まだ食べられる食品が年間464万トン捨てられている――。環境省・農林水産省・消費者庁が公表した令和5年度(2023年度)の推計値が示す数字は、日本社会が抱え続ける課題の重さを改めて浮き彫りにしています。2025年3月には政府が食品ロス削減の目標を引き上げ、2026年4月にはプラスチック関連の法改正が重なって施行されます。「捨てない社会」への制度的な転換点が今、訪れています。
令和5年度の食品ロスは約464万トン
環境省は、令和5年度(2023年度)の食品ロス量を約464万トンと推計・公表しました。内訳は家庭系が約233万トン、事業系が約231万トンです。
農林水産省が公表している参考値によれば、日本人一人当たりの食品ロス量は年間37キログラムにのぼります。
これは毎日おにぎり1個分を丸ごと捨てているのに相当するとされており、感覚的にも身近な問題といえます。
家庭系食品ロスの発生要因は、食べ残し・手つかずの食品(直接廃棄)・皮の剥きすぎ(過剰除去)が主なものです。捨てた理由として「食べ残し」「傷んでいた」「期限切れ」などが多いとされています。
食品ロスは温室効果ガスの排出とも密接につながっています。令和5年度(2023年度)の食品ロス量をもとにした推計では、食品ロスによる温室効果ガスの排出量は合計で約1,050万トンのCO₂に相当するとされています。
食品を捨てることは、単なる「もったいない」だけでなく、気候変動対策としても見過ごせない問題なのです。
2025年3月の閣議決定|事業系目標が「60%削減」へ引き上げ
2025年3月25日に閣議決定された「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(第2次)」では、事業系食品ロスを2030年度までに2000年度比で60%削減する目標が定められました。
これは従来の「半減(50%削減)」目標から10ポイント引き上げられた、より踏み込んだ水準です。
同方針において、家庭系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに半減(2030年を待たずに早期達成)することが目標として掲げられています。
新方針では、食品関連事業者の取り組みとして、納品期限の見直しや賞味期限の安全係数の見直し、大括り表示(年月日から年月への変更)への見直しが挙げられています。また、食べ残しを持ち帰る「mottECO(モッテコ)」の取り組み促進も盛り込まれました。
消費者庁は「食品ロス削減推進会議」を定期的に開催し、関連施策の進捗を確認しています。
こうした会議が定期的に開かれることで、官民が連携した国民運動としての推進体制が維持されています。
商習慣の見直しも加速|「3分の1ルール」から「2分の1」へ
食品業界では、製造から賞味期限までを3等分して納品・販売期限を決める「3分の1ルール」が長年の商習慣として定着してきました。この期限内に納品されなかった商品の多くは廃棄されます。こうした現状を改善するために、納品期限を3分の1から2分の1に緩和する動きが広がっており、農林水産省の取りまとめによると、多くの食品小売り事業者が納品期限の緩和に取り組んでいるとされています。
地方公共団体と地域の飲食店が連携した食べ残し削減の取り組みも広がっており、令和5年度(2023年度)には多数の店舗が取り組みに参画しているとされています。
AIを活用した取り組みも進んでいます。
スーパーでは「AI値引き」を活用した値引き運用の検証が進み、商品をスキャンするだけのシンプルな操作で、経験の浅い従業員でも適切な値引き判断ができるようになっているとされています。
需要予測やフードシェアリングなど、テクノロジーを組み合わせた対策が現場に根づきつつあります。
2026年4月にはプラスチック法改正も施行
食品ロスの問題と密接に関わるのが食品容器・包装のプラスチック問題です。
2026年4月には「資源有効利用促進法」の改正が施行されるとされています。この改正では、製品の設計・製造段階での再生材利用を促す仕組みと、使用後の回収・再資源化段階における効率的な運用を支援する「再資源化高度化法」が同時に動き出すと見込まれています。特に容器包装が新たな規制対象となることで、再生プラスチックへの切り替えや設計の見直しが食のサプライチェーン全体に求められることになります。
2026年4月1日の改正資源法施行後、対象事業者は「再生材利用計画」の提出が求められるとされています。
食品ロスとプラスチック削減は別々の問題ではありません。食品が廃棄されれば、包んでいたプラスチック容器も一緒に捨てられます。食べ切ることで食品ロスを減らすことは、プラスチックごみの削減にも直接つながる行動です。
私たちにできること|「小さな行動」が積み重なる
消費者一人ひとりの行動も、大きな変化の積み重ねになります。買い物の際に使い切れる量だけ購入する、賞味期限の近い商品を手前から選ぶ「てまえどり」を心がける、外食での食べ残しをmottECOで持ち帰るといった習慣が、この社会的目標を支えます。
消費者庁は、食品ロス削減のためには一人一人がこの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え、「理解」するだけにとどまらず「行動」に移すことが必要だと呼びかけています。
制度の後押しと市民の行動が重なるとき、変化は加速します。新目標が閣議決定され、法改正が重なる今年は、食品ロス削減の取り組みが一段階深まる転換点になりそうです。「捨てない選択」を日常に取り入れることが、気候変動対策にもつながる――その視点を持つことが、まず第一歩です。

