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EBRDが「グリーン経済移行戦略2026-30」を採択|2030年までにグリーンファイナンス28兆円超を目指す

EBRDが「グリーン経済移行戦略2026-30」を採択|2030年までにグリーンファイナンス28兆円超を目指す

欧州復興開発銀行(EBRD)は2026年3月、2030年までのグリーンファイナンス累計額を少なくとも1,500億ユーロ(為替レートによって変わりますが、日本円で約28兆円)に引き上げる「グリーン経済移行戦略2026-30(GET 2030)」を取締役会で採択したと発表しました。EBRDは1991年に設立された国際開発金融機関で、中・東欧から中央アジア、西バルカン、中東・北アフリカまで、民間企業向けの融資と投資を主な手段として市場経済への移行を支えています。

ただ、「28兆円」という数字だけを見ても、何に使われ、誰のお金が含まれ、日本の私たちとどうつながるのかは見えてきません。この記事では、戦略の中身を公式発表から確認したうえで、数字の読み方、2025年の実績との比較、日本企業の参画事例、そして読者が次に見ておきたい点を順に整理します。

この記事で学べること

  • EBRDのGET 2030が掲げる4つの数値目標と、6つの重点分野
  • 「28兆円」がEBRD自身の融資額ではなく、民間資金を含む目標であること
  • 2025年の実績(グリーン投資9.4億ユーロではなく94億ユーロ規模)から見た目標の現実味
  • 日本企業やJBICがEBRDと組んでいるウズベキスタンの事例
  • グリーンファイナンスのニュースを読むときに確認したい3つの視点

GET 2030の全体像|押さえておきたい4つの数値目標

EBRDの公式発表によると、GET 2030は2026〜2030年の「戦略・資本フレームワーク」の一部として位置づけられています。気候変動対策だけを単独で掲げる計画ではなく、経済ガバナンスの強化、人的資本と機会の平等という他の優先課題と並ぶ柱の一つです。デジタル技術と民間セクターの動員が、これらを横断して支える手段とされています。

1,500億ユーロのグリーンファイナンス

中心となる目標は、2030年までにグリーンファイナンスの累計額を少なくとも1,500億ユーロに引き上げることです。EBRDの自己資金に加えて、民間セクターから動員する資金も含まれます。海外メディアの報道では、EBRDはこの金額を「上回ることを目指す下限」と位置づけていると伝えられています。

年間事業量の50%以上をグリーンに

2つ目は、年間事業量の少なくとも50%をグリーンプロジェクトに充てるという目標です。この水準は2025年にすでに達成されており、新しい高みを一気に示すというより、すでに実績のあるラインを次の5年間も維持する性格が強い目標といえます。

気候レジリエンスを組み込む案件を50%増やす

3つ目は、気候変動への適応力(レジリエンス)を組み込んだプロジェクトの数を50%増やすことです。排出を減らす「緩和」だけでなく、洪水、干ばつ、猛暑といった影響にインフラや産業が耐えられるようにする「適応」にも、はっきりと重みを置いています。EBRD総裁のオディール・ルノー=バッソ氏は、活動国が気候変動の影響をますます受けていると述べています。

ネイチャーポジティブへの投資

4つ目は、自然に恩恵をもたらす「ネイチャーポジティブ」な成果を持つ投資の拡大です。ただし、公式発表の範囲では、この項目に具体的な数値目標は示されていません。1,500億ユーロや50%のような数字が並ぶ中で、自然分野だけは「探る」段階にあることは、読む側が冷静に区別しておきたい点です。

「28兆円」の中身|EBRDの融資額ではなく民間資金を含む目標

見出しの「28兆円超」を、EBRDが28兆円を貸し出す、と読むと実態からずれます。公式発表の表現は、EBRDの自己資金と、民間セクターから動員する資金を合わせた累計額です。つまり、EBRDが先に数%の資金を出し、それをきっかけに銀行や投資家、事業会社が加わって初めて達成できる目標だということです。

この点は、EBRDが「民間主導の経済」を支える銀行である性格とも一致しています。2025年の投資のうち75%(127億ユーロ)は民間セクター向けでした。国や自治体への融資が中心の開発銀行とは、お金の流れ方がやや違います。

累計の起点は戦略本文で確認が必要

一方で、「累計」の数え方には注意が必要です。EBRDは2006年以降、グリーンプロジェクトに750億ユーロを超える投資をすでに実行しています。EBRD公式発表によると、1,500億ユーロは2006年からの累計ではなく、2026年に承認された新戦略「グリーン・エコノミー・トランジション戦略2026-30」のもとで2030年までに達成を目指す目標です。引用や投資判断に使うときは、戦略本文の定義を確認することをおすすめします。

