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NDCとは?誰でもわかりやすくかんたん解説|日本の目標と世界の現在地【2026年版】

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NDC(国が決定する貢献)とは、パリ協定に基づいて各国が自分で決め、国連に提出する温室効果ガスの削減目標と対策のことです。正式名称は Nationally Determined Contribution で、5年ごとに見直して出し直すことになっています。日本は2025年2月に「2035年度に60%減、2040年度に73%減(ともに2013年度比)」という新しいNDCを提出しました。この記事では、定義の先にある疑問、つまり日本の数字は何を意味するのか、世界の約束を足すとどうなるのか、自分の暮らしや仕事にどうつながるのかまで、公的な資料をもとにたどります。

この記事で学べること

  • 日本のNDCが2015年から2025年にかけてどう変わったか
  • 世界のNDCを合計すると、1.5℃の道筋とどれだけ離れているか
  • 日本の2024年度の排出量が、2030年度目標に対してどの位置にあるか
  • NDCに関するよくある誤解と、暮らしや職場でできる行動

日本のNDCはいまどうなっている|2030・2035・2040年度の3つの数字

日本のNDCは、この10年で大きく引き上げられてきました。いま公式に示されている数字は3つあり、それぞれ提出された時期が違います。まず時系列で整理し、そのうえで2025年に出された最新版の中身を確認します。

2015年の「26%減」から2021年の「46%減」へ

日本が最初に国連へ出した約束草案(INDC)は2015年7月のものです。2030年度に2013年度比で26.0%減(2005年度比では25.4%減)という水準でした。

転機は2021年です。2050年カーボンニュートラルと整合させるため、2030年度の目標を2013年度比で46%減へ引き上げました。同時に、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとも表明しています。環境省の「日本のNDC」ページによると、2021年10月22日に地球温暖化対策推進本部で決定し、同日に国連へ提出されました。

2025年2月に提出した2035年度・2040年度目標

2025年2月18日には、2030年度のその先を示す新しいNDCが提出されました。2013年度比で、2035年度に60%減、2040年度に73%減を目指すという内容です。国連への提出文書では、排出量にすると2035年度が約5億7,000万トン、2040年度が約3億8,000万トン(いずれもCO2換算)に相当すると示されています。

政府はこの目標を、2050年ネット・ゼロに向けた直線的な経路にある野心的な目標であり、1.5℃目標と整合的だと位置づけています。ただし、この評価は日本政府自身の説明です。他国の目標や科学的な必要量との比較は、次の節以降で確認します。

NDCは「削減の数字」だけではない

NDCは排出削減の目標だけでなく、気候変動への適応や資金の面の取り組みを含められます。つまり、NDCは国の気候対策の全体像を示す文書です。

そのため、削減率の数字だけを見て「高い」「低い」と判断すると、見落としが出ます。排出量の数字を読むときは、どの分野をどの方法で減らす計画なのかも、あわせて見る必要があります。

世界のNDCを足すとどうなるか|COP30後も残る差

2025年は、世界の多くの国が2035年に向けた新しいNDCを出し直す節目でした。ここでは、各国の約束を合計した結果と、2025年11月のCOP30で何が決まったかを見ます。

約束を合計しても、必要な削減には届かない

国連気候変動枠組条約事務局は、2025年11月10日に統合報告書の更新版を公表しました。86のNDC(113の締約国分)を集計すると、土地利用・林業を含めた世界全体の2035年の排出量は、2019年比で約12%減にとどまる見込みです。土地利用を除くと約7%減になります。この集計がカバーするのは、2019年の世界排出量の約69%です。

一方、IPCCは、1.5℃の道筋に乗るには世界の排出量を2035年までに2019年比で約60%減らす必要があるとしています。約12%減と約60%減の間には大きな開きがあります。各国のNDCは前進しているものの、足し合わせても必要な水準には届いていないというのが現状です。

気温に換算すると2℃台前半から後半

国連環境計画(UNEP)が2025年11月に出した「排出ギャップ報告書」では、各国のNDCが完全に実行された場合の今世紀の気温上昇は2.3〜2.5℃と見積もられています。現在実施されている政策のままだと約2.8℃です。前年の報告書では、それぞれ2.6〜2.8℃と3.1℃でした。

ただしUNEPは、改善の一部は算定方法の更新によるもので、実際の排出削減だけによるものではないと注記しています。また、2024年の世界の排出量は前年比で2.3%増え、577億トン(CO2換算)に達しました。約束の数字が少し良くなっても、実際の排出量はまだ増えている年があるわけです。

