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環境配慮の素材採用30%へ。エストネーションが歩む服づくりのサステナビリティ

竹山賢様(株式会社エストネーション サスティナビリティ開発推進室 室長兼ディレクター)

株式会社エストネーション(以下、エストネーション)は、「ESTNATION」を主力ブランドに東京発信の大型専門店を展開するスペシャリティストアです。廃棄されるはずの衣類やアパレルビニールを資源として回収する取り組みから、日本各地の作り手を紹介する産地連携シリーズまで、現場発の活動を積み重ねてきました。サスティナビリティ開発推進室 室長兼ディレクターの竹山賢様にMIRASUS編集部がお話を聞きました。

<プロフィール>
株式会社エストネーション
サスティナビリティ開発推進室
室長兼ディレクター 竹山 賢 様

東の国から世界へ、エストネーションが歩んできた道

──まずは、エストネーションさんの会社紹介をお願いできますでしょうか。

竹山賢様(以下、竹山様):社名とストア名は同じで、株式会社エストネーションが運営するストアが「ESTNATION」です。ストア名は私たちの造語で、「東の国から」という思いが込められています。東京発信の完全ドメスティックな大型専門店として2000年に創業し、2001年9月、有楽町に1号店をオープンしました。現在はエストネーションを全国6店舗展開しているほか、2024年には新業態の「ASSEMBLE ESTNATION」を立ち上げ、これまで出店してこなかったロケーションにも広がっています。2025年には25周年を迎え、新業態に加え、ハウスブランドも増えました。東京から世界に向けて発信していくブランドでありたい、世界と対等に渡り合っていくためにも、サステナビリティの活動は会社にとって重要なテーマになっています。

──エストネーションさんがこれまで大切にされてきたブランドの価値観と、サステナビリティとの結びつきを教えてください。

竹山様:2015年に、私たちはブランドを大きくリブランディングしました。そのときに掲げたのが「ファッションで心を動かす」という理念です。ファッションの環境負荷が語られる時代に、お客様がファッションに対してネガティブな感情を持ってしまったら、それはブランドの存続にも関わってきます。理念のなかには「半歩先」という考え方もあります。社会が大きく変わろうとしているなかで、間違ってもいい、手探りでもいいから、小さなところから自分たちで動いてみよう。そういう発想でサステナビリティを推進してきました。私が店舗で感じていた自社の課題を会社に提案していたことも、ひとつのきっかけになっています。

──竹山さんご自身がサステナビリティの領域に取り組むようになった原体験を教えてください。

竹山様:私はもともとファッション業界の出身ではなく、35歳でこの業界に転職をしました。転職前はIT業界にいて、当時は個人情報の流出などのリスクが大きく報じられ、パソコン一つ置き忘れただけでも厳しく責められる時代でした。そのなかで、システムを導入・運用・保守、そして廃棄まで責任をもって行うという一気通貫したソリューションビジネスが確立されていく様子を目の当たりにしました。折しも欧米では「モノを売るビジネスからの脱却」を進めていく時代へと移行していきました。

取材に応じる竹山賢様

ファッション業界に来た当初は、作られたものはすべて売り切れているものだと思っていました。ところが実際には、どの産業でもそうだと思いますが、在庫となる衣類はやむを得ず廃棄せざるを得ない状況にあったのです。また店舗のバックヤードでは、衣類を守るハンガーやアパレルビニール等も日々廃棄されている事も知りました。前職で、廃棄が課題となりそこからイノベーションが生まれる流れを目の当たりにしていたので、いずれ同じ流れがファッション業界にも来ると感じていました。

サスティナビリティ開発推進室の歩みと、数字で見る進捗

──サスティナビリティ開発推進室を立ち上げられた背景と、そこに込められた思いを教えてください。

竹山様:もともと私が店舗にいたときに、社として本格的にサステナビリティ活動が始まったことがきっかけです。各部署から代表を募り、エストネーションとして取り組むべき課題を話し合い、7つのテーマをピックアップしました。そのうえで「One Small for Smile」というスローガンを掲げ、まずはできることから行動していきました。例えば、国際女性デーに各店舗でミモザの花を飾り、その時期の対象ジャケット購入額の一部を寄付にあてる。そんなふうに、各社員が自分で活動を考えて動くところから始まりました。

