企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する情報開示が世界中で求められるようになりました。しかし、国ごとに異なる基準が乱立し、投資家にとって企業の持続可能性を判断しにくいという課題がありました。そこで登場したのが「ISSB基準」です。世界共通のルールとして注目される、この国際基準について、わかりやすく解説します。
ISSB基準とは
ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は2021年11月にIFRS財団によって設立され、企業が環境・社会・ガバナンス(ESG)を含む非財務情報を開示する際の国際基準を策定する機関です。
簡単にいうと、企業がサステナビリティ情報(企業の環境への取り組みや社会的責任など)を世界共通のルールに基づいて報告するための基準を作る組織です。
これまで世界には400以上の非財務情報開示基準が乱立し、統一された基準は存在しなかったため、IFRS財団はサステナビリティ報告の世界共通基準を策定することにしました。
ISSB基準が生まれた背景
ISSB基準が必要とされた理由は、大きく3つあります。
まず、非財務情報開示基準の乱立、ESG投資の拡大に伴う非財務情報の重要性、気候変動対策の重要性などが要因として挙げられます。各国が独自の基準を作っていたため、企業は複数の基準に対応する必要があり、コストと時間がかかっていました。
次に、投資家が企業の持続可能性を評価するうえで統一的な基準が求められていたため、IFRS財団がIASBで培った財務報告の国際基準化のノウハウを活かし、新たにサステナビリティ開示基準をグローバルにまとめる機関としてISSBが設立されました。
2つの主な基準|S1とS2
2023年6月に、ISSBは「IFRS S1(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項)」と「IFRS S2(気候関連開示)」を最終決定しました。
IFRS S1 は、気候以外のサステナビリティ情報についても開示を求めています。人権、労働環境、供給チェーン管理など、投資家の意思決定に重要な全てのサステナビリティ関連のリスクと機会が対象となります。
IFRS S2 は、気候変動に特化した基準です。
温室効果ガス排出量(Scope 1、Scope 2、Scope 3)の開示が義務付けられており、気候変動が企業の事業や財務に与える影響を評価するためのシナリオ分析の実施が求められています。
日本での動き
日本でも、ISSB基準への対応が進んでいます。
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は2025年2月19日、日本最初のサステナビリティ開示基準を公表し、ISSB基準との整合性を図ることを基礎として開発が行われました。
これにより、日本の上場企業や有価証券報告書提出企業は、今後このサステナビリティ開示基準に基づいた情報開示が求められるようになります。
企業と投資家にとってのメリット
ISSB基準の導入により、いくつかのメリットが生まれます。
企業側では、複数の開示基準に対応する必要がなくなり、報告コストを削減できるようになります。また、企業の持続可能性やリスクを国際的に比較しやすくなることが期待されています。
投資家側では、世界中の企業の情報を統一的なフォーマットで比較できるため、投資判断がしやすくなります。環境や社会への取り組みが本当に進んでいるのか、客観的に評価できるようになるのです。
私たちにできること
ISSB基準の普及により、企業のサステナビリティ情報がより透明になります。消費者やビジネスパーソンとして、私たちができることは以下の通りです。
- 企業の公開情報で、どの程度のサステナビリティ対策をしているか確認する
- ESG評価の高い企業を応援し、商品やサービスの購入・利用を通じてサステナビリティ経営を支える
- 企業説明会や株主総会などで、非財務情報についての質問を行う
ISSB基準は、企業と投資家、そして私たち利用者の相互理解を深めるための重要なツールです。サステナビリティが当たり前の時代に向けて、まずはこの基準の意味を理解することから始めてみましょう。

