消費者の意識を変えることを目指しています。

イギリスの「Food Miles運動」から始まった取り組み

フードマイレージの起源は、1990年代のイギリスにあります。1994年に消費者運動家のティム・ラング氏が「Food Miles(フードマイル)」という概念を提唱したのが始まりです。

当時のイギリスでは、食料輸入の増加による環境負荷を懸念する声が高まっていました。ラング氏は「人間はなるべく近くで収穫された食料を食べた方がよい。遠くで取れたものに頼れば頼るほど、輸送に伴う環境汚染を多くする」と主張しました。

この考え方は「Food Miles運動」として市民の間に広がり、地域で生産された食料をその地域で消費する「地産地消」の重要性を訴える社会運動に発展しました。イギリスではスーパーマーケットが航空輸送で運ばれた食品に飛行機のマークを付けるなど、消費者が輸送方法を意識できる取り組みも始まりました。

日本での導入と農林水産省の役割

日本では2001年に、農林水産省農林水産政策研究所によってフードマイレージが初めて導入されました。イギリスの「Food Miles」を参考にしながら、日本人に馴染みのある「マイレージ」という言葉が採用されたのです。

農林水産政策研究所の元所長による造語であるフードマイレージは、日本独自の概念として発展しました。イギリスの「Food Miles」が自国内での取り組みに留まっていたのに対し、日本のフードマイレージは国際比較を可能にする統一的な計算方法を確立したことが特徴です。

日本政府がフードマイレージに注目した背景には、日本の食料自給率の低さと環境問題への対応があります。農林水産省は、フードマイレージを通じて国民に地産地消の重要性を伝え、食料自給率の向上と環境負荷の軽減を同時に目指しています。

この取り組みは食育とも深く関わっており、学校給食での地元食材の利用促進や、消費者への環境意識の啓発にも活用されています。

日本のフードマイレージが世界1位になる理由

日本のフードマイレージが世界1位になる理由日本のフードマイレージは世界各国と比較して圧倒的に高く、総量・国民一人当たりともに世界第1位となっています。農林水産省の2001年の試算によると、日本の年間フードマイレージは約9000億t・kmで、韓国・アメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約4倍、フランスの約9倍という驚異的な数値を記録しています。

この高い数値の背景には、日本特有の構造的な問題があります。単純に食料輸入量が多いだけでなく、輸送距離が他国よりも著しく長いことが主な原因とされています。世界中から食料を調達する日本の食料供給システムが、結果として大きな環境負荷を生み出しているのです。

食料自給率の低さが最大の要因

日本のフードマイレージが高い最大の理由は、食料自給率の極端な低さにあります。日本の食料自給率(カロリーベース)は約38%で、先進国の中でも最低水準です。これは、国内で消費される食料の約6割を海外からの輸入に依存していることを意味します。

対照的に、フードマイレージが低いアメリカやカナダ、フランスなどは食料自給率が100%を超えており、自国内で生産した食料を中心に消費しています。食料自給率が高い国では、必然的に食料の輸送距離が短くなり、フードマイレージも小さくなるのです。

特に日本では、穀物類の輸入依存度が極めて高くなっています。小麦、大豆、トウモロコシの合計2570万トンの需要量のうち、約2430万トンが輸入に頼っているのが現状です。これらの基幹食料を遠く離れたアメリカ、ブラジル、オーストラリアなどから大量に輸入することで、フードマイレージが大幅に押し上げられています。

島国という地理的条件の影響

日本が島国であることも、フードマイレージを高くする重要な要因です。四方を海に囲まれているため、食料の輸入は船舶または航空機に限定され、陸続きの国々のように陸路での効率的な輸送ができません。

ヨーロッパ諸国の場合、近隣国との間で陸路による食料貿易が活発に行われています。例えばドイツは隣接するフランスやオランダから短距離で食料を調達できるため、輸送距離を大幅に短縮できます。同様にアメリカも、主な輸入相手国はカナダやメキシコといった隣国が中心となっています。

しかし日本の場合、最も近い食料輸出国でも韓国や中国であり、主要な輸入相手国であるアメリカ、ブラジル、オーストラリアなどは数千キロメートル以上離れています。この地理的な制約により、どうしても長距離輸送が避けられず、フードマイレージが大きくなってしまうのです。

輸入食料の構成と輸送距離

日本のフードマイレージの内訳を見ると、穀物が全体の50%以上を占め、次いで油糧種子(大豆など)が20%以上となっています。これらの基幹食料の多くが、アメリカ大陸やオセアニアといった遠隔地から輸入されているため、輸送距離が格段に長くなっています。

特に注目すべきは、日本の平均輸送距離の長さです。他国と比較して、日本は輸入食料一トン当たりの平均輸送距離が突出して長くなっています。これは、食料の調達先が世界各地に分散していることを示しており、安定供給を重視した結果として多様な国から輸入している現状を反映しています。

