地球上には、森林や河川、海洋など様々な自然環境があり、そこには数え切れないほどの生物が暮らしています。しかし近年、野生生物の種の絶滅が過去にない速度で進み、生態系の破壊が深刻な問題となっています。このような危機に対応するために生まれたのが「生物多様性条約(CBD)」です。この記事では、生物多様性条約の意味、目的、そして私たち一人ひとりにできることを、わかりやすく解説します。
生物多様性条約とは|国境を越えた生物保護の枠組み
生物多様性条約(Convention on Biological Diversity; CBD)は、生物多様性を「種」「遺伝子」「生態系」の3つのレベルで捉え、その保全などを目指す国際条約です。
1992年5月22日、ナイロビ(ケニア)で開催された合意テキスト採択会議において採択されました。
日本を含む196の国と地域が本条約を締結しています。
この条約は、それまでのワシントン条約やラムサール条約のように「特定の生物種」や「特定の地域」だけを対象とするのではなく、野生生物保護の枠組みを広げ、地球上の生物の多様性を包括的に保全することが重視されています。生物は国境を持たないため、世界全体で協力して取り組む必要があるというのが、この条約の根本的な考え方です。
3つの大切な目的
生物多様性条約には、以下の3つの目的が規定されています。
生物多様性の保全
第1の目的は、生物を本来の生息地(生態系)の中で保全することです。
国立公園などの保護地域の指定・管理による本来の生息地の中での保全、動物園や植物園など本来の生息地以外での飼育・栽培による保全、環境影響評価の実施などが規定されています。
持続可能な利用
第2の目的は、生物資源を「今」だけでなく「未来」のためにも活用できるようにすることです。
生物多様性の持続可能な利用のための措置として、持続可能な利用の政策への組み込みや、先住民の伝統的な薬法など、利用に関する伝統的・文化的慣行の保護・奨励についても規定されています。
利益の公正な配分(ABS)
第3の目的は、遺伝資源の利用から得られた利益を、公平に配分することです。
遺伝資源を保有する国の主権を認めること、遺伝資源を利用して得た利益を資源提供国と資源利用国が公正に配分すること、途上国への技術移転を公正で最も有利な条件で実施することが規定されています。これは、先進国が開発途上国の生物資源を利用して得た医療品や食品などの利益を、資源提供国にも還元するという仕組みです。
日本の取り組み
日本は1992年6月13日に署名、1993年5月28日に条約を締結し、18番目の締約国となりました。その後、日本は条約実施の中心となる組織として
1995年10月に「生物多様性国家戦略」を決定
し、2023年3月には「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえた「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定されました。
日本が取り組んでいる具体的な例として、トキの野生復帰があります。
環境省は「2020年頃に佐渡島内に220羽のトキを定着させる」ことを目標に掲げ、保全活動を行い、2020年12月時点で佐渡島内に生息するトキは442羽に増えました。
私たちにできることは
生物多様性の保全は、政府や企業だけの責任ではありません。一人ひとりが当事者意識を持つことが大切です。例えば、以下のようなことが考えられます。
・生態系保全に取り組むNGO団体への寄付
・生物多様性に関する映画や書籍を通じた学習
・身近な自然環境の観察と記録
・農薬や化学肥料を使わない商品の選択
・海洋プラスチックごみの削減など、生活習慣の見直し
地球の生物多様性は、私たちの食糧、医療、文化的な豊かさの源です。小さなことからでも、今から行動を始めることが、次の世代へ豊かな地球を残すことにつながります。

