環境問題に取り組む企業は具体的にどんなことをしているのか、ニュースやCMの印象だけでは分かりにくいものです。企業の環境活動とは、事業で出す温室効果ガスや廃棄物を減らす取り組みと、事業の外で森や水、地域を支える取り組みの総称です。この記事ではユニクロ、カルビー、サントリー、ダイキン、ソニー、KDDIの6社を、活動の型ごとに比べます。あわせて、企業の取り組みをどう見極めればよいかを整理します。
環境問題に取り組む企業が実際にしていることは5つの型に分けられる
企業の環境活動は、広報資料の言葉だけを追うと、どれも似たものに見えます。しかし中身を分けてみると、何を変えようとしているのかがはっきりします。ここでは、事業の内側を変えるものと、事業の外で自然や地域を支えるものに分けて見ていきます。
事業の内側を変える3つの型
1つ目は脱炭素です。工場や店舗、通信設備などで使う電気を減らし、再生可能エネルギーに切り替えます。2つ目は資源循環で、使い終えた製品を回収して再び使います。3つ目は素材の転換で、新しい資源を掘り出して使う量を減らし、再生材などへ置き換えます。
この3つは、企業が自社の事業で出している排出や廃棄に直接手を入れる取り組みです。成果を数値で示しやすく、目標年と実績を追いかけられます。
事業の外で自然と人を支える2つの型
4つ目は森や水、海などの保全です。事業が自然の恵みに支えられていることを出発点に、その自然を守ります。5つ目は環境教育と地域連携で、子どもたちや地域住民、NGOと一緒に活動します。
この2つは、事業の数字には表れにくい成果を生みます。たとえば森が水を蓄える力は、10年、20年という時間をかけて育つものです。
6社をこの型に当てはめる
この記事で取り上げる6社を型に当てはめると、次のようになります。
- 脱炭素と再エネ…KDDI
- 資源循環…ユニクロ
- 素材の転換…ソニー
- 森と水の保全…カルビー、サントリー、ダイキン
- 環境教育と地域連携…サントリー、ダイキン
実際には1社が複数の型を組み合わせています。以降は型ごとにまとめ、各社の取り組みを比べていきます。
森と水を守る|カルビー・サントリー・ダイキンの取り組み
森と水の保全は、日本企業に長い歴史がある分野です。3社に共通するのは、自社の事業が自然に支えられているという認識が出発点になっていることです。ここでは、各社が何を目的にどこで活動しているのかを見ていきます。
カルビーは工場の地下水を支える森を各地で育てている
カルビーは、北海道千歳市の「カルビー・ミナミナの森」をはじめ、宮城県、栃木県、愛知県、滋賀県、広島県でも森林保全に取り組んでいます。公式サイトでは、いずれも水源涵養機能の維持と向上を目指す活動と説明されています。活動は従業員自らが行うとされています。2025年からは、北海道帯広市で生態系全体を考えた流域保全活動も始めています。
製造現場で地下水を使う企業にとって、森は水を蓄えてろ過する存在です。森を守ることは、自社の事業を続ける条件を守ることでもあります。
サントリーは「汲む量以上に育てる」と水育を組み合わせている
サントリーの「天然水の森」は、2003年に阿蘇で始まりました。公式ページによると、2025年7月時点で全国16都府県26カ所、12,000ヘクタール超に広がっています。国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養しているとされています。
2004年に始まった次世代環境教育「水育」は、国内の累計参加者が25万人以上と公表されています。森を整える活動と、子どもたちに伝える活動を並行させている点が特徴です。森の整備と環境教育が、1つの活動として結びついています。
ダイキンは森の保全と現地の暮らしの支援をセットにしている
ダイキンの「空気をはぐくむ森プロジェクト」は2014年に始まり、世界7か所で森林を守る活動を進めています。森を「地球のエアコン」と捉えるのは、空調メーカーとして自社の事業領域と重なっているためです。
活動は植林にとどまらず、伐採に代わる収入源となる農業の支援や、現地コミュニティへの環境教育も含みます。森を守る人の暮らしが成り立たなければ、保全は続かないという考え方です。
3社の違いは「守る対象と時間軸」にある
カルビーは自社の工場の水、サントリーは水資源と次世代、ダイキンは世界の森と地域の生計を主な対象にしています。守る対象が違うため、成果の測り方も変わります。いずれも効果が表れるまでに年単位の時間がかかる点は共通です。
使い終えたものと素材を巡らせる|ユニクロ・ソニーの取り組み
資源循環と素材の転換は、製品そのものに関わる取り組みです。衣類と電子機器という性質の違う製品で、企業がどこに手を入れているのかを比べます。
ユニクロは店舗で服を回収し、再利用につなげている
