本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。
紙ストローは、使い捨てのプラスチック製ストローを減らす目的で、カフェやファストフード店に広がった代替品です。メリットは確かにありますが、飲み心地への不満や素材ごとの環境負荷の違いもあり、評価は単純ではありません。実際に、大手チェーンの中には紙ストローをやめて別の方法へ切り替えた例も出ています。この記事では、紙ストローのメリットとデメリット、日本の制度、企業の動き、そして私たちが選べる行動を整理します。
紙ストローのメリットは何か|プラスチックごみ問題との関係
紙ストローが広がった背景には、海に流れ出るプラスチックごみの問題があります。メリットを正しく評価するには、まず「何を減らしたいのか」を押さえておく必要があります。
海の生き物とプラスチックごみ
海を漂うプラスチックごみは、ウミガメや海鳥、魚などが誤って食べてしまう被害につながっています。ストローのような小さく軽い製品は風で飛ばされやすく、回収されないまま川や海へ流れ出る可能性があります。
紙ストローの最大のメリットは、石油由来のプラスチックを使わないことで、この「海に残り続けるごみ」になりにくい点にあります。紙は水分や微生物の働きで時間とともに分解されていくため、プラスチックに比べて自然環境に長く残り続けるリスクは小さいと考えられています。
日本は「使い捨てプラスチックを多く出す国」
国連環境計画(UNEP)が2018年に公表した報告書では、国民1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は、日本が米国に次いで世界第2位とされています。数値は2014年のデータに基づくものです。
一方で、陸から海へ流出するプラスチックごみの量を国別に推計した結果では、日本は2010年の推計で30位前後とされています。順位は「何を数えるか」で変わるため、日本は海への流出が少ないから安心だとも、使い捨てが多いから深刻だとも、一方向には言い切れません。ただ、暮らしの中で出る使い捨てプラスチックが多いことは、日本で脱プラスチックが議論される理由のひとつです。
企業にとっての意味
紙ストローには、企業が「使い捨てプラスチックを減らす姿勢」を示しやすいという側面もあります。消費者にとっても、店がどんな素材を選んでいるかは、環境配慮の取り組みを見る手がかりになります。
ただし、素材を変えること自体がゴールではありません。次の章で見るように、紙ストローにも課題があります。
紙ストローのデメリットと「紙なら安心」と言い切れない理由
メリットがある一方で、紙ストローには使い勝手と環境面の両方に課題が指摘されています。ここを知っておくと、ニュースや企業の発表を落ち着いて読み解けます。
使い勝手とコストの課題
よく挙げられるのは、次の3点です。
- プラスチック製に比べてコストが高い
- 長時間飲み物に浸すと柔らかくなる
- 口当たりや風味に違和感を覚える人がいる
特に飲み物を長く楽しみたい場面では、ストローがふやけて飲みにくくなるという声が少なくありません。後述するスターバックスの切り替えも、耐久性や飲み心地への不満が背景にあったと報じられています。
PFAS検出の報道をどう受け止めるか
2023年には、ベルギーのアントワープ大学の研究チームが、市販のストロー39銘柄を調べた結果を学術誌に発表しました。報道によると、紙製ストローの約9割からPFAS(有機フッ素化合物)が検出され、プラスチック製は約75%、ガラス製は約40%、ステンレス製では検出されなかったとされています。
ここで注意したいのは、この研究は「検出された」ことを示したもので、日常的な使用で健康に影響が出ると結論づけたものではない点です。低濃度での長期的な影響はまだ十分に解明されていません。防水のために意図的に加えられた可能性や、製造過程での混入の可能性が挙げられていますが、原因は特定されていません。
つまり、紙だから無条件に安心とも、紙は危険とも言えません。「素材を変えれば解決」とは限らない、という事実だけを持ち帰るのが適切です。
代替素材が本当に環境に良いかは、条件で変わる
プラスチックの代わりに紙や植物由来の素材を使えば、必ず環境負荷が下がるわけではありません。製造や輸送で使うエネルギー、使い終わった後の処理方法まで含めて比較する必要があり、結果は製品や条件によって変わります。
