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太陽熱温水器とは?仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説

太陽熱温水器とは?仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説

近年のエネルギー価格高騰により、家庭の光熱費負担が大きな問題となっています。特に給湯費は家庭で使用するエネルギーの約3分の1を占めており、この部分を効率的に削減できる太陽熱温水器が改めて注目を集めています。太陽の熱エネルギーを直接利用するシンプルな仕組みながら、月々のガス代を大幅に削減できる可能性を秘めた設備です。

この記事で学べるポイント

  • 太陽熱温水器の基本的な仕組みと太陽光発電との違い
  • 自然循環型と強制循環型の特徴とメリット・デメリット
  • 導入費用と実際の節約効果、投資回収期間の目安

太陽熱温水器とは?基本的な仕組みを理解しよう

太陽熱温水器とは?基本的な仕組みを理解しよう

太陽熱温水器は、太陽光に含まれる熱エネルギーを利用して水を温める装置です。屋根に設置した集熱器で太陽の熱を集め、その熱で水を温めてお湯として利用できるようにします。

太陽熱温水器の定義と概要

太陽熱温水器とは、太陽光を吸収して熱に変換することで水を温める装置のことです。建物の屋根などに設置され、太陽エネルギーの30~70%を熱として捕獲できます。既存の再生可能エネルギー利用機器の中では、エネルギー変換効率や費用対効果が最も高いとされています。

基本的な構造は、太陽の熱を集める「集熱器」と、温められたお湯を貯める「貯湯タンク」から構成されています。集熱器の表面には特殊な塗装が施されており、太陽光を効率よく熱エネルギーに変換します。冬の快晴時でも約30℃以上のお湯を作ることができるため、従来の給湯器と組み合わせることで燃料使用量を大幅に削減できます。

太陽熱温水器の歴史は古く、1970年代頃から一般家庭に普及し始めました。1980年には年間約80万台が設置されるピークを迎えましたが、その後は太陽光発電の普及などにより設置数は減少し、現在では年間約2万台程度となっています。

太陽光発電との違いとは

太陽熱温水器と太陽光発電は、どちらも太陽エネルギーを活用する点では共通していますが、目的と仕組みが大きく異なります。

太陽光発電は、太陽光を電気エネルギーに変換する装置です。発電した電気は家庭内のあらゆる電化製品で利用でき、余った電気は電力会社に売電することも可能です。しかし、光から電気への変換効率は約20%程度にとどまります。

一方、太陽熱温水器は太陽光を熱エネルギーに変換し、専らお湯を作ることに特化した装置です。熱変換効率は50~60%と太陽光発電の約3倍の効率を誇ります。用途は給湯に限定されますが、家庭のエネルギー消費の3分の1を占める給湯費を大幅に削減できるため、非常に実用的な効果が期待できます。

導入費用も大きな違いがあります。太陽光発電システムは一般的に100万円以上かかりますが、太陽熱温水器は20~100万円程度と、より手頃な価格で導入できます。特にシンプルな自然循環型であれば、20~50万円程度で設置可能です。

太陽熱温水器の種類と特徴

太陽熱温水器の種類と特徴

太陽熱温水器には大きく分けて2つのタイプがあります。構造や機能の違いにより、設置費用や使い勝手が大きく異なるため、それぞれの特徴を理解して選択することが重要です。

自然循環型(太陽熱温水器)の仕組み

自然循環型は最もシンプルな構造の太陽熱利用システムで、集熱部と貯湯部(タンク)が一体になっています。一般的には貯湯量200~300リットル、集熱面積3~4㎡が標準的なサイズとなります。

この方式の仕組みは非常にシンプルです。水道から直接水をタンクに供給し、集熱器内で太陽の熱により温められた水が自然に上昇する原理を利用して循環します。電力やポンプなどの動力を一切使用しないため、「自然循環型」と呼ばれています。

温められた水は上部のタンクに蓄えられ、必要に応じて給湯栓から取り出すことができます。晴天時には60℃程度、冬場でも40℃程度のお湯を作ることができます。構造が単純なため故障しにくく、メンテナンスも比較的簡単です。

ただし、集熱器とタンクが一体となっているため重量があり、屋根への負担が大きくなります。また、タンクが屋根上に設置されるため、外観への影響も考慮する必要があります。設置費用は20~50万円程度と比較的手頃で、シンプルな給湯用途に適しています。

