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脱炭素空港とは?実現への取り組みをわかりやすく解説

脱炭素空港とは?実現への取り組みをわかりやすく解説

私たちが海外旅行や出張で利用する空港は、実は多くの温室効果ガスを排出している施設です。ターミナルビルの照明や空調、滑走路を照らす航空灯火、荷物を運ぶ車両など、空港を運営するためには膨大なエネルギーが必要になります。

日本政府が2050年までにカーボンニュートラル、つまり温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを宣言したことを受けて、空港でも脱炭素化への取り組みが本格的に始まりました。これが「脱炭素空港」と呼ばれる新しい空港の姿です。

成田空港や関西国際空港をはじめ、全国の空港で太陽光発電の導入や電気自動車への切り替えなど、さまざまな取り組みが進められています。この記事では、脱炭素空港とは何か、どのような取り組みが行われているのかを分かりやすく解説します。


脱炭素空港とは何か

脱炭素空港とは何か

脱炭素空港とは、空港の運営によって発生する温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す空港のことです。単に環境に配慮するだけでなく、将来にわたって持続可能な航空輸送を支えるための重要な取り組みとして位置づけられています。

カーボンニュートラルを目指す空港の姿

カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、排出を実質的にゼロにすることを意味します。脱炭素空港では、このカーボンニュートラルの実現を最終目標としています。

具体的には、空港施設で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えたり、ガソリン車を電気自動車に置き換えたりすることで、温室効果ガスの排出そのものを減らします。それでも削減しきれない排出分については、森林による吸収や他の場所での削減分で相殺するカーボンクレジットという仕組みを活用することで、全体としてゼロを目指します。

日本では2030年までに空港からの温室効果ガス排出量を2013年度比で46パーセント以上削減し、2050年にはカーボンニュートラルを達成するという目標が掲げられています。一部の空港では、2030年という早い段階でのカーボンニュートラル実現を目指しており、意欲的な取り組みが進められています。

なぜ今、空港の脱炭素化が必要なのか

空港の脱炭素化が急務となっている背景には、いくつかの重要な理由があります。まず、地球温暖化対策として世界各国が温室効果ガスの削減に取り組む中で、航空分野も例外ではないという認識が広がりました。2022年には国際民間航空機関が、国際航空分野での2050年カーボンニュートラル達成を採択しており、国際的な潮流となっています。

また、海外との玄関口である空港にとって、脱炭素化は国際競争力を維持するためにも不可欠です。環境への配慮を重視する航空会社や旅客が増える中で、脱炭素化が遅れた空港は選ばれにくくなる可能性があります。欧米の主要空港では既に積極的な取り組みが進んでおり、日本の空港も対応を迫られているのです。

さらに、空港は24時間365日稼働する施設であり、膨大なエネルギーを消費します。日本国内の空港全体で年間約85万トンもの二酸化炭素を排出しており、この排出量を削減することは、日本全体の脱炭素化目標の達成にも大きく貢献します。


空港から排出される温室効果ガスの実態

空港から排出される温室効果ガスの実態

空港では、多くの人々が利用する旅客ターミナルビルをはじめ、さまざまな施設や設備が稼働しており、それぞれが温室効果ガスを排出しています。脱炭素化を進めるには、まずどこから、どれだけの温室効果ガスが排出されているのかを正確に把握することが重要です。

空港のどこからCO2が排出されているのか

空港における二酸化炭素排出量の約9割は、建築施設からのものです。その中でも最も大きな割合を占めるのが旅客ターミナルビルで、空港全体の排出量の約45パーセントを占めています。ターミナルビルは冷暖房や照明、エスカレーター、手荷物処理システムなど、常時多くの電力を必要とする設備を抱えているためです。

次に多いのが、空港内に電気や冷暖房用の熱を供給する地域冷暖房施設などのエネルギー供給施設で、全体の約27パーセントを占めます。また、格納庫や貨物ターミナル、管制塔などの施設も合わせて、建築施設全体で年間約74万トンもの二酸化炭素を排出しています。