「微生物が分解するプラスチック」と呼ばれる素材も、分解されるには温度や湿度などの条件が必要です。ポイ捨てされた先で必ず分解されるわけではないため、素材の名前だけで安心しないことが大切です。
もうひとつ、よく引用される「2050年には海のプラスチックの重さが魚を上回る」という試算にも触れておきます。この数字は、2016年に世界経済フォーラムとエレン・マッカーサー財団が公表した報告書にあるもので、対策を取らない場合のシナリオとして示されました。魚の資源量の見積もりには異論も出ているため、「確定した未来」ではなく、「今の使い方を続ければ起こり得る警告」として受け止めるのがよいでしょう。
日本の制度でストローはどう変わったか|プラスチック資源循環促進法
紙ストローが身近になった背景には、日本の法律もあります。制度を知ると、お店で「ストローはお付けしますか」と聞かれる理由が見えてきます。
2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法
プラスチック資源循環促進法は、2022年4月に施行されました。この法律では、商品の販売やサービスの提供にともなって消費者に無償で提供される使い捨てプラスチックのうち、12品目が「特定プラスチック使用製品」に指定されています。ストローのほか、フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、ヘアブラシ、歯ブラシ、衣類用ハンガーなどが含まれます。
対象となるのは、小売業、飲食店、宿泊業、クリーニング業など、こうした製品を提供する事業者です。事業者は、ストローを渡す前に消費者へ意思を確認する、有料にする、ポイントを還元する、プラスチック以外の素材に替える、といった工夫を求められます。多くの製品を提供する事業者には、国による指導や助言に加え、勧告・公表・命令といった措置もあり得ます。
「全面禁止」ではなく「必要な人に必要な分だけ」
ここで誤解されやすいのは、この法律がストローそのものを禁止しているわけではないことです。目的は、無料で自動的に渡される使い捨てを減らすことにあります。
実際、店によって対応はさまざまです。紙ストローに替える、希望者にだけ渡す、そもそもストローが要らない形状のフタにする、といった方法が混在しています。法律が求めているのは「素材の置き換え」だけではなく、「提供の仕方を見直すこと」です。
事業者の取り組みは続いている
法律の施行直後には、コンビニ各社が動きました。たとえばファミリーマートは、2022年3月の発表で、フォークと先割れスプーンの配布を休止する方針と、生分解性プラスチック製ストローの取り扱いを示しました。ヤクルトグループも、販売時にスプーンとストローを原則提供しない目標を掲げています。
このように、制度は「紙ストローに替えること」を指定したのではなく、事業者ごとに最適な減らし方を探す余地を残しています。次の章では、その実例として2社の動きを見ます。
スターバックスとマクドナルドが紙ストローから切り替えた理由
紙ストローをいち早く導入した大手チェーンが、いま別の方法に切り替えています。ここには、紙ストローの課題と、企業が選んだ解決策がよく表れています。
スターバックス|紙からバイオマスプラスチック製へ
スターバックス コーヒー ジャパンは、2020年1月から紙ストローを提供してきました。2024年12月6日に、植物由来の素材を使ったストローへの切り替えを発表しています。
報道によると、新しいストローはカネカの生分解性バイオポリマー「Green Planet」を使い、バイオマス度は99%とされています。2025年1月23日から沖縄県内の全32店舗で先行導入し、レギュラーストローは3月以降に全国へ、太い口径のストローは4月上旬をめどに全国へ広げる計画でした。同社は、紙製ストローと比べてライフサイクル全体のCO2排出を抑えられることや、店舗から出るストローの廃棄物量を半分近く減らせる見込みを理由に挙げています。これらは企業自身が示した見込みです。
マクドナルド|ストローが要らないフタへ
日本マクドナルドは2025年10月27日に、バージンプラスチック(新たに石油から作るプラスチック)削減の取り組みとして、コールドドリンクのフタを、ストローなしで飲めるフタへ変更すると発表しました。2025年11月19日から全国で順次切り替えています。