フードマイレージが環境に与える影響

フードマイレージが環境に与える影響フードマイレージの高さは、地球環境に深刻な影響を与えています。食料輸送に伴うCO2排出量は想像以上に大きく、地球温暖化の進行に少なからず寄与しているのが現実です。私たちの日常の食事が、実は環境問題と密接に関わっていることを理解することが重要です。

食料輸送による環境負荷は、単に燃料を消費するだけでなく、大気汚染や海洋汚染にもつながります。特に長距離輸送では、船舶や航空機から排出される温室効果ガスや大気汚染物質が環境に与える影響は深刻です。

CO2排出量との関係

農林水産省の試算によると、日本の食料輸入に伴うCO2排出量は年間約1690万トンに達しています。これを国民一人当たりで計算すると、年間約130kgものCO2を排出していることになります。

この数字がどれほど大きいかを身近な例で示すと、毎日1時間テレビを見る時間を短縮した場合のCO2削減効果と比較して、なんと11年分に相当します。また、夏の間の冷房温度を27℃から28℃に上げた場合の削減効果では12年分、冷房時間を1時間短縮した場合では19年分に匹敵する量です。

さらに興味深いのは、国内での食料輸送に伴うCO2排出量と比較した場合です。国内輸送によるCO2排出量が年間約900万トンであるのに対し、輸入食料の輸送による排出量は約1690万トンと、実に1.87倍も多くなっています。これは、輸入食料がいかに大きな環境負荷をかけているかを如実に示しています。

地球温暖化への影響度

食料輸送によるCO2排出は、地球温暖化に直接的な影響を与えています。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、2022年の全世界のCO2排出量約368億トンのうち、約6%が輸送に起因するものでした。この中で食料輸送が占める割合は決して小さくありません。

輸送手段別に見ると、環境負荷の差は歴然としています。飛行機で輸送された食品は、同じ量の食品を自動車で運ぶ場合と比べて約10倍ものCO2を排出するとされています。一方、船舶輸送は比較的環境負荷が小さいものの、輸送距離が長いことで結果的に大量のCO2排出につながっています。

また、食料輸送は温室効果ガスの排出だけでなく、大気中の窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の増加にも寄与しています。これらの物質は酸性雨の原因となるほか、オゾン層の破壊や大気汚染を引き起こし、生態系全体に悪影響を与える可能性があります。

このように、フードマイレージの高さは単なる数値の問題ではなく、地球規模の環境問題に直結する深刻な課題であることがわかります。

フードマイレージを減らすための具体的な方法

フードマイレージを減らすための具体的な方法フードマイレージを減らすことは、私たち一人ひとりができる環境保護活動の一つです。特別な技術や大きな投資は必要なく、日常の買い物や食事の選択を少し変えるだけで、大きな環境改善効果を得ることができます。

重要なのは、完璧を目指すのではなく、できることから始めることです。すべての食材を地元産にすることは現実的ではありませんが、意識を持って選択することで確実に環境負荷を減らすことができます。

地産地消で輸送距離を短縮する

地産地消は、フードマイレージを減らす最も効果的な方法です。地産地消とは、その地域で生産された農産物や海産物をその地域で消費することを意味します。

具体的な取り組みとしては、直売所や道の駅での買い物、地元農家が運営するマルシェへの参加、地域のJAや生協が展開する地元産食材の購入などがあります。これらの場所では、生産者の顔が見える新鮮な食材を購入できるだけでなく、輸送距離が大幅に短縮されるためフードマイレージの削減に直結します。

また、レストランや食堂を利用する際も、地元食材を使用している店舗を選ぶことで地産地消に貢献できます。近年では、地元食材の使用をアピールする飲食店も増えており、消費者の選択肢も広がっています。

学校給食や企業の社員食堂でも地産地消の取り組みが進んでおり、米粉パンの導入や地元野菜の積極的な利用など、様々な工夫が行われています。

季節の食材を選ぶメリット

季節の旬の食材を選ぶことも、フードマイレージ削減に大きな効果をもたらします。旬の食材は、その時期に最も新鮮で栄養価が高いだけでなく、地元で採れる確率が高いため輸送距離が短くなります。

例えば、日本では春には筍や新玉ねぎ、夏にはトマトやキュウリ、秋には栗や柿、冬には白菜や大根といった具合に、それぞれの季節に特徴的な食材があります。これらを意識的に選ぶことで、自然と地元産の食材を消費することにつながります。

環境省のデータによると、季節の食材を選ぶことで平均的に輸送に必要なCO2排出量を20%程度削減できるとされています。また、旬の食材は価格も安く、家計にも優しいという副次的なメリットもあります。

反対に、季節外れの食材は遠方からの輸入に頼ることが多く、フードマイレージが高くなる傾向があります。一年中同じ食材が手に入る便利さを少し我慢して、季節感のある食生活を心がけることが環境保護につながります。