強制循環型(ソーラーシステム)の仕組み

強制循環型は「ソーラーシステム」とも呼ばれ、集熱器とお湯を貯める蓄熱槽が分離している高機能なシステムです。熱媒として不凍液などを使用し、ポンプで強制的に循環させることから「強制循環型」と名付けられています。

このシステムでは、屋根上の集熱器で高温に達した熱媒を循環ポンプで蓄熱槽に送り、熱交換器を通じて槽内の水を温めます。蓄熱槽は地上や屋内に設置できるため、屋根への負担を大幅に軽減できます。また、太陽光発電パネルとの併設も可能です。

家庭用では集熱面積4~6㎡、貯湯量100~300リットルが一般的です。雨天など集熱量が不十分な場合は、ガス給湯器やエコキュートなどの補助熱源により自動的に加温される仕組みも備えています。

強制循環型にはさらに「液体式」と「空気式」があります。液体式は前述の通り不凍液を循環させる方式で、空気式は温められた空気を床下に循環させて暖房にも利用できる方式です。

設置費用は50~100万円と自然循環型より高額ですが、既存の給湯システムとの連携がしやすく、温度調整も自動で行えるため利便性が高いのが特徴です。

太陽熱温水器を設置するメリット

 

太陽熱温水器の最大の魅力は、太陽という無料のエネルギー源を活用して光熱費を削減できることです。初期投資はかかりますが、長期的には家計の大きな助けとなります。

光熱費の大幅削減効果

太陽熱温水器を導入することで、月々のガス代を従来の10~50%程度まで削減できます。これは給湯が家庭で消費するエネルギーの約3分の1を占めているためで、この部分をほぼ無料にできる効果は非常に大きいといえます。

具体的な節約例を見てみましょう。月のガス代が5,000円の家庭で太陽熱温水器を導入し、ガス代を1,000円まで削減できた場合、月4,000円、年間で4万8,000円の節約効果が得られます。特にプロパンガスを使用している家庭では、都市ガスよりもガス料金が高いため、より大きな節約効果を実感できます。

お風呂に毎日入る家庭では、一人当たりのお湯使用量は40℃換算で80~90リットル程度とされています。晴天日であれば、集熱パネル3枚で300リットルのお湯を80℃近くまで沸かすことができるため、家族全員分の入浴用お湯をほぼ無料で確保できます。

また、石油給湯機と組み合わせた場合、太陽熱で予熱されたお湯を使用するため、必要な時だけ灯油で追加加熱すればよく、燃費を大幅に削減できます。冬場でも太陽熱だけで30℃以上のお湯を作れるため、給湯器の負担を軽減し、燃料消費量を抑制できます。

環境への優しさと高い変換効率

太陽熱温水器は環境面でも大きなメリットがあります。使用中は二酸化炭素を一切排出せず、クリーンな再生可能エネルギーを活用した給湯が可能です。

エネルギー変換効率の面でも優秀で、太陽熱温水器の熱変換効率は50~60%に達します。これは太陽光発電の変換効率20%前後と比較すると約3倍の効率を誇ります。同じ太陽光を受けても、より多くのエネルギーを有効活用できる点で、太陽熱温水器は非常に効率的な設備といえます。

既存の再生可能エネルギー利用機器の中でも、太陽熱温水器はエネルギー変換効率や費用対効果が最も高いとされています。太陽エネルギーの30~70%を熱として捕獲できるため、限られた屋根面積でも十分な効果を発揮できます。

さらに、太陽熱温水器は非常にシンプルな仕組みのため、製造時のエネルギー消費や環境負荷も比較的少なく済みます。長期間使用できる耐久性もあり、ライフサイクル全体を通じて環境に優しい設備です。

知っておきたいデメリットと注意点

知っておきたいデメリットと注意点

太陽熱温水器には多くのメリットがある一方で、天候に依存する性質や設置条件などの制約もあります。導入前にこれらの点を十分理解しておくことが重要です。

天候に左右される制約

太陽熱温水器の最大のデメリットは、天候に大きく左右されることです。雨や曇りの日、雪の日などは十分な集熱ができず、お湯の温度が低くなったり、場合によってはほとんど温まらないこともあります。

特に連続して悪天候が続く場合、太陽熱温水器だけではお湯の温度が不足し、追い焚きや補助加熱が必要になります。これにより、期待した節約効果が得られない期間が生じる可能性があります。冬場は日照時間が短く、太陽の角度も低くなるため、夏場と比較して集熱効率が低下します。

