エア・ウォーター株式会社
エア・ウォーター株式会社(本社:大阪市中央区、以下、エア・ウォーター)と戸田工業株式会社(本社:広島市南区、以下、戸田工業)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業」に、「北海道豊富町未利用天然ガスを活用した地域CO2フリー水素サプライチェーンの構築」(以下、本事業)を提案し、本年6月に採択されました。本日、北海道天塩郡豊富町(以下、豊富町)にて、本事業に向けた取り組みを開始しましたので、お知らせいたします。なお、「メタン直接改質(以下、DMR)法(※1)」によりCO2が発生しない水素を商用規模(※2)で生産することは国内初の取り組み(※3)です。
1.概要
エア・ウォーターと戸田工業は、2021年よりNEDO委託事業として、天然ガスやバイオガス等の主成分であるメタン原料から高活性鉄系触媒を用いた「DMR法」により、CO2 フリー水素の製造プロセスおよびシステム開発に取り組んでまいりました。
本事業では、これまでの開発成果を元に、「DMR法」による商用規模の水素製造プラントを豊富町内に設置し、メタンを主成分とする温泉付随天然ガスから、CO2 を直接排出させることなく高純度水素の製造を行います。同時に、製造した水素を近隣の需要家へ供給し、地産地消型の水素サプライチェーンの構築を進めてまいります。副生成物の炭素は、高導電性を有する多層カーボンナノチューブ(CNT)として市場展開することを目指し、用途探索と性能評価を進めます。
2025年度を目途に、水素と高付加価値な多層CNTを製造できる「DMR法」による水素製造システムを確立させ、水素製造コストの低減と水素サプライチェーンのクリーン化を目指します。
(※1) メタン直接改質(DMR:Direct Methane Reforming )法は、天然ガス等を原料として鉄系触媒等の存在下で水素と炭素を生成するクリーンな反応です。この製造方法は、水素製造時に原料ガスとなるメタン由来のCO2を発生させない、すなわちCO2フリーな反応であるため、低炭素社会に大きく貢献できる水素製造法として開発を進めてまいりました。
(※2) 実験機(水素製造量1㎥/h以下)の開発成果をもとに、水素製造量40㎥/hの商用規模となるプラントを設計予定。
(※3) エア・ウォーター/戸田工業調べ(2023年8月現在)
2.実証内容
本事業においては、下記①~④の技術課題に取り組みます。
まず、豊富町で自噴する未利用天然ガスを用いて、DMR法を用いた商用規模の水素及びCNTの製造技術を確立します(①、②)。併せて、エア・ウォーターは水素の貯蔵・輸送・供給システムを確立させ、域内の水素サプライチェーンを構築します(③)。さらに、戸田工業はCNT粉体の高付加価値化を進め、CNTの用途探索と顧客での性能評価を実施し(④)、システム全体で早期の社会実装化を目指します。
なお、豊富町で温泉に付随して産出される天然ガスは、メタンの含有率が95%ある不純物が少ない良質な資源である一方、その多くは未利用のままとなっています。これを輸送・貯蔵が可能な水素として活用することにより、エネルギーの地産地消を推進することにつながることから、本実証を豊富町で実施することといたしました。
3.実施体制と役割
実施者:エア・ウォーター株式会社(原料天然ガス前処理システムおよび水素精製装置の設計・製作、水素サプライチェーン構築)
戸田工業株式会社(原料天然ガスの最適条件の検討、触媒の設計、DMR反応炉の設計・製作、CNT粉体の高付加価値化技術の確立と用途開発)
協力先:豊富町(プラント設置場所の提供、天然ガス供給、水素普及に向けた協力、水素品質実証)
室蘭工業大学(国内の未利用天然ガス調査、水素普及に向けた協力助言)
食品メーカー、ボイラーメーカー等
4.実証計画
期間:2023年8月~24.実証計画026年3月(3年間)
スケジュール:2023年8月~ 装置の設計・製作
2025年8月 プラント運転開始(予定)
※プラント運転開始後、順次、近隣ユーザーへの水素供給および品質実証、CNT品質実証を開始します。
詳細はニュースリリースをご覧ください。
https://www.awi.co.jp/ja/business/news/news-16087695352692906079.html