食品ロスとプラスチック汚染。どちらも「わかってはいるけど、なかなか変わらない」と感じている人も多いのではないでしょうか。しかし2025年から2026年にかけて、日本国内でも国際的な舞台でも、この2つのテーマを巡る政策と取り組みが大きく動いています。新たな削減目標の設定、法制度の改正、そして国際条約の行方——変化の潮流を整理してお伝えします。
食品ロス|第2次基本方針が閣議決定、目標をさらに引き上げ
国内では、食品ロス削減推進法に基づく「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(第2次)」が令和7年3月25日に閣議決定されました。
この第2次基本方針では、従来の目標から踏み込んだ内容が盛り込まれています。
家庭系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに半減(2030年を待たずに早期達成)、事業系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに60%削減することが目標として定められました。
事業系の目標は以前の「半減(50%削減)」から「60%削減」へと引き上げられた形です。
農林水産省や環境省は食品関連事業者への削減目標を見直し、2030年度までに2000年度比で6割減とする方向で検討を進めてきました。
直近のデータ|令和5年度の食品ロスは約464万トン
令和5年度(2023年度)の食品ロス発生量は約464万トン(うち家庭系約233万トン、事業系約231万トン)と推計されました。
令和4年度の472万トンから引き続き減少傾向にはあるものの、目標達成に向けてはさらなる取り組みが求められます。
食品ロスの削減は循環経済への移行やネットゼロの実現に向けても重要な課題であり、環境省では関係省庁・自治体・事業者等と連携して、さらなる食品ロス削減のための取り組みを進めています。
事業者への新たな義務と開示要求
政府は関連省令の改正も進めており、事業者を対象に、納品期限の緩和や未利用食品のフードバンクへの提供のほか、賞味期限の表示を「年月日」から「年月」にする工夫などを努力義務として課す方向で検討が進んでいます。未利用食品の提供量を有価証券報告書や統合報告書で開示することも求める方向で調整されています。
また、消費者庁では「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン〜SDGs目標達成に向けて〜」を公表しており、外食での食べ残しをいわゆる「mottECO(モッテコ)」として持ち帰ることを後押しする制度的な整備が進んでいます。
さらに、「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が食品表示基準Q&A別添として公表されました。食品の期限設定に関するルールが見直されることで、不必要な廃棄を減らす効果が期待されています。
プラスチック削減|国際条約と国内規制が同時に動く
国際プラスチック条約|交渉は続く
国連では2022年から政府間交渉委員会(INC)を設置し、世界各国とともにプラスチック汚染に関する国際条約の内容の詳細な協議が進められています。この条約は、プラスチックの製造・使用・廃棄のライフサイクル全体にわたって規制や対策を講じることを目的としており、単なるリサイクルだけでなく、根本的な「プラスチック生産削減」や再資源化の仕組み強化まで視野に入れています。
直近では2024年11月に韓国・釜山でINC-5.1が実施されましたが、条約の最終草案への合意には至らず、議論は次回に持ち越される形となっています。
次回のINC-5.2会議では条約案の最終調整と合意が目指されており、交渉の行方は、プラスチック削減の方向性を世界規模で左右するだけに、引き続き注目が必要です。
交渉では、条約の焦点を「プラスチック生産の根本削減」に据える立場と、「リサイクルや廃棄物管理の強化」に重きを置く立場に分かれています。EU諸国、アジア主要国、南米などで構成される「高志向連合(High Ambition Coalition)」は、プラスチックの生産量そのものを削減する厳格な目標を条約に盛り込むよう主張しています。
EUのPPWRが発効|2026年から段階的適用へ
EUは世界の中でも最も先進的なプラスチック規制政策を進めており、「PPWR(包装・包装廃棄物規則)」は、すべての包装材に対してリサイクル可能性の義務付けを導入し、2026年に段階的適用が始まるとされています。具体的には、リユース可能な包装材の比率目標や不必要な包装の制限、再生プラスチックの使用率目標などが定められます。
また、SUP(使い捨てプラスチック)指令に基づき、段階的な規制強化が進んでおり、ペットボトルへの再生プラスチック使用義務付けなどの対応が各国で求められています。
世界のリサイクルの現実|まだ1割にも満たない
プラスチックのリサイクルは技術的に進歩しているものの、現実はまだ厳しい状況です。
世界で1年間に製造されるプラスチックのうち、リサイクル品は1割に満たず、残りは石油資源から新たに作られているとされています。使い終わると大半が焼却されたり埋め立てられたりしており、野放図な使用は温暖化を進め、生態系や健康にも悪影響を及ぼしているとされています。
廃プラスチックの大半が焼却や埋め立てに回されている現状を考えると、リサイクル率はまだまだ低いといえます。また、リサイクルよりも「使わない」選択の方が環境負荷の観点では重要であるという指摘もあります。
日本国内の企業の動き|包装・流通・外食で着実な変化
企業レベルでも取り組みは進んでいます。
すかいらーくグループでは、プラスチック製ストローを廃止して紙製ストローに変更したほか、テイクアウトや宅配用のカトラリー(スプーンやフォークなど)をプラスチックから植物由来・紙素材等に順次切り替えるなど、使い捨てプラスチックの削減に取り組んでいるとされています。
また、食品小売企業における包装の最適化の取り組みも進んでおり、包装資材や包装設計の見直しにより、プラスチック使用量の削減とコスト削減を同時に実現した事例も出てきているとされています。食品ロス削減とプラスチック削減は、コスト削減とも親和性が高いビジネス改革として捉えられるようになっています。
私たちにできること|「買い方」「食べ方」「捨て方」を見直す
政策や企業の取り組みが加速する一方で、日常の選択も確実に変化をつくります。
食品ロス削減のために– 買い物前に冷蔵庫の中身を確認し、必要な分だけ購入する
– 賞味期限が近い商品を優先的に手に取る「てまえどり」を実践する- 外食での食べ残しは、対応している飲食店でmottECO(持ち帰り)を活用する
– 余った食品はフードバンクへの寄付を検討する
プラスチック削減のために– マイボトル・マイバッグを日常的に持ち歩く
– 再生プラスチックや紙パッケージを使用した商品を選ぶ- 購入前に「本当に必要か」を考え、使い捨て製品の消費を減らす
まとめ|2026年、政策と行動が同時に問われる年
第2次基本方針は令和7年度から令和11年度までの5年間を対象とし、食品ロスの削減の推進の意義・基本的な方向・推進の内容を定めるものです。
この方針のもと、事業者・自治体・消費者それぞれが役割を担う形で、食品ロス削減の取り組みは新たなステージへ入っています。
プラスチック問題でも、EUの規制強化や国際条約の交渉が続く中、日本の企業や消費者も無関係ではいられません。
世界各国でプラスチック規制の法制化・義務化の動きが加速しており、今後は取引先や輸出先の規制に対応する必要性が日本企業にとっても現実の課題となっていきます。
食品ロスもプラスチック削減も、「誰かがやること」から「自分ごと」へ。2026年は、その転換点となる年かもしれません。まずは、今日の買い物や食卓から、できることを一つ始めてみましょう。

