株式会社共立メンテナンス(以下、共立メンテナンス)は、1979年に設立され、1980年から学生寮、1985年から社員寮の運営を続けてきた企業です。学生会館ドーミーでは、学生が寮の運営に主体的に関わるRAプログラムが80寮、約280人の規模まで広がっています(取材時点)。その原点と、そこから広がる社会活動について、レジデンス企画推進本部 本部長の川野様にMIRASUS編集部がお話を聞きました。
<プロフィール>
株式会社共立メンテナンス
レジデンス企画推進本部
本部長 川野 太郎 様
学校と学生へのお役立ちから始まった学生寮の運営
──まずは、学生寮の運営で大切にされてきた考え方を教えてください。
川野様:創業当初は、寮屋や下宿屋という形で事業を展開していました。学生寮を運営するうえで大切にしてきたのは、まずは安心と安全です。親御さんはもちろん、提携していただいている学校様にも安心していただけるように、ということをずっと大事にしてきました。
私たちは学校のことを「学校様」とお呼びしています。学生寮の運営には、もともと大学様や専門学校様の地方からの学生募集のお役立ちという側面があり、当社が前面に出ることを、あまり考えてこなかったのです。主役はあくまでも学校様であり、そこに住まう学生さんです。そう考えてきた結果として、今は学生さんが主体となるところまで成長してきたのだと捉えています。

──学校様との関わりは、どのように始まったのでしょうか。
川野様:もともとは、ある専門学校様から「学食をやってほしい」と言われたのが始まりです。その学食の運営をする中で「寮も同じようにやってもらえないか」というお声をいただき、学校様の寮を指定寮・推薦寮という形で運営し始めました。
──RAプログラムを導入されたきっかけを教えてください。
川野様:RAはレジデント・アシスタントの略で、寮生リーダーとして、寮生の日々の生活サポートや交流のきっかけづくり、寮長夫妻と寮生の橋渡しなどを担う役割です。2014年に文部科学省によってスーパーグローバル大学創成支援事業が始まりました。世界の大学ランキングの上位100校に日本の大学がほとんど入っていないという危機感から、政府が大学の運営を後押ししていく方針を示したのです。それと時を同じくして、早稲田大学様が自前で運用されていたRA制度に、当社も関わらせていただく機会がありました。その中でのお取り組みから多くを学ばせていただき、こうした国の後押しの流れとも重なって、この仕組みを確立できれば、さまざまな大学様のお役立ちにつながり、当社としても寮運営の専門性を高められるのではないかと考えたのです。
そうして2015年に導入し、あわせてRA推進チームというセクションを立ち上げました。当時は2名からのスタートで、今は計6名、うち4名が20代です。当時はRA制度と呼んでいましたが、途中から名称をRAプログラムに改めました。
RA(レジデント・アシスタント)プログラムという仕掛け
──学生の皆さんは、どのような経緯でRAになるのでしょうか。
川野様:多いのは、入寮した寮ですでにRAプログラムが導入されていて、RAを務める先輩方の背中を見るケースです。イベントの開催等を通じて寮を活性化したり、留学生と寮生をつなぐ役になったり、寮長夫妻をフォローしたりする姿を見て、自分もこの先輩のようになりたいと感じて応募してくれます。もう一つは、寮長から「やってみなよ」と声をかけられて始めるケースです。
寮の規模に応じて各寮のRAの人数を決めていて、応募後にRA推進チームで選考をします。任期は1年ごとです。最近は当社のホームページに新規RAの募集も載せるようにしたので、高校3年生のうちから手を挙げて入ってくる方も増えています。
──RAを通じて、学生の皆さんにとって身につくことや経験できることも多いのではないでしょうか。
川野様:そうですね。能動性や主体性、人を巻き込む力、そして寮生の皆さんとやり取りをする中で身につくコミュニケーション能力など、枚挙に暇がありません。学校生活やアルバイトだけでは得難い経験を積んでもらえるものと確信しています。そこに共鳴してくれた学生さんが、応募してくれているのだと思います。
寮に住むことで、一人暮らしをするよりも様々なシーンで人と接する機会が増え、コミュニケーション力も自然と磨かれていきます。RAプログラムは現在、全国80の寮で約280人が活動しています。将来的には、学生さんが住まう寮すべてに導入したいと考えています。

