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SDGs

SDGs達成まで残り4年、日本はどこに立っているか|ポストSDGsの現在地

SDGs達成まで残り4年。日本でも「ポストSDGs」の議論が本格化している

2030年が見えてきた。SDGsが採択された2015年から10年余り、「持続可能な開発目標」は企業・自治体・学校の現場にまで浸透した。しかし達成状況を数字で見ると、全体の8割以上で進捗が不十分という厳しい現実がある。残り4年で何ができるのか、そして2030年以降の世界をどう設計するのか——その両方を同時に考えなければならない局面に差し掛かっている。

17%しか「順調」でない——SDGs達成状況の現実

SDGsは2015年の国連総会で採択された、2030年までに達成すべき17の目標・169のターゲットからなる国際目標だ。採択から10年が経過した今、その進捗はどう評価されているか。

国連が2024年6月に発表した「持続可能な開発目標報告2024」によると、2030年の目標達成に向けて順調に進捗しているターゲットはわずか17%にとどまる。残り約83%は進捗が不十分、停滞、あるいは2015年時点より後退しているとされている。コロナ禍・気候変動・地政学的紛争が重なったことで、貧困・飢餓・保健など複数の指標が2010年代の水準に逆戻りした領域もある。

特に深刻なのは「誰一人取り残さない」という理念との乖離だ。経済成長の恩恵が上位所得層に偏る構造は温存されたまま、格差は多くの地域で拡大している。SDGsが掲げた「変革」は、まだ始まりにすら達していない部分が多い。

日本のランキングは167か国中19位|停滞の背景にある構造的課題

日本に目を向けると、2025年版「Sustainable Development Report」で167か国中19位(前年18位から1つ後退)という結果が示されている。2017年には11位だったため、この10年で約8つ順位を落とした計算になる。

低評価の要因として繰り返し指摘されているのが、ジェンダー平等、気候変動対策、生物多様性保全の3分野だ。

ジェンダー平等については、管理職・政治職への女性登用率が依然として低く、賃金格差も先進国の中で大きい部類に入る。気候変動対策では石炭火力の継続と再生可能エネルギーの普及速度のギャップが課題とされ、生物多様性分野では陸域・海域の保護区面積の拡大目標に対して実効性の議論が続いている。

一方で、貧困削減・衛生・インフラ分野では高い評価を維持しており、日本が「課題なし」ではなく「特定分野に集中した課題」を抱える構造が浮かび上がる。

環境省「SDGsステークホルダーズ・ミーティング」が示す方向性

国内での議論の場として注目されるのが、環境省が主催する「SDGsステークホルダーズ・ミーティング」だ。2026年3月に開催が予定された第17回会合では、テーマとして「SDGs達成とポストSDGsに向けた地球環境課題の統合的解決のための好事例と世界への発信」が掲げられた。

会合では環境省・外務省・内閣府によるSDGsの最新動向報告に加え、慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授や地球環境戦略研究機関(IGES)の研究員らによる事例紹介、自治体・企業の実践報告が予定された。SDGs研究で国際的な実績を持つ蟹江教授が登壇するという点は、単なる進捗確認にとどまらず「次の枠組みの設計」を見据えた議論であることを示唆している。

こうした政府主催の場で「ポストSDGs」が公式テーマとして扱われたことは、日本の政策議論において2030年以降の枠組みへの移行が本格化している証左といえる。

「ポストSDGs」とは何か|未来サミットから見える次の枠組み

「ポストSDGs」という言葉は、SDGsの期限である2030年以降に続く国際的な持続可能な開発の枠組みを指す。現時点では正式名称も決まっておらず、その設計をめぐる議論が世界各地で行われている段階だ。

大きな節目となったのが、2024年9月に国連で開催された「未来サミット(Summit of the Future)」だ。このサミットで採択された「未来のための協定(Pact for the Future)」は、2030年以降の計画策定の必要性に明示的に言及した文書であり、SDGsの後継枠組みの策定に向けた政治的意志の確認と位置づけられている。

今後の検討の場としては、国連の高レベル政治フォーラム(HLPF)が中心となる見通しだ。HLPFは毎年7月にニューヨークで開催され、SDGsの進捗レビューと国際的な議論の主舞台となってきた。2025〜2026年のHLPFでは、ポストSDGsの議論が具体化する局面が訪れると見られている。

また、2026年末に任期を終えるアントニオ・グテーレス国連事務総長のもとで始まったこうした議論は、次期事務総長のリーダーシップのもとでさらに具体化されていく見通しだ。誰が次のビジョンを描くかが、ポストSDGsの内容を左右する要因のひとつになる。

