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グリーンビルディングとは|認証制度・メリット・日本の最新動向をわかりやすく整理

Photo by Kelly Brito on Unsplash

「グリーンビルディング」という言葉を、不動産や建設の文脈で目にする機会が増えています。ESG投資の拡大とともに、建物の環境性能を示す認証が企業や投資家から注目されるようになってきました。ただ、「なんとなく環境に良い建物のこと」という程度の理解で止まっているケースも多いのが現状です。

学生団体のプロジェクト支援をしていると、「グリーンビルディングとサステナブル建築って同じですか?」と聞かれることがよくあります。似た言葉が乱立していて混乱するのは当然です。この記事では、定義・主要な認証制度・取得のメリット・日本での動向を整理し、「では自分には何ができるか」という視点まで届けます。

グリーンビルディングとは何か

グリーンビルディングとは、設計・建設・運用・解体のすべてのライフサイクルを通じて、エネルギー消費・CO₂排出・水使用・廃棄物などの環境負荷を最小化しつつ、居住者の健康や快適性も確保した建築物のことを指します。単に太陽光パネルを載せた建物というわけではなく、建物全体のパフォーマンスを体系的に評価する概念です。

米国グリーンビルディング協会(USGBC)をはじめ、国際的な機関が「設計段階から運用段階まで一貫した環境配慮」を要件として定めています。日本では国土交通省が推進する「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」政策とも重なる部分が多く、省エネ建築の文脈で語られることも少なくありません。

よく混同される「サステナブル建築」との違いを一言でいえば、グリーンビルディングは「評価・認証の枠組みを持つ概念」であることが多く、第三者機関による客観的な評価が伴う点に特徴があります。

なぜ今、グリーンビルディングが重視されるのか

建築物は、日本の最終エネルギー消費量のうち家庭部門・業務部門を合わせた約3割を占めるとされます(資源エネルギー庁の公開データより)。脱炭素社会の実現に向けて建物の省エネ化は避けられない課題であり、2022年に改正された建築物省エネ法では省エネ基準への適合義務化の対象が拡大されました。

ESG投資の文脈でも、不動産ポートフォリオの環境性能は投資家の評価基準になっています。GRESBという不動産版ESG評価の国際指標では、グリーンビルディング認証の取得状況が採点に影響します。機関投資家が「認証なし物件」を選びにくくなりつつある流れは、日本の主要REITの開示資料を見ても明らかです。

支援してきた学生プロジェクトの中に、大学キャンパスの建替え計画に意見提出を行ったグループがありました。そのとき初めて「CASBEEのS評価を目指す」という設計方針書を読み、建物一棟ごとに数十項目の環境評価が行われていることを知りました。グリーンビルディングは「理念」だけでなく、具体的な数値と評価手順を持つ仕組みであることを、そのとき実感しました。

主要な認証制度を比較する

グリーンビルディングを語るうえで外せないのが認証制度です。「取得した」「未取得」という情報が市場や投資家へのシグナルになるため、どの認証を選ぶかは事業判断に直結します。代表的な制度を以下に整理します。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)

2001年4月、国土交通省住宅局の支援のもと産官学共同プロジェクトとして設立された、日本を代表するグリーンビルディング評価システムです。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮に加え、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建築物の品質を総合的に評価します。

評価はS・A・B⁺・B⁻・Cの5段階で行われ(建築評価の場合)、高い評価ほど環境効率が優れていることを示します。全国の主要都市の建築確認申請でCASBEE評価が推奨または義務付けられているケースがあり、国内の普及度では最も実績のある制度です。

LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)

米国グリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際認証制度で、世界180か国以上で普及しているとされます。評価カテゴリは持続可能な敷地・節水・エネルギー・大気・材料・資源・室内環境品質・イノベーションなど多岐にわたり、獲得ポイントに応じてCertified・Silver・Gold・Platinumの4段階で認証されます。