COP30で決まったこと

2025年11月10日から22日(会期は1日延長)にブラジルのベレンで開かれたCOP30では、「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。環境省の結果概要によると、柱は、パリ協定10周年の評価、交渉から実施への移行、実施・連帯・国際協力の加速の3つです。

適応への資金を2035年までに少なくとも3倍にする努力を求める内容も盛り込まれました。一方で、化石燃料からの脱却や森林破壊の停止について具体的な工程表は示されず、1.5℃との差を埋める計画は実現しなかったという評価もあります。2026年11月にはトルコでCOP31が開かれる予定で、各国の新しいNDCを世界全体の差と照らして点検することが課題とされています。

日本は目標に近づいているのか|2024年度の排出量から読む

目標の数字がわかったら、次に気になるのは実績です。環境省が2026年4月に公表した2024年度の温室効果ガス排出・吸収量をもとに、日本の現在地を確認します。

2013年度比で28.7%減、初めて10億トンを下回った

環境省の発表によると、2024年度の排出・吸収量は約9億9,400万トン(CO2換算)で、2023年度比で1.9%減、基準年の2013年度比では28.7%減でした。2013年度以降で最も低い値で、総量が10億トンを下回ったのは今回が初めてです。

減少の主な理由として、環境省は、製造業の生産量の減少などによるエネルギー消費の減少と、電力の脱炭素化を挙げています。電力の脱炭素化には、原子力発電所の再稼働と再生可能エネルギーの拡大が含まれます。

2030年度の46%減まで、なお約17ポイント

2030年度の目標は2013年度比46%減です。2024年度の実績は28.7%減なので、差は約17ポイントあります。残された年数は、2024年度から数えて6年です。

減少の理由の一つが製造業の生産減少である点にも注意が必要です。景気の変動で減った分は、生産が戻れば反動が出る可能性があります。目標に近づいているかどうかは、省エネの定着や再エネの導入といった構造的な変化がどこまで進んでいるかで見たほうが、実態に近づけます。

「NDCの数字」と「実績の数字」を並べて読む

NDCの削減率は、あくまで国が約束した将来の姿です。実績が公表されるたびに、約束との差を確認する習慣があると、ニュースの数字を自分で読めるようになります。

たとえば「過去最少」という見出しだけを見ると順調に思えます。しかし、目標に対する進み具合と並べると、見え方が変わります。目標、実績、その差の3点をセットで見るのが、NDCの数字を読むときの基本です。

NDCが暮らしに届くまで|国・自治体・企業の3つの経路

NDCは国が国連に出す文書ですが、そのままでは現場の行動にはなりません。国の計画、自治体の取り組み、企業の目標という3つの経路を通って、暮らしに届きます。

国の経路|地球温暖化対策計画とエネルギー基本計画

日本は2025年2月に、NDCと並行して地球温暖化対策計画を閣議決定しました。同じ時期に決まった第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成が、再生可能エネルギー4〜5割程度、火力3〜4割程度、原子力2割程度という目標になっています。

比較のために実績を見ると、2023年度の再エネ比率は22.9%でした。2040年度の目標までは大きな増加が必要です。家庭の電気料金や、住宅・交通のあり方に影響するのは、こうした電源構成の変化です。

自治体の経路|ゼロカーボンシティ

多くの自治体が、2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにすると表明するゼロカーボンシティの取り組みを進めています。環境省は表明の状況を公表しています。

表明そのものは宣言であり、削減を進めるには、公共施設の再エネ化、建物の断熱、公共交通の見直しなどの具体的な計画が要ります。お住まいの自治体が宣言をしているか、計画があるかは、自治体のウェブサイトで確認できます。

企業の経路|SBTによる目標設定

企業の側では、パリ協定の水準に合わせた削減目標を設定する「SBT」という国際的な枠組みがあります。環境省の資料によると、2024年3月時点の国別の認定企業数は、日本が904社で最多、2位が英国の781社でした。

SBTは企業が自ら目標を立てて第三者の認定を受ける仕組みで、国のNDCとは別の制度です。ただし、どちらも1.5℃に整合させるという考え方を共有しています。勤務先や取引先がSBTを取得しているかどうかは、NDCを自分の仕事に引き寄せる入り口になります。

NDCについてよくある誤解|4つの疑問に答える

NDCの話題には、聞いたことがあるようで正確には知られていない点がいくつかあります。ここでは、誤解されやすい4つの疑問を取り上げます。

「目標を達成できないと罰則があるのか」

パリ協定は、NDCの目標を達成すること自体に法的拘束力を持たせない設計になっています。一方で、各国はNDCを作成し、通報し、維持する義務を負います。目標の達成に向けて国内対策を実施することも求められます。

