公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
ENVIRONMENT

日本の脱炭素政策が新フェーズへ|NDC新目標と排出量取引義務化が同時始動

日本の脱炭素政策が新フェーズへ|NDC新目標と排出量取引義務化が同時始動

2025年2月に日本政府が国連へ新たな温室効果ガス削減目標(NDC)を提出し、同年5月には排出量取引制度(GX-ETS)の義務化を定めた改正GX推進法が成立。そして2026年4月、いよいよその制度が本格稼働します。「脱炭素と経済成長の同時実現」を掲げる日本のGX(グリーントランスフォーメーション)政策が、新たなフェーズへと踏み出しました。

新たなNDC|2035年度に60%削減、2040年度に73%削減

日本政府は2025年2月18日、パリ協定に基づく新たなNDC(国が決定する貢献)を閣議決定し、同日、国連気候変動枠組条約事務局へ提出しました。内容は「2035年度に温室効果ガスを2013年度比60%削減、2040年度に同73%削減」を目指すというものです。
これは、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路に位置づけられています。
現行の2030年目標(2013年度比46%削減)の達成を前提として、そのペースを維持しながらネットゼロへ直線的につなぐ経路が選ばれました。

一方で、この目標の水準をめぐる議論は続いています。
WWFジャパンは、「IPCCやCOP28決定が目指す国際水準に達するためには、日本の次期NDCは2013年度比で66%以上の目標が必要」とし、現在示されている案は不十分だという認識を示しました。
また、2026年3月時点で大手企業を含む国内239社が加盟する日本気候リーダーズ・パートナーシップは次期NDC案に対する提言を発表し、GHG削減の水準として2013年度比で75%以上を求めました。

政府目標が「1.5℃整合」かどうかという論点は、今後のさらなる政策対応を判断するうえでも引き続き注視が必要です。

2026年4月始動|排出量取引が「義務」になる

今回の政策転換で最も注目すべき動きが、排出量取引制度(GX-ETS)の義務化です。

経済産業省は、CO2の直接排出量が前年度までの3年度平均で10万トンを超える事業者を対象とする排出量取引制度を2026年度から本格稼働させます。
排出削減を義務付けられるのはCO2の直接排出量(スコープ1)が2023〜2025年度の平均で10万トン以上の企業で、電力会社や石油元売り、製鉄・化学などの素材メーカー、大手自動車メーカーなど国内300〜400社が対象となる見込みです。
2026年4月1日に施行されるとともに、GX-ETS(排出量取引制度)への参加が義務化されます。2026年度を最初の排出枠割り当ての基礎となるCO2排出量の計測期間とし、2027年度には最初の義務的排出枠が割り当てられ、排出量取引市場が本格稼働します。さらに2028年度には「化石燃料賦課金」が導入される予定です。
改正法の施行は2026年4月となる予定で、排出量取引は排出量の多い事業者に対して排出削減を義務付けるものです。これまで省エネ法などがあったとはいえ、二酸化炭素の本格的な削減義務を求めるという点で、企業の気候変動対策はこれまでと異なるフェーズに入ったと言えます。

GX2040ビジョンと官民150兆円投資

この制度変化の背景には、2025年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン」があります。

2025年2月、「第7次エネルギー基本計画」と同時に国家戦略として「GX2040ビジョン」が閣議決定され、GXを推進するための今後の見通しや支援策などが示されました。
GX実現に向けては、10年間で150兆円規模の投資を官民協調で実施する計画で、民間の積極的な投資を促すため、支援策と規制・制度的措置を一体的に講じる「成長志向型カーボンプライシング」という政策の枠組みが採られています。
具体的には、政府が「GX経済移行債」を活用し、10年間で20兆円規模の先行投資支援を行います。また2026年度から企業間でCO2排出枠を売買する排出量取引制度を本格稼働し、2028年度からは化石燃料の輸入事業者などに対して化石燃料賦課金を導入します。

さらに長期的には、
2033年度から発電事業者(特定事業者)を対象とした排出枠の有償オークションを開始する予定です。
このように段階的に規制を強化することで、企業が将来見通しを立てやすくなる設計となっています。

課題と問われる「実効性」

こうした政策の充実が進む一方、実際に削減目標を達成できるかという「実効性」への問いは残ります。
日本総研は2025年2月21日付の分析で、NDCと併せて決定した地球温暖化対策計画において、2035〜2040年度目標に関する施策やその想定効果は示されているものの、全体としての排出削減の見通しは不透明だと指摘しています。

また、2025年2月に閣議決定されたGX推進法の一部改正においては、排出量取引制度の法定化やGX分野への財政支援の整備等が行われました。
こうした制度整備を着実に実行に移せるかが今後の焦点です。

私たちにできること

脱炭素政策は「大企業や政府だけの話」と思われがちですが、その影響は私たちの暮らしにも広がってきます。電力価格や製品コストの変化、再エネ電力の選択肢の広がりなど、身近な場面でつながりが見えてきます。

環境省は、脱炭素社会づくりに貢献する国民・消費者の行動変容やライフスタイル変革を促すため、「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」を推進しています。
省エネ住宅への移行、再エネ電力の選択、食や移動のスタイルを見直すことも、大きな流れの一部です。

日本の脱炭素政策が制度として動き出した今、「知る・考える・行動する」という個人の歩みが、社会全体の変化と確かにつながっています。政策の動向を追いながら、自分自身のアクションを考えてみましょう。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

  1. 食品ロスは464万トン、目標は「60%削減」へ|プラスチック規制も新局面、日本と世界の最新動向

  2. 排出量取引が義務化へ|日本のGX政策、2026年度から新たなステージへ

  3. 再生可能エネルギー、2026年は転換点|世界で加速する導入と日本の課題

RELATED

PAGE TOP