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「健康」が経営戦略になる時代|健康経営優良法人の広がりと、企業・自治体が問われるウェルビーイングの本質

「健康」が経営戦略になる時代|健康経営優良法人の広がりと、企業・自治体が問われるウェルビーイングの本質

従業員の健康を「コスト」ではなく「投資」として捉える動きが、企業の間で急速に広がっています。経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」への参加法人数は年々増加しており、2026年3月10日・11日には「健康経営AWARD2026」が開催されます。企業が健康・ウェルビーイングに本腰を入れ始めた背景と、その先に問われる課題を整理します。

「健康経営優良法人」とは何か

「健康経営優良法人」とは、従業員の健康管理を経営的な視点からとらえ、戦略的に健康経営を実践している法人を、経済産業省と日本健康会議が共同で認定する制度です。従業員の健康を単なる福利厚生としてではなく、企業価値向上の柱として位置づける企業に与えられる認定制度です。
制度が創設されたのは2016年度です。もともとは2014年度より東京証券取引所が選定する「健康経営銘柄」がスタートし、上場企業を対象とした取り組みでしたが、未上場企業や医療法人、中小企業にも健康経営の必要性が高まり、より広く普及させるために創設されました。

認定は大規模法人部門と中小規模法人部門の2つに分かれており、上位の法人にはそれぞれ「ホワイト500」「ブライト500」といった冠が付与されます。
健康経営優良法人の認定取得は採用面でも有利で、厚生労働省は公共職業安定所(ハローワーク)に提示する求人票への「健康経営優良法人」との記載を認めています。政府系金融機関や地域の信用金庫など、認定法人への融資に有利な条件を提示する金融機関も存在します。

認定法人数は右肩上がりで増加

経済産業省は2025年3月10日に「健康経営優良法人2025」を発表しました。9回目となる今回は、大規模法人部門に3,400法人、中小規模法人部門に19,796法人が日本健康会議より認定されています。

さらに翌年度の動向も明らかになっています。
「健康経営優良法人2026」の速報値(2025年11月4日時点)では、大規模法人部門が4,175法人(前年度比306法人増・+7.9%)、中小規模法人部門が23,485法人(前年度比3,218法人増・+15.9%)に上ることが確認されています。

中小規模法人部門の伸び率が特に大きく、健康経営への関心が大企業にとどまらず中小企業にも着実に浸透していることがわかります。

こうした広がりを受け、健康経営銘柄2026に選定、および健康経営優良法人2026に認定された企業を称える「健康経営AWARD2026」が、2026年3月10日・11日にオンラインで開催されます。

「健康経営」から「ウェルビーイング経営」へ

健康経営の概念はいま、より広い「ウェルビーイング(Well-being)」へと進化しつつあります。

従来の「健康経営」では、身体的な健康面に重点を置いてきました。一方、ウェルビーイングでは身体だけでなく、従業員のモチベーションなど、精神的・社会的にも良好な状態になることが求められています。
経済産業省は、従業員のウェルビーイング向上は人的資本投資の中核であり、企業の持続的成長の鍵であるとしています。
従業員のウェルビーイングを意識した取り組みは、CSRや福利厚生の一環と捉えられることもありますが、人材不足の中で組織の競争力を高めていくために、もはや避けて通れない投資対象であるともいえます。

企業がウェルビーイングに取り組む実質的なメリットも可視化されています。
心身ともに健康でいきいきと働くことができれば、仕事に対する熱意・意欲を持つ社員が増加します。その結果、欠勤・休職をする社員が減り、企業全体の生産性の向上が期待できます。また、ウェルビーイングは経営コストの削減にも寄与し、生産性が上がれば人件費の削減、社員の健康が維持されれば医療費の削減につながるでしょう。

制度の変化|ストレスチェック義務化の拡大

健康経営を支える法制度も動いています。
ストレスチェックの実施が当分の間努力義務とされてきた労働者数50人未満の事業場についても、労働安全衛生法の改正により、今後ストレスチェックの実施が義務となる見通しです。

これまで小規模事業場では努力義務にとどまっていたストレスチェックが、今後は義務化される見通しです。中小企業・小規模事業者にとっては、早期の体制整備が求められます。

また、健康経営優良法人制度に認定を受けると公的にホワイト企業であることが証明されるため、人材確保やSDGsの観点から企業にプラスに働くと考えられています。認定は1年ごとに申請しなければ継続できず、常に最新の認定要件を満たしている企業のみが受けられる認定です。

自治体も動き出す地域ぐるみの健康づくり

健康経営は企業内部の問題にとどまりません。
経済産業省は、健康長寿社会の実現に向けた取り組みの一つとして、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取り組みを戦略的に実践する「健康経営」を推進しています。
自治体も地域の事業者と連携し、健康経営の普及や支援事業を展開する動きが広がっています。

一例として、商業施設「マルイ」などを傘下に持つ丸井グループでは、社員が主体的に応募する「手挙げ式」のウェルビーイングプロジェクトを推進しているとされています。健康経営のビジョン策定や社内研修を企画するプロジェクトメンバーについて、氏名や所属を伏せ、作文で募集したところ応募が殺到し、メンバーを定期的に入れ替えることで広く組織に浸透させる仕組みをつくっているという見方があります。
住宅メーカーの積水ハウスは「自社を世界一幸せな会社にする」ため、ウェルビーイングの達成に最も必要な要素を「企業理念」と位置づけ、企業理念の根本に「人間愛」を据え、「人の幸せを願って親切に」「感謝を伝え合うこと」の浸透を全社に促しているとされています。

ウェルビーイングとSDGsのつながり

SDGsの3番目の目標「GOOD HEALTH AND WELL BEING(すべての人に健康と福祉を)」、および8番目の目標「DECENT WORK AND ECONOMIC GROWTH(働きがいも経済成長も)」を達成するにあたっても、働く場としての企業がウェルビーイングに取り組む必要性があります。

健康でいられることは個人の幸福にとどまらず、持続可能な社会の根幹をなす要素です。企業が従業員の心身の豊かさに投資することは、SDGsが掲げる目標に直接応えることでもあります。

まとめ|「健康経営」は経営の基盤へ

健康経営優良法人の認定数が年々増加し続ける事実は、「従業員の健康は経営の問題である」という認識が社会に定着しつつあることを示しています。制度的な義務化が進む一方で、企業各社が自社の文化や理念に根ざした独自の取り組みを展開しはじめていることも注目されます。

健康経営が「認定を取るための形式」にとどまらず、一人ひとりが働きがいを感じられる職場づくりへと深化していくかどうか。そこに、ウェルビーイングをめぐる議論の核心があるといえるでしょう。まずは自分の働く場で、今日できる小さな一歩から考えてみることが、社会全体のウェルビーイング向上への入口になるかもしれません。

  • 記事を書いたライター
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