新しいフタは、リサイクルPETを100%使っており、紙カップで提供するコールドドリンクが対象です。これに合わせて、紙ストローの提供も順次終了します。一方、子どもが飲食する場合や、マックシェイク、マックフロート、スムージーなど、ストローが必要な商品は引き続きストロー付きで提供されます。
2社から見える「次の一手」
2社の選択は異なりますが、共通点があります。どちらも「紙に替えれば終わり」とは考えていない点です。スターバックスは、素材をさらに見直して使い勝手と環境負荷の両立を探りました。マクドナルドは、ストローという製品を使わずに済む設計に踏み込みました。
ここから、次の傾向が読み取れます。
- ストローは「素材を替える」から「使わなくて済む形にする」へ議論が進んでいる
- 利用者の使い心地は、企業が方針を見直す大きな要因になる
- ストローが必要な人への配慮は、切り替えの際にも残されている
素材の優劣を決めつけるのではなく、各社が試行錯誤している途中の段階と見るのが現実に近いでしょう。
世界の動き|プラスチック汚染を減らす国際条約の交渉
ストロー1本の話は小さく見えますが、背景には国際的なルールづくりがあります。ここでは、現在の交渉状況を確認します。
条約づくりが続いている
2022年の国連環境総会で、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)を作ることが決まりました。その後、政府間交渉委員会(INC)で議論が続いています。
2025年8月5日から15日には、スイスのジュネーブで再開会合(INC5.2)が開かれました。環境省の公表資料によると、目的や製品設計、放出・流出、廃棄物管理などの条文は文言の調整が進みました。一方で、生産、プラスチック製品、資金などの項目は、各国の意見の隔たりが大きく、まとまりませんでした。この会合は合意に至らないまま閉幕しています。
日本の立ち位置
日本は「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を掲げ、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指しています。環境省の情報では、2026年2月にジュネーブでINC5.3が予定され、同年3月には東京で非公式の少数国会合を日本が主催しました。
経済産業省の2026年3月付の資料では、交渉はなお妥結に至っておらず、次回の再開会合の日程は調整中とされていました。この記事の執筆時点で確認できた範囲では、最終的な合意はまだ報告されていません。条約の行方によっては、将来、ストローを含む使い捨て製品のルールにも影響が及ぶ可能性があります。
条約の議論から私たちが読み取れること
国際交渉がまとまっていなくても、私たちの暮らしでできることはなくなりません。むしろ、企業や自治体が先に動くことで、実際のごみの量が変わっていきます。
条約の動向はニュースとして追いつつ、日々の選択は自分のペースで進めるのが無理のないやり方です。
私たちにできること|ストローを「使わない・選ぶ・使い回す」
ここからは、日常の場面で実践できる行動を3つの切り口で整理します。どれも、すぐに完璧を目指す必要はありません。
まず「ストローが本当に必要か」を考える
いちばん効果が大きいのは、使い捨てのストローそのものを減らすことです。カップに直接口をつけて飲める飲み物なら、注文時に「ストローは大丈夫です」と伝えるだけで、1本分のごみが減ります。
最近はストローが要らないフタを採用する店も増えているため、まずフタの形を見てみるのもよい方法です。
使い回せるものを選ぶ
自宅や職場でよく飲み物にストローを使うなら、洗って繰り返し使えるマイストローが選択肢になります。素材にはステンレス、シリコン、ガラスなどがあり、それぞれ洗いやすさや持ち運びやすさが違います。
選ぶときは、次の点を目安にしてください。
- 毎日洗って使い続けられる形状や長さか
- 洗う手間が負担にならないか
- 飲み物の温度や用途に合っているか
使い捨てをやめても、買ったまま使わなくなっては意味がありません。長く使える形を優先すると、結果的に環境負荷も小さくなります。
店の取り組みを「選ぶ」手がかりにする
店頭には、ストローの提供方法を掲示しているお店もあります。プラスチック資源循環促進法のもとで、事業者は消費者への情報提供も求められているため、「ストローは希望者のみ」「紙製に変更しました」といった表示を探してみると、取り組みが見えてきます。