一方で私は店舗で、衣類やハンガー、アパレルビニールを回収する取り組みを進めていました。コロナ禍を経て、2030年までのサステナビリティ活動のロードマップを作成するタイミングで、サスティナビリティ開発推進室を立ち上げ、本格的に活動するに至りました。

──「繊維から繊維へ」という資源循環の取り組みについて、業界の動きをどう見ていらっしゃいますか。

竹山様:一社では担いきれない規模の課題なので、行政が旗を振って後押ししている分野だと思っています。実際に回収した衣類のうち新しい繊維に生まれ変わるものは、わずかな割合なのが現状です。また素材で言えば、主にポリエステル等の化学繊維がメインとなっています。「繊維から繊維へ」という言葉は華やかに語られがちですが、実務としてはまだこれからだと思っておりました。が、最近の行政の発表を見ると実装フェーズに入ってきたのかなと考えております。私たちはブランドとして衣類の回収を担う立場なので、協力いただけるリサイクル事業者の方々と「この動きをどう見ているか」「これから何ができるか」を継続的に情報交換していく。その関係が健全だと思っています。我々もブランドの立場として、ただ回収を担って終わりではなく、「回収のその先」について常に情報を把握し、資源の循環について説明できるようにしていきたいと考えています。

──2030年に向けた目標と、「KAISHU solutions」を通じて感じられたお客様やスタッフの変化を教えてください。

竹山様:自社のオリジナルブランドは約700品番ありますが、そのうち第三者機関による認証や確証等を取得できているのは約8.8%です。2030年までに30%という目標を掲げていて、事業環境や供給側の事情で進捗に波が出ることもあります。それでも決してやめない。短期的な結果に一喜一憂せず、着実に知見を貯めていくことを大切にしています。

サステナビリティの推進においては、担当者の経歴によってアプローチの仕方が変わると感じています。私自身は15年ほど販売の現場にいたので、現場発で、様々なアイテムの回収・分別を担い、資源化させ、課題解決を目指す「KAISHU solutions」を生み出す形になりました。コロナ禍に期間限定で営業したオフプライスストア「エストネーションセントラル」で自分の構想を小さく実験することができたんです。当時、お客様は店頭に常設された回収ボックスに衣類をもってくるという行動自体が特別なものだったと思います。今では、多くの商業施設での衣類回収キャンペーンが実施されていることもあり、特別な行動ではなく、むしろ店頭ではお客様から「回収のその後」について尋ねられることもあります。また、当時エストネーションセントラルにいたメンバーは、今も他の店舗で活動を広げてくれています。現在、各店舗にはCSR担当者がおり、彼らが自分ごととして推進してくれています。先日、回収したアパレルビニールに異物が一つも混ざっていないことがありました。異物がなければ、純度の高いペレットに生まれ変わります。社員の意識の変化を実感して、本当にうれしかったですね。

パソコンを前に取材に応じる竹山賢様

こうした取り組みはサステナビリティレポートでも紹介しています。非上場の事業会社ですから、自分たちの取り組みの規模は決して大きくはありません。ただそれでも皆の取り組みを当たり前だと思わず、どんどん発信していきたい。実務を担ってくれているメンバーの思いがレポートで取り上げられたことが、純粋にうれしかったです。

──脱炭素に向けたロードマップについて、直近の取り組みを教えてください。

竹山様:2030年にスコープ1、2を実質ゼロにするという目標を掲げています。スコープ3については、今年から算定に着手する段階です。私たちは商業施設に出店している立場なので、出店先の皆様との対話が欠かせません。開店準備で必要以上に照明をつけていないか、閉店後も締め作業以外のエリアは早めに消灯できないか。店舗の社員から自発的に出てきたそうした活動をお伝えすると、前向きに受け止めていただけることが増えました。今は再エネ対応に関しては、商業施設側が負担している部分もありますが、いずれテナント側にも相応の負担を求められる時代になると考えています。国際的な情勢の変化もあり環境への取り組みのハードルが上がっている面はありますが、微力ながらも削減の努力を続けていることが、いずれエストネーションというブランドの差別化にもつながると信じています。

業界・産地・行政との対話、そしてお客様への思い

──人権デュー・ディリジェンスなど、取引先や社会との向き合い方について教えてください。

竹山様:ILO基本条約(中核的労働基準)や行政の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」等に沿って、お取引先様向け行動規範を策定しました。あわせて、お取引先様向けのSAQ(自己評価質問票)も、さまざまな業界からの支援をいただきながら作成しました。人権デュー・ディリジェンスは、環境と並ぶサステナビリティの大きな柱の一つです。トレーサビリティとトランスペアレンシー(透明性)が大きく問われる時代になっていますから。