外資系テナントや海外投資家を意識した日本の大規模オフィスビルでは、CASBEEとLEEDを併取するケースも増えています。国際的なブランド価値と信頼性を求める場合にはLEEDが選ばれる傾向があります。

BELS(建築物エネルギー性能表示制度)

建築物のエネルギー消費性能と断熱性能に特化した第三者評価制度です。★1〜★5の星評価で省エネ性能を「見える化」し、消費者が建物選びに活用できる情報を提供します。住宅から非住宅まで幅広く対応しており、ZEBやZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の認定とセットで取得されることが多いです。

CASBEEやLEEDと比べると評価範囲はエネルギー性能に絞られますが、取得費用が比較的抑えられる点や、住宅向けにも使いやすい点が特徴です。

DBJグリーンビルディング認証

日本政策投資銀行(DBJ)が運営する認証制度で、不動産の環境・社会への配慮を5段階(★5〜★1)で評価します。環境性能だけでなく、防災・BCPへの対応や地域コミュニティへの貢献なども評価軸に含まれる点が特徴です。DBJからのグリーンローン・グリーンボンドを活用した資金調達と連動するケースも多く、不動産ファイナンスの現場では認知度が高い制度です。

WELL認証

米国のInternational WELL Building Institute(IWBI)が運営する認証で、建物の居住者の「健康・幸福」に焦点を当てているのが大きな特徴です。空気・水・光・温熱環境・フィットネス・食品・マインド(精神的健康)などの項目で評価されます。コロナ禍以降、オフィスや商業施設で健康配慮への関心が高まったこともあり、日本での取得件数は増加傾向にあるとされています。

認証取得のメリットと見落としがちなコスト

グリーンビルディング認証を取得すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。主なメリットを整理します。

  • テナント誘致・賃料への影響:環境性能が高い物件は、ESG意識の高いテナントから選ばれやすくなります。一部の国内調査では、認証取得済み物件が未取得物件と比べて稼働率や賃料水準で優位に立つ傾向が示されています。
  • 資金調達コストの低減:グリーンローンやグリーンボンドの対象として認定されると、低コストでの資金調達につながるケースがあります。
  • ランニングコストの削減:省エネ設備の導入によって光熱費が下がり、長期的には建物の運用コスト全体を圧縮できます。
  • 企業のESG開示への貢献:不動産を保有・賃借する企業にとっても、サプライチェーン上の温室効果ガス排出(Scope3)の削減に貢献するため、統合報告書などへの記載材料になります。

一方で、見落としがちな点もあります。認証取得には申請料・審査費用・対応工事費が発生します。特にLEEDは申請や審査のプロセスが英語ベースで複雑なため、専門コンサルタントへの委託費用が別途かかるケースが多いです。支援プロジェクトで「認証を取れば補助金が出る」と思い込んで計画を進めてしまった事例を見てきましたが、認証と補助金の要件が必ずしも一致しないことには注意が必要です。制度ごとの費用感と投資回収期間を、取得前に丁寧に試算することをお勧めします。

日本でのグリーンビルディング|MIRASUSが整理した現状の傾向

編集部で公開情報を整理した範囲では、日本のグリーンビルディングをめぐる動向にはいくつかのパターンが見えてきます。

まず、大規模オフィスビルや物流施設での認証取得が先行しています。REITや機関投資家が保有・運用する商業不動産では、GRESBスコア向上のためにCASBEEやDBJグリーンビルディング認証を積極取得する動きが広がっています。一方で、中小規模のビルや住宅では認証取得率はまだ低く、情報格差が大きい状況です。

次に、「省エネ基準の義務化」が追い風になっています。2025年4月施行の省エネ建築基準の強化(新築住宅・非住宅への省エネ基準適合義務化の拡大)を受け、BELSや省エネ性能ラベルへの関心が中小デベロッパーや個人施主にも広がりつつあります。認証取得が「任意の付加価値」から「市場参入の前提」へと性格が変わりつつある転換点といえるかもしれません。