ただ、環境配慮を打ち出す店が必ずしも完璧とは限りません。素材の名称だけでなく、「ストローそのものを減らしているか」にも目を向けると、見え方が変わります。
ストローを必要とする人への視点も忘れない
ストローは、飲み込みにくさのある人、手の力が弱い人、小さな子どもなど、使うことで安全に飲み物を飲める人にとって必要な道具でもあります。「ストローをなくせばよい」という単純な話にしないことが大切です。
減らす行動は、必要な人が使えなくなる状況をつくらないことが前提です。店頭で「ストローは要りません」と伝えるのは自分の分だけにとどめ、周囲に押しつけない姿勢が望ましいでしょう。
よくある追加質問
読み進める中で浮かびやすい疑問を、3つ取り上げます。
使い終わった紙ストローは、リサイクルに出せますか
紙ストローは、飲み物に濡れて汚れていることが多く、防水加工が施されている場合もあります。そのため、古紙回収には出さず、自治体の分別ルールに従うのが基本です。紙ストローの分別区分は自治体ごとに定められているため、出す前にお住まいの自治体のごみ分別ルールを確認してください。
バイオマスプラスチック製なら、ポイ捨てしても自然に分解されますか
分解されるかどうかは、温度や水分などの環境条件に左右されます。メーカーが示す生分解性は特定の試験条件での結果であり、あらゆる場所で同じように分解されることを保証するものではありません。素材が何であっても、ごみを捨てずに回収の流れに乗せることが前提です。
紙ストローをやめたら、環境への配慮は後退したことになりますか
そうとは限りません。マクドナルドの例のように、ストローが要らないフタに替えれば、ストロー自体の使用量を減らせます。評価のポイントは「紙かプラスチックか」だけでなく、「使い捨ての総量が減っているか」です。各社の発表で、削減の見込み量や考え方が示されているかを見るとよいでしょう。
PR
使い捨てのストローやカップを減らす身近な行動のひとつに、マイボトルを持ち歩く方法があります。タイガー魔法瓶の真空断熱ボトルも、その選択肢の1つです。サイズや形、使い方は商品ごとに異なるため、利用を考える場合は公式ページで最新の内容を確認してください。
まとめ
紙ストローのメリットは、プラスチックごみの発生を抑えやすいことです。一方で、飲み心地やコスト、素材ごとの環境負荷といった課題があり、「紙にすれば解決」とは言い切れません。スターバックスはバイオマスプラスチック製へ、マクドナルドはストローが要らないフタへと、各社は紙ストローの次の形を探っています。
日本ではプラスチック資源循環促進法により、事業者がストローの提供方法を見直す流れが定着しつつあります。国際的な条約交渉はまだ途中ですが、私たちの日々の選択は、すぐに始められます。ストローが必要か考える、使い回せるものを選ぶ、店の取り組みに目を向ける。この3つを意識するだけでも、使い捨ての量は変わります。
まず1つだけ試すなら、次に飲み物を頼むとき、ストローが本当に必要かどうかを一度考えてみてください。必要な人が使い続けられる前提のうえで、無理のない範囲から始めれば十分です。
- 紙ストローは、プラスチックごみを減らしやすい一方、使い心地や素材の課題がある
- 大手チェーンは、紙からバイオマス素材やストロー不要のフタへと次の形を試している
- 日本ではプラスチック資源循環促進法が2022年4月に施行され、ストローは対象12品目のひとつ
- 減らす行動は、必要な人がストローを使える前提で進めることが大切
参考文献
- 日本マクドナルド「バージンプラスチック削減の新たな取り組み コールドドリンクのフタを、ストローなしで飲めるフタへ変更」(2025年)
- Impress Watch「スターバックスのストロー変更に関する報道」(2024年)
- 環境省「プラスチック汚染に関する国際文書(条約)の策定に向けた政府間交渉委員会(INC)」(2026年)
- グリーンピース・ジャパン「INC5.2 条約合意なく閉幕」(2025年)
- Food Additives & Contaminants Part A「ストローに含まれるPFASの分析研究」(2023年)
- 世界経済フォーラム「More Plastic than Fish in the Ocean by 2050: Report Offers Blueprint for Change」(2016年)

