グローカルとは、グローバル(Global)とローカル(Local)を組み合わせた造語で、世界基準の視点を持ちながら地域に根ざした価値を生み出す考え方を指します。「グローカル事業」「グローカル人材」といった形で使われることが多く、経済産業省が2019年に打ち出した「グローカル成長戦略」をきっかけに、企業の経営戦略や学校教育の現場でこの言葉を目にする機会が増えました。本記事ではグローカルという言葉の背景を押さえたうえで、企業・学校・国際協力の現場で実際にどのような取り組みが行われているのか、具体的な事例とあわせてご紹介します。
グローカルとはなにか|グローバル人材との違いをおさえる
グローカルという言葉自体は新しいものではなく、1980年代以降、国際的な事業展開と地域独自の文化を両立させる考え方として経営学の分野で使われてきました。日本では近年、経済産業省の政策文書に登場したことで、行政・企業・教育の各領域に広がっています。
グローバル人材とグローカル人材の違い
似た言葉に「グローバル人材」がありますが、両者が指す役割は異なります。グローバル人材は海外基準の語学力やビジネス感覚を軸に、国境を越えて事業を動かす力に重点が置かれます。一方でグローカル人材は、グローバルに物事を考える視点を地域経済や社会の課題解決に接続する役割を担う点が特徴です。たとえばグローバル企業を地域に誘致する担当者や、逆に地域の中小企業を海外展開させる担当者は、いずれもグローカル人材の典型例といえます。両者を単純に並べると、次のような整理ができます。
- グローバル人材|海外市場での事業拡大・国際交渉を主な活躍の場とする
- グローカル人材|国際的な視点を地域の経済・社会課題に還元し、橋渡し役を担う
この整理はどちらが優れているという話ではなく、企業や自治体が人材戦略を立てる際に、どちらの力を強化したいのかを区別して考えるための切り口になります。
なぜ「地域視点」が重要になっているのか
背景には、地方の人口減少や後継者不足により、地域経済の担い手が先細りになっているという課題意識があります。グローバル化だけを追い求めると、地域の産業や文化が置き去りにされかねません。だからこそ、世界水準の視点と地域に根ざした実践を両立させる「グローカル」という考え方が、政策・経営の両面で重視されるようになっています。
グローカルが注目される背景|経済産業省「グローカル成長戦略」
グローカルという言葉が広く使われるきっかけとなったのが、経済産業省が2019年に設置した「グローカル成長戦略研究会」です。同研究会がまとめた報告書では、日本の産業全体の多様性を高めるうえで地方や中小企業の成長が欠かせないとし、国際化を進めながら地域経済を回していく「グローカル成長」こそが日本に求められる戦略だと位置づけられました。
この報告書が示す方向性は、大きく二つに整理できます。一つは、地域の中小企業が持つ技術やコンテンツを海外市場へ展開していく動きです。もう一つは、海外企業やグローバル人材を地域に呼び込み、地域経済を活性化させる動きです。両者をつなぐ存在として「グローカル人材」の育成が重要なテーマに位置づけられています。
こうした問題意識は一過性のものではなく、地方創生や中小企業の事業承継といった継続的な政策課題とも重なります。企業の側から見れば、グローカルという視点は単なる流行語ではなく、地域の持続可能性を考えるうえでの実務的な判断基準になりつつあります。
企業の実践事例|複数社に見るグローカル戦略
グローカルな考え方は、すでに複数の企業で具体的な商品・サービス展開として形になっています。
マクドナルドの「ご当地メニュー」戦略
世界的なハンバーガーチェーンであるマクドナルドは、1971年に日本1号店を東京・銀座に出店して以来、各国で店舗展開を進めてきました。単なる海外進出にとどまらず、進出先の食文化に合わせた商品開発に力を入れている点が特徴です。日本では「てりやきマックバーガー」のように現地の味覚に合わせたメニューを展開し、他の国でもそれぞれの食文化を反映したメニューが用意されていると報告されています。グローバル共通のブランドを保ちながら、商品レベルでは地域ごとに異なる選択肢を提供する姿勢は、グローバル企業が地域に根ざしたブランディングを行う代表的な事例といえます。
地域密着型の商品・サービスに動く国内企業
国内に目を向けても、コンビニエンスストアやスーパーマーケットチェーンが地域限定の商品や地場産品とのコラボレーションを継続的に展開する動きが見られます。全国共通のサービス基盤を持ちながら、店舗ごと・地域ごとに品ぞろえや企画を変えるという発想は、グローカルの考え方と重なります。こうした取り組みは、地域の生産者や中小事業者にとって販路拡大の機会にもなり、経済産業省が掲げる「地域企業の成長」という方向性とも接続しています。
企業の持続可能な取り組みをさらに知りたい方は、他社のサステナビリティ活動の事例もあわせてご覧いただくと理解が深まります。

