SDGsやパリ協定など、脱炭素社会に向けた動きは日本だけではなく世界中で進んでいます。
欧米の中でも再エネ先進国と言われるカナダでは、水力発電を生かした取り組みが盛んです。
カナダ特有の地理的要素を生かした発電方法ともいえるでしょう。
こちらの記事では、カナダの水力発電について細かく解説していきます。
水力発電とは
再生可能エネルギーの一つとして、古来より取り導入されている発電方法が水力発電です。
大きなダムだけではなく、近年は、日本でも中小水力発電も活発に行われています。
自然条件に偏ることなく、一定量の電力を安定的に得られるのが水力発電の大きなメリットです。
また、一度発電所を作れば、その後長いスパンで発電が可能になります。
さらに、発電の際に二酸化炭素を排出しないため、クリーンエネルギーとして重宝されるでしょう。
再エネ比率が世界トップクラスのカナダ
カナダは、世界でも指折りのエネルギー資源国です。
石油や天然ガス、ウランなどに加えて、水力資源も豊富にあり、エネルギー生産量は国内需要を賄っても余るほどで、輸出されています。
カナダの発電において中心となっているのが水力発電です。
水力資源に恵まれているカナダ
カナダは、水力資源が豊富な国であり、起伏も激しいので発電に使える河川が多いのが特徴です。
歴史的にみても、水力をメインとした開発が行われてきました。
1950年代になると、水力発電の比率は95%に達したと言われています。
現在は、火力や原子力の開発が進んだこともあり、2015年の段階ではケベック州・オンタリオ州・アルバータ州において、全体の69%が水力発電です。
参照元:世界有数のエネルギー資源国:所有権は州|電気事業連合会
ナイアガラの滝で水力発電
カナダの水力資源といえば、ナイアガラの滝を思い浮かべる人も多いでしょう。
ダイナミックな自然において、カナダでは水力発電がなされています。
カナダ・オンタリオ州政府は、「ナイアガラトンネルプロジェクト」を2013年に指導させており、現在も約160,000世帯に電力を供給している一大プロジェクトです。
ケベック州の水力発電
カナダ・ケベック州北部では、アメリカの北東部に送電するための「クリーンエネルギー」を生み出す巨大な水力発電ダムを建設しました。
その数は、実に4基に及び、少しでも温暖化を軽減させる狙いがあります。
ケベック州では、1970年代から水力発電が全体の供給電力の90%を占めています。
フル稼働した現在は、1550MWの電力を発電しており、地域住民が使用するには十分な量です。
同エリアに暮らす人々にとって、このダム建設はメリットとデメリットを含んだものでした。
新たな雇用を生んだ反面、先住民たちが古の時代より狩りをしてきた場所が破壊されているためです。
輸出されるカナダの電力
エネルギー資源を自国で生産できるカナダは、輸入に頼る必要がありません。
また、電力が安定している上に余力があり、隣国アメリカに輸出しています。
アメリカとの間には国際連系線があり、電圧23万を超えるものが24回線設けられています。
2015年には、輸出が686億kWhであり、輸入が29億kWhだったことから、かなりの輸出超過でした。
カナダのエネルギー政策は州ごとに行われる
日本では、国を挙げてエネルギー政策を行うのが通例となっていますが、カナダは異なります。
カナダでは、州政府がエネルギー政策の権限を持っているためです。
この背景にあるのが、エネルギー資源の所有権であり、カナダでは州が保持しています。
そのため、国が定めるエネルギー政策の法規はありません。
また、再エネの導入目標もないため、各州が自主的に行っているのが現状です。
オンタリオ州を筆頭とした再エネの取り組み
カナダで大半を占める再エネは水力発電です。
それ以外の再エネの割合は2017年時点で6.0%となっています。
その内の多くを風力発電が占めており、太陽光の導入も増加傾向にあるでしょう。
こうした、再エネの取り組みは、オンタリオ州を筆頭に様々な州が取り組んでいます。
国を挙げた取り組みがなされていないにも関わらず、これだけの再エネ政策が進められ、効果を上げている点は非常に注目すべきでしょう。
参照元:主要国の一次エネルギー消費構成と自給率(2015年)|一般社団法人海外電力調査会(JFPIC)
まとめ
石油や天然ガスに恵まれた資源大国カナダは、再生可能エネルギーに関しても世界トップクラスです。
特に水力発電は眼を見張るものがあり、カナダと同じく水に恵まれている日本人としては、参考にするべき点が多くあるでしょう。
しかし、まだ日本の水力発電は全体の10%にも満たず、カナダと比較になりません。
とはいえ、太陽光発電の分野において、日本は世界3位です。
電気の安定供給が損なわれるにもとなく、再生可能エネルギーをいかに増やしていくかは、各国が持つ共通の課題です。
再エネ利用が普及しているカナダのような国を見習いながら、できることを一つずつ考えていく必要があります。