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SOCIETY

レジリエントシティとは?日本の取り組みと暮らしでできることをわかりやすく解説

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レジリエントシティとは、地震や豪雨、猛暑、感染症、停電といったショックを受けても、機能を保ち、素早く立ち直り、次の備えまで進められる都市のことです。「壊れにくい」だけでなく「しなやかに回復する」ことに重点を置く考え方で、SDGs目標11が掲げる「レジリエントな都市」とも重なります。この記事では定義を押さえたうえで、防災都市との違い、世界と日本の具体的な動き、暮らしの中で今日から確かめられることを順に見ていきます。

この記事で学べること

  • レジリエントシティと「防災に強い街」の違い、誤解されやすい点
  • 国連や世界の都市ネットワークがどう取り組んできたか
  • 国・東京都・京都市など、日本の実践の現在地
  • 自分の暮らす地域のレジリエンスを確かめる3つの手順

「防災に強い街」と何が違うのか|誤解されやすい3つの点

「レジリエント」という言葉は、頑丈な堤防や耐震ビルを連想させます。けれども、その理解だけでは半分しか合っていません。ここでは、定義を知った直後に多くの人が抱きやすい誤解を3つ取り上げます。

誤解1 災害対策だけの話ではない

レジリエンスの対象は自然災害に限りません。経済の急な落ち込み、感染症、サイバー攻撃、電力や通信の途絶、人口減少や高齢化といった「じわじわ効く負荷」も含みます。東京都が2022年に公表した「TOKYO強靭化プロジェクト」も、風水害と地震に加え、火山噴火、電力・通信の途絶、感染症を対象に含めています。

誤解2 ハード整備だけでは成り立たない

堤防や耐震化といったハード対策は土台です。ただ、想定を超える雨が降れば、堤防を越えることもあります。そのとき命を守るのは、避難の判断、地域の見守り、行政と住民の情報共有といったソフトの力です。レジリエントシティの議論で「社会的なつながり」が必ず登場するのは、このためです。

誤解3 「元に戻す」ことがゴールではない

被災前と同じ街に戻すだけでは、次の災害でも同じ弱点が残ります。国連の防災の国際枠組みでは「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」が掲げられており、復旧の機会に危険な場所の土地利用を見直す、避難しやすい構造に改めるといった改善まで含めて考えます。立ち直るだけでなく、前より強くなって戻ることが、レジリエンスという言葉の核心です。

なぜ今、都市のレジリエンスが問われるのか

都市は人もお金も集まる場所である一方、一つの災害で被害が連鎖しやすい場所でもあります。集中しているほど、止まったときの影響が大きくなるからです。

国連経済社会局の「世界都市化展望2025」は、都市に暮らす人が世界人口約82億人の約45%を占めると推計しています。メガシティ(人口1,000万人以上の都市)も2050年までに37に増える見通しとされています。都市の人口が増えるほど、一度の被害に巻き込まれる人の数も増えます。

日本に目を向けると、国土交通省は治水計画の前提を「過去の降雨実績」から「気候変動で増える降雨量を織り込んだもの」へ切り替えています。2025年12月には土器川・大淀川・肝属川の各水系で河川整備基本方針を改定し、同様の見直しは名取川、菊川、高津川、富士川、筑後川などにも広がりました。台風シーズンが終わりに近づく今は、今年の雨で気づいた弱点を点検するのに向いた時期でもあります。

4つの視点で見るレジリエントシティ

都市のレジリエンスは、一般に次の4つの視点で整理されます。どれか一つが強くても、他が弱ければ全体は崩れます。

物理的なレジリエンス

道路、橋、水道、電力、通信、建物といった基盤を、災害に耐え、壊れても早く直せる構造にすることです。老朽化したインフラの更新や、停電しても動く非常用電源の確保が含まれます。

社会的なレジリエンス

住民同士の顔の見える関係や、支え合う仕組みのことです。高齢者、障害のある人、外国人住民、子育て世帯など、災害時に情報や移動手段が届きにくい人を取りこぼさないことが問われます。

経済的なレジリエンス

災害や危機の後も、地域の仕事と収入が続くか、早く戻るかという視点です。地元企業の事業継続計画(BCP)や、特定の産業や取引先に頼りすぎない地域経済のつくり方がここに入ります。

制度・ガバナンスのレジリエンス

行政、企業、住民がいざというときに連携して素早く意思決定できる体制です。計画を作って終わりにせず、訓練と見直しを重ねられるかが分かれ目になります。

世界の動き|100のレジリエント・シティから国連のMCR2030へ

世界で都市のレジリエンスが広く共有されるきっかけの一つが、米国のロックフェラー財団が2013年に始めた「100 Resilient Cities」です。1,000を超える都市が応募し、100都市が選ばれました。選ばれた都市は、各都市に置かれた専任の責任者(最高レジリエンス責任者)を中心に、戦略づくりと都市間の知見共有を進めました。このプログラム自体は2019年に財団内での活動を終え、その後はResilient Cities Networkなどの枠組みが引き継いでいます。