罰則の代わりに働くのが透明性の仕組みです。各国は排出量や進捗を定期的に報告し、国際的にレビューを受けます。数字が公開されることが、約束を守る圧力になります。

「日本の60%と世界の60%は同じ数字か」

同じ「60%」でも、基準年が違います。日本の2035年度目標は2013年度比の60%減です。IPCCが示す世界全体の必要量は、2019年比で約60%減です。

日本の排出量は2013年度から2019年度にかけてすでに減っています。そのため、基準年を2019年に揃えると、日本の2035年度目標の削減率は60%より小さい数字になります。数字を比べるときは、まず基準年を確認するのが鉄則です。

「NDCは国が決めることで、個人には関係ない」

NDCの数字は国全体の目標ですが、その中身は電力、建物、移動、産業といった私たちの生活や仕事の分野に割り振られます。電力の再エネ化は電気料金や選べる電力プランに、建物の省エネ基準は住宅の性能に、交通の見直しは移動手段に影響します。

国の目標が個人の行動の合計で決まるわけではありません。一方で、個人の選択が制度の方向を後押しする面はあります。両方の見方を持っておくと、ニュースが自分の問題として読めるようになります。

「目標が高ければ、達成も約束されている」

NDCの目標は、数字が高いほど良い結果になるとは限りません。目標を実現する計画と予算があってはじめて意味を持ちます。

先ほどの2024年度の実績と2030年度目標の差が示すように、目標と実績の間には距離があります。約束の大きさと、実行の裏づけの両方を見ることが大切です。

自分は何をすればよいか|NDCを手がかりにした3つの行動

NDCを知ったあとに何をするかが、この記事の締めくくりです。大きな決意は要りません。生活、職場、情報収集の3つの場面で、小さな入り口を紹介します。

家庭|電気の中身を確かめる

契約している電力会社の電源構成や、再エネ中心のプランの有無を調べてみてください。電力の脱炭素化は国の目標の大きな柱で、家庭の電気の選び方は、その流れとつながっています。

住まいについては、窓の断熱や省エネ家電への買い替えが、長期的な排出と光熱費の両方に効きます。賃貸の場合は、カーテンや断熱シートなど、できる範囲から始められます。

職場|自社の目標を知る

勤務先が排出量の目標を持っているか、SBTなどの認定を受けているかを、サステナビリティ報告書やウェブサイトで確認してみましょう。取引先から排出量の情報を求められる場面も増えています。

自分の業務に関わる排出源、たとえば出張、物流、紙やエネルギーの使い方に目を向けるだけでも、会社の目標を自分ごととして捉える手がかりになります。

情報|公式の数字を自分で見る

COP31が来月に迫っています。ニュースの見出しだけでなく、環境省の「日本のNDC」ページや国連気候変動枠組条約事務局の資料など、公式の数字を一度見ておくと、記事ごとの違いが読み取りやすくなります。

自治体や国が計画を作るときには、意見募集(パブリックコメント)が行われることもあります。NDCの実現に関わる計画に意見を出せる機会があることも、頭に入れておいてください。

まとめ

NDCは、パリ協定に基づいて各国が自ら決める削減目標と対策です。日本は2025年2月に、2013年度比で2035年度60%減、2040年度73%減という目標を国連に提出しました。2030年度の46%減に続く、より遠い先の約束です。

一方で、世界のNDCを合計しても、2035年の排出量は2019年比で約12%減にとどまります。IPCCが1.5℃の道筋として示す約60%減とは大きな差があります。日本の2024年度の実績も、2013年度比28.7%減で、2030年度目標までなお約17ポイントあります。約束と実績の差を知ることが、NDCを自分の問題として考える出発点になります。

まず1つだけ試すなら、契約している電力会社の電源構成を調べてみてください。国の目標が、自分の家のコンセントにどうつながっているかを確かめる、いちばん手近な方法です。

  • NDCは各国が自ら決めて国連に出す削減目標と対策で、5年ごとに見直される
  • 日本は2035年度に60%減、2040年度に73%減(2013年度比)を2025年2月に提出した
  • 世界のNDCを合計した2035年の排出量は2019年比で約12%減にとどまり、必要な約60%減とは差がある
  • 日本の2024年度排出・吸収量は2013年度比28.7%減で、2030年度の46%減まで約17ポイントある
  • 目標の数字は基準年と実績をそろえて読み、電力・職場・情報の3つの場面で行動につなげる

参考文献

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