現代はインターネットが普及し、誰もが情報発信や共有ができるようになり、便利な世の中になりました。
一方、「半永久的に消えないデータ」であるデジタルタトゥーがインターネット上に蓄積され続け、社会問題となっています。
何気なく投稿したものがデジタルタトゥーの悪影響で人生台無しにということにもなりかねません。
そのような事態を未然に対処できることはあるのでしょうか?
ここではデジタルタトゥーについての意味や実際にある問題や事例、消し方の対処、防ぐための方法について解説します。
デジタルタトゥーの意味とは?
デジタルタトゥー(英:degital tatoo)とは、一度インターネット上に記載した情報を消すのが難しい様を表した言葉です。
デジタルデータとなり拡散されてしまった言葉や画像・動画などは「完全に消えずに残りやすい」ことから、一度体に入れると「簡単には消えない」入れ墨(タトゥー)になぞらえて表現されています。
デジタルタトゥーの由来
デジタルタトゥーの由来は、2013年の「TED Conference」の講演の中でメキシコの研究者フアン・エンリケス氏が、「電子タトゥー(Electonic tatoo)」の存在を言及したことをきっかけに、広く知られるようになったと考えられています。
この講演では、SNSで他者に私生活を周知されることによって発生する悪影響を電子タトゥーという言葉を用いて取り上げます。
参照元:フアン・エンリケス: タトゥーのように残るあなたのオンラインライフ
※講演では「電子タトゥー(Electonic tatoo)」という言葉でデジタルタトゥーを表現されています。
デジタルタトゥーの危険度
原則的に一度インターネット上に投稿した情報は全てデジタルタトゥーになる可能性があります。
現在はSNSの普及によって情報発信だけでなく、情報共有の拡散力が高まっています。
そのため、軽い気持ちで投稿した内容でも予想外に拡散してしまうと、デジタルタトゥーになる危険性があるのです。
デジタルタトゥーの問題
デジタルタトゥーには、自身で投稿したものだけでなく、本人の意思に反して情報が投稿されてしまったり、拡散されてしまうものも存在するため問題となっています。
インターネットのデータの中でも以下の情報は、一度拡散されてしまうと簡単に消すことが難しく、デジタルタトゥーの問題としてよく取り上げられています。
個人情報
実名、顔写真、位置情報、閲覧履歴や視聴履歴が含まれます。
会員登録で記載した個人情報が流出した場合に、デジタルタトゥーになる恐れがあります。
誹謗中傷などのデマ
匿名の掲示板やSNSでは、失言、風評被害、フェイクニュースなどの情報が拡散し残りやすい傾向です。
悪ふざけ・いたずら
SNSなどでバイトテロなどの情報、画像や動画など、軽い気持ちで投稿したものが一気に炎上し拡散する場合があります。
性的な画像・動画
引退している芸能人の性的な画像や動画、リベンジポルノ(元交際相手や配偶者の性的な画像や動画を本人に承諾なく投稿する)が拡散され残ってしまうことが問題です。
逮捕歴・前科
ニュースによって公開された逮捕歴の情報は拡散されやすく、誤認逮捕や不起訴処分、免罪になったにも関わらず、過去の逮捕歴が残り続けてしまうことが問題となっています。
また前科で罪を償っているにも関わらず、情報が残っていることで日常生活に影響が出ることが多いようです。
デジタルタトゥーの影響と事例
個人の情報がデジタルタトゥーとして「消えない情報」となってしまった場合に考えられる影響としては、「周囲への評判が悪くなる」「社会的信用を失う」「プライバシーの侵害」などです。
以下では具体的な事例を3つ挙げていきます。
ライフスタイルの変化への影響
ライフスタイルの変化によって新しい環境に赴く際に、デジタルタトゥーが不利になる可能性があります。
就職や結婚をする際に相手側から間接的にプライベートな情報を知られてしまい、判断材料にされてしまうケースです。
この影響で結婚の破断や就職先から内定の取り消になるなどの事例が存在します。