建築施設以外では、空港車両からの排出も無視できません。旅客を運ぶバスや貨物を運搬するトラック、航空機を誘導する車両など、空港内ではさまざまな車両が稼働しており、これらが年間約11万トンの二酸化炭素を排出しています。さらに、夜間の離着陸を支える航空灯火や駐機場を照らす照明設備なども、継続的に電力を消費しています。

空港が抱える脱炭素化の課題

空港の脱炭素化を進める上では、いくつかの特有の課題があります。最も大きな課題は、空港には航空会社、給油会社、飲食店、小売店、清掃会社など、非常に多くの事業者が関わっているという点です。空港管理者だけでなく、これらすべての事業者が協力しなければ、効果的な脱炭素化は実現できません。

また、空港は安全性と定時性が最優先される施設であり、脱炭素化のために新しい設備や技術を導入する際にも、これらを損なわないよう慎重な検討が必要です。たとえば、再生可能エネルギーは天候によって発電量が変動するため、安定的な電力供給をどう確保するかという技術的な課題もあります。

さらに、空港の脱炭素化には多額の投資が必要です。太陽光パネルの設置、建物の省エネ改修、電気自動車への切り替えなど、どれも大きな初期費用がかかります。特に地方空港では経営基盤が脆弱な場合も多く、資金面での支援体制を整えることも重要な課題となっています。

国際的な評価基準との整合性も課題です。国際空港評議会が定める空港カーボン認証という制度があり、世界中の空港がこの認証取得を目指していますが、日本で認証を取得している空港は全97空港のうちわずか5空港にとどまっています。国際標準に沿った取り組みを加速させる必要があります。


脱炭素空港を実現する具体的な取り組み

脱炭素空港を実現する具体的な取り組み

脱炭素空港の実現に向けて、全国の空港ではさまざまな取り組みが進められています。大きく分けると、再生可能エネルギーの導入、施設や車両の省エネルギー化、そして航空機の地上活動に関する対策の3つが柱となります。

再生可能エネルギーの導入

空港の脱炭素化において最も重要な取り組みの一つが、再生可能エネルギーの導入です。多くの空港では広大な敷地を持っており、この特性を活かして太陽光発電設備の設置が進められています。ターミナルビルの屋上や駐車場の屋根、空港周辺の未利用地などに太陽光パネルを設置することで、空港で使用する電力の一部を自ら発電できるようになります。

太陽光発電で得られた電力は空港施設で直接使用されるほか、余剰電力を電力会社に売却することで空港の収入源にもなります。また、蓄電池と組み合わせることで、昼間に発電した電力を夜間に使用したり、災害時の非常用電源として活用したりすることも可能です。

一部の空港では、太陽光発電だけでなく、水素エネルギーの活用も検討されています。水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、将来的には空港車両の燃料や建物の電源として幅広く活用される可能性があります。再生可能エネルギーで作った電力を使って水素を製造し、それを空港内で利用する仕組みづくりも始まっています。

空港施設と車両の省エネ化

建築施設からの排出が大きいことから、施設の省エネルギー化も重点的に取り組まれています。具体的には、ターミナルビルの照明をLED照明に交換したり、空調設備を高効率なものに更新したりする改修工事が各地で実施されています。LED照明は従来の照明と比べて消費電力が大幅に少なく、寿命も長いため、長期的なコスト削減にもつながります。

滑走路や誘導路を照らす航空灯火のLED化も進められています。航空灯火は安全な離着陸に不可欠な設備で、24時間点灯し続けるものも多く、LED化による省エネ効果は非常に大きくなります。また、駐機場を照らすエプロン照明灯のLED化も、電力消費削減に貢献しています。

空港車両については、ガソリンやディーゼル燃料で動く従来の車両から、電気自動車や燃料電池車への切り替えが進められています。旅客を運ぶバスやタクシー、貨物を運搬するトラック、航空機を地上で移動させるトーイングカーなど、さまざまな車両が電動化の対象です。電気自動車の普及に合わせて、空港内に充電ステーションを整備する動きも広がっています。

航空機の地上走行時の排出削減

空港における温室効果ガス排出には、航空機が地上にいる間の活動も大きく関わっています。航空機が駐機場に停まっている間も、機内の照明や空調を維持するために電力が必要です。従来は航空機自身の補助動力装置を使っていましたが、これはジェット燃料を燃やして電力を作るため、多くの二酸化炭素を排出します。