季節による性能差も大きく、快晴の夏では60℃程度まで加熱できますが、冬では40℃程度にとどまることが一般的です。そのため、冬場は既存の給湯器との併用が前提となり、完全に従来の給湯システムを置き換えることは困難です。

また、朝一番や夜間など、太陽が出ていない時間帯はお湯の温度が下がってしまいます。特に早朝にお湯を使いたい場合は、前日に蓄えた熱に頼ることになるため、保温性能も重要な要素となります。

設置場所の条件と初期費用

太陽熱温水器を効果的に活用するためには、設置場所に一定の条件が必要です。まず、日当たりが良好で、一日中太陽光が当たる南向きの屋根が理想的です。周囲に高い建物や大きな樹木があり、日陰になる時間が長い場所では十分な効果が期待できません。

屋根の角度も重要で、一般的には30度程度の傾斜が最も効率的とされています。平坦な屋根や極端に急な屋根では設置が困難な場合があります。また、自然循環型の場合は集熱器とタンクが一体となっているため重量があり、屋根の耐荷重も考慮する必要があります。

積雪地域や寒冷地では、凍結による配管の破損リスクがあります。氷点下となる地域では不凍液を使用する強制循環型を選ぶか、凍結防止対策が必要になります。また、強風地域では台風などによる飛散や破損のリスクも考慮しなければなりません。

初期費用も検討すべき要素です。自然循環型で20~50万円、強制循環型で50~100万円程度の投資が必要になります。設置工事費も含めると、さらに費用がかかる場合があります。住宅ローンに組み込める場合もありますが、まとまった初期投資が必要な点は家計への負担となります。

メンテナンスも定期的に必要で、集熱器の清掃や配管の点検、タンクの清掃などを行わないと性能が低下します。特に自然循環型では水質の影響を受けやすく、定期的な水抜きや清掃が欠かせません。

太陽熱温水器の導入費用と回収期間

太陽熱温水器の導入費用と回収期間

太陽熱温水器の導入を検討する際は、初期費用と長期的な投資回収の見通しを正しく理解することが重要です。タイプによって費用や回収期間が大きく異なります。

タイプ別の導入費用目安

自然循環型(太陽熱温水器)の導入費用は20~50万円程度が目安となります。最もシンプルな構造のため、設備費用が比較的安く抑えられます。集熱面積3~4㎡、貯湯量200~300リットルの標準的な仕様で、工事費込みでこの価格帯となります。

一方、強制循環型(ソーラーシステム)は50~100万円程度と高額になります。集熱器と蓄熱槽が分離しているため設備が複雑で、循環ポンプや制御装置、配管工事なども含まれるためです。しかし、既存の給湯システムとの連携がしやすく、利便性は高くなります。

設置工事費も考慮する必要があります。屋根の構造や設置条件によって異なりますが、一般的には設備費用の10~20%程度を見込んでおくと良いでしょう。特に強制循環型では配管工事や電気工事が複雑になるため、工事費用が高くなる傾向があります。

メンテナンス費用も長期的には必要になります。自然循環型では5~10年に一度程度のタンク清掃や配管点検、強制循環型ではさらに循環ポンプの交換などが必要になる場合があります。年間1~2万円程度をメンテナンス費として見込んでおくことが推奨されます。

実際の節約効果と投資回収年数

太陽熱温水器の投資回収期間は、導入費用と年間の節約効果によって決まります。月のガス代が5,000円の家庭で太陽熱温水器を導入し、月1,000円まで削減できた場合を例に計算してみましょう。

この場合、月4,000円、年間4万8,000円の節約効果が得られます。自然循環型を30万円で導入した場合、30万円÷4万8,000円=約6.3年で初期費用を回収できる計算になります。その後は毎年約5万円の節約効果を享受できます。

強制循環型を80万円で導入した場合は、80万円÷4万8,000円=約16.7年の回収期間となります。利便性は高いものの、投資回収には相当な期間を要することがわかります。

プロパンガスを使用している家庭では、都市ガスより料金が高いため、より大きな節約効果が期待できます。月のガス代が8,000円から1,500円に削減できた場合、年間約8万円の節約となり、自然循環型なら約4年で回収可能です。

地域の日照条件も回収期間に大きく影響します。年間日照時間が長い地域ほど集熱効果が高く、節約効果も大きくなります。逆に日照時間が短い地域では、期待した効果が得られない場合もあります。