ユニクロは2006年から「全商品リサイクル活動」として、店舗で不要になった服を回収しています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界各地のNGO・NPOと協働し、難民や避難民に寄贈してきました。公式ページによると、これまでに3,657万点を72の国と地域に届けたとしています。この数字は掲載されている累計で、集計時点は明記されていません。
回収した服がすべて寄贈に回るわけではありません。回収の対象や方法は店舗や公式ページで案内されているので、出す前に確認しておくと安心です。衣替えの時期は、手持ちの服を見直す機会にもなります。
ソニーは「再生材」と「掘らない資源」の両方に手を伸ばしている
ソニーは、2050年に環境負荷をゼロにすることを目指す環境計画「Road to Zero」を掲げています。素材の面では、使用済みの水ボトルや廃ディスクなどを原料にした独自の再生プラスチック「SORPLAS」を2014年に開発し、さまざまな製品に使ってきました。
2026年2月には、三菱商事など14社と、バイオマス原料から作るリニューアブルプラスチックの供給網を、5つの国と地域にまたがって構築したと報じられました。ソニーの高機能な製品に使える水準のものを世界で初めて確立したとされ、「採掘資源の使用ゼロ」を目指す活動の一環です。これは廃棄物の再生材ではなく、バイオマス由来の素材です。どちらも新しい資源を掘る量を減らす手段ですが、中身は別のものです。
回収する型と、素材を作り替える型は役割が違う
ユニクロの活動は、すでに世に出た製品に次の使い道を与える取り組みです。ソニーの活動は、これから作る製品の原料を変える取り組みです。前者は消費者が参加でき、後者は企業間のサプライチェーンで進みます。読者が直接関われるのは前者ですが、どちらが優れているということではありません。
排出量の大半を占める電気を変える|KDDIの脱炭素
脱炭素は、企業が出す温室効果ガスそのものに向き合う型です。KDDIの例では、どこから手をつけるかを見極める視点が分かります。
排出の98%が通信設備の電気という事業構造
KDDIは2022年4月、自社事業のCO2排出を実質ゼロにする目標を2050年度から2030年度へ、20年前倒ししました。年間のCO2排出量は約100万トンで、その98%が基地局や通信局舎、データセンターなど通信設備の電気使用に由来するとされています。
排出の大半が電気に集中しているため、取り組みの中心は省エネと再エネへの切り替えになります。自社の排出がどこから出ているかを特定することが、取り組みの出発点です。
国内で広がる「目標を数値で約束する」動き
KDDIのように目標年を決めて削減に取り組む企業は、国内で増えています。環境省の資料(2026年6月)によると、日本は世界のSBT(科学的根拠に基づく削減目標)参加企業の約18%を占め、国別で首位です。
SBTは、パリ協定の水準に整合した削減目標を企業が設定し、国際的な機関に認定を受ける仕組みです。森の保全のように、成果が見えにくい活動とは対照的に、目標と実績を数字で追えるのが特徴です。
脱炭素は「自社の外」にも広がる
自社の排出を減らすだけでなく、取引先や製品の使用段階の排出まで含めて削減する動きも広がっています。通信会社が再エネを調達すれば、電力会社の発電構成にも影響します。1社の脱炭素が、サプライチェーン全体に波及していきます。
CSRからサステナビリティへ|変わったことと変わらないこと
環境活動を調べると、CSRとサステナビリティという2つの言葉が出てきます。「CSRは社内で完結し、サステナビリティは社外と連携する」という説明を目にすることがありますが、現実はもう少し複雑です。
社内か社外かの線引きでは整理しきれない
CSR活動の中にも、地域の自治体やNGOと協力して植樹や清掃を行うものは多くあります。今回見たカルビーやダイキンの活動も、地域や現地の団体との連携が前提です。社内か社外かという線引きだけでは、両者の違いを説明しきれません。
本業との距離と、数字で開示するかで見ると分かりやすい
2つの言葉を分ける視点として分かりやすいのは、次の2点です。1つは、環境や社会への配慮を本業の中心に置いているかどうか。もう1つは、目標と実績を数値で継続的に開示しているかどうかです。
寄付や植樹といった社会貢献が中心の活動をCSRと呼び、事業の方向性そのものを持続可能性に合わせる経営をサステナビリティと呼ぶ、という整理もできます。ただし企業ごとに言葉の使い方は異なります。ページの名称より、中身の目標と実績を読むほうが確かです。
制度が企業の取り組みと開示を変えている
企業の環境活動は、自主的な取り組みから、制度に支えられた取り組みへ移りつつあります。読者が企業の情報を目にする機会も、これから変わっていきます。