今は、約130項目あるSAQをお取引先様にお願いする前に、「自分たちはこれを聞かれたらどう答えるか」を各部門と一つひとつ確認し、チェックを進めている段階です。この人権デュー・ディリジェンスの取り組みは、お取引先様との対話を行い、一緒に取り組んでいくことが大切だと考えております。

──地域産業との共創「ESTNATION JOURNEY」について教えてください。

竹山様:産地の作り手の思いを伝えるコンテンツです。当時の商品部の担当者から「こういうコンテンツを考えているんだ」と、私に説明してくれた企画でした。日本の産地の現場に足を運ぶと、証明書や環境配慮という言葉を使わなくても、日本古来の作り方のなかに自然由来の加工や節水への配慮等がきちんと根づいていることが分かります。第三者機関による認証や確証等の取得という私たちの定義には当てはまらないかもしれないけれど、現場に来ていただければその答えが分かる。西洋と東洋、それぞれのテイストが紡ぎ合って生み出されたこのコンテンツは、エストネーションのパーパスを体現していると感じています。

うれしいことに、今シーズンでは若いバイヤーが「ネクタイで産地との取り組みをしたい」と企画してくれています。こうした思いが受け継がれていることが、何よりの財産だと思っています。

──行政や産地との橋渡し役としての実感を教えてください。

竹山様:我々のようなセレクト業態は50年ほどの若い業態ですが、繊維・アパレル産業自体は明治以降の日本を牽引してきたものです。行政や業界の諸先輩方が脈々とこの業界のために寄与してくださった恩恵があって、私たちは仕事ができていると思っています。

サステナビリティを推進していく際、わからない事を調べていくと、頼るべき一次情報は行政の資料になります。行政の検討会や資料はすべて公開されています。そうした資料をもとに、自社のサステナビリティの目標や施策を照らし合わせると、自分達の活動も行政の大きな取り組みに沿ったものであると理解できます。先ほどの産地の取り組み等もそうです。担当者に行政の資料を共有すると、その資料の内容をもって産地の方々とより深い対話が生まれたりします。

「橋渡し役」などとは大変おこがましいですが、ただただ自分がわからないことは行政の資料を頼りに、時に意見交換させていただける事が私自身の大きな学びになっております。日頃、行政の資料をわざわざ見にいく方は、なかなかいらっしゃらないと思います。けれど、洋服が好きで私たちのお店に来てくださる方々に、この産業のために行政の皆様が行っていただいていることを、私たちのメディアやプラットフォームから発信することはできる。自社の利益につながることを目的とせず、公益性を持って、ファッションを愛する方々に行政の方々の仕事を知っていただく。この産業にはこういうロードマップがあって、目指すべき世界がある。それを知っていただくことにより、例えば不用な衣類は捨てずに近くの回収ボックスにもって行こうと思っていただける。そういう行動のきっかけになっていたらとても嬉しいです。

取材中の竹山賢様

──最後に、服づくりや服選びに関わるすべての方へメッセージをお願いします。

竹山様:転職してすぐの頃は小売の経験がなく、お客様に物を提案し、買っていただくという行為そのものに迷いがありました。あるとき「洋服の『服』は、幸福の『福』につながる。あなたは洋服を売っているのではなく、人に福を届けているのですよ」というアドバイスをいただき、そこから考え方が変わりました。その人に似合うものをどんどん提案していくうちに、「提案してもらった服を着ていたら周りに褒められた」と言ってくださるお客様も増えていきました。

一方で、その服が誰かの犠牲の上に成り立って作られたものであっては「福」をお客様に届けられません。私たちの事業規模でやれることは限られているとは思いますが、透明性やトレーサビリティなど、少しでもできることを一つひとつ丁寧に取り組んでいきたいと思っております。人に福を届けたいという思いがあるからこそ、人権や環境の分野で先行して取り組んでいらっしゃる様々な方々とお会いして、多くを学ばせていただきながら、自分たちの事業でできることを少しずつ積み重ねていきたいと思います。

▼ 株式会社エストネーションのページはこちら
ホームページ:https://www.estnation.co.jp/
One Small for Smile | ESTNATION:https://www.estnation.co.jp/onesmall/

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