社会的信用に関する事例
社会的な面では、賃貸住宅の入居審査の際に逮捕歴や前科などのネガティブな情報がデジタルタトゥーとして存在することで、契約ができない事例があります。
そのほかにも勤め先に知られてしまった際に、人間関係の悪化や解雇や左遷の対象になる可能性があるでしょう。
子どものプライバシー侵害
現在、SNSが普及し育児投稿が増えていることから話題となっているのが、子どものプライバシーです。
悪気なくSNS上に投稿した子供の成長記録が、将来的にデジタルタトゥーとして残ってしまう可能性が指摘されています。
実際の事例では画像の悪用などが報告されており、誘拐などの犯罪に巻き込まれる危険性も高まることから注意が必要です。
参照元:育児のSNS投稿は毒親に当たる? 専門家からは“デジタルタトゥー”との指摘も|ENCOUNT
デジタルタトゥー被害への対処法
デジタルタトゥーは拡散されてしまうと、内容によっては自分だけでなく他者にも大きな影響を及ぼします。
デジタルタトゥー被害に遭ってしまった場合にできる対処としては、「自ら削除申請をする」や「インターネットトラブルの専門家に相談する」というものが挙げられます。
以下にて具体的に紹介します。
投稿者に削除を申請する
投稿者が知人であったり、連絡先がわかる場合には一度消してほしい旨を伝えるのが手段の一つとして挙げられるでしょう。
しかし削除を素直に応じてくれない、連絡がこないという場合も考えられます。
インターネット問題を扱う専門団体に相談する
インターネット上の違法・有害問題を専門に扱う相談センターに相談するのも一つの手段です。
相談も無料で受け付けていることが多いので気軽に利用ができます。
インターネットに関する問題を相談できる団体
・誹謗中傷ホットライン|一般財団法人セーファーインターネット協会
・違法・有害情報相談センター|総務省支援事業
・インターネット人権相談受付窓口|法務省
弁護士に削除依頼する
弁護士に依頼し、法的なアプローチを持って削除請求を行うと、デジタルタトゥーを完全に削除できる可能性が高まります。
特にインターネットのトラブルに強い弁護士であれば、専門的なアドバイスが得られやすく安心して依頼できます。
事態が深刻な場合は選択肢として検討するといいでしょう。
デジタルタトゥーを防ぐために知っておくべきこと
デジタルタトゥーの被害で後悔する前にできることは、ネットリテラシーを知り、他者に配慮した投稿や行動を心がけることでしょう。
特に個人情報は他人においても、自身においても慎重に扱うことが大切です。
以下ではネットリテラシーを知る上で参考になる情報を紹介します。
忘れられる権利を知る
EU(欧州連合)では、プライバシー保護のために制定された一般データ保護規則にて「消去権(忘れられる権利)」が設けられています。
日本では議論が続いており、まだ法定化されていない権利ですが、「知る権利」「表現の自由」と並行して「忘れられる権利」についての検討が課題となる可能性があります。
参照元:
・GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)|個人情報保護委員会
・「忘れられる権利」とは?日本のプライバシー保護法制の現状|弁護士法人泉総合法律事務所
過去の事例から学ぶ
総務省では小中高生を対象とした、「インターネットトラブル事例集」を設けています。
インターネット上によくあるトラブルをシチュエーションに分けて解説しています。
具体的な事例を知ることで、投稿する前のネットリテラシーを知る上で参考になるでしょう。
まとめ
一度インターネットに公開された全てのデータは、デジタルタトゥーになり得る可能性があります。
インターネットで気軽に誰でも情報発信ができるようになったからこそ、自身の投稿内容に責任を持つことが求められています。
デジタルタトゥーは、今後もより良い情報発信や共有方法を考えるきっかけとなっていくでしょう。