企業の脱炭素化が進む中で、「スコープ3」という言葉をニュースや企業報告書で目にしたことはありませんか?環境問題への取り組みを評価する際に、いま重要な指標となっているこの概念について、わかりやすく解説します。
スコープ3とは|温室効果ガス排出量の分類方法
スコープ3は、スコープ1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)です。
もう少し詳しく説明すると、製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量(サプライチェーン排出量)を指す
ものです。
この概念は、世界資源研究所(WRI)と世界環境経済人協議会(WBCSD)が中心となり1998年に発足されたGHGプロトコルイニシアチブにより策定されました。
スコープ1・2・3の違いを理解する
企業の温室効果ガス排出は、全体で3つに分類されます。それぞれの違いを見てみましょう。
スコープ1は事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出です。
つまり、スコープ1と2は企業が自社の事業活動を通じて直接的または購入電力を通じて排出する温室効果ガスを指しています。一方、スコープ3は自社が直接関与していないものの、ビジネスの流れの中で他社が排出する温室効果ガスを含みます。
スコープ3の15カテゴリ
スコープ3は該当する活動が15のカテゴリに分類されており、原材料の調達、輸送・配送、販売した製品の使用、廃棄などが該当するほか、従業員の出張や通勤、資本財やフランチャイズ、投資といった活動による温室効果ガス排出量も含まれています。
たとえば、自動車メーカーの場合、部品メーカーから仕入れた部品の製造過程での排出、顧客が自動車を使用する際の排出、最終的に廃棄される際の排出、すべてが対象となります。飲料メーカーであれば、原材料の農場での排出、輸送時の排出、消費者が製品を使う際の排出も含まれるということです。
なぜスコープ3が重要なのか
直接排出のみを削減対象とした場合、省エネ製品の開発など直接排出ではない削減努力が適切に評価されず、またサプライチェーン上にある大きな排出削減ポテンシャルを見落とす可能性が指摘されています。
実際、多くの企業にとって、スコープ3の排出量はスコープ1・2よりも圧倒的に大きいものです。そのため、本当の意味で脱炭素化を進めるには、サプライチェーン全体での排出削減が不可欠となります。
企業と社会にもたらすメリット
スコープ3を把握・管理することは、企業にとって複数のメリットをもたらします。
ステークホルダーからの信頼向上、ブランドイメージの向上、得意先や取引先との関係強化などの効果があります。
さらに、温室効果ガスの削減対象を明確化できることもメリットです。サプライチェーン全体における総排出量と各排出源の比率を把握することで、優先的に削減すべき対象を特定できます。
今後の動き
2023年6月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がスコープ3の開示義務化を決定し、日本では民間のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2024年3月に草案を公表しており、2025年3月末までに開示義務化が最終的に確定する予定です。
これまで任意とされていたスコープ3の開示が、将来的には義務化される見込みです。企業規模を問わず、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の把握と削減が、重要な経営課題となっていきます。
私たちにできること
スコープ3の概念は、消費者にとっても他人事ではありません。製品を選ぶ際に、企業のスコープ3の取り組みを参考にすることで、環境への影響が小さい選択をすることができます。企業のCSR報告書やホームページで、スコープ3に関する情報開示をチェックしてみましょう。また、地域社会や仕事の場で、温室効果ガスの削減に協力することも重要です。

