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警報が変わる、防災が変わる|令和8年5月から始まる新たな防災気象情報と「気候適応」の今

警報が変わる、防災が変わる|令和8年5月から始まる新たな防災気象情報と「気候適応」の今

大雨が降るたびに届く「警報」や「特別警報」。これらは私たちが避難行動を判断するための重要な情報です。気象庁はこの防災気象情報を大幅に見直し、令和8年(2026年)5月下旬から新たな運用を開始すると発表しています。同時に、気候変動への「適応」という考え方も、政策・社会の両面でじわじわと浸透しつつあります。変わりつつある防災の仕組みと、私たちが知っておくべきこれからの「備え」について整理します。

令和8年5月、防災気象情報が刷新される

国土交通省水管理・国土保全局と気象庁は、令和6年6月に取りまとめられた「防災気象情報に関する検討会」の提言を踏まえ、令和8年5月下旬(予定)から新たな防災気象情報の運用を開始すると発表しています。その詳細は令和7年12月16日の報道発表でも公表されており、気象業務法および水防法の改正と連動した制度改革です。

今回の見直しで特に大きく変わるのは、情報の体系と名称です。対象となる災害である「河川氾濫」「大雨」「土砂災害」「高潮」の4区分について、情報名称にレベルの数字を付記し、避難情報の5段階の警戒レベルに対応した体系に改めるとされています。さらに、現行の警報(レベル3相当)と特別警報(レベル5相当)の間に位置するレベル4相当の情報として「危険警報」が新設されることで、段階的な危険度がよりわかりやすく伝わる仕組みになります。

今回の刷新は、こうした気候変動時代に対応した制度改革の一環とも言えます。

なぜ今、防災情報の見直しが必要なのか

防災気象情報の改革が求められる背景には、気候変動による災害の激甚化があります。極端な大雨の頻度が増加し、洪水や土砂災害のリスクが高まっていることが観測データからも明らかになっており、文部科学省と気象庁が2025年3月26日に公表した「日本の気候変動2025」では、工業化以前に100年に一回現れていた大雨の頻度が、世界平均気温2℃上昇で100年に約2.8回、4℃上昇で約5.3回に増えるとの将来予測が示されています。

また、日本の平均気温は1898年から2024年の間に100年あたり1.40度上昇しており、東京など大都市の平均気温はヒートアイランド現象が加わることで全国平均を上回る割合で上昇しているとされています。かつては「ごくまれな現象」とされていた極端な大雨や高温が、今や毎年のように発生する「新たな日常」になりつつあります。

2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)では、特別警報発令後も多くの住民が避難せず被災したという事実も、今回の制度改革の動機として重視されています。情報の内容と警戒レベルの対応関係を明確にし、住民が迷わず行動できる仕組みづくりが急務とされているのです。

「気候変動適応」という考え方が浸透しつつある

温室効果ガスの排出削減(緩和策)と並んで近年注目されているのが、変わりゆく気候のもとで被害を最小限に抑えるための「適応策」です。激しい大雨が毎年のように水害を引き起こすなど、気候変動の影響はすでに私たちの生活に具体的な形で現れています。

日本では、気候変動の影響を回避・低減することを目的として「気候変動適応法」を2018年に制定した経緯があります。この法律のもとで各地域が自然・社会経済の状況に合わせた適応策を実施することが求められており、国立環境研究所が情報提供や自治体支援を担う体制も整えられています。

一方で、課題も明確です。「気候変動適応という言葉と取り組みをともに知っている国民の割合」は、2026年度までに25%を目標としているものの、認知度向上は引き続き急務とされています。防災情報が変わるこの機会は、「適応」という考え方を広めるうえでの重要なタイミングでもあります。

防災庁の設置で期待される「横断的な対応」

防災体制そのものも再編の動きが進んでいます。2026年度に防災庁の創設を目指す石破茂首相は、2024年11月に開いた防災庁設置準備室の発足式で「本気の事前防災」のための組織が必要だと述べたとされています。防災庁は、災害時に行政の各組織や民間の企業・団体を横断的に束ねて、政府の防災対応の司令塔となる役割を期待されているとされており、避難生活の環境改善や防災DXの推進なども担う見通しです。

また、内閣府で今後の災害対応の方針を検討してきたワーキンググループが2024年11月に取りまとめた報告書では、従来の避難所を中心とした「場所の支援」から、在宅避難者や車中避難者など多様な被災者を助ける「人の支援」に転換する必要があるとしたことも注目されます。能登半島地震の教訓を踏まえたこの転換は、気候変動で災害が多様化・複雑化するなかで特に重要な視点です。

警報が変わる日までに、私たちができること

令和8年5月の新たな防災気象情報の運用開始まで、残り約2か月余りです。新しい情報体系に慣れておくことは、いざという時の命を守る行動に直結します。

気象庁は、警戒レベル2の注意報が出た時点で、災害発生の可能性を考慮し、避難先までの安全な避難経路、持ち物の確認、家族等の安否確認方法のおさらいなどをしておくと避難がスムーズになるとしています。制度の変更を機に、ハザードマップの確認や家族との避難計画の話し合いなど、日常的な備えを見直してみることをおすすめします。

気候変動が「あたりまえの気象」を変えていく時代、防災は特別なイベントではなく、日々のくらしの一部として組み込む意識が求められています。「危険警報」という新しい情報が出たとき、私たちがスムーズに動ける社会をつくるための準備は、もう始まっています。

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