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ENVIRONMENT

フードマイレージとは|日本が突出して高い理由と食卓からできる削減策

Photo by Tom Delanoue on Unsplash

「フードマイレージ」という言葉を食品パッケージや環境系の記事で見かけたことはありませんか。なんとなく「輸送距離に関係しているんだろうな」とは思いつつも、具体的に何を示す指標なのか、日本ではどのくらいの値なのか、ピンとこない方も多いはずです。

この記事では、フードマイレージの意味・計算式から、日本が世界でも際立って高い値を示す理由、そして食卓レベルでできる削減策まで、順を追って解説します。「知識として知っている」だけで終わらせず、スーパーの売り場で思い出せるくらいの理解につなげることを目指しています。

フードマイレージとは何か

フードマイレージとは、食料(Food)が生産地から食卓に届くまでの輸送距離(Mileage)に着目した指標です。 具体的には、「食料の輸送重量(トン)」に「輸送距離(キロメートル)」を掛け合わせた数値(単位:トン・キロメートル)で表されます。

計算式はシンプルです。

フードマイレージ(t・km)= 輸送量(トン)× 輸送距離(km)

例えば、豆腐を作るために必要な大豆をアメリカのアイオワ州から1トン輸入した場合、そのフードマイレージは輸送量1t×輸送距離20,000kmで「20,000t・km」となります。もし日本国内で生産した大豆を利用して豆腐を作れば、この値は大きく減ることとなります。

この数値が大きいほど、輸送に伴うエネルギー消費や二酸化炭素(CO₂)の排出量が多くなり、環境への負荷が大きくなると考えられます。

概念が生まれた背景

フードマイレージの考え方はイギリス発祥で、輸送距離が長くなるほど環境に与える影響が大きくなるという問題意識から生まれました。 日本では2001年に農林水産省農林水産政策研究所がイギリスを参考にし、すでに日本人になじみのあった言葉「マイレージ」を採用して、フード・マイレージとして広まりました。

フードマイレージの限界点も知っておく

「距離が短ければ環境に優しい」と単純に結論づけられないのが、フードマイレージを扱う際の注意点です。 輸送手段(船・飛行機・トラックなど)によるCO₂排出量の違いや、生産・加工・保管・廃棄といった輸送以外の過程での環境負荷は考慮されていません。これらを総合的に見る指標としては「カーボンフットプリント」があります。

フードマイレージはあくまで「輸送」という1つの側面を可視化する指標です。それを理解したうえで活用することが大切です。

日本のフードマイレージはなぜ突出して高いのか

「日本は島国だから輸送距離が長くなるのは仕方ない」——そう思う方もいるかもしれません。しかし実態を数字で見ると、その差は「仕方ない」では済まない水準です。

2001年における日本の輸入食料のフードマイレージを計算すると、約9,000億t・km(トン・キロメートル)となりました。これは、韓国・アメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約5倍、フランスの約9倍と際立って大きくなっています。

では、なぜここまで大きくなるのでしょうか。理由は2つあります。

理由1|食料自給率の低さ

日本の食料自給率(カロリーベース)は農林水産省の公表値で長年38〜39%前後で推移しており、先進国の中でも低い水準です。裏を返せば、食卓に並ぶ食料の6割以上が海外から輸入されているということです。輸入量が多ければ多いほど、フードマイレージは積み上がっていきます。

理由2|輸入元が遠距離の国に偏っている

輸入相手国別にみると、特定の国(アメリカ、カナダ、オーストラリア)のウェイトが大きいという特徴があります。 これらの国はいずれも日本から数千〜1万数千km以上離れています。近隣のアジア諸国からの輸入よりも1件あたりの距離が格段に長くなるため、フードマイレージが押し上げられます。

品目別では飼料穀物が最大

品目別には、飼料穀物(とうもろこし等)や油糧種子(大豆、菜種等)が大きな部分を占めています。 直接口にする食品だけでなく、畜産向けの飼料も含めて考えると、肉・乳製品・卵のフードマイレージは見えないところで積み上がっていることがわかります。

また、フードマイレージは単に完成した商品にだけ適用されるとは限りません。例えばチョコレートなら原料となるカカオや砂糖の輸入から計算した場合、チョコレートそのものより高いフードマイレージ数値が導き出されます。 加工食品ほど見かけの輸入距離と実態が乖離しやすいという点も、知っておく価値があります。

フードマイレージとカーボンフットプリントの違い

「フードマイレージとカーボンフットプリントって同じ話では?」と思う方も多いはずです。混同されがちですが、測っているものが異なります。

フードマイレージは「輸送量×距離」という物理的な指標で、CO₂排出量そのものは直接算出しません。一方のカーボンフットプリントは、原材料の採取から生産・輸送・廃棄まで製品ライフサイクル全体のCO₂排出量を合算したものです。