学校教育で広がるグローカル人材育成|文部科学省の高校改革
文部科学省は「地域との協働による高等学校教育改革の推進」を掲げ、高等学校が自治体・高等教育機関・産業界と協働しながら地域課題の解決に取り組む探究的な学びを後押ししています。
モデル校として知られる高校の取り組み
2019年度の取り組み開始時には、福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校をはじめとする高校が「グローカル型」のモデル校として知られるようになりました。カリキュラムは学校ごとに異なりますが、生徒が主体となってワークショップを企画し、学内外にアウトプットしていく点は共通しています。
探究学習がもたらす力
生徒たちは海外での発表や討論会、自治体・企業への提案といった経験を通じて、地域の課題を自分事として捉える力を養います。こうした経験は、将来グローバルな視点を持ちながら地域社会に貢献する人材を育てる土台になると位置づけられています。学校教育を通じた社会課題解決の動きは全国の高校・大学に広がりつつあり、地域と若者の関わり方を考えるうえで参考になる事例が少なくありません。

JICA海外協力隊「グローカルプログラム」|地域活性化と国際協力をつなぐ
国際協力の分野でも、グローカルという視点を取り入れた制度が存在します。JICA(独立行政法人国際協力機構)は、海外協力隊として派遣される前に、自治体等が実施する地域活性化や地方創生の取り組みにOJTとして参加する「グローカルプログラム(派遣前型)」を実施しています。
このプログラムの特徴は、海外に出る前にまず日本国内の地域活性化について考える機会を持つ点にあります。国内での実務経験を積むことで、海外での協力活動においても活かせる知見を得られるほか、帰国後のキャリアにもつなげやすくなるというメリットがあります。参加者からは、地域の課題を発見し解決につなげる力が鍛えられたといった声が寄せられていると報告されており、グローカル人材の育成につながる取り組みの一つとして位置づけられます。
今日からできるグローカルな実践|消費者・働き手としてのヒント
グローカルという考え方は、企業や行政だけのものではありません。一人ひとりの消費行動や働き方の中にも、グローカルな視点を取り入れる余地があります。
日常の消費で地域を応援する
地域産品やご当地メニューを選ぶこと、ふるさと納税を通じて応援したい地域とつながることは、グローカルな消費行動の身近な一例です。グローバルに流通する商品の中から、あえて地域性のある選択肢を選ぶという行動そのものが、地域経済を支える力になります。
仕事・キャリアでグローカル視点を持つ
働き方の面では、海外経験を地元企業の事業改善に還元したり、逆に地域発の商品やサービスを海外に向けて発信したりする視点が挙げられます。すぐに転職や起業をする必要はありませんが、自分の持つ知識やスキルを「地域のために使うとしたら何ができるか」と考えてみること自体が、グローカルな一歩になります。
地域の商品を選ぶエシカルな消費行動については、日常でできるサステナブルな選択の記事もあわせてご覧ください。

まとめ
グローカルとは、グローバルな視点とローカルな実践を掛け合わせる考え方であり、経済産業省の「グローカル成長戦略」をきっかけに、企業経営や教育政策の現場で具体的な取り組みとして広がってきました。マクドナルドのようなグローバル企業のご当地化戦略、文部科学省が進める高校の探究学習、JICAの海外協力隊プログラムは、それぞれ立場は異なりながらも、世界基準の視点を地域に結びつけるという共通点を持っています。
重要なのは、グローカルが企業や行政だけの話にとどまらない点です。地域の商品を選ぶ、地元の課題に関心を持つ、海外での経験を身近な場所に還元する、こうした小さな選択の積み重ねがグローカルな社会をつくっていきます。まずは身の回りにある地域の商品やサービスを一つ選んでみることから始めてみてください。
- グローカルはグローバルとローカルを組み合わせた造語で、世界基準の視点と地域実践の両立を指す
- 経済産業省は2019年に「グローカル成長戦略」を打ち出し、地方・中小企業の成長を政策の柱に位置づけた
- マクドナルドなど複数企業が、地域の食文化に合わせた商品開発でグローカルな戦略を実践している
- 文部科学省は高校教育の現場で、地域協働型の探究学習を通じたグローカル人材育成を進めている
- JICAの派遣前プログラムのように、国内の地域活性化と国際協力をつなぐ制度も広がっている
参考文献
- 経済産業省「グローカル成長戦略~地方の成長なくして、日本の成長なし~」(2019年)
- 日本マクドナルド公式サイト(2024年時点)
- JICA海外協力隊公式サイト(2024年時点)