そこで導入が進められているのが、地上動力設備と呼ばれる施設です。これは駐機場から航空機に直接電力を供給する設備で、航空機は自身のエンジンを停止したまま、必要な電力を得ることができます。この設備を使うことで、駐機中の二酸化炭素排出を大幅に削減できます。

また、航空機が自力で地上を移動する際にもジェット燃料を消費しますが、専用の車両で航空機を牽引することで、この燃料消費を削減する取り組みも行われています。さらに、将来的な取り組みとして、持続可能な航空燃料、いわゆるSAFの導入促進も重要な課題です。SAFは植物由来の原料などから作られる燃料で、従来のジェット燃料と比べて温室効果ガスの排出を大幅に減らすことができます。

日本における脱炭素空港の現状

日本における脱炭素空港の現状

日本では国土交通省が中心となり、全国の空港で計画的に脱炭素化を進める体制が整えられています。各空港では具体的な目標や取り組み内容を定めた計画を策定し、段階的に実施していく仕組みが構築されました。

国土交通省が進める推進計画

国土交通省は2022年3月に「空港脱炭素化推進のための計画策定ガイドライン」を公表し、各空港が脱炭素化推進計画を作成するための指針を示しました。このガイドラインでは、温室効果ガス排出量の算定方法、削減目標の設定、具体的な取り組み内容などが詳しく定められています。

さらに2022年12月には、航空法の改正を踏まえた航空脱炭素化推進基本方針が策定されました。この方針に基づき、空港管理者は脱炭素化推進計画を作成し、国土交通大臣の認定を受けることができるようになりました。認定を受けた空港は、国からの財政支援や技術的支援を受けやすくなるため、多くの空港が計画策定に取り組んでいます。

国が管理する羽田空港をはじめとする全27空港では、すでに脱炭素化推進計画が作成されました。このうち宮崎空港など8空港は2030年までのカーボンニュートラル達成を目標としており、残りの19空港は2050年を目標年としています。地方自治体が管理する空港でも、続々と計画の策定と認定申請が進められています。

国土交通省では、空港脱炭素化を推進するための補助金制度も用意しています。太陽光発電などの再生可能エネルギー導入、空港車両の電気自動車化に必要な充電設備の整備、空港建築施設の省エネ化など、さまざまな事業に対して財政支援が行われており、空港の取り組みを後押ししています。

先進的な取り組みを行う空港の事例

成田国際空港は2023年12月に国土交通大臣から脱炭素化推進計画の認定を受けた先進事例の一つです。空港施設の省エネ化や航空灯火のLED化はもちろん、太陽光発電の大規模導入や蓄電池・水素の利活用など、幅広い取り組みを計画しています。また、駐機中の航空機への地上電源供給やSAFの導入促進など、航空機に関わる取り組みも積極的に進めています。

関西国際空港と大阪国際空港も同時期に認定を受け、両空港を運営する新関西国際空港株式会社が一体的に脱炭素化を推進しています。関西国際空港では広大な敷地を活かした太陽光発電の導入や、空港島という立地を活かした風力発電の可能性も検討されています。

地方空港では、鳥取砂丘コナン空港が注目されます。2024年7月に地方管理空港として神戸空港と並んで初めて国土交通大臣の認定を受けました。地方空港ならではの課題を抱えながらも、地域と連携した再生可能エネルギーの活用や、空港周辺の未利用地を活用した太陽光発電など、創意工夫を凝らした計画を立てています。

中部国際空港では、空港島の特性を活かした大規模な太陽光発電設備の設置が進められているほか、水素エネルギーの活用に向けた実証実験も行われています。また、空港と地域が連携してエネルギーを融通し合う仕組みづくりにも取り組んでおり、災害時のレジリエンス強化にもつながる取り組みとして期待されています。


脱炭素空港がもたらすメリット

脱炭素空港がもたらすメリット

脱炭素空港の実現は、単に環境負荷を減らすだけでなく、空港経営や地域社会にもさまざまな利点をもたらします。多面的な効果が期待できることが、取り組みを加速させる原動力となっています。