サステナビリティ情報の開示が有価証券報告書に入る方向
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2025年3月5日に日本初のサステナビリティ開示基準を公表しました。適用基準、一般開示基準、気候関連開示基準の3つです。義務化は、2027年3月期から、時価総額の大きいプライム市場上場企業を対象に、順に広げていく方向で整理されています。投資家だけでなく、一般の読者にとっても、企業の気候関連情報を比べやすくなる動きです。
排出量取引制度は2026年度から義務になった
2026年4月1日には改正GX推進法が施行され、排出量取引制度が、年間10万トン以上のCO2を排出する事業者に参加が義務づけられました。これまで任意参加だった制度が、大規模な排出事業者にとっては法的な義務に変わりました。
制度の目的は「取り組みの比較可能性」を高めること
開示や排出量取引は、企業に新しい負担を課す制度であると同時に、取り組みの中身を比べられるようにする制度でもあります。以前は企業ごとに指標や範囲がばらばらで、環境活動の良し悪しを外部から判断しにくい状況でした。基準がそろうほど、読者や投資家が企業の取り組みを見極めやすくなります。
企業の環境活動を見極める3つの視点
ここまでの6社の事例から、企業の環境活動を読むための視点を3つに整理しました。ニュースや広告で環境への取り組みを見かけたとき、確かめる手がかりになります。
視点1 目標と期間が数字で示されているか
「環境に配慮しています」という言葉だけでは、取り組みの大きさは分かりません。KDDIの「2030年度までに自社事業のCO2実質ゼロ」やサントリーの「汲み上げる地下水量の2倍以上を涵養」のように、目標や実績が数字で示されていれば、あとから追いかけて確かめられます。数字がなくても価値のある活動はありますが、数字があれば検証できます。
視点2 本業とつながっているか
カルビーの森は工場の地下水に、ダイキンの森は空調という事業領域に、ソニーの再生材は製品の原料につながっています。本業との結びつきが強い取り組みほど、景気や担当者が変わっても続きやすい傾向があります。逆に、本業から遠い取り組みが悪いわけではありませんが、続ける理由を企業がどう説明しているかは確認しておきたい点です。
視点3 生活者として関われる入口があるか
ユニクロの店舗回収のように、消費者が参加できる入口がある取り組みもあります。入口がなくても、商品を選ぶことで間接的に後押しできます。環境に配慮しているという言葉に頼らず、根拠を公式サイトで読んだうえで選ぶことが、グリーンウォッシュ(実態の伴わない環境アピール)を避ける近道です。
まとめ
環境問題に取り組む企業の活動は、脱炭素、資源循環、素材の転換、森や水の保全、環境教育と地域連携の5つの型で整理できます。カルビー、サントリー、ダイキンは自然を守る型、ユニクロとソニーは資源を巡らせる型、KDDIは排出の大半を占める電気に向き合う型です。同じ「環境に取り組む」でも、守る対象も成果の測り方も大きく異なります。
CSRとサステナビリティの区別は、社内か社外かより、本業との距離と数値での開示で見ると分かりやすくなります。開示基準の整備や排出量取引制度の義務化によって、企業の取り組みは今後さらに比べやすくなっていきます。
読者の側でできる最初の一歩は小さなもので十分です。まず、気になる企業の公式サイトで「目標と実績」のページを1つだけ開いてみてください。手持ちの服を見直す今の時期なら、店舗の回収の案内を確認するのも良い入口です。
- 企業の環境活動は、脱炭素・資源循環・素材転換・森と水の保全・環境教育の5つの型で整理できる
- 6社の取り組みは、守る対象と成果の測り方が違い、続ける理由も本業との結びつきに表れる
- CSRとサステナビリティは、本業との距離と数値での開示という視点で見ると分かりやすい
- 開示基準と排出量取引制度の整備で、企業の取り組みは今後さらに比べやすくなる
- 目標の数字、本業とのつながり、生活者の入口の3点で、企業の環境活動を見極められる
参考文献
- ユニクロ「世界難民の日」(公式ページ)
- カルビー「森林保全・水源涵養活動」(公式ページ)
- サントリー「天然水の森」(公式ページ、2025年)
- ダイキン工業「空気をはぐくむ森プロジェクト」発表(2014年)
- MONOist「ソニー製品で採用、14社がリニューアブルプラスチックのサプライチェーンを構築」(2026年)
- ビジネスネットワーク「KDDIのCO2排出実質ゼロ目標の前倒し」(2022年)
- 環境省「SBT概要」(2026年)
- 大和総研「SSBJ基準の公表」(2025年)
- 契約ウォッチ「改正GX推進法の施行」(2026年)