SDGsと気候・生物多様性の「3つの危機」をどう統合するか

ポストSDGsの設計において避けられない論点が、気候変動・生物多様性損失・汚染という「3つの惑星規模の危機」とSDGsをどう統合するかという問いだ。

SDGsが採択された2015年は、同じ年にパリ協定が合意された年でもある。気候変動対策(SDGs目標13)とパリ協定は、当初から連動する関係として位置づけられていた。しかし実際には、各国の温室効果ガス削減目標(NDC)とSDGsの達成計画は別々に議論されることが多く、統合が不十分との指摘が続いてきた。

生物多様性については、2022年のCOP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が2030年までに陸域・海域の30%を保護区にするという「30by30」目標を定めた。SDGsの目標14(海の豊かさ)・目標15(陸の豊かさ)との整合性をどう取るかが、ポストSDGsの枠組みづくりにおける実務的な課題になっている。

複数の国際目標が並立する状況は、企業や自治体にとって報告負荷の増大につながる。ポストSDGsがより統合的な枠組みとして設計されるかどうかは、実務面での普及にも直結する論点だ。

企業・自治体はいま何を準備すべきか

「ポストSDGsの枠組みが決まってから動く」では遅い。現在の企業と自治体に求められるのは、SDGsの残り期間を全力で走りながら、次の枠組みへの移行を見据えた基盤をつくることだ。

ESG情報開示の強化

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定したIFRSサステナビリティ開示基準(S1・S2)は、2024年に発効し、日本でも金融庁が国内基準への組み込みを進めている。こうした開示義務はSDGsの特定目標に紐づくかどうかにかかわらず企業に課されるものであり、ポストSDGsの枠組みが変わっても影響を受けにくい「構造的義務」として定着しつつある。

科学的根拠に基づく目標設定

SBT(Science Based Targets)のように、科学的根拠に裏打ちされた目標設定のアプローチは、SDGsの目標番号に依存しない形で機能する。気候変動に限らず、生物多様性版SBT(SBT for Nature)の整備も進んでおり、企業が自社の影響範囲を定量化して目標を持つ姿勢は、どの国際枠組みの下でも評価の軸になる。

サプライチェーン全体の人権・環境デューデリジェンス

EU人権・環境デューデリジェンス指令(CSDDD)は2024年に成立し、欧州市場に関わる日本企業にも実質的な影響が及ぶ。SDGsで「社会・人権」分野の課題として語られてきた問題が、法的義務として具体化した形だ。ポストSDGsの枠組みにおいても人権・環境への配慮は一層強調されると見られ、早期の体制整備が競争優位につながりうる。

2030年と2031年以降を同時に見据える

SDGsの「17%しか順調でない」という現実は、絶望を促すデータではない。それは残り4年で集中して取り組む分野を明確にする地図として読むべきだ。

日本では、ジェンダー平等・気候変動対策・生物多様性保全という3分野で課題が集中している。この3つは偶然に並んでいるわけではなく、いずれも「経済成長を優先してきた構造の歪み」が表れている分野だ。2030年に向けて何かひとつ着手するとすれば、この3分野への具体的な関与が最も効果的な選択肢になる。

同時に、ポストSDGsに向けた議論の動向を定期的に把握しておくことも重要だ。国連HLPFや環境省の会合は一般市民・企業担当者向けにも情報を公開・配信しており、年に数回の情報アップデートは大きな負担なく続けられる。枠組みが変わる前に「なぜその目標が設定されるのか」という背景を理解しておくことが、変化への適応力を高める。

まとめ|4年後を見据えながら、今日できる一歩を

SDGsの達成期限まで残り4年。進捗が順調なのは全ターゲットの17%にとどまり、日本でも特定分野での遅れが続いている。一方で、ポストSDGsをめぐる国際的な議論は2024年の未来サミットを機に具体化の段階へと進んでいる。

企業・自治体・個人のいずれの立場でも、「SDGsが終わったら次を考える」ではなく「今の取り組みを次の枠組みにもつながる形で積み上げる」という発想が求められている。

  • SDGsの169ターゲットのうち順調なのはわずか17%(2024年国連報告)
  • 日本は167か国中19位(2025年版SDRレポート)、ジェンダー・気候・生物多様性で低評価
  • 2024年の「未来のための協定」でポストSDGsの議論が国際的に本格化
  • ESG開示・SBT・人権デューデリジェンスは、枠組みが変わっても有効な「構造的取り組み」
  • ポストSDGsの動向把握は、国連HLPFや環境省の公開情報で定期的に行える

まず1つだけ試せるとすれば、次回の国連HLPFや環境省主催の会合の案内をブックマークしておくことから始めてみてください。議論の最前線を知ることが、次の行動への最短ルートになります。

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