環境保護だけではない多様な効果

脱炭素化への取り組みは、空港の経営基盤を強化することにもつながります。近年、企業の環境への取り組みを重視するESG投資が世界的に拡大しており、脱炭素化に積極的な空港は資金調達が円滑になるというメリットがあります。また、太陽光発電などで得られた余剰電力を売却することで、空港に新たな収入源が生まれます。

さらに、空港が創出したカーボンクレジットを航空会社に販売することも可能です。航空会社は自社で削減しきれない温室効果ガス排出分を、このクレジットで相殺することができるため、空港と航空会社の双方にメリットがあります。これは航空会社の国際競争力強化にも貢献し、結果として旅客の負担軽減にもつながる可能性があります。

地域社会との関係強化も重要な効果です。空港周辺の低未利用地を太陽光発電に活用することで、地域の活性化にも貢献できます。また、空港で発電した電力を災害時に地域に供給するなど、地域防災の拠点としての役割も期待されています。再生可能エネルギーを介した空港と地域の連携は、互いにとってメリットのある関係を築くきっかけとなります。

国際競争力の強化につながる理由

世界的に環境意識が高まる中、空港の脱炭素化は国際競争力を左右する重要な要素となっています。欧米の主要空港では、すでにカーボンニュートラルを達成した施設も現れており、環境対応が遅れた空港は航空会社や旅客から敬遠される可能性があります。

国際的な航空会社の多くは、自社の環境目標達成のために、利用する空港の環境性能も重視するようになっています。脱炭素化が進んだ空港を優先的に利用する動きが強まれば、対応が遅れた空港は路線の減少や利用者数の減少につながる恐れがあります。逆に、先進的な取り組みを行う空港は、環境意識の高い航空会社や旅客から選ばれやすくなります。

また、国際会議やイベントの誘致においても、開催地の環境対応が評価基準の一つとなることが増えています。脱炭素化が進んだ空港を持つ都市は、こうした国際的なイベントを誘致しやすくなり、地域経済の活性化にも貢献します。空港の脱炭素化は、日本が環境先進国として国際社会で存在感を示す上でも重要な取り組みなのです。


まとめ:持続可能な航空輸送の実現に向けて

まとめ:持続可能な航空輸送の実現に向けて

脱炭素空港とは、空港施設や車両からの温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目指す取り組みです。日本では2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、全国の空港で再生可能エネルギーの導入、施設の省エネ化、空港車両の電動化など、多岐にわたる取り組みが進められています。

空港には多くの事業者が関わり、安全性と定時性が最優先される施設であるため、脱炭素化には独自の課題があります。しかし、国土交通省のガイドラインに基づく計画的な推進や、財政支援制度の整備により、着実に取り組みが広がっています。成田空港や関西国際空港などの大規模空港から、地方空港まで、それぞれの特性を活かした工夫が行われています。

脱炭素空港の実現は、環境保護だけでなく、空港の経営基盤強化、地域社会との連携強化、国際競争力の向上など、多面的なメリットをもたらします。航空輸送が必要不可欠なインフラである以上、環境と経済の両立を図りながら、持続可能な航空ネットワークを維持していくことが重要です。脱炭素空港への取り組みは、未来の世代に豊かな地球環境と便利な航空サービスの両方を引き継ぐための、大切な一歩と言えるでしょう。


参照元

・国土交通省 空港分野におけるCO2削減に関する検討会 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk9_000046.html

・国土交通省 空港脱炭素化推進のための計画策定ガイドライン(第二版) https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk9_000060.html

・国土交通省 空港脱炭素化推進計画策定状況 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk9_000085.html

・国土交通省 ソラカボ☆ポータル(空のカーボンニュートラルポータルサイト) https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk8_000007.html

・成田国際空港株式会社 成田国際空港脱炭素化推進計画 https://www.naa.jp/eco/news/1201_23078.html

・新関西国際空港株式会社 空港の脱炭素化推進について http://www.nkiac.co.jp/decarbonizing/index.html

・鳥取県 鳥取砂丘コナン空港脱炭素化推進に向けた取組 https://www.pref.tottori.lg.jp/316024.htm

・神戸市 神戸空港の脱炭素化推進計画 https://www.city.kobe.lg.jp/a94876/datutanso.html

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