円換算は目安にとどめる

「約28兆円」という円換算も、為替レートによって変わります。ユーロ建ての目標が、円安・円高で日本円の見かけの大きさを変えるだけで、事業の中身は変わりません。ニュースで金額を見たときは、通貨と、自己資金なのか動員額を含むのかを確かめる習慣があると、数字に振り回されにくくなります。

6つの重点システムと、金融セクターへの働きかけ

GET 2030は、個別のプロジェクトを積み上げるだけでなく、エネルギー、工業、農業・食料、輸送、都市、金融という6つの「システム」ごとに市場の障壁を取り除くことを掲げています。システム単位で考える理由は、発電所だけを整えても、送電網、規制、料金制度、金融機関の審査が追いつかなければ、再生可能エネルギーは広がらないからです。

エネルギーと産業

エネルギーでは再生可能エネルギーと蓄電、系統の整備が、産業では工場の省エネや低炭素化が中心になると考えられます。EBRDの活動地域は化石燃料への依存が強い国も多く、電力と産業の転換は排出削減の効果が大きい分野です。個別の案件規模や配分は公式発表の範囲では示されていないため、ここでは分野の方向性にとどめます。

農業・食料、輸送、都市

農業・食料は、灌漑や貯蔵、加工の効率化を通じて、排出削減と気候への適応の両方につながります。輸送と都市は、公共交通、建物の断熱改修、上下水道、廃棄物処理といった生活インフラが含まれます。気候レジリエンスを組み込む案件を50%増やす目標は、とくにこうした都市・農業分野で具体化していくとみられます。

金融セクターの移行計画

6つ目の「金融」は、見落とされやすいけれど重要な分野です。EBRDが融資する現地の銀行が、自らの融資先の脱炭素に向けた「移行計画」を採用するよう促す取り組みが掲げられているとされています。EBRDが直接融資できる企業の数には限りがあるため、現地の銀行を通して中小企業まで資金を届ける発想です。

2025年の実績で見る、目標の現実味

目標の重さを測るには、直近の実績が手がかりになります。EBRDが2026年1月に発表した2025年の投資額は、過去最高の168億ユーロ、640件のプロジェクトでした。このうちグリーン移行に向けた投資は94億ユーロ(全体の56%)で、493件にのぼり、50%の目標を上回りました。

単年の実績と5年間の目標

単純な比較はできませんが、1年間の自己資金のグリーン投資が約94億ユーロ、単年の動員額が57億ユーロという水準にあります。これを5年間続けた場合の規模感と、1,500億ユーロという目標を並べると、目標は実績の延長線上にありながら、民間資金の動員をさらに増やす前提で作られていることが読み取れます。ただし累計の定義が確認できていないため、ここでは達成の難しさを断定しません。

活動範囲の広がり

2025年は、EBRDが活動国を広げた年でもありました。サブサハラ・アフリカのベナン(3,000万ユーロのソブリン融資)とイラク(1億ドルの貿易金融枠)で、初めての投資を実行しています。ウクライナには過去最大の29億ユーロを投じました。活動地域が広がるほど、気候リスクの種類も増えるため、適応型の案件を増やす目標は理にかなっています。

財務基盤

EBRDは最高格付けのトリプルAを維持し、2025年には過去最高の利益を計上したと発表しています。開発銀行が目標を掲げるときは、資本の裏付けも見ておきたいところで、この点ではGET 2030は財務面の前提が整っているといえます。

日本との接点|ウズベキスタンの太陽光とJBICとの協力

EBRDの話は遠い国際機関のニュースに見えますが、日本は創設時からの出資国であり、日本企業が現地の案件に参画する場面も増えています。公式情報から確認できる例を二つ紹介します。

ウズベキスタンの大型太陽光・蓄電プロジェクト

2025年10月、EBRDはウズベキスタンで、太陽光発電1GWと蓄電池1,336MWhを組み合わせた大型プロジェクトに、合計1億4,200万ドル(1億2,100万ユーロ)の融資を決めました。事業を主導するのはサウジアラビアのACWA Powerですが、共同出資者として住友商事、四国電力、中部電力が名を連ねています。EBRDによると、この3社にとってウズベキスタンでの再生可能エネルギーと蓄電池への初めての投資です。

発電量は年間約2,300GWhと見込まれ、約60万世帯分に相当するとされています。国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)が保険をつけた融資団、アジア開発銀行などが協調融資者として想定されていると公表されています。EBRDはウズベキスタンで、これまで188件、53億5,000万ユーロ超を投資してきました。

JBICとの協力覚書

もう一つの接点が、EBRDとJBICの協力関係です。2022年に両者は覚書を結び、エネルギー転換、デジタル化、包摂性に関する案件で、共同融資の機会を広げることを確認しています。日本企業にとっては、EBRDの案件審査や環境社会面の基準に沿うことで、新興国市場に参入しやすくなる側面があります。

