公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
SOCIETY

防災気象情報が5月に刷新へ|「危険警報」新設で変わる、災害への備え方

防災気象情報が5月に刷新へ|「危険警報」新設で変わる、災害への備え方

気象庁は2025年12月16日、令和6年6月に取りまとめられた「防災気象情報に関する検討会」の提言を踏まえ、令和8年5月下旬(予定)から新たな防災気象情報の運用を開始すると発表しました。
これは、長年使い慣れた「大雨警報」「土砂災害警戒情報」といった情報体系が大きく変わることを意味します。一方、2026年2月16日には環境省が「第3次気候変動影響評価報告書」を公表し、今後の日本における気象災害リスクの深刻さをあらためて示しました。この二つの動きは、「気候変動時代の防災」を市民一人ひとりが主体的に考える転換点を告げています。

なぜ今、防災気象情報は変わるのか

現行の防災気象情報は、災害発生の危険性を認識できる一つの指標として社会でも少しずつ浸透し始めていますが、まだまだ十分ではありません。地球温暖化などによる大雨、線状降水帯の発生などの災害が増加するおそれが指摘されているなか、国民のみならず外国にルーツがある人々にもわかりやすい情報提供が必須となっています。

こうした背景から見直しが進められてきた今回の制度改正は、単なる名称変更にとどまりません。
見直しが検討された「洪水(河川氾濫)」「大雨」「土砂災害」「高潮」の4つの災害について、それぞれのキーワードに警報などの情報と警戒レベルを併記することとされています。さらに、レベル4避難指示の発令等の目安となるレベル4相当の情報として「危険警報」が新設されます。これにより、対象災害ごとに注意報・警報・危険警報・特別警報が警戒レベルに整合した形で運用されるようになります。なお、土砂災害警戒情報は「レベル4土砂災害危険警報」に、気象台による市町村ごとの洪水警報・注意報はそれぞれ改編・再編されることになります。

この新制度の背後には、法制度の整備も進んでいます。
気象業務法及び水防法の改正など所要の準備が進められており、予報・警報の高度化・適正化が図られることになりました。

「今よりも3倍の大雨」が現実になりうる日本の未来

防災気象情報が変わる背景には、気候変動による気象リスクの確実な増大があります。
年々深刻化する気候変動問題の影響は、体感することのなかった高温現象や短時間の豪雨にとどまらず、土砂災害、熱中症などの健康被害、さらにはサプライチェーンを麻痺させるなど経済活動にも及んでいます。2026年2月16日、環境省はこうした状況を日本に焦点をあてて分析した「第3次気候変動影響評価報告書」を公表しました。
日本の平均気温は、過去100年間で100年あたり1.4℃のペースで上昇しており、世界平均より高いペースで上昇しています。真夏日や猛暑日などが統計上増加しているだけでなく、気温以外の変化として、年最大日降水量(1年で最も雨の降った日の降水量)や極端に強い雨の頻度なども増加しています。

将来の見通しはさらに厳しいものです。
20世紀末と比べて21世紀末の日本では、年平均気温が約1.4℃(2℃上昇シナリオ)〜約4.5℃(4℃上昇シナリオ)上昇して猛暑日や熱帯夜がますます増加し、50mm/h以上の雨の頻度は約1.8倍(2℃上昇シナリオ)〜約3倍(4℃上昇シナリオ)に増えると予測されています。
工業化以前の気候での「100年に1回の大雨」は、世界の平均気温が工業化前と比べて2℃上昇した時には100年におよそ3回、4℃上昇した時にはおよそ5回に増えると予測されています。
かつて「一生に一度あるかないか」と思われていた規模の大雨が、数年に一度の頻度で起きる時代が近づいているのです。

「過去の常識」が通じない時代の防災を考える

2013年に大雨特別警報が新設されましたが、2018年の西日本豪雨(正式名称:平成30年7月豪雨)では、特別警報発令後も多くの住民が避難せず被災しています。災害発生直後は災害に対する意識が向上しますが、大きな災害がなく年月が経過することで、警報等に対する感受性は低くなります。

このことは、情報の「わかりやすさ」だけでなく、受け取る市民の側の「行動」につなげる仕組みが不可欠であることを示しています。今回の制度見直しで警戒レベルと情報名称の対応関係がより直感的になることは、避難行動の遅れを生む「情報の難しさ」という障壁を取り除く重要な一歩です。

一方で、防災の司令塔機能強化も国レベルで動き始めています。
政府は2025年12月26日の閣議で、防災・災害対応の司令塔となる「防災庁」の設置に向けた基本方針を決定したとされています。内閣直下の組織とし、他府省庁に政策指導や助言をする勧告権を持たせるのが柱で、2026年1月召集の通常国会に関連法案を提出し、11月ごろの設置をめざすとされています。
日本海溝・千島海溝地震や南海トラフ巨大地震への対応を強化するため防災庁の地方拠点を設け、自治体との連携を深める方針とされており、全国で多くの自治体が地方拠点の候補地として名乗りを上げているという見方があります。

地域適応計画の整備が進む一方で残る課題

気候変動に備えるための「地域気候変動適応計画」の策定も、自治体レベルで広がっています。
多くの地方自治体で地域適応計画の策定が進み、実施段階に入っています。一方で、地方自治体においては適応策が農業・防災・医療などの既存政策と重なることが多く、他部署との施策調整・連携が課題となっています。
こうした気候変動適応計画などには、最新の科学的知見が盛り込まれた「日本の気候変動2025」(文部科学省・気象庁が2025年3月に公表)が活用されており、国や地方自治体が今後の極端な気温の変化や大雨の頻度などを考慮した計画策定に参照されています。

適応策の立案に科学データが活用されるサイクルが整いつつある一方で、地方自治体では適応策が個別のセクターに留まりがちで、気候変動リスクを包括的に管理するより広い枠組みの構築が求められています。

私たちにできること|「5段階」を知り、早めに動く

新たな防災気象情報が5月に運用開始となる今、私たちにできる最初のステップは「新しい警戒レベル5段階の体系を事前に頭に入れておくこと」です。

乳幼児がいるご家庭、妊婦、怪我や障害があり避難に時間がかかりそうな方は、レベル3「高齢者等避難」の段階で避難を開始できるよう準備しておくことが大切です。警戒レベル2の注意報が出た時点で、避難先までの安全な避難経路・持ち物の確認・家族等の安否確認方法を見直しておくと、いざというときの避難がスムーズになります。

さらに、自分が住む自治体の気候変動適応計画やハザードマップが最新版かどうかを確認しておくことも有効です。気象庁の特設サイト「新たな防災気象情報について」では、新制度の詳細な解説資料が公開されており、5月の運用開始前に確認しておくことをおすすめします。

気候変動が「いつかの問題」ではなく「今年の夏の問題」になった時代に、防災の知識をアップデートすることが、自分と地域を守る第一歩となります。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

  1. 「水危機」を超えた「水破産」の時代|世界と日本が直面する水資源問題と、私たちにできること

  2. 液状化で11万棟全壊の現実|南海トラフ対策の「見えない死角」に向き合う

  3. インドで進む「春なき夏」|2026年早期熱波が農業と食料安全保障を脅かす

RELATED

PAGE TOP