──RAの皆さんに、社員の方はどのように関わっていらっしゃるのですか。
川野様:寮の数が増えてきたので、今期からバディ制度を始めました。RAプログラムを導入している80の寮を40のグループに分けて2寮ずつ組にして、そこにRA推進チームの社員メンバー1人が入り、1、2か月に1回、必ず定例の面談をやるようにしています。スタンスはティーチングというよりコーチングで、指導や指示ではなく、彼らがやりたいことをアドバイスやフォローで実現できるように導いていきます。イベントをやるとなれば企画書や予算書を出してもらい、終われば報告書を出してもらいます。さながら会社やインターンシップのようなやり取りが発生していて、社会人になったときに必ず役に立つ経験ができているのではないかと思います。
一方で、相談の内容も時代を映して変わってきているように感じます。一部でセンシティブな相談もあり、私たちは専門家ではありませんから安易な助言はできません。ただ、双方の話を等しく聞き、裏付けを取りながら、慎重に対応するよう努めています。推進チームは全員が本社勤務のため各地の寮へ足を運ぶのも簡単ではありませんが、常に体制面の工夫を重ねながら対応しています。
──寮を越えて学び合う場もあるそうですね。
川野様:全体ミーティングを年4〜5回、必ず実施していて、そのうち1、2回は対面で開催しています。私を含めRA推進チームも出席し、RAを務めるうえでのヒントや工夫の共有などを行っています。
また、毎年秋には、半年間の活動報告を兼ねた後述する「RAサミット」の予選会「RAフェスティバル」があります。各寮のRAが、それまでの半年間の活動を5分間でプレゼンし、勝ち上がった寮同士が決勝トーナメントで競い合い、選ばれたベスト3寮が、毎年2月に開催される「RAサミット」で8分間の登壇をします。「RAサミット」は日本最大の学生寮イベントとして知られ、全国の学校関係者や企業の担当者などが集まる1年間のRA活動の集大成の場であり、入寮を検討している高校生やその保護者なども来場可能です。

RAサミット2026の様子
ビーチクリーンから広がる活動と、ドーミーに住むことがキャリアになる未来
──RAの成長を実感される場面を教えてください。
川野様:寮長から「やってみなよ」と声をかけられてRAを始めた学生さんがいました。初めはとても引っ込みがちな性格に見えたのですが、次第にいろんなことに挑戦してくれて、RAサミットで会ったときは堂々と発表をしたり、積極的に人を巻き込んだりできるようになっていました。そういう学生さんを何人も見てきているので、RAプログラムを運営してきて本当によかったと心から感じます。
また、思わぬ副産物のような経験もありました。3年ほど前に、規模が50人前後とやや小さめで、寮母さんが一人で常駐している寮にRAプログラムを導入しました。その寮母さんは導入当初、あまり乗り気ではない様子でした。ところがRAの学生さんたちが、寮を盛り上げるためにいろいろな企画を立てて頑張ってくれて、寮母さんも巻き込んでくれたのです。そうしたら、寮母さん自身も活動に参加するのが楽しくなり、最終的にRAサミットの動画を撮るとなったときには、自ら出演してくれるまでに変わりました。多くの寮では、寮長夫妻が住み込みで働いています。学生さんから見れば親や祖父母の世代です。世代を超えて心を通わせられたことは、RAの学生さんたちにとっても、大きな経験だったのではないかと思います。

──ビーチクリーン活動は、どのように始まったのでしょうか。
川野様:もともと葛西海浜公園でビーチクリーン活動をしている団体に参画し、寮生を派遣してお手伝いをしていました。ただ、もう少し自分たちでやれないかと感じていました。そのさなか、2023年に神奈川県の横須賀で当社のホテルである「ラビスタ横須賀観音崎テラス」がオープンすることになり、徒歩圏に良さそうなビーチがあることに気づきました。ちょうど寮事業とホテル事業の連携をもっと深めたいと感じていた頃でもありました。
1年目はそれほど集まらなかったのですが、2年目以降、若く柔軟な思考を持った学生さんに託したところ、「新宿や横浜からバスを出すべきだ」「募集の仕方をこうするべきだ」という提案が返ってきました。否定する理由はありませんから、提案を積極的に受け入れていきました。結果として学生さんたちが、寮生の皆さんにとってより参加したいと思えるイベントへと育ててくれたのです。ビーチに行く前にホテルで懇親会や自己紹介ゲームもやるので、そういった横のつながりにも魅力を感じてくれていると思います。参加者は年々増えていて、企業と学生さんが一緒に何かを成し遂げることが、少しずつできるようになってきていると感じます。

──最後に、この事業を通じて中長期で目指している方向性を教えてください。
川野様:RAプログラムについては、将来的にすべての学生寮に導入したいという思いがあります。この春は長崎大学様の近くに新しい学生寮がオープンし、来春は福井大学様と滋賀大学様の近くで同じくオープンを予定しています。地方の国立大学様を中心に寮を開設していくことで、地方でもより多くの学生さんのお役立ちができるのではないかと思っています。学生たちの主体的な社会貢献の場も広げており、神奈川県・横須賀の海岸と宮城県・七ヶ浜の海岸に加え、10月には名古屋でもイベントを予定しています。
そしてもうひとつ、「ドーミーに住むことがキャリアになる」という考え方を実現していきたいです。学生時代にどんな環境で過ごしてどんな経験をしたかは、その後の人生に大きく関わっていくと考えています。その大事な時期に私たちが関わらせていただいて、振り返ったときにターニングポイントになったと思ってもらえるような経験が積める場所にしていきたいと思います。
──今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。
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