社会的企業は、利益を最優先するのではなく、社会課題の解決を事業の中心に据える企業やNPOのことです。環境問題、貧困、教育格差、障害者の就労支援など、さまざまな分野で社会的な価値を生み出しながら、同時に事業として持続可能な収益を確保するという「ハイブリッド」なビジネスモデルを持っています。では、一般企業とはどう違い、なぜ今社会的企業が注目されるのでしょうか。
社会的企業の定義|3つの要素で成り立つ活動
社会的企業とは、営利を目的とせず、事業を通じて社会的な目的の達成をめざす企業やNPOなどのことです。日本の経済産業省は、2008年に「ソーシャルビジネス研究会報告書」を公表し、現代社会で解決が求められる社会的課題(環境問題・貧困問題・少子高齢化・人口の都市への集中・子育て支援・街づくりなど)に取り組むことを事業活動のミッションに掲げていること、ビジネスの手法で取り組み、継続的に事業活動を進めていくこと、新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすることを定義としています。
つまり、社会的企業が成り立つには「社会性」「事業性」「革新性」の3つの要素が必要とされています。単なるボランティアとも、一般的な企業とも異なる、新しい活動の形です。
一般企業・NPO・ボランティアとの違い
社会的企業を理解するには、他の活動形態との違いを知ることが大切です。
社会的企業は利益第一優先ではなくビジネスで社会課題を解決することを主な目的としていますが、事業として持続的に成り立つように回していくため、非営利団体とは異なります。収益確保と社会的問題の解決を両立させ、社会をより良くしながら、経済的にも豊かにすることを目指しています。
ボランティアと社会的企業は「活動資金」と「利益追求」において違いがあります。ボランティア活動は、主に寄付や構成員の持ち出しによって活動が維持されますが、社会的企業は株式や融資、出資によって成り立っており、事業収入を得ることも目的としています。
また、一般企業のCSR(企業の社会的責任)活動も似ていますが、社会的企業は社会課題の解決を経営の根幹に据えているのに対し、CSRは企業の社内部門が取り組む活動のため、経営方針の変更で縮小されることもあります。
社会的企業の広がり|世界から日本へ
1980年代以降、時代と社会が解決を求める多くの社会的課題に対して、寄付や公的な支援だけに依存するのではなく、採算性をともなう自立的で持続可能なビジネスモデルを構築し、事業として継続的・安定的に取り組もうとする動きが、世界各地で興り始めました。代表例として、バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏が創設したグラミン銀行が知られています。マイクロクレジット(無担保少額融資)を通じて貧困層の自立を支援し、2006年のノーベル平和賞を受けた活動は、社会的企業の象徴的な事例です。
日本でも、社会的企業への関心が高まっています。
内閣府の調査では、我が国における社会的企業の数は20.5万社(11.8%)、社会的企業の付加価値額は16.0兆円(対GDP比3.3%)、有給職員数は577.6万人となっています。障害者の就労支援、地域活性化、環境保全など、様々な分野で社会的企業が活躍しており、経済の一部として無視できない存在になっています。
日本の社会的企業の事例
実際の社会的企業の活動を知ることで、その役割がより見えてきます。
ユーグレナは「人と地球を健康にする」というパパス(存在意義)を掲げており、バングラデシュの子どもたちや難民の栄養改善プロジェクト「ユーグレナGENKIプログラム」を展開し、これまで1万人の子どもたちに無償でミドリムシ由来のクッキーを届けてきました。
ハチドリ電力は、株式会社ボーダレス・ジャパンが取り組む地球温暖化を解決するための電力サービスで、すべてCO2ゼロの自然エネルギーで、利用者が支払った電気代の1%をNPOや環境団体へ寄付できる仕組みです。
LITALICOは「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げた社会的企業で、障害を持つ人々への就労支援サービスや、発達障害をもつ子どもへの学習機会の提供を行っており、全国に120ヶ所以上の就労支援拠点と、250ヶ所以上の学習教室を展開しています。
社会的企業が注目される背景
環境問題・貧困問題・少子高齢化などの社会的課題が深刻化している状況が社会的企業注目の大きな要因であり、2015年に世界中で起こっている様々な社会的課題の解決へ向け「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたことで、国内外で社会的課題に対する関心がより高まっています。
政府の財政が厳しくなる中、公共サービスだけでは解決できない社会課題は増え続けています。同時に、企業の存在意義そのものが問い直される時代になり、利益を生むだけでなく、社会への貢献を求める消費者や投資家の声も大きくなっています。社会的企業は、こうした時代のニーズに応える新しいビジネスの形として、ますます期待が集まっています。
私たちにできること|社会的企業との関わり方
社会的企業を応援する方法は、複数あります。最も身近な関わり方は、社会的企業の商品やサービスを利用することです。ハチドリ電力への切り替え、フェアトレード商品の購入、社会的課題に取り組む企業のサービスを選ぶなど、消費行動を通じた支援が可能です。
また、職場として社会的企業に参加することも一つの選択肢です。社会的企業で働く人たちは、給与を得ながら社会課題の解決に直結した仕事をしており、経済的な豊かさとやりがいの両立を目指しています。
さらに、社会的企業の活動を知り、情報を発信することも応援につながります。社会的課題の解決に向けて、ビジネスの力を活用する企業や個人が増えることで、より多くの人が参加できる社会へと変わっていくでしょう。