現在、国際的な旗振り役の一つが、国連防災機関(UNDRR)が主導する「MCR2030(Making Cities Resilient 2030)」です。複数の国際機関や都市ネットワークが共同で運営し、参加は都市に無料で開かれています。参加した都市は、災害リスクの理解、対策の計画づくり、計画の実施という3段階のロードマップに沿って進みます。

日本の関わりとしては、JICAがMCR2030の中核メンバーとして、地域の防災戦略や計画を作るための8段階の実践手法を提供しているとされています。参加都市数は集計時期や数え方で資料ごとに異なるため、最新の数字は公式サイトで確認してください。

日本の実践|国・東京・京都の取り組みを比べる

日本でも、国・大都市・歴史都市がそれぞれ違う角度でレジリエンスに取り組んでいます。ここでは三つの例を並べ、何を重視しているかの違いを見ます。

国の枠組み|第1次国土強靱化実施中期計画

政府は2025年6月6日、「第1次国土強靱化実施中期計画」を閣議決定しました。令和8年度から12年度までの5年間で、おおむね20兆円強程度の事業規模を目途に、ハードとソフトを合わせた114の施策を推進するとされています。令和7年度末に終わる「5か年加速化対策」の後継にあたり、まさに2026年度から始まった計画期間にあたります。なお、毎年度の年次計画で示される金額の区分は、この20兆円強とは別の立て方なので、数字を比べるときは注意が必要です。

治水を「流域全体」で考える

近年の水害対策は、河川管理者だけで堤防を高くする方式から、流域全体で水をためる・逃がす・避ける方式へ移っています。令和7年版防災白書は、水害リスクを踏まえて特定都市河川の指定を拡大し、流域が一体となって取り組んだと報告しています。指定された河川では、行政や関係者が協議会を作り、おおむね20〜30年の間に実施する対策を計画にまとめる仕組みです。住宅地の立地や雨水貯留の考え方まで含むため、都市計画とレジリエンスが直接つながる分野です。

東京都と京都市|課題が違えば、重点も違う

東京都は2022年5月に推進会議を始め、同年12月に「TOKYO強靭化プロジェクト」を公表しました。風水害、地震、火山噴火、電力・通信の途絶、感染症という五つの危機を横断して扱う点が特徴で、人口と機能が集中する都市ならではの設計です。

京都市は2016年にロックフェラー財団の「100 Resilient Cities」に選ばれ、市民意見募集(2019年1〜2月)を経てレジリエンス戦略をまとめました。重点分野には「災害に強いまち」だけでなく、「人が育つまち」「支えあい、助け合うまち」「豊かに暮らせるまち」「快適に住めるまち」「環境にやさしいまち」が並びます。防災を、教育や福祉、暮らしやすさと一体で捉える姿勢がよくわかります。

暮らしの中でできること|自分の地域を点検する3つの手順

レジリエントシティは行政だけが作るものではありません。自分の地域がどのくらい「しなやか」かは、次の三つの手順で確かめられます。

手順1 ハザードマップで自分の場所のリスクを見る

自宅、職場、通学路、よく使う駅について、洪水・内水・高潮・土砂災害の想定を確認します。国土交通省の「重ねるハザードマップ」なら、複数の災害を一度に重ねて見られます。見るときは、浸水の深さに加えて、避難所までの道が浸水想定の中を通っていないかも確かめてください。

手順2 地域のつながりに一度だけ顔を出す

自治会や自主防災組織の訓練、地域の清掃活動、学校や商店街のイベントなど、入り口はどれでも構いません。災害時に助けになるのは、設備よりも「あの人は一人暮らしだった」と気づける関係だという指摘は、各地の防災の現場で繰り返されています。

手順3 まちの計画づくりに声を届ける

自治体は防災計画や都市計画を見直すたびに、パブリックコメントや説明会で意見を集めます。京都市のレジリエンス戦略でも意見募集が行われました。広報紙や自治体のウェブサイトで募集中の計画を一つ探し、読んでみるだけでも、街の優先順位が見えてきます。

まとめ

レジリエントシティは、頑丈な街をつくる話にとどまりません。災害や経済、感染症、停電といった多様なショックを受けても、機能を保ち、早く立ち直り、復旧の機会に弱点まで直していく都市のあり方です。そのため、インフラ、地域のつながり、地域経済、行政の意思決定という四つの視点がそろって初めて成り立ちます。

世界では100 Resilient CitiesからMCR2030へと枠組みが引き継がれ、日本では国土強靱化の中期計画、流域治水、東京都や京都市の戦略がそれぞれの角度から進んでいます。ただ、計画が立派でも、住民が自分の地域のリスクを知らなければ力は発揮されません。行政の計画と暮らしの足元をつなぐのは、私たち一人ひとりの確認と参加です。

まず一つだけ試すなら、ハザードマップで自宅周辺の想定を見て、避難所までの道を一度たどってみてください。

  • レジリエントシティは「壊れない」ではなく「立ち直り、前より強くなる」都市である
  • 災害だけでなく経済・感染症・停電なども対象で、ハードとソフトの両方が必要になる
  • 日本では第1次国土強靱化実施中期計画(2026年度から5年間)や流域治水が進行中である
  • ハザードマップの確認、地域とのつながり、計画への意見提出から始められる

参考文献

  • 記事を書いたライター
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