国産食材を意識した買い物のコツ

すべての食材で地元産を選ぶことが難しい場合でも、国産食材を選ぶことでフードマイレージの削減に貢献できます。買い物の際に産地表示を確認し、できるだけ国産のものを選ぶ習慣をつけることが大切です。

特に効果的なのは、輸入依存度の高い食材について国産品を選ぶことです。大豆製品、小麦製品、肉類などは輸入が多い品目ですが、国産品も流通しているため、意識的に選択することができます。

価格面では輸入品の方が安い場合も多いですが、環境コストを考慮すれば、国産品の価値は決して高すぎるものではありません。また、国産食材を選ぶことで国内農業の振興にも貢献でき、食料自給率の向上にもつながります。

買い物のコツとしては、原産国表示を必ずチェックする、加工食品の場合は原材料の産地も確認する、冷凍食品や缶詰なども国産品があるかを探してみる、といった点が挙げられます。

フードマイレージの限界と注意点

フードマイレージの限界と注意点フードマイレージは環境負荷を測る有用な指標ですが、完璧な指標ではありません。この概念を正しく理解し、適切に活用するためには、その限界と注意点を把握しておくことが重要です。

フードマイレージは「輸送量×輸送距離」というシンプルな計算で環境負荷を可視化できる分かりやすさが最大のメリットです。しかし、その簡潔さゆえに考慮されていない要素も多く存在します。

輸送手段による差は反映されない

フードマイレージの最も大きな限界の一つは、輸送手段による環境負荷の違いが考慮されていないことです。同じ距離を運ぶ場合でも、船舶、鉄道、トラック、航空機では、CO2排出量に大きな差があります。

国土交通省のデータによると、輸送手段別のCO2排出係数は以下のようになっています。営業用普通トラックが180g-CO2/t・km、鉄道が22g-CO2/t・km、内航船舶が40g-CO2/t・km、外航船舶(バルカー)が10g-CO2/t・km、そして航空機が1461g-CO2/t・kmとなっています。

つまり、同じフードマイレージでも、航空輸送の場合は船舶輸送と比べて実際のCO2排出量は100倍以上も多くなる可能性があります。この点を考慮せずにフードマイレージだけで判断すると、環境負荷を正確に評価できない場合があります。

また、輸送の効率性も考慮されていません。大型コンテナ船による大量輸送と小型トラックによる少量輸送では、同じ重量・距離でも実際の環境負荷は大きく異なります。

生産・廃棄段階の環境負荷は含まれない

フードマイレージは輸送段階に限定した指標であり、食料の生産、加工、保管、廃棄といった他の段階での環境負荷は一切考慮されていません。この点が、フードマイレージの大きな限界となっています。

例えば、自然に近い環境で粗放的に生産された食品を船で輸入する場合と、国内で大量の化学肥料や農薬を使用し、加温ハウスで集約的に生産してトラックで輸送する場合を比較すると、トータルでは前者の方が環境負荷が小さくなる可能性があります。

また、食品の保存方法や廃棄率も環境負荷に大きく影響します。輸送距離は短くても、保存のために大量のエネルギーを消費したり、廃棄率が高かったりする場合は、結果的に環境負荷が大きくなることもあります。

このような全体的な環境負荷を評価するためには、LCA(ライフサイクルアセスメント)的手法やカーボンフットプリントといった、より包括的な指標が必要となります。これらの指標は原材料の調達から廃棄・リサイクルまでの全工程での環境負荷を評価しますが、計算方法が複雑で一般消費者には理解しにくいという課題があります。

まとめ

まとめ:フードマイレージとは?日本が世界1位の理由と私たちにできることフードマイレージは、私たちの食生活が環境に与える影響を分かりやすく示してくれる重要な指標です。日本が世界1位という現実は、食料自給率の低さと島国という地理的条件が大きく影響していることが分かりました。

しかし、この問題は決して解決不可能なものではありません。地産地消の推進、季節の食材の選択、国産食材への意識的な転換など、私たち一人ひとりができることから始めることで、確実に環境負荷を減らすことができます。

フードマイレージには限界もありますが、環境問題を考える入り口として、また日常的な行動を変えるきっかけとして、十分に価値のある概念です。完璧を求めるのではなく、できることから始めて、持続可能な食生活を目指していくことが大切です。

私たちの小さな選択の積み重ねが、やがて大きな環境改善につながることを信じて、今日からできることを実践してみましょう。

参照元
・農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/06/pdf/data2.pdf

・株式会社ロスゼロ https://losszero.jp/blogs/column/col_146

・株式会社プロジェクトデザイン https://www.projectdesign.co.jp/2050-carbon-neutral/blog/food-mileage/

・全農(JA全農) https://apron-web.jp/naruhodo/14393/

・フード・マイレージ資料室 https://shizen-hatch.net/2020/05/28/food-mileage-local-production-for-local-consumption/

・Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/フードマイレージ

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