日本の国内市場の現在地

視点を国内に戻すと、日本のグリーンファイナンス市場は拡大一辺倒ではありません。環境省のグリーンファイナンスポータルによると、国内企業等のグリーンボンド発行総額は2023年に2兆3,266億円でしたが、2024年は1兆4,214億円、2025年は1兆3,169億円でした。2024年以降の外貨建て発行分は、各年1月の報告省令レートで円換算されています。国内では、規模の拡大より、中身の質をどう担保するかが問われる局面に入っています。

他の開発銀行と比べると|誤解されやすい対比

「1,500億ユーロは世界でどれほどの規模か」という疑問も出てきます。多国間開発銀行(MDB)の合同報告によると、2024年にMDB全体が出した気候資金は過去最高の1,370億ドルで、前年から10%増えました。このうち低・中所得国向けが851億ドル、うち適応向けが263億ドルです。民間資金の動員額は1,340億ドルで、33%増えています。

単年と5年間は並べて比べられない

1,370億ドルは、MDB全体の「1年分」の気候資金です。一方、EBRDの1,500億ユーロは、EBRD単独の「2030年までの累計目標」で、民間の動員額も含みます。数字が大きいほうが勝ち、という読み方はできません。

対象地域の違い

MDB合同報告の数字には、高所得国向けの資金も含まれ、EBRD自身も同報告の中で高所得国向けの気候資金に言及しています。EBRDは「移行経済」を主な対象にしていて、途上国支援に特化した開発銀行とは役割が異なります。

公的援助の縮小と民間資金の役割

先進国の政府開発援助が縮小傾向にあるという指摘はよく聞かれますが、その穴を民間資金だけで埋められるとは限りません。EBRDのような開発銀行が先に資金を出して、リスクを引き受けることで民間が参加しやすくなる、という呼び水の役割が期待されているのが現状です。

ニュースを読むときに確認したい3つの視点

最後に、この種の発表を読むときの確認ポイントを整理します。環境金融は用語が多く、数字の印象だけで「進んでいる」「遅れている」と判断しやすい分野です。

誰のお金が含まれているか

EBRDの1,500億ユーロのように、自己資金と動員資金を合わせた目標は、動員の確実さによって達成度が変わります。自己資金だけなのか、民間が加わる分も含むのかを、まず確かめます。

定義をだれが決めたか

環境省のポータルは、グリーンボンドの発行額が主に発行体の自己宣言のラベルに基づいていて、環境省によるスクリーニングは行っていないと明記しています。「グリーン」とラベルが付いていても、その基準は発行体や認証機関ごとに異なります。投資信託や預金商品を選ぶ場面でも、同じ視点が使えます。

緩和だけでなく適応にも目を向ける

排出を減らす案件は数えやすい一方、洪水対策や農業の気候耐性は成果が見えにくいものです。GET 2030が適応型の案件を50%増やす目標を立てたことは、数えにくい分野に資金を向ける意思表示として読めます。

まとめ

EBRDのGET 2030は、2030年までにグリーンファイナンスの累計を少なくとも1,500億ユーロ(約28兆円)にし、年間事業量の50%以上をグリーンに充て、気候レジリエンスを組み込む案件を50%増やすことを掲げた戦略です。この金額は、EBRD自身の融資だけでなく民間資金の動員も含みます。2025年に56%(94億ユーロ)をグリーンに投じた実績を土台にしており、目標の中心は「規模の維持」と「民間資金をどこまで呼び込めるか」にあります。

日本との関係では、住友商事、四国電力、中部電力などが参画するウズベキスタンの大型プロジェクトや、JBICとの覚書のように、すでに具体的な接点があります。一方、国内のグリーンボンド発行額は2023年をピークに減っていて、量の拡大だけでなく質の担保が課題になっています。

ニュースで大きな金額を見たら、まず「誰のお金か」「何年分か」「定義はだれが決めたか」の3つを確かめてみてください。それだけで、数字の見え方が変わります。

  • GET 2030の目標は、グリーンファイナンス累計1,500億ユーロ以上、年間事業量の50%以上、気候レジリエンス案件の50%増
  • 1,500億ユーロはEBRDの自己資金と動員した民間資金の合計で、累計の起点は戦略本文で確認が必要
  • 2025年はグリーン投資が94億ユーロ(全体の56%)で、50%の目標を上回った
  • 日本企業やJBICはウズベキスタンの案件などでEBRDと協調している
  • 金額を読むときは、誰のお金か、何年分か、定義はだれが決めたかを確認する

参考文献

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