「船で運ばれた大量の輸入野菜」と「飛行機で運ばれた少量の国産野菜」を比べた場合、フードマイレージは前者が大きくなることがありますが、カーボンフットプリントの観点では輸送手段の違いが大きく効いてきます。飛行機輸送の単位あたりCO₂排出量は船の数十倍とも言われており、距離よりも手段が問われるケースもあるのです。

2つの指標をうまく組み合わせることで、食料の環境負荷をより多角的に把握できます。

「国産なら安心」は本当か|よくある誤解を整理する

フードマイレージの話をすると、「国産を選べばいいんですね」という反応がよく返ってきます。確かに輸送距離という観点では国産のほうが有利ですが、それで話が終わりではありません。

例えば、北海道で収穫されたじゃがいもが沖縄のスーパーに並ぶ場合、国産ではあっても輸送距離は2,000km以上に達します。一方、沖縄で地元生産された野菜なら、数十kmで届きます。同じ「国産」でも、どこで誰が消費するかによってフードマイレージは大きく変わります。

さらに、温室栽培による国産野菜はハウス加温に多量のエネルギーを使うケースもあり、輸送距離が短くても製造・栽培段階のCO₂排出量が高くなることがあります。「国産=環境負荷が低い」は必ずしも成立しない、という点は押さえておきましょう。

食卓からできること|フードマイレージを下げる3つの視点

「個人が変えられることなんてたかが知れている」という声も、よく聞きます。確かに9,000億t・kmという数字を前にすると、一消費者の行動は小さく見えます。それでも、日々の食の選択は積み重なります。難しく考えず、3つの視点から整理してみましょう。

視点1|産地を確かめる習慣をつける

スーパーの食品表示には「原産地」が記載されています。すべての食材で産地を意識するのは大変ですが、よく使う食材(主食になる穀物、毎日食べる野菜・卵など)を1〜2品だけ「できるだけ近くで作られたもの」に変えてみることから始められます。近隣の直売所やファーマーズマーケットを活用するのも1つの方法です。

視点2|旬の食材を選ぶ

旬の食材は、その土地の気候で自然に育つため、ハウス加温や長距離輸送に頼りにくい傾向があります。また、旬の時期は収穫量が多いため価格も下がりやすく、家計にもやさしい。フードマイレージの削減と節約が同時に進む選択肢として、旬買いは実践しやすい方法の1つです。

視点3|食品ロスを減らす

フードマイレージと食品ロスは、一見別の問題に見えますが実は表裏一体です。遠くから運ばれてきた食料を廃棄してしまうと、輸送に費やしたエネルギーとCO₂がまるごと無駄になります。冷蔵庫の食材を使い切る「使いきり調理」や、まとめ買いによる食材消費の計画化は、フードマイレージの観点からも意味のある行動です。

「輸入食品を買うな」ではなく「知って選ぶ」こと

ここまで読んで「輸入食品はすべて悪者なのか」という気持ちになった方もいるかもしれません。でも、そうではありません。フードマイレージという指標が伝えようとしているのは「輸入品を選ぶな」ではなく、「自分の食が環境にどう関わっているかを知る視点を持とう」ということです。

フェアトレード産品のように、遠くで生産されていても適正価格で取引され、現地の生産者の生活を支えている食品もあります。「距離が長い=悪い選択」という単純な図式ではなく、輸送・生産・社会的公正を総合的に考えながら食を選ぶ視点が、これからの消費者には求められています。

今日から試せる1アクション

難しいことは何もしなくていいです。今週のお買い物のとき、1つだけ食品の産地表示を見てみてください。「この野菜はどこから来たんだろう」と立ち止まる習慣が、フードマイレージを意識する第一歩になります。手に取った商品を必ず国産に変える必要はありません。ただ「見る」だけで構いません。その積み重ねが、少しずつ選択を変えていきます。

まとめ|フードマイレージを知ると、食の見え方が変わる

フードマイレージは、食料の輸送が環境に与える負荷を「輸送量×距離」というシンプルな形で可視化する指標です。日本は輸入食料のフードマイレージが先進主要国の中でも際立って高く、食料自給率の低さと遠距離輸入国への依存が背景にあります。ただし、国産が常に正解というわけでもなく、旬・輸送手段・食品ロスの有無なども合わせて考えることが大切です。

  • フードマイレージ=輸送量(t)×輸送距離(km)。数値が大きいほど輸送時のCO₂排出量が増える傾向がある
  • 日本の輸入食料のフードマイレージは約9,000億t・km(2001年農林水産省試算)で、主要先進国と比べて際立って大きい
  • フードマイレージは輸送の一側面のみを示す指標。カーボンフットプリントと組み合わせると、より正確に環境負荷を把握できる
  • 産地確認・旬の食材選び・食品ロス削減の3つが、日常レベルでできる削減アクション
  • 「輸入品を買うな」ではなく「知って選ぶ」視点を持つことが大切

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