太陽熱温水器を選ぶときのポイント

太陽熱温水器を選ぶときのポイント

太陽熱温水器を効果的に活用するためには、設置環境の確認と適切な機種選択が重要です。また、補助金制度も上手に活用したいところです。

設置環境の確認事項

まず最も重要なのは日当たりの確認です。南向きで一日中太陽光が当たる屋根が理想的で、東南から南西の範囲内であれば十分な効果が期待できます。北向きの屋根や、午前中または午後の大部分で日陰になる場所では効果が大幅に低下するため注意が必要です。

屋根の角度も重要な要素です。一般的には30度前後の傾斜が最も効率的とされています。平坦な屋根や極端に急な屋根では、設置架台などで角度を調整する必要があり、追加費用がかかる場合があります。

屋根の耐荷重も確認しましょう。自然循環型の場合、集熱器とタンクを合わせて300kg程度の重量があります。古い住宅や木造住宅では、構造計算により耐荷重を確認することが重要です。強制循環型なら屋根上は集熱器のみなので、負担を軽減できます。

周辺環境の影響も考慮が必要です。隣接する高層建物や大きな樹木により日陰が生じる時間が長い場合は、設置効果が限定的になります。将来的な周辺開発計画も含めて検討することが大切です。

積雪地域では雪の影響も考慮しなければなりません。積雪により集熱器が覆われると効果が得られないだけでなく、雪の重みで破損するリスクもあります。雪下ろしの方法や凍結防止対策についても事前に確認が必要です。

補助金制度の活用方法

2025年現在、太陽熱温水器に対する国の直接的な補助金制度は限定的ですが、一部の制度で支援を受けることができます。

「子育てグリーン住宅支援事業」では、強制循環型の太陽熱温水器に3万円の補助金が設けられています。ただし、この制度を利用するには5万円以上の補助額となるよう他のリフォームと組み合わせる必要があります。また、窓の断熱リフォームまたは家の断熱リフォームとの併用が条件となります。

地方自治体レベルでは、太陽熱温水器に対する補助制度を設けている自治体があります。ソーラーシステム振興協会の調査によると、複数の自治体で太陽熱利用システムへの助成が行われています。補助金額や条件は自治体によって大きく異なるため、お住まいの自治体に直接確認することをお勧めします。

日本政策金融公庫では、環境・エネルギー対策資金により、再生可能エネルギーの熱利用設備に対して特別利率での融資を行っています。太陽熱利用設備も対象となっており、通常より有利な金利で融資を受けることができます。まとまった初期費用が用意できない場合には有効な選択肢です。

補助金の申請には期限があり、予算に達し次第終了する場合が多いため、早めの情報収集と申請が重要です。また、補助金制度は年度によって変更される場合があるため、導入を検討する際は最新の情報を確認するようにしましょう。

まとめ

まとめ

太陽熱温水器は、太陽の熱エネルギーを直接利用してお湯を作るシンプルで効率的な設備です。エネルギー変換効率は50~60%と太陽光発電の約3倍の効率を誇り、家庭の給湯費を大幅に削減できる可能性を秘めています。

自然循環型は20~50万円程度の手頃な価格で導入でき、適切な条件下では5~7年程度で投資を回収できます。一方、強制循環型は50~100万円と高額ですが、既存の給湯システムとの連携がしやすく利便性に優れています。

天候に左右される点や設置条件の制約はありますが、日当たりの良い南向きの屋根があり、家族でお風呂をよく利用する家庭では大きな節約効果が期待できます。特にプロパンガスを使用している家庭では、より短期間での投資回収も可能です。

導入を検討する際は、設置環境の確認と適切なタイプ選択、そして補助金制度の活用がポイントになります。エネルギー価格が高騰する中、太陽熱温水器は家計と環境の両方に優しい選択肢として、改めて注目する価値があるといえるでしょう。

参照元
・一般社団法人ソーラーシステム振興協会 https://ssda.or.jp/

・株式会社コロナ – 太陽熱温水器とは https://www.corona.co.jp/solar/about/index.html

・一般社団法人ソーラーシステム振興協会 – ソーラーシステムの種類としくみ https://ssda.or.jp/kind/

・一般社団法人ソーラーシステム振興協会 – よくある質問 https://ssda.or.jp/qa/

・一般社団法人ソーラーシステム振興協会 – 助成制度等について https://ssda.or.jp/service/assist/

・家電Watch – 太陽熱温水器が普及しないワケ https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/solar/1121859.html

・タイナビ – 太陽熱温水器とは? メリット・デメリットを徹底解説 https://www.tainavi.com/library/4974/

・WAJO株式会社 – 太陽熱温水器の特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説 https://wajo-holdings.jp/media/7335

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