また、健康性能への関心の高まりも目立ちます。コロナ禍以降、換気・空気質・自然採光などの居住者の健康に関わる項目が重視されるようになり、WELLや「FITWEL」といった人中心の認証制度への問い合わせが増えているとされます。環境負荷低減と居住者の健康は、以前は別々に語られることが多かったのですが、グリーンビルディングの評価軸の中で統合されつつあります。

SDGsとの接続|グリーンビルディングが関わるゴール

グリーンビルディングは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)とも深く結びついています。

ゴール11「住み続けられるまちづくりを」では、安全で強靭かつ持続可能な人間居住の実現が求められています。グリーンビルディングは、防災性能や地域コミュニティへの配慮も評価に含むDBJグリーンビルディング認証のように、単なる省エネを超えた「まちに溶け込む建築」の実現に貢献します。

ゴール13「気候変動に具体的な対策を」との関係は直接的です。建築物のライフサイクル全体でのCO₂排出削減は、日本の温室効果ガス削減目標(2030年度に2013年度比46%削減)の達成に不可欠な要素です。国土交通省はZEB・ZEHの普及拡大を政策目標に掲げており、グリーンビルディングへの取り組みは政策との整合性という点でも意義があります。

また、建築材料の調達における環境・社会配慮はゴール12「つくる責任つかう責任」にも関わります。グリーンビルディングの評価基準には、再生材の使用率やFSC認証材(持続可能に管理された森林からの木材)の採用なども含まれることがあります。

今日から試せる1アクション

グリーンビルディングは大規模な不動産開発の話、と思うと自分事に感じにくいかもしれません。しかし、個人でも関わる入口はあります。

たとえば、賃貸物件や購入物件を選ぶ際に「BELSの★評価」「省エネ性能ラベル」を確認する習慣を持つことが一つです。2024年4月以降、一定規模以上の新築建築物への省エネ性能ラベルの表示が努力義務化(段階的に義務化予定)されており、物件広告で確認できる機会が増えています。「省エネ性能ラベル ★4以上」を一つの選択基準として取り入れるだけで、建物の環境性能に対する解像度が高まります。

まずは今住んでいる建物や次に検討する物件の省エネ性能を一度調べてみてください。それが、グリーンビルディングという概念を「自分ごと」にする最初の一歩になります。

まとめ|グリーンビルディングを理解するための5つのポイント

この記事で整理してきた内容を振り返ります。

  • グリーンビルディングとは、建物のライフサイクル全体で環境負荷を最小化しつつ、居住者の健康・快適性も確保した建築物のことを指す
  • 主要な認証制度はCASBEE(日本)・LEED(国際)・BELS(省エネ特化)・DBJグリーンビルディング・WELLなど目的・スコープによって異なる
  • ESG投資やGRESB評価の普及により、大規模商業不動産では認証取得が競争優位の要件になりつつある
  • 2025年の省エネ基準義務化拡大を機に、中小規模建築でも環境性能の「見える化」が進んでいる
  • 個人の入口としては、物件選びの際にBELSや省エネ性能ラベルを確認することから始められる

グリーンビルディングは、大きな建設会社だけの話ではありません。「どんな建物に住むか・働くか」を選ぶ消費者の視点が、建築市場全体の環境性能を底上げしていく力を持っています。省エネ性能ラベルを一度確認してみることを、今日の行動として試してみてください。

気候変動対策と建築がどうつながるかをさらに深く知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

環境・エネルギー分野の関連情報はMIRASUSの環境・エネルギーハブ記事でもまとめています。また、脱炭素に向けたクリーンエネルギーの動向についてはSDGsゴール7(クリーンエネルギー)解説記事を、気候危機の全体像については気候危機の現状をまとめた記事もあわせて参照してみてください。

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